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第117節:エマージェンシーアタック:奇襲

いつもお読みいただき、ありがとうございます!皆様のブックマーク、評価、そして温かい感想の数々が、吹雪の中のフロンティア村を照らす、何よりの力となっております。


前回、ケイの「プロジェクト・ディフェンス」が発動。アークシティは一つの巨大な要塞と化し、その初日が暮れようとしています。しかし、本当の戦いはこれから。リーダーであるケイが下した、あまりにも危険な決断。その成否は、仲間との絆、そして、リーダー自身の覚悟に懸かっていました。


物語は、雌雄を決する最終局面へと突入します。どうぞ、お見逃しなく。

深夜二時。天が、地に牙を剥くかのような猛吹雪。

エリアーデ・ウィンドソングが、その魂の全てを賭して紡ぎ出した大魔術『冬の夜の夢』は、千の王国軍を、狂乱と混沌の悪夢の底へと叩き落としていた。幻影の魔獣に怯え、味方同士で刃を交える兵士たちの絶叫が、吹雪の轟音に混じって、地獄の合唱のように響き渡る。


その、狂乱の舞台の、ど真ん中を。

五つの、黒い影が、まるで、存在しないかのように、滑るように、突き進んでいた。

彼らは、悪夢の中を駆ける、唯一、正気の死神。

アークシティの、存亡を賭けた、特別攻撃隊ストライクチーム


「――目標、前方二百メートル!」

ケイの、魂に直接響く、冷静な指示コマンド

先頭を行くリリナの、猫のようにしなやかな身体が、音もなく、補給物資の木箱の影から、次の影へと、躍る。彼女の、優れた五感は、エリアーデが生み出した、幻影のノイズの中から、本物の、敵兵の気配だけを、正確に、フィルタリングしていた。


左右を固めるのは、ガロウが、自らの、牙として、絶対の信頼を置く、二人の狼獣人、ハクとシン。彼らは、幻影に惑わされることなく、正気を保っている、ごく僅かな、歴戦の哨兵を、その手に持つ、黒色鋼のダガーで、音もなく、闇へと葬り去っていく。その動きには、一切の、無駄も、躊躇もない。ただ、リーダーが示した、最短ルートを、切り拓くためだけの、冷徹な、アルゴリズム。


そして、その、死の五角形の、中心に、ケイがいた。

彼の《アナライズ》は、もはや、個々の兵士の、ステータスなど、見てはいなかった。彼の視界には、この、戦場全体が、一つの、巨大な、システムとして、俯瞰されていた。エリアーデの、魔力残量。敵の、混乱の、伝播速度。そして、自分たちの、任務達成までの、残り時間。その、全ての、パラメータを、リアルタイムで、解析し、最適解を、導き出し続ける。


やて、彼らの、目の前に、その、目的地が、姿を現した。

黄金の、獅子の紋章が、風に、はためく、ひときわ、巨大で、豪奢な、天幕。

ギュンター・フォン・ロックウェル辺境伯の、本陣。

その、周囲だけは、悪夢の、影響を、最小限に、留めていた。屈強な、十数名の、騎士たちが、円陣を組み、その、分厚い、鋼鉄の鎧と、巨大な、塔のタワーシールドで、主君の、寝所を、鉄壁の如く、守り固めている。彼らは、辺境伯が、その、財力の、全てを、注ぎ込んで、集めた、私兵の中の、私兵。エリート中の、エリートだった。


「……さすがに、こいつらは、幻術だけでは、騙しきれんか」

物陰に、身を潜めながら、ガロウが、その、黄金色の瞳を、好戦的な光で、ぎらつかせ、唸った。

「……どうする、大将。……正面から、ぶち破るか?」


「いや」

ケイは、静かに、首を横に振った。

「時間は、ない。……最も、効率的な、方法を、選ぶ」


彼は、静かに、右手を、上げた。

その、小さな、手のひらに、蒼い、魔力の光が、収束していく。

それは、彼が、この、作戦のために、温存し続けてきた、最後の、魔力だった。

《クリエイト・マテリアル》。

彼が、生成したのは、武器ではない。

それは、かつて、アーマー・ボアとの、死闘の際に、使用した、あの、無色透明の、液体。

『高粘度潤滑オイル』。


『――リリナ。風上に、回れ。……ハク、シン。左右に、展開。……ガロウ。……僕の、合図と、同時に、突っ込め』

彼の、思考が、飛ぶ。

仲間たちは、言葉を交わすことなく、その、意図を、完全に、理解した。


ケイは、静かに、その、オイルを、騎士たちの、足元、風上の、雪の上へと、広範囲に、生成した。それは、闇と、吹雪の中で、完璧な、見えざる、罠となった。

そして、彼は、リリナに、合図を送る。

リリナが、風上から、一つの、小さな、煙玉を、投げ込んだ。それは、ただの、煙玉ではない。ルナリアが、特別に調合した、狼獣人族の、嗅覚さえも、一時的に、麻痺させる、強烈な、刺激臭を、放つ、特殊な、煙幕だった。


