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第3話

会話がメインの説明回です。おやびんのTACO相場でヨコヨコしてて暇なので投稿します。

 ゴブリンを手早く片づけた律だったが、光が恐怖から腰が抜けてしまい動けないため、しばらくその場で休憩を取ることにした。


「す、すみません...。」

「別にいいよ。」


 不完全な状態でモンスターと対峙して足を引っ張られるよりも、しっかりと休憩してくれたほうが律としても有難い。

 それよりも、律には気になることがあった。


「見た感じ学生だが、なぜ一人でダンジョンに入ったんだ?受付で止められるだろう?」

「そ、それは...。」


 なぜか言いづらそうにしている。不思議に思った律だったが、ふとそれよりも今の彼女の状態を誰かに見られたら、下手に誤解される可能性に気が付いた。


「そういえばローブしかないけど着る?」

「え?...ッ!///」


 服は破られ、下着や見えてはいけない場所すら見えている状態だ。このままでは律が襲ったと誤解されかねない。


「...ごめんなさい、お願いしてもよろしいでしょうか?」

「たぶんサイズは大丈夫だと思うけど。」


 そういって律は自身の着ているローブを脱いで渡す。露になった律の顔に光はとても驚き、思わず声をあげた。


「え!?子供!?」

「誰がガキじゃコラ。たぶん君と近い年代だよ。」


「た、たしかに...。あれ?」


 納得した様子の光だったが、何かに気付いたようだ。そういえばさっき律が何か言っていたような...。


「というか、あなたも未成年なら一人で入ったらダメじゃないですか!」

「...君のような勘のいいガキは嫌いだよ。」


「私は来週の入学式で新潟開発に入学しますが、あなたはどこの学校に通っているんですか?」

「奇遇だね。僕も来週から新潟開発に通うんだ。」


「新入生なら入学式までダンジョンには入れないハズですよね!? 本当になんでいるんですか!?」

「そりゃお互い様だろ?」


 律は不正侵入したわけだが、彼女も新入生ならばまだ学生証がないため入れないハズである。自分を棚に上げて不正侵入を咎めるつもりだった律だが、返ってきた言葉からそれが不可能だと悟った。


「私は家の都合でダンジョン攻略の経験が必要だったんですよ。だから特別に許可を貰ったんです。」

「な、なるほど...。」


(結構いいお嬢様っぽいからね。本人曰く校長の孫らしいし。)


 能力の強度が遺伝しやすいことが判明してからというもの、血統主義が再び再燃して超能力における名家というものが登場した。そういった事情から、名家では家格のために子供に早くから実績を作らせようとする傾向があると聞いたことがあった。

 律は名家に全く興味がないため知識がほぼ何もないが、彼女の伝波家もおそらくそこそこの名家なのだろうと考えていた。

 

(おそらく彼女もそのくだらん名誉のための犠牲者か。)


「それで、大島さんはどうやって入ったんですか?」

「island じゃなくて wetland な。要するに、大沢だよ!」


「...それで、どうやって入ったんですか? ゲートは受付にしかないはずですが?」


 そのとき、律は自身の不正侵入をもみ消すための、たったひとつの冴えたやり方を思いついた。


(私にいい考えがある。)


「職員がよそ見をしていたから入りました。」

「はぁ!? 何バカなことをしているんですか!?」


「だからダンジョンを出るときは一緒に入ったってことで誤魔化せ。命令だ。」

「い、いやぁ...。えぇ...。」


 困惑した様子の光を見て、ここぞとばかりに律はたたみかける。


「僕って命の恩人じゃん? ね?」

「恩着せがましいにも程がありますよ...。っていうか、大池さんほどの能力者なら最低でもアベレージでしょう? ダンジョンの立入許可くらいありますよね。」


 能力者の区分けに利用されるのが、総合能力測定法(MOPP = Measurement of Overall Preternatural Power)という評価基準である。

 世間ではモップと呼ばれており、最大出力・持続時間・発動速度・正確性・範囲の5項目から100点満点で評価される。そのため、掃除などで「モップやった?」「うん、完璧だったね。100点満点だった!」などと言おうものなら大騒ぎだ。


