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同じ目線

「一応、理由を聞いてもいいか?」


藍の発言に驚きながらも、奏慈は冷静に聞く。

あの藍が自分から別れを切り出すのは普通の事ではない。

何か理由がある筈だ……奏慈は真剣な表情で藍を見つめる。


「お前の隣に……オレが立つのは相応しくないだろ」


それに対し、藍は唇を噛み締めながらそう言う。

奏慈の正体が創造神でも、藍の思いは変わらない。

だが、ただの人間と創造神では立場が違い過ぎる。

藍は今後の事を考え、身を引く事にした。

それが奏慈や世界の為になると信じて。


「なんだ、そんな事か」

「なに?」


そんな思いを知ってか知らずか、奏慈は笑みを零した。

これには流石の藍も黙ってはいられない。


「何が可笑しいんだよ」

「いや、ごめんごめん。藍らしくなくて笑っちゃった。

 お前が立場を気にして、別れを切り出すとは」

「な、なんだと!? それどういう意味だよ!」


藍は怒る。身を削る思いで言ったのに、あんまりな言葉だ。

本心は立場とか関係なく、ずっと一緒に居たい。

全ての責務を投げ出し、自由に過ごせばいいと思っている。

それなのに……あんまりだ。藍は怒りを爆発させる。


「そのまんまの意味だよ。全く持って、お前らしくない。

 僕はてっきり、真妃に嫉妬したかと」

「……確かに嫉妬はしてるよ、それは否定しない。

 でも、今はそんな事より、お前の為に行動したいんだ!!」

「……それがお前らしくないと言ってるんだ」

「な、なに?」


藍は他人を助ける為なら、自分の命すら捧げる聖女の鑑だ。

今回のように奏慈や世界の為に身を引くのは聖女らしい行動と言える。

しかし、それは本心ではない……我慢に我慢した上での行動だ。


「自分の心に嘘を吐くな。正直に言え」

「……正直に、か」


奏慈の望みは藍が藍らしく生きること。

藍が本心から別れたいと願うなら、それを止めるつもりは無い。

だが、今の藍は自分の幸せを無視して、一人になろうとしている。

それは本当に藍の望みか? いや、違うだろう。

藍には今度こそ、伸び伸びと生きて欲しい。

それで自分が嫌な思いをしても、どんと来いだ。


「ふん、オレの思いを無視しやがって……」

「それはお互い様だろ。寧ろ、先に無視したのはそっちだ。

 さあ、正直に言え」

「……ほんと、最悪」


藍は深く息を吐く。どうして、こんな奴を好きになってしまったのか。

奏慈に恋してから、自分の人生は滅茶苦茶だ。

異世界に転生して、戦いに巻き込まれて……嘘を吐く事もできなくなった。

こうなったら、責任を取って貰うしかない。


「オレは……お前と一生一緒に居たい! 例え、何があっても!!」


藍は観念して、遂に本心を口にする。もうどうなってもいい。


「……藍、ありがとう。そう言ってくれて、嬉しいよ」

「うん……」


奏慈はそう言うと、藍を強く抱き締めた。

瞬間、藍の心と身体に熱が広がる……これが藍を思う奏慈の気持ち。

なら、負ける訳にはいかない。藍も奏慈を強く抱き締め返す。


「……言っておくが、オレはお前のこと許してないからな。

 少しの間とはいえ、創造神だった事を隠しやがって」

「それはごめん……落ち着くまで伏せておこうと思ったんだ。

 いきなり言っても、混乱するだけだろ?」

「そ、それはそうだけど……」


一転して、二人の間に流れる空気はいつもの物に戻った。

何故だろう……随分と久しぶりな気がする。二人はその空気を存分に吸う。


「……奏慈、ごめん」

「えっ、突然どうした?」

「いや、また勝手に突っ走っただろ……それを謝りたくて」

「藍……」


藍は奏慈が創造神である事を知り、今までの行動を悔いた。

奏慈を追い詰めたのは自分……そう思うようになったのだ。

今回、藍が自分から別れを切り出したのはそれに対する謝罪もある。


「僕も一つ言っておこう。藍は何も悪くない。

 創造神復活は必然だったんだ……だから、気にするな」

