第126節:五省の大臣
いつも『元・社畜SEの異世界再起動』をお読みいただき誠にありがとうございます。
第六巻『アーク連邦建国』編その第三章『国家の設計図』もいよいよ佳境です。
前回アーク連邦の政治体制の根幹が定まりました。ケイを終身の最高指導者とししかしその権力は法と議会によって厳しく監視されるという先進的なシステムです。
今回はその国家を動かすためのエンジンとなる『五省』の設立とその最初の閣僚たちの任命が行われます。
ケイの最も信頼する仲間たちがついにその重責を担う歴史的な瞬間。
それでは第百二十六話お楽しみください。
アークシティ最高評議会の熱気はまだ冷めやらない。
ケイが自らの権限に厳格な制約を課すことを自ら提案したその衝撃。そしてガロウの「死ぬまで馬車馬」という絶妙なツッコミによって議場は一種の興奮とそして絶対的な信頼感に包まれていた。
彼らの小さなリーダーは決して自分たちを裏切らない。その確信がこの新しい国家の何よりも強固な礎石となった。
ケイはその温かい空気の中で咳払いを一つした。
「……さて。……僕の雇用契約が終身雇用でブラック企業並みだということが確定したところで」
その自虐的なジョークに議場からどっと笑いが起こる。
「……次の議題に移る。……国家という巨大なシステムを動かすためのエンジン。……『行政機関』の設立についてだ」
彼は黒板に彼がグランドデザインの中で示した五つの箱を再び描き出した。
『軍務省』
『工務省』
『法務省』
『内務省』
『財務省』
「昨日も説明した通りアーク連邦の行政はこの五つの専門分野の省庁によって分担実行される。……そして今日はこの国家の心臓部とも言える二つの省の初代大臣を正式に任命したい」
その言葉に議場が再び静まり返る。
初代の大臣。
この国家の歴史に最初にその名を刻む栄誉。
誰もが固唾を飲んでケイの次の言葉を待っていた。
ケイはまずその視線を自らの右腕でありこの都市の全ての戦士たちの頂点に立つ狼の戦士長へと向けた。
その視線には絶対的な信頼とそして共に死線を潜り抜けてきた戦友への敬意が込められていた。
「――初代軍務大臣」
ケイの静かな声が響く。
「ガロウ・アイアンファング」
その名が呼ばれた瞬間。
ガロウはまるで雷にでも打たれたかのようにその巨大な身体を硬直させた。
彼の黄金色の瞳が信じられないというように大きく見開かれている。
「……お、俺が……?
……大臣だと……?」
そのあまりにも素直な驚き。
議場からくすくすと温かい笑いが漏れた。
「当たり前だ!」
「ガロウ様しかいねえ!」
狼獣人の若い戦士たちからやんやの喝采が飛ぶ。
「……静かに」
ケイはその喝采を手で制した。
「ガロウ。……君にはこのアーク連邦の全ての『力』を委ねる。……軍隊の統率国家の防衛兵器の開発と管理そして斥候部隊警備隊との連携。……その全ての責任を君に担ってもらう。……それはこの国家の存亡そのものを左右する最も重い任務だ。……君のその圧倒的な武勇とそして何よりも仲間を守るというその熱い魂を僕は信じている。……引き受けてくれるな?」
そのあまりにも真っ直гуでそしてあまりにも重い信頼の言葉。
ガロウは自らの心臓がその鋼鉄の胸当ての中で激しく高鳴るのを感じていた。
故郷を失い、ただ復讐のためだけに生きてきた自分が。
今何百という仲間たちの命と未来を守るための「盾」として正式に選ばれたのだ。
これ以上の名誉があるだろうか。
彼はゆっくりと立ち上がった。
そしてその岩塊のような拳で自らの胸を力強く叩いた。
それは狼獣人族の最大の敬意と誓いの証。
「……大将。……あんたが俺に預けてくれるんなら……このガロウ・アイアンファング!
この命この魂その全てを賭けて!
……必ずやこのアーク連邦を守り抜いてみせるぜ!」
その魂の咆哮。
議場は割れんばかりの拍手と歓声に包まれた。
初代軍務大臣の誕生の瞬間だった。
ケイはその熱狂が収まるのを待つと次に議場のもう一方の端で腕を組み退屈そうに座っている一人の無骨な職人へとその視線を移した。
その視線には先ほどのガロウへのそれとは全く違う……どこかやれやれと言ったしかし同じくらい深い信頼の色が浮かんでいた。
「――そして初代工務大臣」
ケイの声が再び響く。
「ドゥーリン・ストーンハンマー」
「……フン。……分かりきったことを」
ドゥーリンはその白い髭の奥で当たり前だと言わんばかりに鼻を鳴らした。
議場が再び温かい笑いに包まれる。
この都市の驚異的な発展がこの頑固なドワーフの神業によって支えられていることを知らない者は一人もいなかったからだ。
ケイはその伝説の工匠に語りかけた。
「ドゥーリン殿。……あなたにはこのアーク連邦の全ての『未来』を委ねる。……このアークシティの建設インフラの整備そして何よりもこの国の技術の全てを司る重責だ。……あなたのその神の御業とそして決して妥協を許さない職人の魂がなければ僕の描くこの理想郷はただの砂上の楼閣で終わってしまう。……この国を大陸一の技術大国へと押し上げるその途方もない仕事を引き受けてはもらえないだろうか?」
そのあまりにも壮大でそして彼の職人としてのプライドをこれ以上なくくすぐる言葉。
ドゥーリンはその黒い瞳をしばたたかせた。
そして彼はゆっくりと立ち上がるとその短いしかし誰よりも力強い腕を組んだ。
「……小僧。……一つ訂正だ」
「……なんだドゥーリン殿」
「……大陸一だと?
……生ぬるいわ」
彼はその白い髭の奥でにやりとこの世の何よりも恐ろしくそして何よりも頼もしい笑みを浮かべた。
「……神々の領域だ。……わしが創り上げるのはかつて神々が住んでいたというあの古代魔法文明さえも凌駕する究極の工業国家よ。……その手伝い……このドゥーリン・ストーンハンマーが退屈しのぎにやってやらんでもないわい!」
そのあまりにもドワーフらしいそしてあまりにも力強い承諾の言葉。
議場は三度割れんばかりの拍手と歓声に包まれた。
このアーク連邦という新しい国家の最も重要な二つの柱。
『軍事』と『工業』。
その礎が今確かに打ち立てられた瞬間だった。
ケイはその二人のあまりにも頼もしすぎる仲間たちの姿を満足げに見つめていた。
プロジェクトは今最も信頼できる二人の部門長を得てその成功確率をまた一段階引き上げた。
だが彼の組閣はまだ終わってはいなかった。
最後までお読みいただきありがとうございます!
ついにアーク連邦の最初の大臣が任命されました!
『軍務大臣』ガロウそして『工務大臣』ドゥーリン。
これ以上ない最強の布陣ですね。彼らの力強い決意表明には胸が熱くなりました。
さて残るは三つの省。
そしてケイの傍らを固める二人の美しいヒロインたち。
次回は彼女たちのうちの一人エルフの才女エリアーデにスポットライトが当たります。
彼女に与えられるその重要な役割とは。
どうぞご期待ください。
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