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第109節: 破城槌と魔法の盾

いつも『元・社畜SEの異世界再起動』をお読みいただき、誠にありがとうございます。

年の瀬も迫る中、アークシティの物語は、ますます熱を帯びてまいりました。


前回、アークシティの圧倒的な防衛力の前に、辺境伯軍は手も足も出ませんでした。しかし、追い詰められた獅子は、最も卑劣な牙を剥きます。禁断の古代兵器。その絶望的な一撃に対し、我らがリーダー、ケイが用意していた、最後の、そして最強の切り札が火を噴きました。


今回は、その激戦の、続き。息をもつかせぬ、攻防の応酬。どうぞ、お楽しみください。

「――撃て(ファイア)」


ケイの、神の如き宣告が、アークシティの魂に響き渡った、その刹那。

世界は、白に染まった。

都市の中心、庁舎の尖塔から放たれた、一条の蒼い閃光『神のトール・ハンマー』。それは、夜の闇を、昼間の光さえも凌駕する、絶対的な輝きで、切り裂いた。

その光は、音もなく、しかし、抗いようのない、絶対的な速度で、飛来する漆黒の死の星――『暗黒物質弾ダーク・マター』を、その中心で、貫いた。


一瞬の、静寂。

そして、次の瞬間。

夜空に、二つ目の、太陽が、生まれた。

蒼い光と、黒い闇が、激突し、互いを、喰らい合い、そして、消滅していく。凄まじい、エネルギーの嵐が、衝撃波となって、天蓋を揺るгаした。だが、その、破壊の奔流は、アークシティの、遥か、上空で、完全に、相殺され、地上には、ただ、美しい、光の粒子が、雪のように、舞い落ちてくるだけだった。


だが、その、神々の戦いのような、光景の、本当の、恐ろしさは、その、後に、訪れた。

蒼い閃光は、その、勢いを、止めることなく、直進し、王国軍の、本陣、その、ど真ん中を、正確に、撃ち抜いたのだ。

禁断の、古代兵器『魔力増幅炉』。その上で、呆然と、立ち尽くす、狂気の、魔術師。そして、その、さらに背後で、信じられない、という、絶望の表情を浮かべた、ギュンター・フォン・ロックウェル辺境伯。

その、全てを、まとめて、飲み込んで。

後に、残されたのは、耳を、つんざくような、静寂と、そして、大地に、深々と、刻まれた、一本の、巨大な、ガラス状の、亀裂だけだった。


「…………」


アークシティの、城壁の上で、その、あまりにも、非現実的な、光景を、目の当たりにした、三百の、戦士たち。

彼らは、誰一人、声を発することが、できなかった。

ただ、呆然と、自分たちの、リーダーが、今、しでかした、とてつもない、神の、御業を、見つめていた。

それは、もはや、人間の、戦争ではなかった。


だが、その、神々の、戦いが、終わった、後。

戦場には、まだ、五百を超える、人間の、兵士たちが、残されていた。

総大将を、失い、最後の、切り札を、失った、彼ら。

その、心に、宿ったのは、恐怖。そして、混乱。

だが、彼らは、王国の、正規軍。その、誇りが、彼らに、無様な、敗走を、許さなかった。


「う、うおおおおおおおおっ!


怯むなァッ!


辺境伯閣下は、我らと、共にある!


敵の、首魁は、今、最大の、妖術を、放ち、無防備な、はずだ!


今こそ、あの、忌々しい、城門を、打ち破り、勝利を、掴むのだ!」


騎士団の、生き残りの、隊長であろう、男が、血を吐くような、絶叫を、上げた。

その、声に、我に返った、兵士たちが、最後の、闘志を、振り絞る。

そうだ。

敵は、たった、一人。

我らは、まだ、五百。

数では、我らが、上だ。


「破城槌を、前へ!


城門を、破壊しろ!」


炎上を、免れた、数基の、巨大な、破城槌が、再び、その、禍々しい、先端を、アークシティの、中央城門へと、向けた。

数十人の、兵士たちが、その、巨大な、丸太に、取り付き、地響きのような、掛け声と、共に、走り出す。

ゴウン、ゴウン、と、大地が、揺れる。

鋼鉄で、補強された、その、巨大な、質量が、絶対的な、破壊の、意志となって、城門へと、迫る。


「――来たか、ネズミどもが!」


城門の、上で、その、光景を、待ち構えていた、ドゥーリン・ストーンハンマーが、その、白い髭の奥で、獰猛に、笑った。

「小僧ども!


準備は、いいな!


