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第148節: 渦巻く欲望の坩堝(るつぼ)クロスロード

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いつも『元・社畜SEの異世界再起動』をお読みいただき、誠にありがとうございます。 第七巻『外交戦線』その第四話となります。


前回、アーク連邦の存亡を賭けた外交使節団は、ついにその旅を始めました。 人間社会の厳しい洗礼を受けながらも、彼らの絆はより一層強固なものとなりました。 今回は、ついに彼らが目的地である中立都市クロスロードへと到着します。 そこで彼らが目にする光景とは。 そして彼らを待ち受ける最初の試練とは。 どうぞ、その華やかな戦場の幕開けをお楽しみください。



リオニス王国の領内を横断する旅は、その後も困難を極めた。 エリアーде、リリナ、ボルツの三人は、ケイから与えられた『決して、目立つな』という至上命令を守るため、昼間は森に身を潜め、夜の闇に紛れて移動することを余儀なくされた。 彼らのその異様な出で立ちは、人間たちの好奇と、そして時には、剥き出しの敵意を刺激するには十分すぎたからだ。 何度か、街の衛兵に職務質問を受けそうになった。 そのたびに、リリナがその猫獣人としての驚異的な気配察知能力でそれを事前に回避し、あるいはエリアーデがそのエルフとしての気高い雰囲気と巧みな話術で相手を煙に巻いた。


(……これが、ケイ様の言っていた『外交戦』……) エリアーデは、その旅路の中で痛感していた。 戦場で魔物や兵士と対峙するのとは、全く異質なプレッシャー。 常に神経を張り詰めさせ、相手の一挙手一投足からその真意を読み解き、最適な言葉を選択し続ける。 それは、彼女の魔術師としての才能とは全く別の能力を要求される、過酷な精神労働だった。 だが、その過酷な経験こそが、彼女をアーク連邦の全権大使として急速に成長させていた。


そして、旅立つこと十日。 彼らの目の前に、ついにその都市が姿を現した。


「…………」


三人は、街道の丘の上で言葉を失っていた。 眼下に広がるのは、彼らがこれまで見たこともない巨大な都市の全景。 アークシティの数倍、いや、十倍はあろうかという広大な土地。 その全周を、大陸のどの城壁よりも高く、そして分厚い白亜の城壁が取り囲んでいる。 その城壁の内側には、様々な様式の建物が、まるでおもちゃ箱をひっくり返したかのように無秩序に、しかしエネルギッシュにひしめき合い、その中央には天を突くかのような巨大な時計塔がそびえ立っていた。


『中立都市クロスロード』。 大陸の全ての国家のちょうど中間に位置し、どの国の支配も受けず、ただ『商業』と『自由』の二文字だけをその憲章に掲げる、大陸随一の巨大商業国家。 全ての道はクロスロードに通ず。 そう言われるほど、ありとあらゆる人種、物資、金、そして情報がこの一つの都市に流れ込み、そして流れ出ていく欲望の坩堝るつぼ


「……すげえ……」 ボルツが、その無骨な顔に純粋な驚愕の色を浮かべて呟いた。 「……師匠おやっさんが言っていた、伝説のドワーフの地下都市もかくやというほどの……」 「……人の匂いが多すぎる……」 リリナもまた、その金色の瞳を細め、あまりにも膨大な情報の奔流にその鋭敏な五感を警戒させていた。


「……行きましょう」 エリアーデが静かに告げた。 「ここが、私たちの最初の戦場です」


三人はフードを深く被り直し、その巨大な都市の城門へと歩みを進めた。 城門は巨大なアーチ状になっており、そこをひっきりなしに無数の人々が行き交っている。 屈強な鎧姿の傭兵。 背中に大きな荷物を背負った商人。 派手な衣装を纏った旅芸人の一座。 そして、その人混みに紛れて当たり前のように歩いている、様々な亜人たちの姿。 犬の耳を持つ獣人。 爬虫類の鱗を持つ蜥蜴人。 小柄なゴブリンでさえも、荷物持ちとして平然と歩いている。


「……亜人が……普通に街を……」 リリナが、信じられないといった表情で呟いた。 「……ここは中立都市。……ここでは『金』こそが唯一の正義」 エリアーデが冷静に答えた。 「金さえ払えば、種族など関係ない。……それがこの都市のルール。……ケイ様が言っていた、リオニス王国とは全く異なる価値観(OS)の世界です」


彼らは、その人種の奔流に紛れ込み、城門をくぐった。 そこはまさに異世界だった。 石畳の両脇には、これまでに見たこともないような豪華な商品が溢れんばかりに並べられた、露店が軒を連ねる。 香辛料のエキゾチックな香り。 甘く焼けた菓子の匂い。 そして人々の熱気と活気。 そのあまりにも圧倒的な生命力に、三人はただ気圧されることしかできなかった。


「……まずは宿を確保します。……そしてその後、すぐに行動を開始します」 エリアーデは、この巨大な迷宮の中で道標となるケイからの指示書を、頭の中で反芻していた。 「リリナは情報収集。この都市の裏社会も含めた全ての情報網に接触を試みて。……ボルツは私と共に行動します。……まずはこの都市の外交官たちが集うというサロンへの参加登録を行います」


三人は人混みをかき分け、ケイが指定した比較的安全で、そして情報の集まりやすい地区にある、一軒の宿屋へとたどり着いた。 宿の主人は、三人のその異様な出で立ち(フードを深く被り、顔を隠している)を一瞥したが、エリアーデが差し出した数枚の銀貨(ケイが商人バートから巻き上げた戦利品だ)を見ると、途端に愛想の良い笑みを浮かべ、彼らに一番奥の静かな部屋を割り当てた。 やはり、この都市では金こそが全てなのだ。


その夜。 三人は、宿屋の一室で初めてこの都市の食事を口にしていた。 それは、フロンティア村の素朴で、しかし素材の味を活かした食事とは、全く違う。 過剰な香辛料と油で味付けされた、刺激的な、しかしどこか空虚な味。


「……明日は忙しくなります」 エリアーデが静かに言った。 「……ケイ様から預かったこの切り札が、この欲望の坩堝でどこまで通用するのか。……楽しみですね」 彼女の翡翠の瞳には、不安とそれを上回る高揚感の炎が揺らめいていた。 アーク連邦、その存亡を賭けた外交戦線。 その最初の火蓋が、今静かに切られようとしていた。


最後までお読みいただき、ありがとうございます! ついに、アーク連邦外交使節団が、目的地である中立都市クロスロードへと到着しました。 彼らが初めて目にする大都市のその圧倒的な光景。 そして、金こそが全てという、フロンティア村とは全く異なる価値観。 エリアーデ、リリナ、ボルツの三人は、この欲望の坩堝でいかにして彼らの任務を遂行していくのでしょうか。


次回、いよいよ彼らが外交の舞台へとデビューします。 各国(リオニス王国を含む)の外交官が集う、華やかなサロン。 そこで彼らを待ち受ける最初の洗礼とは。 どうぞご期待ください。


「面白い!」「クロスロード、すごい!」「三人の活躍が楽しみ!」など思っていただけましたら、ぜひブックマークと↓の☆☆☆☆☆での評価をお願いいたします。 皆様の応援が、彼女たちの外交の旅路を照らす光となります!


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