第107節: 総攻撃:鉄と石の交響曲
いつもお読みいただき、ありがとうございます。
アークシティの、存亡を賭けた、独立戦争。ついに、その、火蓋が、切られました。
前回、ケイの、痛快な、挑発に、激昂した、ギュンター辺境伯は、ついに、全軍に、総攻撃を、命令しました。
今回は、その、圧倒的な、文明の、暴力に対し、我らが、アークシティの、防衛システムが、どう、立ち向かうのか。
息を呑む、攻防戦の、始まりです。
それでは、第百七話、お楽しみください。
「――総攻撃だッ!!!!」
ギュンター辺境伯の、怒号に、満ちた、絶叫。
それが、アークシティの、運命を、決定づける、血の、祭りの、始まりを告げる、ゴングとなった。
夜の、静寂を、切り裂いて、リオニス王国軍の、陣地から、いくつもの、角笛が、甲高い、咆哮を、上げた。
その、音を、合図に、千の、鋼鉄の、軍靴が、一斉に、大地を、揺るがした。
ゴゴゴゴゴゴゴゴ……。
それは、もはや、人の、足音ではなかった。
それは、一つの、巨大な、そして、破壊の、意志だけを、持った、鋼鉄の、津波が、押し寄せてくる、音だった。
「来たか……!」
アークシティの、城壁の上。
最高司令官である、ガロウ・アイアンファングが、その、黄金色の瞳を、好戦的な、光で、ぎらつかせ、吼えた。
「てめえら、準備は、いいな!
大将の、設計した、最高の、舞台で、存分に、踊り狂う、時間だぜ!」
「「「ウォオオオオオオッ!!!!」」」
城壁の上に、ずらりと、並んだ、三百の、多種族混成軍。
その、魂の、雄叫びが、夜空を、震わせた。
彼らの、顔に、恐怖の色は、なかった。
そこにあるのは、自らの、故郷を、自らの、手で、守り抜くのだという、鋼鉄の、覚悟と、そして、自らが、持つ、新しい、力への、絶対的な、信頼だけだった。
敵の、第一波。
それは、巨大な、塔の盾を、前面に、構え、亀の、甲羅のような、密集方陣を、組んだ、重装歩兵部隊だった。
彼らは、弓矢を、完全に、防ぎながら、ゆっくりと、しかし、確実に、城壁へと、その、距離を、詰めてくる。
その、背後からは、巨大な、車輪を、軋ませながら、十基以上の、破城槌が、その、禍々しい、先端を、城門へと、向けていた。
「……まだだ」
中央見張り台の、司令塔。
ケイは、その、青い瞳で、眼下に、広がる、鋼鉄の、津波を、冷静に、見下ろしながら、呟いた。
彼の、脳内には、《アナライズ》が、もたらす、敵の、進軍速度、陣形、そして、士気までもが、リアルタイムで、データとして、表示されている。
(……敵、第一波、五百。……陣形、テストゥド。……対弓矢防御は、完璧。……だが、その分、機動力は、皆無。……そして、上からの、攻撃には、極めて、脆弱……)
彼は、待った。
敵が、投石器の、射程圏内に入る、その、ギリギリの、瞬間まで。
そして、彼の、シミュレーションが、最適解を、弾き出した、その、刹那。
「――放てッ!!!!」
ケイの、魂の、号令が、城壁の、十箇所に、設置された、投石器の、射手たちへと、届いた。
ギシリ、と、巨大な、アームが、しなる、音。
そして、次の瞬間。
十の、燃え盛る、火球が、夜空を、切り裂き、放物線を描いて、敵の、密集方陣の、ど真ん中へと、吸い込まれるように、落下していった。
それは、ただの、石ではない。
ルナリアが、調合した、特殊な、油と、ドゥーリンの、工房から出た、鉄の、クズが、詰め込まれた、アークシティ、特製の、焼夷弾だった。
着弾の、衝撃で、土器の、壺が、砕け散り、中の、油が、飛散する。
そして、それが、重装歩兵たちの、鋼鉄の、鎧の、隙間に、染み込み、そして、燃え上がった。
「ぎゃあああああああああああっ!!!!」
「あ、熱い!
火を、消せ!
消してくれ!」
鋼鉄の、亀の甲羅は、一瞬にして、灼熱の、地獄の、釜へと、姿を変えた。
鎧の、内側で、燃え盛る、炎。
それは、もはや、消すことなど、できない。
兵士たちは、狂ったように、地面を、転げ回り、仲間と、ぶつかり合い、そして、陣形は、一瞬で、崩壊した。
そこに、広がっていたのは、もはや、軍隊ではなかった。
ただの、阿鼻叫喚の、地獄絵図だった。
「――次弾、装填!
