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第7話 原因究明

秘密基地が完成して俺たちの放課後の楽しみとなった。


放課後になると特に用事がない限り、必ず向かうようになった。


俺と真那ちゃんは少しずつ家から私物や親から使わない物を持ってきて秘密基地を模様替えしていく。


理想の秘密基地に近づくと同時並行でやらなきゃいけないことがあった。


『それでは、本日の魔法の授業を始めよう』


「はい」


「はーい!」


秘密基地は扉を入ってすぐの談話室を中心に幾つか別の部屋が設置されている。


そのうちの一つが魔法の授業と訓練を行う訓練室だ。


俺と真那ちゃんはビルドドラゴンが作った勉強用の机と椅子に座り、マスタードラゴンは爺ちゃんのクレジットカードで買った大きなホワイトボードとマーカーを使って魔法の授業を開始する。


マスタードラゴンの行う魔法の授業は魔法の基礎知識と俺の魔法訓練の主に二つだ。


魔法の基礎知識はどうやって魔法を使うのかとか、魔法の歴史、あとは魔法協会のことなど幅広い内容を勉強する。


これに関しては小学校を通っている俺と真那ちゃんでも分かるレベルにマスタードラゴンがわかりやすく教えてくれるから特に問題なく学習出来ている。


しかし問題なのが俺の魔法訓練だった。


元々秘密基地は魔力操作があまりにも下手な俺が心置きなく練習するための場所を用意するためでもあった。


創世の百竜でドラゴンを創造することができ、何度もドラゴンを呼び出せているので少しは魔力操作も出来ていると思っていたが、現実は残酷だった。


『……ここまで来ると重症だな』


「申し訳ないです……」


あまりにも魔力操作が下手過ぎてもはや土下座してマスタードラゴンに謝りたい気分だった。


マスタードラゴンからのアドバイスを聞いて自分なりに色々頑張ってみたのだが、結果は惨敗。


ここまで来ると自信を無くしてしまう。


『はぁ……《魔法決闘マジックデュエル》なら最悪魔力操作が下手でもゴリ押しでいけるんだけどな……』


「魔法決闘って、魔法使いが1対1で戦うあれ?」


魔法決闘とは文字通り、魔法使いや魔女達が己の魔法を使って戦う競技のことだ。


たまにテレビでもスポーツ番組みたいにやっているが、俺はあまり見たことない。


『千歳は魔力の総量はとんでもないから魔力操作が下手でも、下級魔法が中級魔法レベルの威力になるからな……いっそのこと、魔力操作を諦めてそっち方面に鍛えるか?』


「ちょっと、いきなり教育方針を変なルートにチェンジしないでよ」


俺の教育係のはずのマスタードラゴンが魔力操作に対して匙を投げてしまいそうになったので流石に待ったをかけた。


すると、真那ちゃんがホワイトボードを持って近付いてきた。


「……マスタードラゴンさん。一般的に魔法使いの魔力操作はそんなに難しいものですか?」


ここで魔力を持たない一般人である真那ちゃんが素朴な疑問をぶつける。


『魔力操作は……こればかりは人によるとしか言えないな。魔力操作が天才的に得意な人もいれば、その逆に苦手な人もいる。もちろんその差は本人の努力次第である程度差は埋まる』


真那ちゃんはマスタードラゴンの説明を聞きながらホワイトボードに魔力操作の要点を書いていく。


『だが、それでも限度はある。イギリスでアルフレッドのところにいた時に魔力操作が苦手な魔法使いを何人も見てきたが、千歳がここまで魔力操作が下手なのは苦手とかそういうレベルではなく、別の理由があるのかもしれないな……』


真那ちゃんは顎に手を当てて考える動作をすると、少し考えてから次の質問をする。


「千歳君の体に魔法使いにとって何か欠陥となる障害は?」


『無いな。もしも仮に魔法使いや魔女は体に障害があったり、一部を失っても魔法を使うことは可能だからな』


「だとしたら……千歳君の体に呪いか、何か魔術が埋め込まれていますか?」


『呪いはない。あるのはアルフレッドが千歳を守るために十年前に施した、魔力を封印する封魔術式だけだ』


「封魔術式……それは解除したからもう無いんですよね?」


『いいや、まだ六つの術式が残っている』


「えっ!?六つも!?」


そう言えば真那ちゃんには封魔術式が七段階で封印されていることなどまだ話していなかった。


すると真那ちゃんは俺とマスタードラゴンを驚かせる一つの可能性を口にした。


「もしかして、千歳君が魔力操作が下手なのはその封魔術式のせいなんじゃ……」


「え?」


『いやいや、そんなまさか。封魔術式に魔力操作を狂わせる力は無いぞ。あくまで魔力を封印して肉体に負荷を掛けないためのもので……』


「でも、封魔術式を解除したとは言え、まだ六つもあるから、その術式の影響が魔力操作にまで及んでいる可能性はありませんか?それに10年という長い年月の間にアルフレッド様ですら想定してなかった何らかの不具合が起きている可能性は?」