 閑話休題、このMOPPだが点数に応じてランク付けをされており、それぞれ次のような呼び名がある。


0-24点:無能力者

25-49点:メジアン

50-74点:アベレージ

75-100点:アウトライアー


 この分類に応じて国から未成年の能力者へ支援金が支払われるなど、公的な基準にもなっているため学生や社会人にとって重要な基準となっている。

 ちなみにこの評価基準でアベレージ以上ならば、年齢に関わらずダンジョンの立入許可を得ることが出来るのだ。


「大池じゃなくて大沢ね。規模がデカくなってるじゃねぇか。」


「それで、立入許可だけど持っていないよ。だって僕メジアンだもん。」

「はぁ!? あれだけの能力でメジアン!? ...まさかバーチャレストですか!?」


 MOPPだが、点数が高い、つまり高位の能力者になるほど監視が強くなるため、それを嫌ってあえて手を抜いて測定を受ける人もいる。

 そういった人たちの呼び名として、無徳という意味の Virtueless と虚像という意味の Virtual から、バーチャレスト(Virtualest:偽る無徳者)という造語が生まれ、一般に普及していった。


 測定時に手を抜いていたことを厳密に証明するのは難しく、しかも法律に違反してはいないため野放しにされている。とはいえ、本来もらえた支援金や特権を捨てているに等しいため、よほど後ろめたい事情がなければそんなことはしない。


「まぁそうなるね。でも別に後ろめたい理由があったわけじゃないよ。」

「じゃあなぜ?」


「高位能力者って監視されるじゃん? 僕はそういう束縛が大嫌いなんだよ。」

「...え? それだけですか? それだけの理由で?」


「君にとってはそれだけかもしれないけど、僕にとっては自由が何よりも重要なんだよ。」


 生涯で初めて会うタイプの人間に、光は衝撃を受けていた。富や名声、地位などよりも自分のこだわりを優先するなど信じられなかった。

 だがそれと同時に、こだわりを持ち、そのこだわりを貫き自分の人生を自分で決める生き方を羨ましいと思う気持ちも少しあった。


 彼女の場合は、伝波家のために高位の能力者となり、名声を得るような生き方を生涯ずっと強制されている。

 だからこそ、彼女にとっては自分に欠けているものを持つ律がまぶしく見え、自分を変えてくれるかもしれないという期待すら抱いてしまう。


 それは、羨望ゆえの興味か、あるいは好意からの興味か、今の彼女には分からなかった。しかし、律がどのような人生を送るのかを見てみたいと感じ、律に対して強く興味を抱いていることだけは確かだった。


「能力といえば、伝波さんの能力って何? 知っていると戦略を立てやすいんだけど。」

「アベレージの水流操作系の能力です。水辺なら役立てますが、ここは洞窟なのでちょっと...。」


「なるほどね。相手の体液、例えば血液の操作とかできないの?」

「そこまではできないですね。自分の血液なら止血したりはできますけど...。」


(たしかに彼女は傷が多いのに出血量が少ないとは思ったが、なるほどそういう理由だったのか。)


 とはいえ、思ったよりも不便だというのが能力の詳細を聞いた律の印象だった。


「僕が能力で水を生成したら操ったりできる?」

「やってみないと分かりませんが...。そもそも気流操作系じゃ難しいでしょう?」


「できるよ。」


 そういって、律はいともたやすく空中に水を生成する。

 光は気流操作系の能力者に会って聞いたことがあるが、気流操作で水を生成しようとするとかなりの時間と集中力が必要とのことだ。そのため、気流操作系ではなく水流操作系の能力で生成するほうが圧倒的に早いらしい。


「う、うそ...。小滝さんって本当に気流操作ですか?」

「...さぁ? 気流操作じゃないかもね。あと、滝じゃなくて沢だから。大沢だよ!」


「大沢さんの能力も教えてくださいよ。私だけ教えるのは不平等でしょう!」

「大沢じゃなくて小沢だよ! ...ん? あれ?」


 すると、彼は小馬鹿にするような笑みを浮かべながら光に言い放つ。


「まぁいいや。...僕は自分の能力を教えるなんて一言も言ってないよ。」


 まるでそれが世界のルールであり、さも常識であるかのような毅然とした態度で、彼はそう言った。


「はぁ!? そんなのズルじゃないですか!」

「フハハハハハ! お願いに応えたとはいえ、勝手に教えたのはそちらじゃないか!」


「えぇ...。」

「残念だったな、トリックだよ。」


 何がトリックなのかは分からないが、これが詐欺というやつだということは理解した。

 怒りを通り越して呆れた光だったが、同時にこれほど気安い関係の人はこれまでいなかったことから、親密さを感じているのもまた事実だった。...たった今その親密さと信頼度は下がったが。



 彼と会ったことで、光の中で少しずつ、だが着実に何かが変わり始めていた。

自由っていいよね。高校時代はとにかく自由だったなぁ。

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