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第124節: 国家の設計図(グランド・デザイン)

いつも『元・社畜SEの異世界再起動』をお読みいただき誠にありがとうございます。 第六巻『アーク連邦建国』編その第四話となります。


前回ケイは「王にはならない」と宣言し『アーク連邦』という法の下に各種族が対等に参加する新しい国家の形を示しました。 その理想は亜人たちの過去のトラウマを見事に払拭しました。 今回はその理想の国家を動かすための具体的な組織図。 ケイの最も信頼する仲間たちがそれぞれこの新しい国の重責を担います。 それでは第百二十四話お楽しみください。

「――『アーク連邦』。……それが僕たちがこれから創り上げる新しい国家の名前だ」


ケイの静かなしかし絶対的な確信に満ちた宣言がアークシティ最高評議会の議場に響き渡った。 王がいない国。 法が全てを支配し全ての種族が対等にその運営に参加する連邦国家。 そのあまりにも先進的でそしてあまりにも彼らの理想を体現した国家の青写真。 リリナや他の亜人たちの長老たちの瞳に宿っていた疑念と不安の色は完全に消え失せていた。 代わりにそこには自分たちが今とんでもない歴史の創造に立ち会っているのだという畏怖とそして歓喜の震えが浮かんでいた。


「……大将……。……すげえじゃねえか……」 ガロウがその傷だらけの顔をくしゃくしゃに歪め心の底から感嘆の声を漏らした。 「……王様も貴族もいねえ。……ただ『法』の下にみんなが平等。 ……そんな国夢にも思ったことがなかったぜ……」


「フン。……小僧の大風呂敷は相変わらずだが」 ドゥーリンもまたその白い髭を扱きながら満足げに鼻を鳴らしていた。 「……気に入った。……わしらドワーフ族が人間の王にへこへこ頭を下げる必要がねえってことだろうが。……それならいくらでも力を貸してやるわい」


ケイはその仲間たちの力強い賛同に静かに頷いた。 そして彼は黒板の前に立つとその壮大な青写真をさらに具体的な組織図へと落とし込んでいく。 それは彼が前世のシステムエンジニアとして最も得意としていた作業。 複雑な要求仕様を機能的なモジュールへと分解しそしてそれらを一つの完璧なシステムとして再構築するアーキテクチャの設計だった。


「――まず国家の最高意思決定機関。……それはこの議場に集う我々『最高評議会』だ」 彼は黒板の最上部に大きな四角を描いた。 「この評議会がアーク連邦の唯一の立法機関となる。……アーク憲章に基づきこの国を治めるための全ての法律を創り改正しそして廃止する権限を持つ。……そしてその構成員はこの都市に住む全ての種族からその人口比に応じて選出された代表者たちだ。……これによりいかなる大種族も小種族の声を無視することはできない」




そのあまりにも公平な議会制度の設計。 蜥蜴人や鳥人といった少数派の長老たちが感謝と感動に目を見開いた。


「次にその評議会が決めた法律を実行するための機関。……それが『行政』だ」 彼は評議会の下に線を引きそこから五つの箱をぶら下げた。 「国家の運営は複雑だ。その機能を専門分野ごとに分割しそれぞれに責任者を置く。……僕はこれを『五省』体制と名付けた」


彼はその五つの箱に一つずつ名前を書き込んでいく。 『軍務省』――国家の防衛と軍事の全てを司る盾と剣。 『工務省』――都市のインフラ整備と技術開発を担う国の心臓。 『法務省』――制定された法律を管理し警備隊を統括し司法を支える秩序の番人。 『内務省』――住民の戸籍管理教育そして医療・衛生を担当する国民の生活の基盤。 『財務省』――国家の予算を管理し税を集めそして交易を推進する国の血液。


そのあまりにも機能的でそして洗練された中央政府の組織図。 リーダーたちはもはや感嘆の息さえ忘れてその完璧な設計に見入っていた。


「そして最後に……僕自身だ」 ケイはその五省のさらに上にしかし最高評議会の下位に小さな円を描いた。 「僕は王ではない。……僕はこの行政五省を統括し最高評議会が決めた法律と予算に基づいて国家を運営するただの実務責任者だ。……いわばこのアーク連邦という巨大なプロジェクトのプロジェクトマネージャーであり最高経営責任者(CEO)に過ぎない」 彼はその円にこう書き加えた。 『最高指導者プレジデント


立法は民の代表である評議会が。 行政は実務の専門家であるケイと彼が任命する大臣たちが。 そしてその全てが『アーク憲章』という法の下にある。 権力は分散され互いに監視し合う。 それはガロウたちが恐れていた「王」という名の絶対的な独裁者が生まれる余地をシステムとして完全に排除した完璧な設計図だった。


「……すげえ……」 ガロウの口から心の底からの声が漏れた。 「……これなら文句のつけようがねえ。……あんたが王になるんじゃねえ。……俺たち全員がこの国の王になるってことか」


「その通りだガロウ」 ケイは静かに頷いた。 「……これが僕が創り上げたい『アーク連邦』の全貌だ。……この青写真に賛同してくれるか?」


その問いに答えは必要なかった。 議場にいた全てのリーダーたちが一斉に立ち上がりその小さなしかし偉大なリーダーへと最大級の敬意と賛同を示す拍手を送っていた。 それは一つの国家がその魂の形を得た瞬間だった。

最後までお読みいただきありがとうございます!


ケイが提示した新しい国家の設計図。 『アーク連邦』そして王のいない法治国家の理念。 その壮大なビジョンがついに全ての仲間たちの心を一つにしました。 ガロウの「俺たち全員が王になる」という解釈も熱かったですね。


さて国家の青写真は描かれました。 次回はいよいよその最も重要な各省の大臣を任命する組閣の物語。 ケイの仲間たちがそれぞれどのような重責を担うことになるのか。 第六巻の一つのクライマックスです。 どうぞご期待ください。


「面白い!」「アーク連邦最高!」「ケイの設計完璧すぎる!」など思っていただけましたら是非ブックマークと↓の☆☆☆☆☆での評価をお願いいたします。皆様の応援がアーク連邦の最初の礎石となります!

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