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第108節: 最後の切り札:卑劣なる魔術

いつもお読みいただき、ありがとうございます。

アークシティの、存亡を賭けた、独立戦争。その、初戦は、アークシティの、圧倒的な、勝利に、終わりました。


前回、ケイが、設計した、防衛システムが、その、真価を、発揮し、王国の、軍勢を、一方的に、蹂躙しました。

だが、追い詰められた、獅子は、このまま、黙って、引き下がるはずが、ありません。

今回は、辺境伯が、放つ、最後の、そして、最も、卑劣な、切り札。

それに対し、我らが、リーダー、ケイが、どう、立ち向かうのか。

息を呑む、攻防戦、第二幕です。

それでは、第百八話、お楽しみください。

「……馬鹿な……。……あり、えん……」


後方の、本陣。

その、安全な、場所から、一方的な、蹂躙の、光景を、眺めていた、ギュンター・フォン・ロックウェル辺境伯は、その、肥えた、顔を、蒼白にさせ、わなわなと、震えていた。

彼の、脳内では、目の前で、起きている、信じがたい、光景を、処理することが、できずにいた。

王国の、誇る、重装歩兵部隊が、謎の、火の玉によって、阿鼻叫喚の、地獄絵図を、繰り広げている。

自慢の、重装騎士団が、城門に、たどり着くことさえ、できずに、正体不明の、矢の、雨によって、次々と、馬から、射落とされていく。

わずか、半刻。

千の、大軍の、半数近くが、もはや、戦闘不能に、陥っている。

そして、何よりも、彼を、恐怖させたのは。

敵の、城壁には、傷一つ、ついていない、という、事実だった。


「……化け物め……。……あの、ガキ……。……一体、どんな、妖術を……」

彼の、脳裏に、あの、全てを、見透かすかのような、青い瞳が、蘇る。

恐怖。

彼が、この、人生で、初めて、味わう、純粋な、恐怖だった。


「か、閣下!


こ、このままでは、全滅、いたします!