目標、敵、破城槌!」
ケイの、非情な、追撃命令が、飛ぶ。
再び、夜空を、切り裂く、十の、火球。
今度の、標的は、無防備な、側面を、晒した、木製の、巨大な、攻城兵器。
着弾と、同時に、乾燥した、木材は、爆発的な、勢いで、炎上した。
「……よし。……敵の、第一波、および、攻城兵器、七割を、無力化」
ケイは、冷静に、戦果を、確認した。
彼の、顔には、何の、感情も、浮かんでいない。
ただ、システムが、設計通りに、稼働していることを、確認する、管理者としての、静かな、満足感だけが、あった。
だが、敵の、猛攻は、まだ、終わらない。
後方で、その、あまりにも、一方的な、光景を、見ていた、ギュンター辺境伯は、怒りに、顔を、引き攣らせながら、第二の、手を、打った。
「騎士団、出撃ッ!
あの、忌々しい、城門を、こじ開けろ!」
百騎の、重装騎士団。
彼らは、歩兵とは、違う。
その、一人一人が、一騎当千の、勇士。
彼らは、炎上する、仲間たちの、死体を、踏み越え、その、圧倒的な、突進力で、アークシティの、最後の、砦、中央の、城門へと、殺到した。
「――来たか、本命が!」
城門の、上で、指揮を執っていた、ドゥーリンが、その、白い髭の奥で、獰猛に、笑った。
「小僧ども!
準備は、いいな!
わしの、最高傑作の、お披露目だ!」
騎士団の、先頭が、城門に、激突する、その、寸前。
ドゥーリンの、号令で、城門の、上部に、仕掛けられていた、いくつもの、仕掛けが、作動した。
門の、上から、降り注ぐのは、熱湯でも、石でもない。
ドゥーリンの、工房で、特別に、精錬された、どろりとした、タール。
そして、その、タールが、騎士たちの、鋼鉄の、鎧を、覆い尽くした、瞬間。
エリアーデの、弟子たちが、小さな、火の、魔法を、放った。
瞬間、騎士団は、一つの、巨大な、火柱と化した。
だが、彼らは、怯まなかった。
彼らは、王国の、精鋭。
燃え盛る、炎の、中でさえ、その、突進を、やめない。
彼らの、鋼鉄の、ランスが、ついに、城門へと、激突した。
ドッゴオオオオオオオオオオオオオンッ!!!!
大地が、揺れた。
だが、城門は、揺らがなかった。
ドゥーリンが、この日のために、設計し、そして、鍛え上げた、三重構造の、鋼鉄の、大門。
それは、騎士団の、決死の、突撃を、まるで、赤子の、戯れのように、受け止め、びくとも、しなかった。
その、圧倒的な、防御力の、前に、騎士たちの、顔に、初めて、絶望の、色が、浮かんだ。
そして、その、絶望に、とどめを、刺すかのように。
城門の、両脇、城壁に、備え付けられていた、無数の、銃眼が、一斉に、開かれた。
そこから、顔を、覗かせたのは、三百の、黒光りする、鋼鉄の、牙。
クロスボウの、切っ先だった。
「――撃てェッ!!!!」
ガロウの、絶叫が、響き渡る。
三百の、鋼鉄の、矢が、一つの、巨大な、死の、塊となって、眼下の、騎士団へと、降り注いだ。
鋼鉄と、鋼鉄が、ぶつかり合う、甲高い、悲鳴。
王国の、誇る、重装騎士の、鎧も、アークシティの、技術の、粋を集めた、クロスボウの、前には、紙細工に、等しかった。
次々と、馬から、崩れ落ちていく、騎士たち。
彼らは、最後まで、自分たちが、何に、敗れたのか、理解できなかっただろう。
鉄と、石と、そして、炎の、交響曲。
アークシティの、防衛システムは、その、恐るべき、真価を、発揮し、王国の、誇る、大軍を、一方的に、蹂躙していた。
その、あまりにも、一方的な、光景。
それは、もはや、戦争ではなかった。
それは、旧時代の、システムが、新時代の、圧倒的な、性能の、前に、ただ、ひたすらに、駆逐されていく、必然の、理でしかなかった。
最後までお読みいただき、ありがとうございます!
ついに、火蓋が、切られた、アークシティ、防衛戦。
ケイが、設計した、防衛システムが、その、圧倒的な、性能を、見せつけました。
焼夷弾、強化城門、そして、クロスボウの一斉射撃。
王国の、軍勢は、手も足も、出ません。
だが、戦争は、まだ、始まったばかり。
追い詰められた、獅子は、必ず、次なる、牙を、剥いてきます。
次回、辺境伯が、放つ、最後の、切り札。
そして、それに対する、ケイの、驚くべき、カウンター。
どうぞ、ご期待ください。
「面白い!」「防衛戦、熱い!」「アークの、兵器、強すぎ!」など、思っていただけましたら、ぜひブックマークと、↓の☆☆☆☆☆での、評価を、お願いいたします。皆様の応援が、アークシティの、城壁を、さらに、固くします!
次回もどうぞ、お楽しみに。




