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第127節:宰相補佐官

いつも『元・社畜SEの異世界再起動』をお読みいただき誠にありがとうございます。

第六巻『アーク連邦建国』編その第三章『国家の設計図』もいよいよ大詰めです。


前回アーク連邦の二大柱となる『軍務大臣』ガロウと『工務大臣』ドゥーリンが任命されました。

今回はその武力と技術力を支えそして時には制御する国家のもう一つの重要な側面。

『知性』と『魔法』を司る役職の任命です。

我らがエルフの才女エリアーデがついにその重責を担います。

それでは第百二十七話お楽しみください。

ガロウとドゥーリン。

『軍事』と『工業』というアーク連邦のまさに骨格と筋肉となる二人の巨頭が決まった。議場の興奮は最高潮に達していた。

屈強な狼獣人たちと頑固なドワーフたちが互いの肩を叩き合い新しい大臣の誕生を自らのことのように喜び合っている。

その熱狂の中で。

ケイは静かにその視線を議場のもう一方の主役へと移した。

その視線の先には一人のエルフの女性が静かに座っていた。

エリアーデ・ウィンドソング。

その金色の髪は議場の窓から差し込む光を反射してまるで後光のように輝きその翡翠の瞳はこの熱狂の渦の中でさえ一点の曇りもなく冷静にケイの姿を映していた。


彼女はこのアークシティにおいて極めて特殊な立場にあった。

彼女はエルフ族の代表でありながらその卓越した魔術の才能と何よりもその冷静沈着な判断力そして千年の歴史の中で培われた高度な知識によってケイの個人的な相談役としても機能していた。

ゴブリン・スタンピードの防衛戦。

そして王国軍との独立戦争。

その二つの大きな戦いにおいて彼女がもたらした勝利への貢献はガロウやドゥーリンにも決して引けを取るものではなかった。

議場に集う全てのリーダーたちがそのことを理解していた。

そして彼女にどのような重責が与えられるのかを固唾を飲んで見守っていた。


ケイはそのエリアーデへと向き直った。

その青い瞳にはガロウやドゥーリンに向けたそれとはまた違う深い敬意とそして一人の技術者エンジニア仲間としての絶対的な信頼の光が宿っていた。


「エリアーデ・ウィンドソング殿」

ケイの静かな声が響く。

「あなたにはこのアーク連邦の国家運営の中枢を担う二つの重要な役職を兼任してもらいたい」


二つの役職。

その言葉にエリアーデの美しい眉がかすかに動いた。


ケイは続けた。

「一つは新設する『魔術師団』の初代団長だ」

彼は黒板に五省とは別の独立した組織図を描き加えた。

「アークシティの魔法技術は今あなたの一人の才能に依存している極めて脆弱な状態にある。……このアンバランスを解消し組織として魔法技術を研究し発展させそして後進を育成する専門機関が必要だ。……あなたにはその初代団長としてこの国の全ての『魔法』というリソースを管理統括してもらいたい」


その提案。

それはエリアーデにとってまさに望んでいたものであった。

彼女もまた自らの知識を継承する弟子がいないことを深く憂慮していたのだ。

だがケイの提案はそれだけでは終わらなかった。


「そしてもう一つ」

ケイの声のトーンが少し重くなった。

「あなたには僕最高指導者を直接補佐する『宰相補佐官(Aide to the Chancellor)』の地位に就任してもらいたい」


宰相補佐官。

その聞き慣れないしかし明らかに国家の中枢に関わる響き。

議場がざわめいた。


ケイはそのざわめきを制するように説明を続けた。

軍務大臣ガロウは国の盾。工務大臣ドゥーリンは国の槌だ。……だが国家の運営にはそれだけでは足りない。……時には盾や槌では解決できない繊細な問題が山積みになる。……例えば『外交』だ」


彼は地図の上に広がるアーク連邦以外の国々を指し示した。

「僕たちはいいずれリオニス王国だけでなく他の全ての国家と対峙しそして交渉していかなければならない。……その時必要なのはガロウの腕力でもドゥーリンの頑固さでもない。……相手の意図を正確に読み解き言葉と論理を武器に我々の国益を守り抜く冷静な『知性』だ」


彼の視線がエリアーデを射抜く。

「そしてその重責を担えるのはこの都市広しといえどもあなた一人しかいない。……エルフ族として培ってきたその悠久の知識と精霊と対話することで培われたその鋭敏な洞察力。……それこそが僕がそしてこの国が最も必要としている才能なんだ」


それは彼女の能力に対する最大級の評価。

そして彼女を自らの最も近くに置き政治の中枢を共に担ってほしいという絶対的な信頼の表明だった。


エリアーデは静かに目を閉じた。

彼女の胸の中に様々な感情が渦巻いていた。

長老の期待を裏切りこの森を出てきたあの日。

彼女は自らの選択が正しかったのかどうかずっと悩み続けていた。

だが今目の前のこの小さなリーダーは彼女のその決断を遥かに超える大きな大きな役割を与えようとしている。

それは彼女の想像を超えた重責。

だがそれと同時に。

彼女の知的好奇心とそしてこの規格外のリーダーと共に新しい歴史を創り上げたいという強い想いをこれ以上なく刺激するものでもあった。


やがて彼女はゆっくりと目を開けた。

その翡翠の瞳にはもはや一切の迷いはなかった。

そこにあるのは自らの運命を受け入れそしてこの国の未来をその両肩に背負う覚悟を決めた宰相補佐官としての誇り高い光だけだった。


「――拝命いたしますケイ様」

彼女はその場に優雅に立ち上がるとエルフ族の最も丁寧な礼法でその小さな主君に頭を下げた。

「このエリアーデ・ウィンドソング。……我が知識と魔力の全てを捧げあなたそしてアーク連邦の道標となることを精霊の名において誓います」


そのあまりにも美しくそしてあまりにも力強い誓いの言葉。

議場は三度割れんばかりの拍手と歓声に包まれた。

『軍』のガロウ。

『工』のドゥーリン。

そして『知』のエリアーデ。

アーク連邦の屋台骨を支える三本の巨大な柱が今確かに打ち立てられた瞬間だった。

ケイはその最強のドリームチームの誕生を静かにそして誇らしげに見つめていた。

だが彼の組閣はまだ終わってはいなかった。

彼の視線は最後に議場の片隅でその全ての光景を息を殺して見守っていた一人の銀髪の少女へと向けられていた。

彼にとって最初のそして何よりも大切なパートナーへと。

最後までお読みいただきありがとうございます!

ついにエリアーデの役職も決定しました!

『宰相補佐官』兼『魔術師団長』。

ケイの右腕として政治と魔法の両面で彼女の活躍が期待されますね。


さて残るは一人。

我らがメインヒロイン、ルナリア・シルヴァームーン。

彼女はこの新しい国家でどのような役割を担うのでしょうか。

次回ついに彼女のためのそして彼女にしかできない最も重要な役職が発表されます。

どうぞご期待ください。


「面白い!」「エリアーデかっこいい!」「宰相補佐官似合いすぎ!」など思っていただけましたらぜひブックマークと↓の☆☆☆☆☆での評価をお願いいたします。皆様の応援がアーク連邦の最後の閣僚を誕生させる力となります!

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