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第143節: 軍務省(ハードウェア)の始動

いつも『元・社畜SEの異世界再起動』をお読みいただき誠にありがとうございます。 第七巻『外交戦線』その第二話となります。


前回アーク連邦の存亡を賭けケイは『外交』という名の新たな戦場へと駒を進めることを決断しました。その重責はエリアーデ、リリナ、そして若きドワーフの職人ボルツに託されました。 しかし、外交使節団を送り出す一方で、アークシティ本体の防衛強化もまた一刻の猶予も許されない最優先タスク。 今回はその「盾」を担う男、我らが軍務大臣ガロウの『最初の仕事』が描かれます。 それでは第百四十三話お楽しみください。

最高幹部会議の熱気と緊張感が冷めやらぬその翌朝。 アークシティは既に次のフェーズへと力強く動き出していた。外交使節団が出発の準備を秘密裏に進めるその水面下で、ケイが下したもう一つの重要なプロジェクトが轟音と共にその産声を上げていた。


「――いいか、てめえら!」


アークシティの南地区に新設された広大な軍事訓練場。その中央に組まれたやぐらの上で、この国の『軍務大臣』に就任したばかりのガロウ・アイアンファングの雷鳴のような声が集まった若者たちの鼓膜を震わせた。 「大将は俺たちにこの国の『盾』になれとそう言った!


だがな、勘違いするんじゃねえぞ!


俺たちが目指すのはただの硬いだけの盾じゃねえ!


敵の牙をその喉笛に食らいつかせ、噛み砕き、そして二度と俺たちの仲間カゾクに手出しできねえように叩き折る!


……『鋼鉄の牙を持つ盾』だ!」


そのあまりにも獰猛な所信表明。 彼の前に整列しているのはこのアーク連邦の未来を担う若き市民たち。 狼獣人族の血気盛んな若者。 ドワーフ族の頑強な若者。 猫獣人族のしなやかな若者。 そして新しく仲間に加わった蜥蜴人リザードマン鳥人ハーピィの若者たち。 その数およそ百名。 アーク憲章第三章『市民の義務』に基づき、この都市で初めて召集された第一期の常備軍訓練兵たちだった。


彼らの顔にはまだ戸惑いと、そして異なる種族が同じ列に並ぶことへのぎこちなさが浮かんでいる。 「……ったく、なんで俺たち狼があんなトカゲ野郎と一緒に訓練なんざ……」 「……うるさいわねケモノが。……それより、こんな泥臭いこと本当に意味があるのかしら……」 小声で交わされる不平と不満。


ガロウはその未熟な空気をその黄金色の瞳で冷たく見下ろした。 彼は何も言わなかった。 ただ静かにやぐらの上から飛び降りると、その不平を漏らした狼獣人の若者の目の前に立った。


「……なんだよガロウ大……ごふっ!?」


次の瞬間。 ガロウの岩塊のような拳が若者の鳩尾に寸分の狂いもなく叩き込まれていた。 「ぐ……はっ……」 鍛え上げられた狼獣人の巨体がまるで壊れた人形のようにくの字に折れ曲がり地面に倒れ伏す。 訓練場が一瞬で静まり返った。


「……勘違いするなよガキども」 ガロウはその冷徹な瞳で全ての訓練兵たちを見渡した。 「俺はお前たちの友達でも兄貴でもねえ。……今日からお前たちを地獄の底まで叩き落とす『鬼教官』だ。……そしてこの訓練場はお前たちの常識が一切通用しねえ戦場だ」


彼は倒れ伏す狼獣人の若者の胸倉を掴み上げその耳元で囁いた。 「……お前が今見下したその『トカゲ野郎』。……そいつの硬い鱗はお前のそのナマクラな爪なんざ簡単に弾き返す。……お前が侮ったあの『鳥女』。……そいつはお前が気づく遥か上空からお前の眉間を正確に射抜く目と翼を持ってる。……ここではな」


彼はその若者をゴミのように地面に放り投げた。 「――お前たちのそのちっぽけな種族の誇りなんざクソの役にも立たねえんだよ」


そのあまりにも強烈な洗礼。 若者たちの顔から完全に血の気が引いていた。


「……だがな」 ガロウの声のトーンが変わった。 「……大将は信じてる。……お前たちが互いの違いを認め、互いの強さを学び、そして一つの牙となってこの国を守る最強の軍隊になれると」 彼は黒板を引き寄せそこにケイが彼と夜通し議論を交わして作り上げた恐るべき訓練プログラムの概要を書き出した。 「これより三ヶ月。……お前たちにはケイ大将が設計したこの『多種族連携戦術ミックスド・コンバット・システム』を骨の髄まで叩き込む!」


それは彼らの常識を遥かに超えた戦術だった。 ドワーフの重装歩兵が敵の攻撃を受け止める『タンク』。 狼獣人の軽装騎兵がその側面を切り裂く『アタッカー』。 猫獣人の斥候が敵の後方を攪乱する『アサシン』。 そしてエルフと鳥人族の弓兵が空から支援する『スカウト』。 その全ての異なる役割が一つのシステムとして完璧に連動する立体的な戦闘理論。


「……お前たちはもはや一人では戦わない。……お前たちは『仲間』のために戦うんだ。……お前たちの背中には必ずお前とは違う強さを持った仲間がいる。……その仲間の命を信じ、そしてお前の命を預けろ!」 ガロウの魂の叫び。 「……返事は!!!!」


「「「ウォオオオオオオオオオオオオッ!!!!」」」


百の異なる種族の若者たちの声が初めて一つの力強い咆哮となって訓練場にこだました。 アーク連邦常備軍。 その最初の産声が今確かに上がったのだ。 ケイが送り出す『外交』という名の矛。 そしてガロウが鍛え上げる『軍事』という名の盾。 アーク連邦の未来を守るための二つの車輪が今確かに回り始めていた。

最後までお読みいただきありがとうございます! 第七巻『外交戦線』その第二話でした。 今回はアーク連邦のもう一つの重要なプロジェクト、ガロウ率いる『軍務省』の始動が描かれました。 彼の鬼教官っぷりと、そしてその奥にある熱い魂。 ケイが考案した『多種族連携戦術』。 ワクワクしていただけましたでしょうか。


さて、外交の使節団が出発の準備を進める一方で。 アークシティの内部ではもう一つの重要なプロジェクトが静かに進行していました。 次回我らが工務大臣ドゥーリン・ストーンハンマーの工房が再び火を噴きます。 ケイが使節団に託したあの『切り札』。 その裏側で進められていた恐るべき新兵器の開発。 どうぞお楽しみに。


「面白い!」「ガロウ教官、熱い!」「多種族連携、かっこいい!」など思っていただけましたら、ぜひブックマークと↓の☆☆☆☆☆での評価をお願いいたします。皆様の応援が若き訓練兵たちの汗と涙の力となります!

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