表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

147/176

第146節: 旅立ち

いつも『元・社畜SEの異世界再起動』をお読みいただき、誠にありがとうございます。 第七巻『外交戦線』、その第三話となります。


前回はアークシティ内部での戦争準備の様子が描かれました。 ガロウの常備軍の訓練 。ドゥーリンの新兵器の開発 。そして、ケイとルナリアの束の間の休息 。 アーク連邦の未来を守るための盾と矛。そして、心臓部。 その全てが整いました。


今回は、いよいよその準備を終え、アーク連邦の存亡を賭けた外交使節団が未知なる戦場へと旅立ちます。 彼らの最初の一歩。 どうぞ、その歴史的な瞬間をお見届けください。 それでは、第百四十六話お楽しみください。


建国式典の熱狂から十日後。 アークシティの南門は静かなしかし歴史的な緊張感に包まれていた。 アーク連邦、その歴史上初となる公式な外交使節団が今まさにその第一歩を踏み出そうとしていた。


全権大使、エリアーデ・ウィンドソング 。 彼女はこの日のためにエルフの森から取り寄せた最上級の絹で織られた深緑の旅装束にその美しい身を包んでいた。その背には彼女の愛用の白木の弓。そして腰には宰相補佐官としての地位を示す銀の短剣が下げられている 。その翡翠の瞳には、国家の運命を背負う重圧とそれを上回る誇り高い決意の光が宿っていた。


彼女の傍らに控えるのは、護衛にして諜報部長、リリナ・テールウィップ 。 彼女はあえて、自らの猫の耳と二本の尻尾を隠すことなく、ケイが特別にデザインした闇に溶け込む漆黒の革鎧に身を包んでいる。そのしなやかな肢体と金色の妖しい瞳は、彼女がただの護衛ではない特別な存在であることを示していた。その腰には、ドゥーリンが彼女のためだけに鍛え上げた二本の黒色鋼のダガーが音もなく収まっている。


そして彼らの後ろには。 今回の旅のもう一人の重要なキーパーソン。 技術顧問、ボルツ・ストーンハンマー 。 彼は、師であるドゥーリンから無理やり着せられた、分厚い、しかし完璧な仕上がりの鋼鉄の胸当てに身を固め、その背中には、まるで宝物でも運ぶように厳重に梱包されたアタッシュケースを背負っていた 。その若々しいドワーフの顔には、不安と困惑、そして自らが師の名代を務めるのだという生真目な責任感が、ない交ぜになって浮かんでいた。


彼ら三人を見送るのは、ケイとガロウ、そしてドゥーリンの三人だけだった。 この使節団の派遣は、極秘裏に進められた国家の最高機密。 リオニス王国の目を欺き、そして大陸のパワーバランスを水面下で揺さぶるための静かなる一手。


「……大将。……本当に、行かせちまうのか」 ガロウがその傷だらけの顔に隠しきれない心配の色を浮かべて呟いた。 彼にとって、エリアーデもリリナも、そしてボルツでさえも、共に死線を潜り抜けてきた大切な家族同然の存在。 その彼らを、敵の巣窟である人間の世界へと送り出す。 その不安は計り知れなかった。


「……フン。……ボルツよ」 ドゥーリンは自らの愛弟子へと向き直った。 「……貴様はわしの代理だ。……もしクロスロードの連中がわしらの仕事の価値を理解できん節穴ぞろいだった場合は、……あの、『切り札』を使うまでもなく、その自慢のハンマーで奴らの頭蓋骨の出来を確かめてくるがよい」 そのあまりにも物騒な激励の言葉。 ボルツは顔を引き攣らせながらも、力強く頷いた。 「は、はい! 師匠おやっさんの名に恥じぬよう務めてまいります!」


ケイは静かに、その三人の頼もしい仲間たちの前に立った。 彼は多くを語らなかった。 ただ、その青い瞳で一人一人の顔をじっと見つめた。 エリアーデへは絶対の信頼を。 リリナへは無事を祈る願いを。 そしてボルツへは期待を込めた激励を。 その言葉のない魂の対話。


三人は、その視線だけで、彼らのリーダーが何を伝えたいのかを完全に理解した。 彼らは深々と一礼した。 そして彼らは、振り返ることなく、アークシティの南門から、まだ朝霧に包まれた森の中へとその歴史的な一歩を踏み出していった。 アーク連邦、その存亡を賭けた最初の外交戦線が今静かにその幕を開けたのだ。




最後までお読みいただき、ありがとうございます! ついに、アーク連邦の外交使節団がその旅立ちを迎えました。 エリアーデ、リリナ、そしてボルツ。 この異色の三人組が、これからどのような旅を、そしてどのような交渉を繰り広げていくのか。 ケイのいない場所で、彼らがどう成長していくのかも、見どころの一つですね。


さて、次回はついに彼らがアークシティの外の世界。 人間たちの村へと足を踏み入れます。 そこで彼らを待ち受ける最初の洗礼とは。 どうぞご期待ください。


「面白い!」「使節団、頑張れ!」「三人の活躍が楽しみ!」など思っていただけましたら、ぜひブックマークと↓の☆☆☆☆☆での評価をお願いいたします。皆様の応援が彼女たちの旅路を守る力となります!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