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第101節: 宣戦布告という名のインシデント・レポート

いつも『元・社畜SEの異世界再起動』をお読みいただき、誠にありがとうございます。

第五巻『独立への試練』、ついにその火蓋が切られようとしています。


アークシティが下した、誇り高き「独立」の決断。しかし、その代償は、あまりにも大きいものでした。理不尽な要求を拒絶された獅子は、その牙を剥き、アークシティへと迫ります。

圧倒的な戦力差。文明の暴力。その絶望的な現実を前に、我らがプロジェクトマネージャーは、静かに、そして冷徹に、反撃の準備を始めます。

それでは、物語が大きく動き出す第百一話、お楽しみください。

「――我々は、自由を、譲らない」


ケイの、静かな、しかし、鋼のように硬い意志を宿した拒絶の言葉。それが、王国の使者の、傲慢に満ちた顔から、血の気を奪った。

騎士は、一瞬、自分の耳を疑った。目の前の、覗き窓の奥から聞こえてきた言葉の意味を、彼の、凝り固まった常識が、理解することを拒絶した。

獣が、人間に、逆らう?

道具が、主人に、否と、言う?

あり得ない。あってはならない。世界の秩序を、根底から覆す、冒涜的な、反乱の言葉。


「……き、貴様……!

今、何と……!」


「言ったはずだ。我々は、誰の、奴隷にもならない、と」

声は、どこまでも、冷静だった。

「それが、この都市の、揺るぎない、総意だ。……お前の、主君、ギュンター辺境伯に、そう伝えろ。……そして、ついでに、こうも、伝えておけ。『アークシティは、自衛のためならば、いかなる侵略者に対しても、全力で、反撃する』、と」


その、あまりにも、明確な、宣戦布告。

騎士の顔が、怒りと、屈辱に、真っ赤に染まった。彼は、何かを、罵ろうとした。だが、その言葉が、口から出る前に、覗き窓は、ぴしゃり、と、無情に閉ざされた。

後に残されたのは、圧倒的な、石の壁の、冷たい沈黙だけ。


騎士は、わなわなと震えながら、馬首を返した。そして、自らの陣地へと、駆け戻ると、主君である、ギュンター辺境伯に、その、屈辱的な、報告の、全てを、伝えた。

交渉は、決裂。

いや、交渉にさえ、ならなかった。

亜人共は、王国の、寛大なる、慈悲を、その、汚れた足で、踏みにじったのだ。


その報告を受けた、ギュンター・フォン・ロックウェルの、肥えた顔が、醜く、歪んだ。

「……面白い。……面白いじゃ、ないか、獣の、ガキめ……」

彼の、低い、唸り声が、陣幕の中に、響き渡る。

「……そこまで、死にたいと、言うのなら、望み通り、皆殺しに、してくれるわ……!」


その日の、日没と、共に。

アークシティの、東の地平線に、巨大な、土煙が、上がった。

ギュンター辺境伯が、率いる、千名の、討伐軍。その、全軍が、アークシティへと、その、進軍を、開始したのだ。

その、軍勢の、威容は、アークシティの、住民たちが、これまでに、目にした、どの、脅威とも、比較にならなかった。

先頭を行くのは、辺境伯、直属の、百名の、重装騎士団。その、磨き上げられた、鋼鉄の鎧は、沈みゆく、夕日を、反射して、不吉な、赤い光を、放っている。

その後ろに、続くのは、王国正規軍から、派遣された、五百名の、重装歩兵部隊。彼らは、一糸乱れぬ、隊列を組み、その、巨大な、塔のタワーシールドで、鋼鉄の、壁を、形成している。

そして、その後方には、弓兵、そして、攻城兵器を、運ぶ、工兵たちが、続く。

それは、もはや、ただの、軍隊ではなかった。

一つの、都市を、完全に、地上から、消し去るためだけに、最適化された、巨大な、破壊の、システムだった。


その、絶望的な、光景を、アークシティの、城壁の上の、見張り台から、リリナ率いる、斥候部隊が、遠眼鏡で、捉えていた。

「……敵、進軍を開始!



総数、およそ、千!



先頭、重装騎士団!



後方に、攻城兵器らしきものを、多数、確認!」


その、切迫した、報告が、庁舎の、最上階、ケイが、開設した、臨時の、作戦司令室へと、届けられる。

部屋の中には、アークシティの、最高幹部たちが、集結していた。

彼らの、顔に、緊張の色は、あった。だが、不思議と、絶望の色は、なかった。

彼らの、視線は、ただ一点。

部屋の、中央に、広げられた、巨大な、都市の、防衛設計図を、静かに、見つめる、彼らの、小さなリーダーの、背中に、注がれていた。


「……来たか」

ケイは、静かに、呟いた。

彼の、脳内では、《アナライズ》が、斥候からの、リアルタイムの、情報と、これまでの、シミュレーション結果を、照合し、敵の、戦力と、その、進軍速度を、完璧に、予測していた。

敵戦力、千。

対する、アークシティの、戦闘可能人員。それは、ガロウ率いる、狼獣人族の戦士団を、中心に、ドゥーリンの、ドワーフ部隊、そして、新設された、ハクの、警備隊を、合わせても、三百に、満たなかった。

戦力差は、三倍以上。

純粋な、兵力の、計算では、勝ち目は、万に、一つも、ない。


「……大将」

ガロウの、低い、声が、静寂を、破った。

「……どう、戦う?



……あんたの、策を、聞かせてくれ」


その、黄金色の瞳には、一切の、迷いも、揺らぎもなかった。

そこにあるのは、リーダーの、決断を、信じ、そして、それを、実行する、覚悟を、決めた、軍人の、光だけだった。


ケイは、ゆっくりと、振り返った。

その、青い瞳には、もはや、何の、感情も、浮かんでいない。

そこにあるのは、発生した、重大な、インシデントに対し、ただ、淡々と、その、対応策を、実行する、プロジェクトマネージャーの、冷徹な、顔だけだった。


「――これより、『プロジェクト・ディフェンス』を、最終フェーズへと、移行する」


彼の、静かな、しかし、絶対的な、自信に満ちた、宣言。

それは、アークシティの、存亡を、賭けた、独立戦争の、始まりを告げる、静かな、しかし、力強い、ゴングの音だった。

最後までお読みいただき、ありがとうございます!


ついに、リオニス王国の、討伐軍が、その、進軍を、開始しました。

千の、正規軍。

その、圧倒的な、戦力を、前にして、アークシティの、戦闘員は、わずか、三百。

この、絶望的な、戦力差。

しかし、我らが、プロジェクトマネージャーの、瞳には、まだ、絶望の色は、ありません。


次回、ついに、ケイが、この、独立戦争を、戦い抜くための、驚くべき、防衛プロジェクトの、全貌が、明らかになります。

彼の、異世界の、知識と、この都市の、仲間たちの、力が、融合する時、奇跡は、起こるのでしょうか。


「面白い!」「ついに、戦争が、始まる!」「ケイの、作戦が、楽しみ!」など、思っていたていただけましたら、ぜひブックマークと、↓の☆☆☆☆☆での、評価を、お願いいたします。皆様の応援が、アークシティの、城壁を、さらに、固くします!


次回もどうぞ、お楽しみに。

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