『それは──いや、待てよ。もしそうなら……』


マスタードラゴンは突然ブツブツと何かを呟きながらホワイトボードにマーカーで色々書き始めた。


まるで頭の良い人が色々な事を理論的に考えているように考えていき、やがて静かにマーカーを置くと俺に視線を向ける。


「マスター?」


『……千歳、封魔術式の第二刻印を解除するんだ』


「え?でも、いいの?まだ第一の解除して少ししか経ってないのに……」


『大丈夫だ、今のお前なら第二も問題ない。もしも真那ちゃんの考察が正しければ……』


「……分かった。とりあえずやってみる」


やり方は覚えているので前回と同じ要領で創世の魔杖を構えて解除の呪文を唱える。


「封魔術式……第二刻印、封解!!!」


前回と同じく鍵で扉を開いたような音が鳴り響き、俺の体に刻まれた封魔術式の刻印の一部が霞のように消えると前回以上の魔力の光が溢れ出した。


「……あれ?」


『どうした?』


「何か、体が少し軽いような……試しに少し魔法を使ってみるね」


『ああ。真那ちゃん、私の後ろに』


「はい」


真那ちゃんはマスタードラゴンの後ろに下がり、俺は指先を的に向ける。


「……火よ」


魔力を最小限に意識して指先から火を出す魔法を出す。


すると、いつもは大爆発を起こすレベルの火がぱっと見で半分ぐらいにまで抑えられていた。


普通に見れば魔力操作の失敗なのだが、明らかに以前と違っていた。


「……何か、前よりも魔力操作がやりやすい気がする」


『……結論が出たな。封魔術式は千歳の魔力操作を狂わせていたとはな……』


マスタードラゴンは大きなため息をついて疲れたようにテーブルに座った。


まさか魔力操作が下手な原因が封魔術式だとは思いもよらず、それにすぐに気づけなかったことにショックを受けているらしい。


『……真那ちゃん』


「何ですか?」


『真那ちゃんがいなければ千歳の魔力操作の原因に気付くことができなかった。そこで、真那ちゃんの能力を見込んで、私達の専属アドバイザーになってくれるか!?』


「せ、専属アドバイザー?」


マスタードラゴンのまさかの提案に真那ちゃんは驚いている。


もちろん俺も驚いていると、マスタードラゴンは熱意のある表情で真那ちゃんを説得し始める。


『真那ちゃんのその鋭い洞察力と色々な本から得た知識は素晴らしい!是非ともその洞察力と知識で私達をサポートしてもらいたい!』


魔法で重要な空想力は俺よりも真那ちゃんの方がとても優れている。


マスタードラゴンは魔法のことを熟知しているが故に固定概念に囚われてしまっている。


そう言った点から柔軟な発想力や洞察力を持つ真那ちゃんの存在は今の俺たちにとっては貴重とも言える。


「え、えっと……」


『報酬として真那ちゃんが欲しい本や漫画を何百冊でも購入して秘密基地の本棚に置こう!所有権は全て真那ちゃんのものだ!』


「喜んでやらせていただきます!」


マスタードラゴンめ……真那ちゃんにとって最高の報酬であっさり専属アドバイザーとして雇用しやがった。


真那ちゃんは本好きであるのでお小遣いやお年玉の大半を本や漫画を買うのに費やしているのでマスタードラゴンの報酬に飛びつくのは必然だった。


「まあ、真那ちゃんがアドバイザーになるのは良いんだけど……マスター、俺の魔力操作はどうする?流石にこれ以上封魔術式を解除するのはヤバいよな?」


『ヤバいな。これ以上は千歳の体がまず持たない。封魔術式の調整は私には出来ないからな……術者であるアルフレッド本人じゃないと無理だ』


「でも爺ちゃん忙しいから日本には当分来れないって言ってたよね」


『……とりあえず、現在の状況を伝える為にアルフレッドに手紙を書くかな』


マスタードラゴンと爺ちゃんは情報漏洩を防ぐ為に電話ではなく、特別な封をした手紙で連絡を取ることになっている。


しかし、今手元にはレターセットが無いので買いに行くしかなかった。


『真那ちゃん、近くにレターセットとペンが売ってる店知ってるかな?』


「それなら近くに本屋さんがあるので、そこになら売ってますよ」


『ありがとう。あ、そうだ。ついでだから千歳も手紙を書いたらどうだ?』


「爺ちゃんに?」


『愛する孫からの手紙が来たらアルフレッドの奴、大喜びするだろうからな。たまには爺孝行したらどうだ?』


「……そうだね。手紙はあまり書いたことないけど、頑張って書いてみようかな」


『よし。真那ちゃん、本屋に案内してくれるか?ついでに欲しい本を買ってあげよう』


「やったー!ありがとうございます!」


ひとまず魔法の授業は中断して本屋に向かうことになった。


手紙……何を書けば良いのかなと、どうすれば爺ちゃんに喜んでもらえるのかなと色々悩みながら二人の後をついていく。




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