表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

107/176

第106節: 警告という名の宣戦布告

いつもお読みいただき、ありがとうございます。

アークシティの、存亡を賭けた、独立戦争。ついに、両軍が、対峙しました。


前回、圧倒的な、軍勢を、率いて、アークシティを、包囲した、ギュンター辺境伯。

彼は、勝利を、確信し、最後の、慈悲と称して、降伏勧告の、使者を、送ります。

今回は、その、あまりにも、傲慢な、要求に対し、我らが、リーダー、ケイが、いかにして、返答するのか。

彼の、予想の、斜め上をいく、驚くべき、一手。

どうぞ、お楽しみください。

夜の、静寂は、嘘のようだった。

アークシティを、包囲する、リオニス王国軍の、陣地は、数千の、松明の光と、兵士たちの、下品な、笑い声、そして、明日、始まる、一方的な、虐殺の、宴を、前にした、高揚感に、満ち溢れていた。

彼らにとって、この、戦いは、もはや、戦いですらなかった。

ただの、功績稼ぎの、ための、狩り。

相手は、言葉を話すだけの、獣。何の、抵抗もできずに、蹂躙され、命乞いをし、そして、死んでいく、哀れな、獲物。

誰もが、そう、信じて、疑わなかった。


その、あまりにも、楽観的な、空気の中で。

ギュンター辺境伯が、放った、降伏勧告の、使者が、アークシティの、城門の前へと、たどり着いた。

使者を、務めるのは、辺境伯の、側近である、一人の、尊大な、騎士だった。

彼は、馬上から、固く閉ざされた、城門を、見上げ、腹の底からの、大音声で、叫んだ。

「聞け、城内の、愚かな、獣共よ!


我が主、ギュンター・フォン・ロックウェル辺境伯閣下より、貴様らに、最後の、慈悲が、与えられた!


今すぐ、その、指導者である、人間の、ガキの首を、差し出し、全ての、武装を、放棄し、城門を、開け放て!


さすれば、貴様らの、女子供の、命だけは、助けてやらんでも、ない!


返答の、猶予は、ない!


今、この場で、決断せよ!」


その、あまりにも、一方的で、そして、侮辱に満ちた、最後通牒。

城壁の上の、狼獣人たちの、喉の奥から、グルルル、という、殺意の、唸り声が、漏れる。

だが、彼らは、動かない。

全ては、大将の、指示を、待つ。


やがて、城壁の上の、一番高い、中央見張り台から、一つの、静かな、声が、響き渡った。

それは、拡声器の、魔法でも、かかっているかのように、不思議なほど、クリアに、騎士の、耳へと、届いた。

「――使者殿。ご苦労」

声の主は、ケイ・フジワラだった。

「……その、寛大なる、ご提案、確かに、承った。……だが、あいにく、我々は、その、いずれの、選択肢も、選ぶ、つもりはない」


その、あまりにも、穏やかな、しかし、絶対的な、拒絶の、言葉。

騎士は、一瞬、自分の、耳を疑った。

「……な、なんだと……?


貴様、正気か!


我が、王国の、千の、大軍を、前にして、まだ、そのような、戯言を……!」


「戯言ではない。事実だ」

ケイの、声は、変わらなかった。

「そして、我々からも、一つ、貴殿の、主君に、返答が、ある。……言葉での、返答ではない。……我々の、流儀に、則った、返答だ」


「……流儀、だと……?」

騎士が、訝しげに、眉をひそめた、その、瞬間。


ヒュオッ!


という、鋭い、風切り音。

次の、瞬間。

騎士の、目の前、数センチの、地面に、一つの、巨大な、石が、突き刺さっていた。

いや、それは、ただの、石ではなかった。

それは、黒曜石を、磨き上げて作られた、巨大な、石板だった。

その、鏡のように、滑らかな、表面には、大陸共通語で、一つの、短い、しかし、強烈な、メッセージが、刻み込まれていた。


『――これより、先、一歩たりとも、踏み入ることを、禁ず。この、警告を、無視する者は、我が、アークシティの、敵とみなし、その、生命の、保証は、しない』


そして、その、文章の、下には。

この、都市の、新しい、紋章。

多種族の、融和を、象徴する、円環の、印が、誇らしげに、刻まれていた。


騎士は、呆然と、その、石板を、見つめた。

なんだ、これは。

どこから、飛んできた?

投石器か?


