第150節: 理知的な反撃
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いつも『元・社畜SEの異世界再起動』をお読みいただき、誠にありがとうございます。 第七巻『外交戦線』、その第六話となります。
前回、アーク連邦の全権大使エリアーデは、外交サロンで、宿敵リオニス王国の外交官から、公然たる侮辱を受けました。しかし、彼女は、その屈辱に、鮮やかなカウンターで、応酬。 そのあまりにも気高く、そして痛烈な一撃は、サロンに集う全ての外交官たちに、強烈な印象を与えました。 今回は、その事件を逆手に取り、ケイが託した切り札が、ついに火を噴きます。 どうぞ、その華麗なる逆転劇を、お楽しみください。
サロン『白亜の円卓』で、エリアーデ・ウィンドソングが、リオニス王国のバルテルミー侯爵に、グラスの水を浴びせかけた、という衝撃的な事件。 そのスキャンダラスなニュースは、クロスロードの外交界隈を、瞬く間に駆け巡った。
『――聞いたか? あの、噂の亜人の国の大使が、リオニスの侯爵閣下を、公衆の面前で、侮辱したそうだ』
『なんと、野蛮な。……やはり、獣は獣、か』
『いや、待て。……話によれば、先に侯爵閣下が、あまりにも下品な挑発を、仕掛けたとか……』
『ほう? ……それは、面白い』
サロンのあちこちで、そんな囁き声が、交わされる中。 渦中のエリアーデたちは、サロンの支配人から、特別に提供された一室で、静かにその嵐が、過ぎ去るのを待っていた。 ……いや、待っては、いなかった。 彼女の翡翠の瞳には、先ほどの怒りの炎はもはやなく、代わりに、この状況をどう利用すべきかという、冷徹な戦略家の光が、宿っていた。
「……リリナ」
「はい、エリアーデ様」
「今の騒ぎで、サロン中の注目は、我々に集まっています。……これほどの好機はありません。……ボルツの準備は?」
「いつでもいけます。……あの頑固なドワーフも、さっきの侯爵の無礼な態度には、相当頭に来ていたようです。……早く奴らの度肝を抜け、と、息巻いていますわ」
リリナは、くすくすと楽しそうに、笑った。
「……よろしい」
エリアーデは、静かに頷いた。 彼女は、サロンの支配人を呼び寄せると、静かに、しかし有無を言わせぬ口調で、告げた。
「……支配人殿。……先ほどの我らの非礼、深くお詫び申し上げます。……つきましては、このサロンの皆様に、お詫びの印として。……我らがアーク連邦の、ささやかな技術の一端を、お披露目する機会を、頂戴できませんでしょうか?」
そのあまりにも意外な申し出。 支配人は一瞬戸惑ったが、このスキャンダルを、さらに盛り上げる絶好の余興になると判断し、即座にそれを快諾した。
◆
数十分後。 サロンの中央に設けられた、小さなステージの上に、エリアーデ、リリナ、そしてボルツの三人が、立っていた。 広間は、野次馬根性丸出しの、外交官や商人たちで、埋め尽くされている。 彼らは、あの気高いエルフの姫君が、リオニスの侯爵を前にして、どのような屈辱的な謝罪をするのかと、期待に胸を膨らませていた。 その中には、もちろん、勝ち誇ったような笑みを浮かべた、バルテルミー侯爵の姿も、あった。
だが、エリアーデが口にしたのは、彼らのその下品な期待を、粉々に打ち砕く言葉だった。
「――皆様。……今宵は、我がアーク連邦の未熟な大使が、この神聖なるサロンの空気を、乱してしまいましたこと、深くお詫び申し上げます」
彼女は、その美しい顔に、完璧な外交官の笑みを浮かべ、優雅に一礼した。
「……ですが、皆様もご存知の通り。……我がアーク連邦は、まだ生まれたばかりの若い国家。……それ故に、いささか血の気が多く、……そして、何よりも、『不当な、侮辱』に対しては、黙っていることができない、気質でして」
その皮肉に満ちた言葉。 バルテルミー侯爵の顔が、一瞬引き攣った。 広間から、くすくすと笑い声が、漏れる。
「……さて。……謝罪の言葉だけでは、この場の空気は、元には戻りますまい」
エリアーデは、そう言うと、傍らに控えていたボルツへと、目配せをした。 ボルツは、緊張した面持ちで頷くと、彼が命よりも大切に運んできた、あの鋼鉄のアタッシュケースを、テーブルの上に厳かに置いた。 そして、その鍵を開けた。
広間の全ての視線が、その箱の中身へと、注がれる。 中に収められていたのは、ケイが託した二つの切り札。 手のひらに乗るほどの大きさの、精巧な歯車の集合体。 そして、不気味なほどの機能美を持つ、鋼鉄の筒と、数発の弾丸。
「……これは、一体……?」
誰かが呟いた。
「皆様」
エリアーデの声が、静かに響き渡る。
