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第135節: 仲間たちの誓い

いつも『元・社畜SEの異世界再起動』をお読みいただき、誠にありがとうございます。 第六巻『アーク連邦建国』編、そのクライマックスと、そしてエピローグへと、物語は進んでまいります。


前回、アークシティの全ての民の歓喜の咆哮の中、アーク連邦は、その歴史的な産声を上げました。 今回は、その熱狂の中で、この国の礎となった、ケイの仲間たちが、それぞれ何を想い、そして何を誓ったのか。 建国式典の、その裏側で紡がれる、彼らの静かな決意の物語です。 それでは、第四巻の第二十三話となる第百三十五話、お楽しみください。

「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!!」」」


地鳴りのような歓声は、いつまでもいつまでも、アークシティの青い空に響き渡っていた。 二百十七の魂が一つになった、建国の咆哮。 それは、この大陸の歴史の古い一ページを力ずくで破り捨て、新しい一ページを自らの手で書き記した、始まりの音だった。


演台の上で、その熱狂の渦を一身に浴びながら。 ケイ・フジワラは、静かにその光景を自らの魂に刻み付けていた。 彼の両の手は、未だ二人の美しいパートナーによって、強く握りしめられている。


ルナリア・シルヴァームーンは、その真紅の瞳を涙で濡らしながら、ただ幸せそうに微笑んでいた。 彼女の胸の中は、ケイと初めて出会った、あの暗い森の洞窟からの記憶が、走馬灯のように駆け巡っていた。 (……見て、いますか。……お父さん、お母さん) 彼女は、心の中で、故郷の森で人間の手によって命を落とした両親に、語りかけていた。 (……私は、今、ここに生きています。……人間を憎むのでは、なく。……人間と亜人が手を取り合う、この奇跡の場所で。……私の大切な人の隣で、……笑っています) 彼女は、握りしめたケイの手の温もりを確かめる。 (……この温もりを、この国を守るためなら。……私は、私の全てを捧げられる。……それこそが、私の見つけた生きる意味) 保健衛生局、初代局長。その重い責務は、今、彼女の中で揺るぎない誇りへと変わっていた。


その逆の手。 エリアーデ・ウィンドソングは、彼女もまた、その翡翠の瞳を静かに潤ませていた。 だが、その涙は、ルナリアのそれとは少し違っていた。 それは、感動と同時に、自らが選んだ道の険しさを再確認する、決意の涙だった。 (……長老様。……私は、間違って、いなかった) 彼女は、遥か北のあの閉ざされた森の空を想う。 (……あの淀んだ森の中で、緩やかな死を待つことこそが、罪だった。……変化を恐れず、外の世界へと飛び出し、そして、この規格外の指導者と出会えたこと。……それこそが、私と、そしてエルフ族の真の再生の始まり) 宰相補佐官。 その重責が、彼女の肩に心地よい重圧となって、のしかかる。 (……ケイ。……あなたの、そのあまりにも大きく、そしてあまりにも脆い、理想。……それを、現実のものとしてこの大地に根付かせること。……それこそが、このエリアーデ・ウィンドソングの新しい使命。……この命に、代えても)


広場の群衆の最前列。 その熱狂の渦の中心で。 ガロウ・アイアンファングは、その傷だらけの顔を、もう涙と鼻水でぐしゃぐしゃにしながら、誰よりも大きな声で吠えていた。 「大将ォォォォォォッ!!!!


最高だぜ、てめえはァァァァッ!!!!」 彼は、部下たちの肩を壊れるほど強く叩き、そして抱き合った。 (……親父……。……妹よ……。……見てるか……?) 彼の脳裏に、炎に包まれた故郷の光景が蘇る。 あの絶望の日から、彼はただ人間への復讐心だけを糧に生きてきた。 だが、今は違う。 (……俺は、もう、復讐者じゃ、ねえ。……守る、者だ。……この二百人の家族を、……いや、この国そのものを守り抜く、軍務大臣だ。……この鋼の腕が砕け散ろうと、この心臓が燃え尽きようと。……もう、二度と、誰一人、失わせはしねえ……!) その誓いは、彼の魂の奥底で、鋼鉄の錨のように深く、そして固く下ろされた。


そのガロウのすぐ隣で。 ドゥーリン・ストーンハンマーは、腕を組み、その白い髭の奥で静かに目を閉じていた。 周囲の熱狂とは無縁であるかのように。 だが、その岩塊のような身体は、微かに打ち震えていた。 (……馬鹿騒ぎ、よ。……だが、……悪くは、ない) 彼は、思い出していた。 千年の孤独。 あの暗い塩の洞窟で、ただひたすらに自らの技だけを磨き続けてきた、虚しい日々。 人間を憎み、世界を呪い、そして自らの才能の全てを無駄に費やしてきた、あの空虚な時間。 (……小僧。……貴様は、わしに、思い出させてくれた。……このわしの神業が、ただの自己満足ではなく。……誰かの笑顔のために、未来を創るために、あるのだということを) 工務大臣。 その新しい肩書きは、彼にとって、これまでのどの称号よりも重く、そして誇らしい響きを持っていた。 (……見ておれ、小僧。……わしが、このアークシティを、かつての神々の都さえも凌駕する、地上最高の芸術品へと、創り上げてくれるわい……!)


そして、群衆の中で。 その小さな身体で、歓喜の輪の中心にいた、リリナ・テールウィップ。 彼女は、涙を流しながらも、その金色の猫の瞳で、この歴史的な瞬間の全てを、その網膜に焼き付けていた。 斥候部隊、隊長。 やがて、この国の全ての「情報」を司ることになる、少女。 (……大将様……。……あなたは、私たちに、全てを与えてくれた。……だから、今度は、私があなたを守る番) 彼女の胸の中には、他の誰とも違う、もう一つの誓いが芽生えていた。 (……光が強ければ強いほど、影もまた濃くなる。……あなたが、この国の光であり続ける限り。……私は、あなたの影となろう。……あなたの、そのあまりにも優しく、そしてあまりにも無防備な背中を脅かす、全ての脅威から。……この身を挺してでも、あなたを守り抜いてみせる)


五人の仲間たち。 五つの異なる誓い。 その全ての想いを、その背中に受け止めながら。 ケイ・フジワラは、演台の上で、静かに、そして力強く、次なる一歩を踏み出した。 建国は、ゴールではない。 スタートだ。 そして、プロジェクトマネージャーの仕事は、プロジェクトが始まった、その瞬間にこそ、最も重要になるのだから。

最後までお読みいただき、ありがとうございます!


アーク連邦、建国。 その熱狂の裏側で、ケイの最初の仲間たちが、それぞれに胸に抱いた熱い誓い。 ガロウ、ドゥーリン、エリアーデ、ルナリア、そしてリリナ。 彼らの覚悟が、この新しい国家の未来を支えていくことになります。 彼らのこれからの活躍にも、ご期待ください。


さて、これにて、第34章『建国宣言』は完結となります。 次回より、物語は第35章『波紋』へと突入します。 ついに建国された、アーク連邦。 その衝撃的なニュースは、大陸中にどのような波紋を広げていくのでしょうか。 そして、ケイが最高指導者として最初に取り掛かる、「最初の仕事」とは。 第六巻も、いよいよ終盤戦です。


「面白い!」「仲間たちの誓い、熱い!」「それぞれの想いに感動した!」など、思っていただけましたら、ぜひブックマークと、↓の☆☆☆☆☆での評価をお願いいたします。皆様の応援が、アーク連邦の最初の一歩を、力強く後押しします!

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