馬鹿な。投石器で、これほど、正確に、狙いすまして、撃ち込めるわけが……。


彼の、混乱に、とどめを、刺すかのように。

城壁の上の、声が、続いた。

その、声には、初めて、氷のような、冷たさが、宿っていた。

「――それが、我々の、返答だ。……そして、警告でもある。……我々は、君たちの、その、鉄のおもちゃを、いつでも、好きな時に、破壊できる。……そのことを、その、豚のように、肥え太った、君たちの、主人に、よく、伝えておけ」


「き、貴様ァ……!」

騎士が、怒りに、震え、剣の、柄に、手をかけた、その時。


ヒュオッ!


ヒュオッ!


ヒュオッ!


連続する、風切り音。

彼の、周囲の、地面に、次々と、同じ、石板が、突き刺さっていく。

一本は、彼の、愛馬の、鼻先、数ミリ。

一本は、彼の、掲げていた、王国の、旗竿を、へし折り。

そして、最後の一本は、彼の、兜の、飾りの、羽根を、綺麗に、切り裂いて、飛んでいった。

その、どれもが、彼の、命を、奪うことなく、しかし、彼の、戦意と、プライドを、完全に、粉砕するには、十分すぎるほどの、神業のような、精密射撃だった。


騎士は、もはや、声も、出なかった。

彼の、全身から、血の気が、引き、ただ、わなわなと、震えることしか、できなかった。

これは、警告ではない。

これは、処刑の、予告だ。

自分たちは、いつでも、お前たちの、命を、奪えるのだ、と。

その、圧倒的な、技術の差を、力の差を、これでもか、というほど、見せつけられたのだ。


「……分かったら、とっとと、失せろ」

城壁の上の、声は、もはや、彼に、興味を、失っていた。

「……我々の、忍耐にも、限界がある」


騎士は、悲鳴を、上げると、馬首を返し、文字通り、這うようにして、自軍の、陣地へと、逃げ帰っていった。

その、哀れな、敗走の、姿。

それを、見届けた、アークシティの、城壁の上で、狼獣人たちの、腹の底からの、哄笑が、爆発した。


「「「うおおおおおおおおおおっ!!!!」」」


その、歓声は、もはや、ただの、嘲笑ではない。

自分たちの、リーダーが、自分たちの、技術が、あの、傲慢な、王国の、騎士を、完全に、打ち負かしたのだという、絶対的な、勝利の、確信に、満ち溢れていた。

士気は、最高潮に、達していた。


その、熱狂の、中心で。

ケイは、静かに、傍らに、控えていた、ドゥーリンへと、向き直った。

「……見事な、腕前だった、ドゥーリン殿。……寸分の、狂いも、なかった」

「フン!


当たり前よ!」

ドゥーリンは、その、白い髭の奥で、満足げに、鼻を鳴らした。

彼が、この、数日間で、改良に、改良を重ねた、最新鋭の、投石器。その、性能は、彼の、想像さえも、超えていた。

「……小僧の、あの、気味の悪い、計算と、わしの、神業が、合わされば、ハエの、眉間を、射抜くことさえ、造作も、ないわい」


その、二人の、恐るべき、天才の、会話。

それを、聞いていた、ガロウは、改めて、自らの、大将の、恐ろしさに、身を、震わせた。

言葉で、返すのではない。

圧倒的な、技術力で、相手の、心を、折る。

これこそが、アークシティの、戦い方なのだ、と。


その、報せは、すぐに、ギュンター辺境伯の、元へと、届けられた。

彼は、激昂した。

そして、その、全ての、プライドを、粉々に、砕かれた、怒りのままに、彼は、叫んだ。

「――総攻撃だッ!!!!


夜明けを、待つな!


今すぐ、あの、忌々しい、石垣を、粉々に、砕け散らせろッ!!!!」


ついに、獅子の、牙が、剥かれた。

アークシティの、運命を、左右する、最初の、そして、最大の、戦いの、火蓋が、今、切られようとしていた。

最後までお読みいただき、ありがとうございます!


ケイの、あまりにも、痛快な、返答でしたね。

言葉ではなく、圧倒的な、技術力で、相手の、心を、折る。

まさに、アークシティの、流儀。

ドワーフ爺様の、投石器も、大活躍でした。


さて、ついに、業を煮やした、辺境伯が、総攻撃を、開始します。

次回、いよいよ、アークシティの、防衛システムが、その、真価を、発揮します。

圧倒的な、数の、暴力を、前にして、彼らは、故郷を、守り抜くことが、できるのでしょうか。


「面白い!」「ケイ、かっこいい!」「投石器、すごい!」など、思っていただけましたら、ぜひブックマークと、↓の☆☆☆☆☆での、評価を、お願いいたします。皆様の応援が、アークシティの、城壁の、強度を、さらに、高めます!


次回もどうぞ、お楽しみに。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