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#119 New year at New home!(後)

子供たちの声が絶えない、賑やかな家庭です。

 現状我が家のお騒がせ要員となっているのは、三人の『子供』たちだ。




 一人目は実の息子、竜王丸。数えで5歳。

 一人で歩いたり走ったり…毎日活発に動き回り、言葉も流暢になってきた。

 一方で、ごっこ遊びに夢中になって屋敷の中を駆け回ったり、木刀を振り回してあちこち壊したりと、トラブルが絶えない。

 度を越した時は宗誾殿や私が叱り、貞春様がなだめるというアメとムチで何とかなっているが…。


「それにつけても、紬は大人びておるのう。幼き日のお主に生き写しじゃ。」

「まさか。…あの頃の私はあの子よりずうっと不真面目にございました。」


 偽らざる本音だ。謙遜でも何でもない。

 紬は赤ちゃんの頃から手のかからない子だったが、数えで9歳になった今もなお、輿入れに備える勉強や練習に熱心に取り組みながら、竜王丸の育児に協力してくれている。

 ただ、自分のスケジュールが弟に乱されると見るからに不機嫌になるので、私と宗誾殿で話し合って、ちょっとずつでもお茶や食事を一緒にして、頑張ってるね、ありがとう、と伝えるようにはしているが。

 …竜王丸は行動が予測不能だが、所詮は非力な子供だからその意味では対処がしやすい。

 だが残る二人は同じ要領で対処する訳には行かない。




 二人目、小栗又一忠政殿。

 家康の馬廻を務める小栗家の跡取り息子で、一番槍に固執するバ…いや、戦国(この)時代にあって、ハイリスクな一番槍の功名を何度も獲得出来るのは紛れもなく一つの才能なのだろう。

 それはいいとして、数日おきに我が家に押しかけて来て、挨拶もそこそこに宗誾殿に打ちかかるのはそろそろやめてもらえないだろうか。

 又一殿なりに工夫しているのは分かる、が…自分の身を守るのが精々の私でも分かる、あのパターンでは死ぬまで、いや死んでも、宗誾殿には勝てないだろう。

 じゃあどうすればいいのか、と聞かれても困るが…いや、多分『それ』こそ宗誾殿が望んでいる事だろう。

 独力で、誰にも頼らず目標を達成しようとして…上手くいかない。そんな時の近道はどこにあるのか、それを自力で気付かせる所から始めよう、というのが宗誾殿の思惑だろう。


「…という事でよろしゅうございますか?」

「む?ああ、うむ…。」


 …そういう事だといいなあ。




 三人目、井伊虎松殿。

 一度は途絶えた名門井伊家の復興という大役を一身に背負い、半ば住み込みで宗誾殿に師事する若武者、だが…良く言えば粗削り、悪く言えば未熟そのものだ。いや、生き急いでいると言うべきか。

 来年ようやく数え15歳となり元服を迎える…という事は、実戦経験ゼロだし、何より体が出来上がっていない。宗誾殿はその辺を加味して稽古をつけようとしているのに、四六時中鎧を身に着けて動こうとしたり、通りすがりの牢人に死合を挑んで首を取ろうとしたり、『形から入ろうとしている』感が半端じゃないのだ。

 戦国の侍は日常的に噓を吐き、人を殺して首級(くび)の数を競うのが一般的ではあるが、宗誾殿や本多忠勝殿レベルならともかく、心(心構え)、技(駆け引きのテクニック)、体(体作り)が未熟な状態でそんな無茶を繰り返していたら、そこら中に恨みを買って死期を早めるであろう事は容易に想像出来る。

 その辺り、第一印象最悪の出会いを果たした又一殿は、宗誾殿以外に喧嘩を吹っ掛けたりしないのでまだマシな部類に入るだろう。


「儂が面倒を見てやれるのは今年限り…少々手荒くせねば、元服に間に合わぬな。気を引き締めてかからねば。」

「せっかく虎次郎殿が引き立ててくださったのですから、虎松殿にはもっとご自身を労わっていただきたいものです。」




 何だかこき下ろすような形になってしまったが、別に三人とももっと大人しくしろとか、シンプルに迷惑だとか言っている訳ではない。

 弱肉強食の戦国時代、消極的で大人しいタイプよりも、行動的で向上心のあるタイプの方が生き残って出世出来るだろう、基本的には。

 ただ、もうちょっと。

 もうちょっとみんな慎重に振る舞ってくれたら、私も落ち着いてスローライフを満喫出来るのにな~…。




 などと儚い望みを抱いていた(オマエ)の姿はお笑いだったぜ。

 ははっ(泣)。

次回、北条領から新しい仲間がやって来る…!

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― 新着の感想 ―
竜王丸:又一、虎松!父上に噴流攻撃を仕掛けるぞ! 又一・虎松:承知! 宗誾:コイツ…来るのか!?……わああぁ!? 竜王丸:いけるぞ!もう一度噴流攻撃だ!目潰し! 宗誾:おおぉ!?クソぅ!イヤーッ! 竜…
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