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3話 兄メビウスの両手


 人を殺したいと本能ではそう思うのに、いざ殺そうと思うと殺せない。

 

 殺さない。

 殺せない。

 この2つは似ているがその差は限りなくデカイ!

 殺さない! はやればできる子!

 殺せない! はやろうと思ってもできない子


 俺は前世ではやればできる子だった気もするんだが、本当はやってもできない駄目な子だったのかもしれない。


 このままだと自信を喪失してしまいそうだ……。


 しかし、人は殺したい!

 とにもかくにも殺したい!

 が、いざ殺そうと動き出すと、どうしても殺せない!

 この無限地獄に解決策等あるのだろうか?


 腹が減ったけど太りたくないから食事しないとかの次元じゃない。

 腹が減って死にそうだけど食べたらそれは犯罪だから食べちゃ駄目という感覚に近いだろうか?

 金もないのにレストランで食事したい! そういう感覚に近いかもしれない。

 越えてはいけない一線というのが、俺にとっては殺人にあたるようだ。

 人を殺さない限り満たされる事のない牢獄にいるような気持ちになる。


 そう思うと惨めな思いになりまた涙がでてくる。


「泣かなくても大丈夫だホープ! 一族の歴史にはホープのように人が殺せなくて苦労したという人物が何人かいる」


 兄のメビウスか古びた本を開いて見せてくれた。


 本の内容はこうだった。


 昔、人を殺すことを嫌い。 神槍の一族の森を抜け出して生きる事を選択した者がいた。 しかし、1人になっても人を殺したい気持ちを抑え切れない。 されども人が殺せない。 そしてその者は苦しみの中で、新しい召喚魔法を会得した『ドラッグ(人に対する憎しみを増大させる薬)』である。


 『ドラッグ(人に対する憎しみを増大させる薬)』を飲めば一時的に人を殺したくない気持ちを消せるそうだ。


「このドラッグさえ飲めばホープも人をきっと殺せるはずた!」

 兄の得意なニコニコスマイルが素敵だ!


「ありがとうメビウス兄ちゃん! それでその『ドラッグ(人に対する憎しみを増大させる薬)』って今誰か使えるの?」


 いつの間にか、メビウス兄ちゃんは両手を天に掲げていた。


「兄ちゃん……。 まさか……」

「すまん、俺には手に負えない! つまりお手上げだ!」


 兄ちゃん! 兄ちゃん! そりゃねーよ!

 と言いたいが膨大な本の中から見つけ出した文献の情報を探し当ててくれただけでも有り難い!

 

「すまん、俺はあまり知り合いが多くないんだ……」と話す兄ちゃんの顔に、こちらが申し訳なくなる……。


「ありがとう兄ちゃん! でもこれで人を殺せる希望ができたよ! 流石僕の兄ちゃんだ!」


 そう言うと兄のメビウスは少しだけ救われたような顔をしてから「引き続き何か情報がないか探す」と言って書庫の方に歩いて行った。


 メビウス兄ちゃんはわりとボッチ気質で、俺しか遊び相手がいないからな。 


 知り合いが少ないのは仕方ない!


 ならアクティブで交友関係が広い姉に聞いてみよう。


 もしかしたら『ドラッグ(人に対する憎しみを増大させる薬)』を使える知り合いを紹介してくれるかもしれない!


 というわけで俺は姉を探しに家を出た。


 

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