「……我らアーク連邦は、武力ではなく、技術と対話によって、皆様と友好関係を築きたいと、願っております。……その我らの技術の、ささやかな一端を、本日はお目にかけたく」
彼女は、まず、あの複雑怪奇な歯車の塊を、手に取った。
「……これは、我らが工務大臣、ドゥーリン・ストーンハンマーが、趣味で作り上げた、『機械式時計』の試作品です」
彼女は、その側面のリューズを巻き上げ、そして、その歯車を高々と掲げた。
チチチチチチチチチチチチ……。
静まり返ったサロンの中に、小さな、しかし、どこまでも正確な機械音が、響き渡った。 無数の歯車が、まるで生きているかのように連動し、一分の狂いもなく、時を刻み始めていた。
その光景に、広間にいた全ての人間が、息を呑んだ。 特に、ドワーフの技術に詳しい、商人や王宮の技師たちの顔色は、蒼白になっていた。
(……馬鹿な。……ドワーフの技術は、頑丈さが売りのはず。……これほどの精密な機械を、作れるなどと、聞いたことがない……)
(……あれがもし、本物なら。……この手のひらサイズで、正確に時を刻む道具だというなら……)
(……その価値は、計り知れない。……戦争の様相さえ、変えてしまう……)
その驚愕の空気を切り裂くように、エリアーデは、次にあの鋼鉄の筒を、手に取った。
「そして、……こちらが、我らが最高指導者、ケイ・フジワラが、護身用に設計した、……ささやかな玩具ですわ」
彼女は、そう言うと、慣れた手つきで、その『魔導銃』に、弾丸と火薬を装填した。 そのあまりにも手際の良い、しかし、どこか物騒な仕草に、広間がざわめく。
彼女は、銃口を、サロンの壁に飾られていた、分厚い鋼鉄の騎士の鎧のオブジェへと、向けた。
「……バルテルミー侯爵閣下」
彼女は、不意に、その憎き敵の名前を、呼んだ。
「……あなた様の、その立派な鎧も、……これと同じくらいの強度で、ございましょうか?」
その挑発的な言葉。 侯爵は、顔を真っ赤にして、何かを言い返そうとした。 だが、彼が口を開くよりも、早く。
エリアーデは、静かに引き金を引いた。
ズドオオオオオオンッ!!!!
サロンの全ての窓ガラスが、ビリビリと震えるほどの轟音。 そして、閃光。 次の瞬間。 あの分厚い鋼鉄の騎士の鎧の、ど真ん中に風穴が、空いていた。 その威力は、ケイが試作したクロスボウさえも、遥かに凌駕していた。
広間は、死の沈黙に包まれた。 誰もが、今目の前で起きた現実を、理解できずに立ち尽くしていた。 あれがもし、自分に向けられていたら。 そう想像しただけで、全ての者の背筋を、冷たい汗が伝った。 バルテルミー侯爵は、その場に腰を抜かし、無様に尻餅をついていた。
エリアーデは、その銃口から立ち上る青い硝煙を、ふっと息で吹き消すと、その美しい顔に、完璧な外交官の笑みを浮かべた。
「……お見苦しいところを、お見せいたしました」
彼女は、その恐るべき凶器を、テーブルの上にそっと置いた。
「……ご覧の通り。……我らアーク連邦は、いささか血の気が多く、そして、少々危険な玩具を、持っております。……ですが、我らは、決してこの玩具を、先に使おうとは思いません」
彼女の翡翠の瞳が、その場にいる全ての外交官たちを、見渡した。
「我らが望むのは、ただ一つ。……対等な対話。……そして、公正な取引。……我らの、このささやかな技術に、ご興味をお持ちになった、理知的な方が、いらっしゃいましたら、……後ほど、お気軽にお声をおかけくださいまし」
彼女は、そう言うと、再び優雅に一礼し、ステージを後にした。 後に残されたのは、自らの常識を、完全に破壊され、ただ呆然と立ち尽くす、大陸のエリートたちの姿だけだった。 アーク連邦、外交使節団。 彼らが放った最初の一手は、このクロスロードの歴史上、最も衝撃的で、そして、最も鮮烈な外交デビューとして、永遠に語り継がれることになった。
最後までお読みいただき、ありがとうございます! エリアーデの華麗なる逆転劇。 そして、ケイが託した二つの切り札の、圧倒的な威力。 いかがでしたでしょうか。 彼女は、見事にサロンの空気を支配し、アーク連邦の恐るべき技術力を、大陸の中心で見せつけました。
さて、このあまりにも衝撃的なプレゼンテーション。 それは、各国、特にリオニス王国と敵対する、あの国家の目に、どう映ったのでしょうか。 次回、ついにアーク連邦の最初の同盟交渉が、水面下で始まります。
「面白い!」「エリアーデ様、最強!」「時計と銃、ヤバすぎる!」など、思っていただけましたら、ぜひブックマークと、↓の☆☆☆☆☆での評価を、お願いいたします。皆様の応援が、彼女の次なる交渉の力となります!
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