第103節: 鋼鉄の牙:クロスボウの量産
いつもお読みいただき、ありがとうございます。
アークシティの、存亡を賭けた、独立戦争。その、準備が、着々と、進んでいます。
前回、ケイは、籠城戦を、戦い抜くための、驚くべき、多重防衛システムの、構築を、宣言しました。
今回は、その、防衛システムの、牙となる、新しい、兵器が、産声を、上げる、物語。
我らが、ドワーフ爺様の、工房が、再び、歴史を、動かします。
それでは、第百三話、お楽しみください。
アークシティの、北地区。
工業区画の、心臓部である、ドゥーリン・ストーンハンマーの工房は、今、これまでにないほどの、殺気だった、熱気に、包まれていた。
巨大な、反射炉は、その、口から、灼熱の、炎を、吐き続け、工房全体を、真夏のような、暑さで、満たしている。
その、熱気の中で、上半身、裸になった、ドワーフの、弟子たちと、狼獣人の、若者たちが、汗だくになりながら、金床に、槌を、振り下ろしていた。
カン!
カン!
カン!
その、リズミカルな、金属音は、もはや、ただの、作業音ではない。
それは、来るべき、戦争の、足音。
自らの、故郷を、守るための、鋼鉄の、牙を、研ぎ澄ます、力強い、鼓動だった。
その、工房の、中心で。
ドゥーリンは、腕を組み、鬼のような、形相で、弟子たちの、仕事ぶりを、睨みつけていた。
「遅いッ!
手が、止まっておるぞ、小僧ども!
そんな、ナマクラな、焼き入れで、人間の、分厚い、鉄の鎧が、貫けると思うか!」
「ですが、師匠!
この、設計図、あまりにも、複雑すぎます……!」
弟子の一人が、涙目で、悲鳴を上げた。
彼らの、目の前にあるのは、ケイが、この、防衛戦のために、特別に、設計した、新しい、兵器の、設計図だった。
「――やかましいッ!
できん、では、ない!
やるのだ!
大将が、描いた、この、神の、設計図を、寸分の、狂いもなく、形にすること!
それこそが、我ら、職人の、戦場だろうが!」
ドゥーリンの、雷鳴のような、一喝。
弟子たちは、びくりと、身を震わせ、再び、槌を、握り直した。
その、彼らが、悪戦苦闘しながら、作り上げている、新しい、兵器。
それは、弓ではなかった。
それは、木と、鋼鉄の、部品が、複雑に、組み合わされた、機械仕掛けの、射出装置。
ケイが、前世の、知識を、元に、この、世界の、技術レベルで、再現可能なように、再設計した、究極の、量産型、遠距離兵器。
『クロスボウ』。
その、兵器の、コンセプトは、極めて、シンプルだった。
弓の、弦を、引く、力を、人間の、腕力ではなく、機械の、力(てこ、あるいは、巻き上げ機)で、蓄える。
そして、引き金を、引くだけで、その、蓄えられた、膨大な、エネルギーが、一気に、解放され、短い、矢を、音速に近い、速度で、射出する。
その、威力は、並の、弓の、比ではない。
そして、何よりも、その、最大の、利点は。
「誰にでも、扱える」
という、その、圧倒的な、簡便さにあった。
弓を、扱うには、長年の、訓練と、熟練が、必要だ。
だが、この、クロスボウは、違う。
狙いを定め、引き金を、引く。
たった、それだけの、動作で、素人でも、熟練の、弓兵に、匹敵する、破壊力を、手に入れることができるのだ。
「……ドゥーリン殿」
その、殺気立った、工房に、ケイが、静かに、姿を現した。
「進捗は、どうだ?」
「フン。見ての、通りよ」
ドゥーリンは、そっけなく、答えた。だが、その、黒い瞳には、この、挑戦的な、新しい、オモチャに対する、職人としての、純粋な、興奮が、隠しきれていなかった。
「……面白い、代物だ、これは。……単純な、構造の、ようで、その、実、全ての、部品の、バランスが、コンマ、一ミリでも、狂えば、まともに、機能せん。……まるで、精密な、時計の、ようだわい。……だが、それ故に、作りがいが、ある」
彼は、完成したばかりの、試作品の、一丁を、手に取ると、ケイに、手渡した。
ずしりと、重い。
黒光りする、鋼鉄の、弓体。滑らかに、磨き上げられた、木製の、銃床。そして、ドゥーリンの、神業によって、完璧に、作り上げられた、引き金の、機構。
それは、もはや、ただの、兵器ではなかった。
機能美の、極致。一つの、芸術品だった。
ケイは、その、クロスボウを、手に取ると、慣れた、手つきで、短い、矢を、番えた。
そして、工房の、隅に、置かれていた、試し撃ち用の、王国正規軍の、重装歩兵が、使うものと、同じ、厚さの、鋼鉄の、胸当てに、狙いを、定めた。
ヒュンッ!
という、鋭い、風切り音。
次の瞬間。
甲高い、金属音と、共に、鋼鉄の、胸当ての、ど真ん中を、矢が、完全に、貫通していた。
その、背後の、壁にまで、深々と、突き刺さっている。
「「「…………」」」
工房にいた、全ての、職人たちが、息を呑んだ。
あの、王国兵の、命を、守る、最後の、砦。
それを、こうも、あっさりと。
「……上出来だ」
ケイは、満足げに、頷いた。
「これならば、奴らの、自慢の、重装歩兵も、ただの、的だ。……量産を、急いでくれ。目標は、三日で、三百丁。……可能か?」
その、あまりにも、無茶な、要求。
だが、ドゥーリンは、その、白い髭の奥で、にやりと、笑った。
「……フン。……誰に、言っておる。……三日、だ?
……二日で、上げてやるわい」
その、力強い、宣言。
それは、この、アークシティの、工業力が、既に、大陸の、どの国も、到達し得ない、異次元の、レベルへと、達していることを、証明する、言葉だった。
鋼鉄の、牙は、今、この瞬間も、着々と、その、数を、増やし続けていた。
最後までお読みいただき、ありがとうございます!
ついに、アークシティの、切り札となる、新しい、兵器、『クロスボウ』が、その、ベールを、脱ぎました。
ケイの、知識と、ドゥーリンの、技術が、融合した、その、圧倒的な、威力。
これで、王国軍の、重装歩兵にも、対抗する、術を、手に入れましたね。
さて、武器の、準備は、整いました。
次回は、その、武器を、扱う、兵士たちの、物語。
ガロウの、指揮の下、多種族混成軍が、産声を、上げます。
どうぞ、ご期待ください。
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次回もどうぞ、お楽しみに。




