悪魔、元凶を解決する……
悪魔はどう解決するのか?
正義の案内で事の起こりの会社に着いたディアボロス。そのままその会社に入って行った。
「すいません、ご予約か何かですか?」
受け付けで声を掛けられるディアボロス。
『少し前、俺と契約の話をした男に会いたい』
「ああ!…坂下は生憎忙しく、お約束が無いと」
『大丈夫だよな?』
ディアボロスの目が赤く光る。
「はい、問題ございません。直ぐにお呼び致しますので、応接室でお待ち下さい。ご案内致します」
『ウム。よろしく頼む』
応接室に通されたディアボロス。少し待つとすぐに坂下がやって来た。
「何だ君か。私は忙しいんだ。君の所とは契約を切っただろう?」
『それはお前が不正を願い出たからだ。正義の酷い待遇はどうにもおかしい。責任を取れ』
「アッハッハ、何を言っているのやら……君、頭がおかしくなったのかね?」
『おかしく等ない。仕出かした事の責任を取る。至極当然の事だ』
「仕出かしたのは君!私は関係無いよ」
怪しくディアボロスの目が光る。
『さて、正直に言うんだ。何故にこの様な事をしたんだ?』
「はい。私の上司もその上もみんなやっている事です。特に悪い事をしている自覚はありません。いう事をきかない彼が気に入らなかったんです」
『ほう。随分私的な理由だな?』
「はい。私は課長です。しかも、この様な大手のです。そのくらいの融通は構わないでしょう」
『で、そのやっているという奴等の証拠は持っているのか?』
「勿論です。私に罪を着せようとした時の為、しっかりと保管してあります」
『そうか、それは良い事だ』
「ありがとうございます」
『では、その証拠を持って然るべき機関に行き、自分の事も含めて全て洗いざらい白状するんだ。そこまでが貴様の成すべき事だ』
「承知致しました。すぐに対応致します」
坂下は立ち上がり、ディアボロスに頭を下げて自分の部署へと戻った。
ディアボロスは坂下の会社を出ると、すぐにとある機関に向かった。そこは、会社の不正等を取り成す所である。ここでもディアボロスはその能力を使い、そこの職員を上手く操った。
事が終わると、
『さて、クレープでも食べるか』
ディアボロスはその言葉と共に正義の身体から出た。
「いきなり俺の身体を使うなよ~……」
『緊急事態だ』
「12時か……とりあえず、昼でも食べて会社に戻るか?」
『クレープを頼む』
「食べなくてもいいんだろ?」
『気にするな。お礼という事にしておいてやる』
結局、コンビニで自分の昼とディアボロスのクレープを買う正義であった。
会社に戻った正義、
「おい、何処に行ってたんだ?書類整理とシュレッダー!掃除も残ってるぞ!」
正義は課長に言われ、午後はいつもの様に雑用をこなす事となった。
正義は資料室にて書類整理をしていた。
『フム。飽きないのか?』
「飽きるよ。でも、やらないと給料貰えないしな」
『なかなかに、人間界も大変だな?』
「生きて行くのは大変だよ」
何気ない会話をしていると、資料室の扉が勢い良く開いた。
「福森君、ここに居るのかね?」
「はぁ……社長?」
資料室に飛び込んで来たのは社長である。
「すぐに社長室に来なさい」
社長は正義の腕を引っ張って社長室に向かった。社長室に入った正義、そこには経営陣が顔を並べていた。
(うわぁ……思い出したくない面子……)
「とりあえず、テレビを見てくれるか?」
社長は付いているテレビを指差す。そこには、正義との契約を断った会社が謝罪会見を開いていた。
[この度はこの様な不祥事、誠に申し訳ございませんでした]
社長とかなり上層部であろう脇の2人がテレビの向こう側で頭を深々と下げていた。
[見返りを求める不正から法的にも触れる事まで、全く何から謝罪したらいいか分からないですが、会社の膿は必ず排出致します]
言葉を出しては立って頭を下げる。見ているだけで大変だとは分かる。その中で、
[裏取引をしない取引先がありました。その会社との契約を打ち切るという人道的にもおかしい事もございました。クリーンな会社こそ取引を最優先にするべき事、もう一度会社の有り方を見直します]
会見の言葉を受け、社長が言葉を発した。
「福森君、この会社からの契約がかなり来ている。断ったのは福森君だね?」
「はぁ、確かに断りましたが……」
「さて、福森君は正しい事をした。なのに、何故に彼が不当な扱いを受けているのかね?」
社長は経営陣に目を向けるが、誰もが下を向いて目を背ける。
(社長、確かに俺が説明する時居なかったよな~……)
正義がぼんやりと考えていると、ディアボロスは正義の頭に手を乗せた。すぐに正義の目が赤く光る。
『で、貴様はどう思っているのだ?』
「私は恥ずかしい。社長でありながら、今までこの事を把握出来なかった。失敗は取り返す為にも新たなチャンスを与える物。皆で吊し上げにする物では決してない。そして、正しい事の結果はこうして着いて来る」
『で、後ろの立ってるだけの用無しはどうする?』
「待て貴様、我々を用無しだと?」
「少し調子に乗り過ぎじゃないのか?」
数人から言葉が出たのだが、
「だまらっしゃい!君達はその前に言う事が有るんじゃないのか?」
社長の一括でその場の静寂が戻る。
「必ず、この者達や部署の上司にも責任を取らせます」
社長は深々と頭を下げた。その謝罪を受け、ディアボロスは社長室を出る。出たと同時に正義からディアボロスが出た。
「ディア、社長に貴様は……」
『構わんだろ。俺には関係ない』
「……社長、操れてなかったのか?」
『いや、社長に偽りがなかったからある程度の自由が効いただけだ。あの社長は、そういう意味では正直者だな』
この後、正義の会社では色々と大変な事となった。経営陣の見直しと共に正義を迫害していた課長と部長は降格処分として部署移動、正義の同僚達は正義に頭を下げる事となった。
「ディア、進み方が速くないか?」
『な~に、俺が刷り込んでおいたのさ。取引先の会社だって、不正が明るみに出てからが速かっただろ?そもそも、その筋の機関の動きだって今日にすぐ動く訳でもあるまい。俺の有能さが分かる結果だな。さて……今日の夜が楽しみだ』
「夜?」
その日の仕事終わり、ディアボロスは正義の身体に入り、取引先の会社に向かった。
会社の中に入ると、誰も居ない会社のロビーに正義を契約解除した課長とその上司らしき人物が居る。2人共に目がどんよりと雲っている。
『どうやら、お前達に罪を着せて解雇した様だな?』
2人は無言でディアボロスを見る。
『ハーハッハッハ。いいぞ、なかなかな絶望だ。悪いが頂くぞ』
ディアボロスは息を大きく吸い込んでいく。元課長とその上司はその場に倒れた。
『下衆な者の絶望だったが、かなり美味だったぞ。ハーハッハッハ』
ディアボロスは会社から出て行った。
「ディア、あの人達は大丈夫なのか?」
『大丈夫だ。死にはしない』
そのまま帰路に着く2人であった。
まだまだ波乱万丈そうですな。