い、一旦、兵を、引くべきです!」

側近の、騎士が、悲鳴のような、進言を、する。

だが、ギュンターは、もはや、正常な、判断力を、失っていた。

プライド。

支配者としての、彼の、肥え太った、プライドが、この、屈辱的な、敗走を、許さなかった。


「……黙れッ!」

彼は、叫んだ。

「……まだだ。……まだ、わしには、最後の、切り札が、残っておるわ……!」

彼は、陣幕の、奥に、控えさせていた、一人の、不気味な、ローブ姿の、男を、呼び寄せた。

その男は、王宮から、派遣された、軍属の、魔術師。

だが、その、本当の、顔は、禁断の、古代魔法を、研究する、狂気の、マッドサイエンティストだった。


「……やれ」

ギュンターは、短く、命じた。

「……あの、忌々しい、石垣を、……あの、生意気な、ガキの、頭上ごと、……木っ端微塵に、してくれるわ……!」


「……ククク。……お任せを、辺境伯閣下」

魔術師は、その、痩せこけた、顔に、歪んだ、笑みを浮かべ、一礼すると、陣幕を、後にした。

彼が、向かったのは、軍の、最後方。

そこに、巨大な、布で、覆われた、一つの、巨大な、荷車が、置かれていた。

彼が、その布を、剥ぎ取った、瞬間。

周囲にいた、兵士たちから、悲鳴が、上がった。


そこにあったのは、もはや、兵器ではなかった。

それは、悪意の、塊。

巨大な、黒曜石の、台座の上に、いくつもの、禍々しい、魔法陣が、刻まれ、その、中央には、巨大な、魔水晶が、埋め込まれている。

そして、その、魔水晶の、周囲には、……何人もの、生きた、人間が、鎖で、縛り付けられていた。

彼らは、この、戦争で、捕らえられた、亜人ではなく、王国の、罪人たちだった。

『魔力増幅炉』。

生きた、人間の、生命力を、強制的に、魔力へと、変換し、術者の、魔法を、何十倍にも、増幅させる、禁断の、古代兵器。


「さあ、始めようか。……人類の、叡智の、結晶を、あの、獣どもに、見せつけてやる……」

魔術師は、狂気の、笑みを浮かべ、その、装置の、上に、立った。

そして、彼は、詠唱を、始めた。

それは、ホブゴ-ブリン・シャーマンが、使った、ものとは、比較にならない、複雑で、そして、長大な、破壊の、呪文。

装置に、縛り付けられた、罪人たちが、苦悶の、叫びを、上げ、その、身体から、生命力が、急速に、失われていく。

彼らの、生命力は、魔力となり、魔水晶へと、注ぎ込まれ、そして、術者の、呪文を、恐るべき、破壊力へと、高めていく。

やがて、魔水晶の、先端に、一つの、小さな、黒い、点が、生まれた。

それは、瞬く間に、その、大きさを、増し、周囲の、光さえも、飲み込む、完全な、暗黒の、球体へと、姿を変えていった。

暗黒物質弾ダーク・マター』。

物質の、原子結合を、根底から、破壊し、全てを、塵へと、還す、究極の、対城兵器魔法。


その、あまりにも、禍々しい、魔力の、奔流。

それを、アークシティの、司令塔で、ケイは、即座に、感知していた。

彼の、《アナライズ》が、最大級の、警報を、発する。

『警告:規格外の、魔力収束を、検知。……エネルギー量、計測不能。……着弾した場合、半径、百メートル以内の、全ての、物質は、消滅します』


「……来たか。……最後の、一手」

ケイは、静かに、呟いた。

彼の、シミュレーションの中でも、最も、発生確率が、低く、そして、最も、被害が、甚大になる、最悪の、シナリオ。

それが、今、現実のものと、なろうとしていた。


「――エリアーデ殿!」

ケイの、魂の、通信が、飛ぶ。

都市の、中心で、防衛結界の、維持に、努めていた、エルフの、姫君へと。

『……聞こえるか。……敵の、最大戦力が、来る。……あなたと、魔術部の、全ての、魔力を、結界の、一点に、集中させろ。……耐えられるか?』


返ってきたのは、エリアーデの、凛とした、しかし、どこか、苦しげな、声だった。

『……ケイ。……無理です。……この、魔力量は、異常です。……たとえ、私たちが、全魔力を、注ぎ込んでも、結界は、おそらく、十秒と、保たない……』


その、絶望的な、報告。

だが、ケイは、冷静だった。

「……十秒、か。……いや、……五秒で、いい」

『……え?』

「五秒だけ、稼いでくれ。……必ず、僕が、なんとかする」

その、根拠のない、しかし、絶対的な、自信に、満ちた、言葉。

エリアーデは、一瞬、ためらった。

だが、彼女は、頷いた。

『……分かりました。……あなたを、信じます』


ケイは、司令塔の、手すりに、立った。

彼の、小さな、身体が、眼下に、広がる、地獄絵図と、そして、遥か、彼方で、生まれようとしている、絶対的な、破壊の、化身を、見下ろしている。

彼の、脳内では、最後の、そして、最も、危険な、プロジェクトが、起動していた。


(……《システム・インテグレーション》。……対象、アークシティ、対空迎撃システム、『神のトール・ハンマー』。……最終、安全装置、解除。……エネルギー充填率、120%……。……いける)


彼は、静かに、右手を、天へと、掲げた。

その、手のひらの上に、蒼い、魔力の光が、収束していく。

その、光と、呼応するように。

アークシティの、地下、深く。

上下水道システムの、さらに、その、下に、極秘裏に、建設されていた、巨大な、魔力集積回路が、唸りを上げ始めた。

都市の、全ての、予備電力が、そこに、注ぎ込まれていく。

そして、その、膨大な、エネルギーは、都市の、中心に、そびえ立つ、庁舎の、その、尖塔の、先端に、取り付けられた、巨大な、魔水晶へと、集束されていった。

それは、ケイが、この都市の、最後の、切り札として、ドゥーリンと、エリアーデの、協力を得て、作り上げていた、究極の、防衛兵器。

魔力を、極限まで、圧縮し、光速で、射出する、荷電粒子砲。


その、起動の、ための、最後の、トリガー。

それが、ケイが、掲げた、右手だった。


そして、ついに、その時が、来た。

敵陣で、詠唱を、終えた、魔術師が、狂気の、哄笑と共に、その、暗黒の、球体を、アークシティへと、解き放った。

漆黒の、死の、星が、夜空を、切り裂き、絶対的な、破壊を、もたらすために、飛来する。


「――今ッ!」

エリアーデの、絶叫。

都市の、上空に、エメラルド色の、巨大な、盾が、出現する。

多重防衛結界。

暗黒の、星が、その、盾に、激突した。

凄まじい、衝撃。

結界が、ガラスのように、ひび割れ、悲鳴を、上げる。

一秒。二秒。三秒。

エリアーデの、口から、血が、噴き出す。

四秒。

ついに、結界が、木っ端微塵に、砕け散った。


だが、それで、充分だった。

その、わずか、五秒の、時間稼ぎ。

それが、ケイには、必要だった。

彼は、その、剥き出しになった、暗黒の、星を、その、青い瞳で、真っ直ぐに、捉えていた。

そして、彼の、脳内で、最後の、コマンドが、実行された。


「――撃て(ファイア)」


次の、瞬間。

世界が、白に、染まった。

アークシティの、尖塔から、放たれた、一条の、蒼い、閃光。

それは、もはや、光ではなかった。

それは、神の、怒り。

天の、裁き。

蒼い、閃光は、漆黒の、死の星を、その、中心で、貫き、そして、飲み込み、そして、……消滅させた。

だが、その、勢いは、止まらない。

蒼い、閃光は、そのまま、直進し、敵の、本陣、その、ど真ん中。

禁断の、古代兵器と、その上で、呆然と、立ち尽くす、狂気の、魔術師を、……そして、その、さらに、背後で、信じられない、という、顔で、立ち尽くす、ギュンター・フォン・ロックウェル辺境伯、その人を、……まとめて、飲み込んだ。


後に、残されたのは、耳を、つんざくような、静寂と、そして、大地に、刻まれた、一本の、巨大な、ガラス状の、亀裂だけだった。

総大将と、最後の、切り札を、同時に、失った、リオニス王国軍。

彼らは、もはや、戦う、術を、持たなかった。

最後までお読みいただき、ありがとうございます!


ついに、火蓋が、切られた、アークシティ、防衛戦。

辺境伯の、卑劣な、切り札に対し、ケイが、放った、究極の、カウンター。

荷電粒子砲、『神のトール・ハンマー』。

その、圧倒的な、一撃は、戦いの、趨勢を、決定づけました。


だが、戦争は、まだ、終わってはいません。

総大将を、失った、王国軍は、どう、動くのか。

そして、この、あまりにも、規格外の、力の、存在を、世界は、どう、受け止めるのか。

物語は、いよいよ、クライマックスへと、突き進んでいきます。


「面白い!」「神の槌、やばい!」「辺境伯、ざまあ!」など、思っていただけましたら、ぜひブックマークと、↓の☆☆☆☆☆での、評価を、お願いいたします。皆様の応援が、アークシティの、平和を、守る、力となります!


次回もどうぞ、お楽しみに。

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