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第123節: 新たな王の誕生?

いつも『元・社畜SEの異世界再起動』をお読みいただき誠にありがとうございます。 第六巻『アーク連邦建国』編その第三話となります。


前回ケイはリオニス王国という巨大な脅威に対抗するためアークシティを「国家」へと昇格させるというあまりにも壮大な提案を行いました。 絶望的な未来予測を突きつけられたリーダーたちはその唯一の活路に賭けるしかありません。 今回はその新しい国家の具体的な「設計図」がケイの口から語られます。しかしそこには亜人たちのトラウマを刺激する大きな問題が横たわっていました。 それでは第百二十三話お楽しみください。

「――我々もまた『国家』となるんだ」


ケイのその静かなしかし絶対的な意志を宿した宣言はアークシティ最高評議会の重苦しい空気を一変させた。 絶望ではない。 かといって安易な希望でもない。 それは自分たちが今とんでもない歴史の岐路に立たされているのだという厳粛な緊張感だった。 千の正規軍を退けたという現実。 そしてその何十倍もの軍勢がいつ再び攻めてきてもおかしくないという現実。 その二つの現実を前にしてもはや「ただの村」として生きていくという選択肢は消え失せていた。


「……国家か」 ガロウがその傷だらけの顔に複雑な笑みを浮かべて呟いた。 「……へっ。……面白え。……あの人間の王様と同じ土俵に立つってわけだな。……いいぜ大将。……乗ってやるよその狂った博打に」


彼のその言葉は狼獣人族の総意だった。 戦うと決めた以上中途半端な覚悟ではいられない。


「うむ。……わしらドワーフも異論はないわい」 ドゥーリンもまたその白い髭を扱きながら頷いた。 「どうせやるなら中途半端は好かん。……やるならあのリオニス王国の王城よりもでかくそして頑丈な国を創ってやろうではないか」


エリアーデもまた静かにその翡翠の瞳を伏せた。 「……私も賛成します。……いえそれしか私たちが生き残る道はないのでしょう。……ケイの示す未来にエルフ族の全てを賭けます」


ケイの最初の仲間たち。 彼らは皆そのリーダーの真意を理解し即座に賛同を表明した。 だが問題はそこからだった。


「……お待ちください」 静かにしかし凛とした声が響いた。 声の主はリリナ・テールウィップ。猫獣人族の若きリーダーだった。 彼女はケイの忠実な側近でありその能力を誰よりも信奉していた。 だがその彼女の金色の瞳には今これまでケイに向けたことのない深い懸念とそしてかすかな怯えの色が浮かんでいた。


「……ケイ様。……『国家』を創るとおっしゃいますと。……それはつまり……ケイ様が私たちの『王』になられるということですか……?」


その問い。 それはこの議場に集まった全ての亜人たちの心の最も深い傷に触れる言葉だった。 王。 その言葉が彼らに連想させるのはギュンター辺境伯やリオニス王国の王のような絶対的な支配者。 民を家畜と見下しその気まぐれ一つで命さえも奪う理不尽な権力の象徴。


リリナのその震える声に他の新しくアークシティに加わった種族の長老たちも次々と同調した。 「そそうだ……!」 蜥蜴人の長老がその爬虫類特有の低い声で言った。 「我ら蜥蜴人族は人間の王に仕えそして裏切られこの土地に追いやられた……。……もう二度と誰かの奴隷になるのはごめんだ……」 「私たち鳥人ハーピィも同じです!」 鳥人の女性リーダーが甲高い声で叫んだ。 「自由な空を奪われ籠の中の鳥として生きるくらいなら……戦って死んだ方がマシです!」


議場の空気が一変した。 ケイに対する絶対的な信頼は揺らいでいない。 だが彼がなろうとしている「王」というシステムそのものに対する根源的なアレルギー反応。 それは彼らがその魂に刻み込まれた拭い去ることのできないトラウマだった。


「……大将……」 ガロウが焦ったようにケイを振り返る。 このままではせっかく一つになりかけた心がバラバラになってしまう。


だがケイは冷静だった。 それどころか彼の青い瞳にはその反応さえも完全に予測していたかのような静かな光が宿っていた。 彼はゆっくりと立ち上がった。 そして不安と疑念に揺れる仲間たちの顔を一人一人見渡しながら静かにしかしきっぱりと宣言した。


「――僕は王にはならない」


そのあまりにも明確な否定の言葉。 議場が再び静まり返る。 リリナや他の長老たちが困惑したようにケイの顔を見つめていた。


「……でですがケイ様……。……国家には王が必要なのでは……?」


「誰がそんな古い仕様システムを決めた?」 ケイは静かに問い返した。 「……君たちが恐れているのは『王』という名前ではない。……一人の人間に全ての権力が集中しその一人の意志が全ての民の意志を踏みにじる『独裁』というシステムそのものだ。……違うか?」


その本質を突いた言葉。 リリナたちははっとしたように頷いた。


「ならば答えは簡単だ」 ケイは黒板の前に立つとそこにアークシティの全ての住民がその理念を共有したあの言葉を書き出した。 『アーク憲章』。 「僕たちの国を治めるのは王ではない。……この『法』だ。 ……僕が創り上げようとしているのは人治国家ではない。……『法治国家』だ」





彼は続けた。 「そして君たちが懸念する権力の集中。……それを防ぐためのシステムも既に設計してある。……僕が提案するのは一人の王が全てを支配する『王国』ではない。……このアークシティに集った全ての種族が対等な立場で参加しそして互いを尊重し合う……全く新しい国家の形」


彼は黒板にその新しい国家の名前を力強く書き記した。


「――『アーク連邦』」


その輝かしい響き。 「連邦。……それは僕たち一人一人が自らの種族の誇りを失うことなくしかし一つの大きな理想の下に結びつく『約束』の名前だ」


彼はその連邦国家の具体的な構想を語り始めた。 それは彼がこの三日間練り上げてきたアーク憲章のさらにその先にある国家のグランドデザインだった。 「僕たちの国は王が支配するのではない。……僕たち市民全員で運営するんだ」


そのあまりにも先進的でそしてあまりにも理想に満ちた国家の形。 リリナも他の長老たちももはや言葉を失っていた。 彼らが抱いていた不安は完全に消え失せていた。 代わりにそこにあったのは自分たちが今この瞬間に とんでもない歴史の創造に立ち会っているのだという畏怖とそして歓喜の震えだけだった。

最後までお読みいただきありがとうございます!


「王にはならない」 ケイのその力強い宣言。 そして彼が提示した新しい国家の形……『アーク連邦』。 それはこの異世界においてあまりにも革命的な思想でした。 亜人たちのトラウマを見事に乗り越え彼らの心を再び一つにしましたね。


さて国家の理念と名前は決まりました。 次回はいよいよその国家を動かすための具体的な組織図。 『最高評議会』と『五省』の設立が語られます。 ケイの仲間たちがそれぞれどのような重要な役職に就くのか。 第六巻の一つのクライマックスです。 どうぞご期待ください。


「面白い!」「王なき国家!」「アーク連邦爆誕!」など思っていただけましたら是非ブックマークと↓の☆☆☆☆☆での評価をお願いいたします。皆様の応援がアーク連邦の最初の礎石となります!

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