わしの、最高傑作の、本当の、硬さを、あの、豚どもに、教えてやるわい!」


だが、その、ドゥーリンの、前に、静かに、一人の、エルフの、女性が、進み出た。

エリアーデ・ウィンドソング。

先ほどの、絶望的な、防衛戦で、全魔力を、使い果たし、その、美しい顔は、蒼白に、なっている。だが、その、翡翠の瞳には、アークシティの、魔術部の、最高責任者としての、揺るぎない、誇りの光が、宿っていた。


「……ドゥーリン殿。……ここは、私の、仕事です」

彼女は、静かに、そう言うと、城門の、真上に立ち、その、白く、美しい、両の手を、前へと、突き出した。

そして、彼女は、歌うように、囁いた。

それは、古代語で、紡がれる、守護の、呪文。


「――『風壁方陣エアロ・ファランクス』!」


彼女の、呼びかけに、応え、大気中の、風の精霊たちが、歓喜の、歌を、歌う。

城門の、前面に、無色透明の、しかし、絶対的な、防御力を持つ、風の、壁が、何層にも、何層にも、重ね合わされていく。

それは、ただの、壁ではない。

それは、迫り来る、物理的な、衝撃を、受け流し、いなし、そして、分散させる、柔らかな、しかし、決して、破られることのない、究極の、盾だった。


その、盾が、完成した、直後。

第一の、破城槌が、轟音と、共に、激突した。


ドッゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッ!!!!


凄まじい、衝撃。

だが、城門は、揺れなかった。

それどころか、破城槌の、先端が、風の壁に、触れた、瞬間。

その、圧倒的な、運動エネルギーは、まるで、柔らかな、綿に、吸い込まれるかのように、その、勢いを、殺され、そして、あり得ない、角度へと、捻じ曲げられ、逸らされていく。

破城槌を、押していた、兵士たちが、バランスを、崩し、次々と、将棋倒しになった。


「な、なんだと!?」

「攻撃が、当たらん!」


だが、王国軍は、怯まなかった。

第二、第三の、破城槌が、次々と、異なる、角度から、城門へと、叩きつけられる。

その、狂乱の、打撃の、応酬。

その、全てを、エリアーデは、ただ、一人、その、華奢な、身体で、受け止め続けた。


「……ぐっ……!」

彼女の、唇の端から、一筋の、赤い血が、伝う。

先ほどの、防衛結界の、維持と、この、連続する、防御魔法の、行使。

彼女の、魔力は、もはや、限界に、近づいていた。

だが、彼女は、退かない。

なぜなら、彼女は、信じていたからだ。

自分たちの、リーダーが、この、状況を、必ず、次の、一手で、覆してくれることを。


そして、その、信頼は、裏切られなかった。


中央見張り台の、司令塔。

ケイは、その、青い瞳を、細め、敵の、全ての、注意が、中央の、城門に、集中している、その、一点を、見極めていた。

(……今だ)


彼の、脳内で、次なる、コマンドが、実行される。

それは、この、都市の、設計段階から、あらかじめ、組み込まれていた、一つの、トリッキーな、隠し機能イースターエッグだった。


「――ガロウ。……聞こえるか」

彼の、魂の、通信が、都市の、西側の、城壁の、影で、息を殺して、待機していた、一人の、狼の、戦士長へと、届いた。

『……おうよ、大将。……いつでも、いけるぜ』

その、声は、獲物を、前にした、狩人の、歓喜に、打ち震えていた。


「――行け」


ケイの、その、たった一言。

それが、戦場の、全ての、空気を、再び、塗り替える、反撃の、狼煙となった。

最後までお読みいただき、ありがとうございます!


総大-将を、失いながらも、なお、最後の、猛攻を、仕掛けてくる、王国軍。

その、絶望的な、攻撃を、エリアーデが、その、身を、挺して、防ぎ止める。

そして、その、裏で、静かに、進められていた、ケイの、次なる、一手。

息を呑む、攻防戦でしたね。


さて、ついに、我らが、ガロウが、牙を、剥きます。

ケイが、仕掛けた、驚くべき、陽動作戦の、全貌とは。

次回、戦場の、空気が、一変します。

どうぞ、ご期待ください。


「面白い!」「エリアーデ、かっこいい!」「ガロウ、待ってた!」など、思っていただけましたら、ぜひブックマークと、↓の☆☆☆☆☆での、評価を、お願いいたします。皆様の応援が、エリアーデの、魔力を、回復させ、ガロウの、牙を、さらに、鋭くします!


次回もどうぞ、お楽しみに。

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