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5話 まさか……の事態に吃驚、吃驚


 今日は俺の記念すべき1日となる。

 その記念日となる1日を飾るために街の住人には全員死んでもらおうと思う。


 街を1つ吹き飛ばすのは少々やり過ぎな気もするが……。 

 まあ、問題ないだろう。


 俺は『『46センチ91式徹甲弾』を街の上空から四方を囲むように召喚して配置していく。


 合計1000発の砲弾で街の上空を囲んだ。


 ここ迄は『ドラッグ(人に対する憎しみを増大させる薬)』を使わなくても出来る。


 砲弾を街に向かって放つ直前にドラッグを飲んだら、完璧に街ごとまるっと吹っ飛ばせると思うんだよね。


 俺は街が見渡せる丘に着地して、ドラッグを飲む事にした。


 良し!

 準備万端!

 俺はドラッグを飲み込んだ!

 うぉぉぉぉぉぉ!

 こいつは効く!

 こいつは効くぜぇー!

 人に対する憎しみがとてつもなくこみ上げてきた。

 遠くから視界に入るだけで、粉微塵にしたくなるほどの憎悪だ!

 殺れる!

 今なら確信を持って殺れる!

 そんな気がする!

 俺は手に力を込める。

 そして街を囲む砲弾を、街に向かって発射するようにコントロールした。


 しかしそこで予想外の事が起こった!

 俺が配置した砲弾は街に向かって勢いよく発射されるはずなのに、何故か全砲弾が俺に向かって飛んできた!


 うへー。 やべーー!

 マジにヤバイ!

 俺は咄嗟に『全てを無効化するシールド』を展開しようとしたがうまく発動しない!


 何故だ!?

 そんな事よりヤバイ、ヤバイ、ヤバイ!

 砲弾が俺目掛けて近づいてくる!

『空を自由に飛ぶ白銀の翼』もでない!

 砲弾からはもう逃げ切れない!

 もう駄目だ!

 どうあってもかわせない!

 ビビって目を閉じた瞬間だった……。


 俺を貫いて殺すはずの砲弾は俺の前で防がれた。

 気がつけば兄ケイトが俺の前に立ち塞がり『全てを無効化するシールド』を展開していた。


「ふう! 間に合って良かったぞ! 危ないとこだったな! 怪我はないか?」


「兄ちゃんーーー!」

 流石頼れる兄ちゃん!

 俺は兄ちゃんに抱きついた。

「間一髪だったな! 森への被害も妹達が防いでくれたようだし、とりあえずは良かった……」

 姉とその友達にも色々感謝しないといけないな。

「ホープ! 怖い目に合わしてすまなかったな。全ては家に帰ってから説明しよう」

 そう言われて俺は兄ちゃんに抱えてもらい帰宅した。


____



 一族の召喚魔法は、自分の魔力を触媒にしてあらゆる時空の異なる世界から、様々な力をかりて行使する魔法。


 術者の感情が閾値を超えて乱れ過ぎると、触媒としていた魔力も乱れて、召喚魔法が発動しなかったり、発動中の召喚魔法がコントロールを失い術者に返る。通常ではまず起こり得ないのだが『ドラッグ(人に対する憎しみを増大させる薬)』にはそれを起こさせる程に強力な効果があるらしい。


 つまり、『ドラッグ(人に対する憎しみを増大させる薬)』を飲んで悪の感情が高まり過ぎると、召喚魔法は発動しなくなったり、発動中の召喚魔法は術者に返るとの事。


『ドラッグ(人に対する憎しみを増大させる薬)』を使って、人を殺す事に成功した者は、召喚魔法を使わずにステゴロで撲殺して、人を殺す事に成功したらしい。


 確かにあの興奮状態なら、人を殺す迄殴れそうな気もするが……。


 召喚魔法が使えないなら、10歳の非力な俺の力では人っ子一人殺れる気がしない! 

 赤子や幼子、自分より小さな子供になら勝てるかもしれないが……。 そんな真似ができるならこんなに苦労していない。

 仮にドラッグの力をかりてそんな事ができたとしても、後からどえらいトラウマが発生しかねないし……。

 何より人を直接その手で殺す事に忌避感がある。


 しかし、ドラッグなしでも日に日に人間に対する悪感情は高まって行く……召喚魔法が使用不可能になる程に悪感情が高まる日もそう遠くないだろう……。


 そうなったら完全に詰みだ……。


「うわーん。 今の僕じゃあ、やっぱり人なんて殺せないよー!」

 俺はまた、泣きそうになっている。

 というか泣いている……。

「可哀想な我が弟よ。 あのドラッグがオマエには向いてない事を、見抜けなかった節穴な兄を許してくれ!」

「うわーん。 兄ちゃんは何も悪くないよー」

「そもそも地上の下等な生物にすら善悪の感情を抱けてしまう、慈悲深く優しいホープよ。 お前は優し過ぎるのだー」

 兄は俺を抱き寄せ涙する。


 そんな俺とメビウス兄さんを見るバージニアの目は怪しい光を放っていた。

「美しい兄弟愛でありますな。 じゅるり……」

「あんまりうちの家族をそういう目でみないでほしいわね」

「そういう目ってどういう目でありますか!」

 姉とバージニアは何やら言い争っている。

 そこに割ってパーラが入ってくる。

「ても、ホープって何で10歳迄、人を殺さずにいれたん? まず、それがあり得ないみたいなー」

「普通は情緒が発達する前の、5歳か6歳で親と一緒に人を殺すでありますな。 遅くとも1人で外にでかけるようになる8歳迄には、人を殺したてりするはずではありませんか?」

「それはそうなんだけど……実は……ワタシは父か母がもう手解きしたと思ってたんだよね」

 ケイトは遠い目をしている。


 父は既に俺が母から人を殺すのを教わっていたと思い、母は父が教えているだろうと思い、兄や姉は既に人なんてとっくに殺していて当たり前だと思っていたのだ……。

 リンゲルマン効果っていうやつだな。

 そのおかげで10歳迄人を殺さずに済んだのだが、10歳を越えて神の啓示により殺人衝動が芽生えてしまった。

 

 事情が共有された中で、ふと横を見ると見た目はパッパラパーな、パーラが自信満々に言い出す。


「あー。 パーラ的にはー。 ホープがうまく人を殺す方法を思いついたみたいなー」

 ……。

 パーラの意見にしては良い案だと思った。

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