「な、なんだ、この匂いは!?」

「くそっ、目が、鼻が……!」


騎士たちの、陣形が、一瞬、乱れる。

その、コンマ数秒の、隙。

それこそが、ケイが、作り出した、唯一の、勝機だった。


「――行けェッ!!!!」


ケイの、絶叫が、響き渡る。

その、声よりも、速く。

一つの、巨大な、黒い、獣の影が、闇の中から、躍り出ていた。

ガロウ・アイアンファング。

彼は、もはや、人の形を、していなかった。

それは、解き放たれた、怒りと、闘争本能の、化身。

その、両の手には、ドゥーリンが、彼のためだけに、鍛え上げた、二本の、巨大な、黒色鋼の、戦斧バトルアックスが、握りしめられている。


「ぐおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!!」


狼の、魂の、咆哮。

騎士たちが、はっと、我に返り、盾を、構えようとする。

だが、遅い。

彼らの、足元の、地面が、ぬるり、と、滑った。

鋼鉄の、ブーツが、摩擦力を、失い、屈強な、騎士たちの、屈強な、下半身が、面白いように、バランスを、崩していく。


その、無防備な、鋼鉄の、塊の、群れの中に。

ガロウという、死の、旋風が、叩き込まれた。

それは、もはや、戦闘ではなかった。

一方的な、解体作業。

鋼鉄の、戦斧が、唸りを上げて、閃くたびに、分厚い、プレートメイルが、まるで、熟れた、果実のように、たやすく、断ち切られ、その、中身の、生々しい、赤色を、吹雪の中に、撒き散らしていく。


「ひ、ひいいいっ!」

「ば、化け物……!」


騎士たちの、悲鳴。

彼らは、その、短い、エリートとしての、生涯で、初めて、理解した。

自分たちが、これまで、獣と、見下し、狩りの、対象としてしか、見てこなかった、存在の、その、本当の、恐ろしさを。

それは、文明の、鎧を、纏った、人間などでは、決して、太刀打ちできない、純粋な、そして、絶対的な、自然の、暴力そのものだった。


その、地獄絵図の、中で。

ハクと、シンが、左右から、舞うように、駆け抜ける。

彼らの、仕事は、ガロウが、取りこぼした、獲物の、首を、確実に、刈り取ること。

リリナは、木箱の、影から、正確無比な、投擲で、騎士たちの、体勢を崩し、ガロウたちのための、アシストを、続ける。


そして、ケイは。

その、血と、鉄の、狂想曲の、中心で、ただ、静かに、立っていた。

彼の、仕事は、終わった。

あとは、この、最高の、仲間たちが、最高の、舞台で、最高の、パフォーマンスを、発揮するのを、見届けるだけ。

彼は、その、小さな、唇の端に、満足げな、笑みを浮かべると、ゆっくりと、主を失った、巨大な、天幕へと、その、歩みを、進めた。

その、向こう側で、まだ、何が起こったのか、理解できずに、ただ、震えているであろう、この、全ての、悲劇の、元凶と、対峙するために。

最後までお読みいただき、ありがとうございます!

ついに、ケイたちの、奇襲作戦が、始まりました。

エリアーデの、壮大な、幻惑魔法。そして、その、混乱の中を、完璧な、連携で、突き進む、ケイたちの、精鋭部隊。

そして、ついに、ガロウの、鋼の牙が、辺境伯の、親衛隊に、襲いかかりました。

手に汗握る、展開でしたね。


さて、ついに、彼らは、敵将の、目前へと、たどり着きました。

次回、いよいよ、ケイと、ギュンター辺境伯が、直接、対峙します。

子供と、侮る、傲慢な、支配者に、我らが、プロジェクトマネージャーが、どのような、絶望を、見せつけるのか。

絶対にお見逃しなく!


「面白い!」「奇襲作戦、痺れた!」「ガロウ、最強!」など、思っていただけましたら、ぜひブックマークと、↓の☆☆☆☆☆での、評価を、お願いいたします。皆様の応援が、ガロウの、戦斧の、切れ味を、さらに、高めます!


次回もどうぞ、お楽しみに。

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