第102節: プロジェクト・ディフェンス:要塞都市の起動
いつもお読みいただき、ありがとうございます。
アークシティの、存亡を賭けた、独立戦争。その、火蓋が、切られようとしています。
前回、千の、大軍を率いて、進軍を開始した、ギュンター辺境伯。
その、圧倒的な、脅威を、前に、我らがリーダー、ケイは、静かに、そして、不敵に、『プロジェクト・ディフェンス』の、最終フェーズへの、移行を、宣言しました。
今回は、その、驚くべき、防衛システムの、全貌が、明らかになります。
絶望を、希望へと、塗り替える、設計図。
どうぞ、その、神業を、ご覧ください。
「――『プロジェクト・ディフェンス』、最終フェーズ。その、基本戦略は、ただ一つだ」
作戦司令室の、張り詰めた、空気の中。
ケイの、静かな、声だけが、響いていた。
彼の、青い瞳は、目の前の、巨大な、都市の、防衛設計図の上を、滑るように、動いている。
「徹底的な、籠城戦。そして、敵の、継戦能力の、完全なる、破壊。……僕たちは、敵兵を、殺すのではない。敵の、『戦う』という、意志そのものを、へし折るんだ」
その、あまりにも、冷徹で、そして、合理的な、戦略目標。
ガロウも、ドゥーリンも、そして、他の、リーダーたちも、ただ、黙って、その言葉に、耳を傾けていた。
「敵の、最大の、強みは、その、『数』と、『重装備』だ。だが、それは、同時に、奴らの、最大の、弱点ともなる」
ケイは、都市の、外壁の、設計図を、指で、なぞった。
「大軍は、大量の、食料を、消費する。そして、重装備は、兵士の、体力を、著しく、消耗させる。……つまり、戦いが、長引けば、長引くほど、不利になるのは、奴らの方だ。……僕たちの、仕事は、この、アークシティという、最強の、盾を、使い、奴らの、最強の、矛が、錆びつき、折れるまで、ただ、ひたすらに、耐え忍ぶこと。……いいか?」
その、問いに、全員が、力強く、頷いた。
「では、具体的な、タスクを、割り振る」
ケイの、声の、トーンが、変わった。それは、もはや、戦略を、語る、司令官の、声ではない。
個々の、モジュールの、実装を、指示する、プロジェクトマネージャーの、声だった。
彼は、その場で、目を閉じ、《プロジェクト・マネジメント》の、権能を、解放した。
都市の、全ての、住民の、魂に、直接、語りかけるように。
「――第一に、防衛システムの、完全、稼働!」
彼の、最初の、命令。
それは、都市の、物理的な、防御力を、極限まで、高めるための、ものだった。
「ドゥーリン殿!
あなた率いる、工務部は、今すぐ、全ての、城門を、完全に、封鎖せよ!
内部から、鋼鉄の、梁と、土嚢で、補強!
たとえ、破城槌の、百発や、二百発、食らおうとも、びくともしない、絶対の、壁を、創り上げろ!」
「フン!
言われるまでも、ないわい!」
ドゥーリンは、その、白い髭を、わなわなと、震わせ、工房へと、駆け出していった。
「そして、城壁の上には、ゴブリン戦で、試作した、あの、『投石器』を、正式配備する!
数は、十基!
弾薬は、石ではない!
ルナリアが、用意した、可燃性の、油と、そして、ドゥーリン殿の、工房から出る、灼熱の、鉄の、クズだ!
奴らの、自慢の、重装鎧を、内側から、焼き尽くす、地獄の、雨を、降らせてやる!」
その、あまりにも、悪辣な、兵器の、名に、若い、獣人たちが、ごくりと、喉を鳴らす。
「――そして、エリアーデ殿!」
ケイの、声が、静かに、響く。
「あなたと、あなた率いる、魔術部には、この都市の、最後の、そして、最強の、盾を、お願いしたい。……『対物理・対魔法、多重防衛結界』の、構築を」
「……承知、いたしました」
エリアーデは、その、美しい顔に、厳粛な、決意の色を、浮かべて、頷いた。
「この、アークシティの、上空に、竜の、鱗さえも、通さぬ、絶対の、天蓋を、張ってみせます」
彼女は、静かに、立ち上がると、都市の、中心にある、魔力の、集積地へと、その、歩みを、進めた。
物理的な、城壁。
化学的な、火炎。
そして、魔術的な、結界。
ケイの、脳内では、それらの、三重の、盾が、完璧な、ハーモニーを、奏でていた。
だが、彼の、準備は、それだけに、留まらなかった。
本当の、恐怖は、その、さらに、内側に、あった。
「――リリナ!」
「はい、大将様!」
猫獣人族の、若き、諜報部長が、音もなく、ケイの、前に、膝をつく。
「君と、君の、斥候部隊には、敵の、兵站線を、叩いてもらう」
「……兵站線、でございますか?」
「そうだ。大軍の、弱点は、その、長い、補給路だ。君たちには、夜陰に、紛れ、敵の、食料庫を、焼き、井戸に、毒を、投げ込んでもらう。……正面からの、戦闘は、絶対に、するな。ただ、ひたすらに、嫌がらせを、続けろ。……奴らを、内側から、飢えさせ、渇かせ、そして、疑心暗鬼に、陥らせるんだ」
その、あまりにも、非情な、ゲリラ戦の、指示。
リリナは、しかし、その、金色の瞳を、好戦的な、光で、輝かせた。
「……お任せください、大将様。……猫の、本当の、恐ろしさを、あの、人間の、豚どもに、教えてさしあげます」
彼女は、一礼すると、影の中へと、溶けるように、消えていった。
そして、最後に。
ケイは、この都市の、全ての、住民へと、語りかけた。
「――これより、アークシティは、籠城体制に、入る。全ての、市民は、指定された、居住区画から、出ることを、禁ずる。食料と、水は、警備隊が、各戸に、配給する。……これは、君たちを、縛るための、命令ではない。君たち、一人一人を、守るための、絶対の、ルールだ」
彼の、その、静かな、しかし、揺るぎない、言葉。
それは、都市の、全ての、住民の、心に、一つの、覚悟を、決めさせた。
自分たちは、戦うのだ、と。
この、リーダーの下で、この、仲間たちと、共に。
自らの、故郷を、守るために。
アークシティは、その、全ての、門を、閉ざした。
そして、その、内側で。
一つの、巨大な、そして、完璧に、統率された、要塞が、静かに、しかし、確実に、その、起動を、始めていた。
それは、もはや、ただの、都市ではなかった。
それは、侵入する、全ての、異物を、その、総力を、挙げて、排除する、巨大な、免疫システムの、覚醒だった。
最後までお読みいただき、ありがとうございます!
ついに、ケイの、口から、語られた、『プロジェクト・ディフェンス』の、全貌。
物理、化学、魔法、そして、諜報戦。
あらゆる、要素を、組み合わせた、その、完璧なまでの、防衛戦略。
絶望的な、戦力差を、覆すための、彼の、冷徹な、計算が、光ります。
さて、準備は、整いました。
次回は、いよいよ、その、防衛システムの、心臓部となる、兵器の、生産が、始まります。
ドゥーリンの、工房が、再び、火を噴く!
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次回もどうぞ、お楽しみに。