「……ありがとう」


藍が謝る必要はどこにも無かった。寧ろ、謝るべきなのは奏慈の方だ。

藍の心を惑わせ、苦しめた……大罪人にも程がある。


「さて、辛気臭いのはここまで! 晩飯を食いに行こうぜ!!」

「ああ! っと、そうだ……エスコートしますよ、創造神の妃様」

「うっ、その言い方止めろ!! なんか、恥ずかしいだろ……」


こうして、二人は共に歩き出す。その足取りはいつもより軽く、楽し気だった。


「――ハンデッドさん、話しに来ました」

「ほう、ワガハイの元にも来るとはな」


無事に食事を終え、あとは寝るだけ……そんな時間に奏慈は再び動き出した。

向かった先はハンデッドの元。今日もハンデッドは剣の素振りをしている。


「それで話とは何だ? ワガハイは特に話したい事はないぞ」

「僕にはあります。

 驚きましたよ……僕の正体を聞いても一言も喋らなかったのは」


奏慈は正体を言う時、他の何よりもハンデッドを警戒していた。

戦闘狂であるハンデッドの事だ……正体を言えば、きっと襲ってくる。

だが、意外な事にハンデッドは襲うどころか一言も喋らなかった。


「ふっ、お前がただ者ではない事は初めて会った時から感じていた。

 今更お前の正体を知らされても、別に驚く事はない」

「ほう……」


それっぽい理由だ。確かにそういう事なら襲う事はないだろう。

しかし、それがハンデッドにも当てはまるかというと微妙な所だ。

いつものハンデッドなら強者の登場に喜び、戦いを挑むのが自然な流れ。

それを華麗にスルーしたのは普通の事ではない……他にも何か理由がある筈だ。


「どうやら、僕の事は事前に聞いていたようですね……どこまで聞きました?」

「……ワガハイに聞かず、コイツに聞いたらどうだ」


その理由を探ろうとする奏慈に、ハンデッドは自身の剣を見せつける。

その剣は何の変哲もないサモンウェポンから変化した剣だ。

そんな剣を見せつけて、どうしたというのか。


「止めておきます。ソフィア以上に、暴れ出したら大変ですので」

「そうか……」


奏慈はそれに対し、首を振って断った。

ハンデッドはそれを受け、少し落胆した様子を見せる。

しかし、すぐにまた剣を振り始めた。

さっきから一体、何の話をしているのだろう?


「良い機会です……少し昔話でもしましょうか」


その様子を見つめながら、奏慈はゆっくりと語り出した。本当に何だろう?


「世界を創った後、僕は次に生命を創りました。

 すると、その中から知性を持った人族の先祖が誕生したんです」

「……人族の真祖か」

「まあ、そう言ってもいいでしょうね。そこから人族は爆発的に増えた。

 僕はそれを見て、自分でも真祖を創りたくなったんです……魔族の真祖を」


ハンデッドは剣を振りながら、奏慈の話を真面目に聞く。

いつものハンデッドなら、もう奏慈を追い払っている所だ。

なのに、今日のハンデッドは話に反応しながら、剣を振り続けている。

それだけ興味深い話なのか? 今日のハンデッドはどこか可笑しい。


「ですが、ある真祖はじゃじゃ馬で言う事を聞かない奴でした。

 それだけだったら、まだ問題は無かったのですが……」

「凶暴性が高く、人を襲い始めた」

「その通りです。その真祖は内なる獣を押さえられなかった。

 結果、僕はそいつを封印して、対策を練る事にしたんです。

 まあ、罪醜業が発生したせいでその暇はありませんでしたが」

「……そういう事か」


真祖は大きく分けて二つ存在する。一つ目は罪醜業発生前に創った真祖。

二つ目はソフィアに襲われ、バラバラになった後に創った真祖だ。

ぶっちゃけると、その二つに創った時期以外に大きな違いは無い。

しかし、二つ目に創った方が一つ目よりも安定している改良型だ。

奏慈が話に出している真祖のように、暴走するリスクは無くなっている。


「では、明日よろしくお願いしますよ」


ひとしきり話した所で奏慈は背を向け、歩き出す。

結局、奏慈が一方的に話して終わってしまった。

これでは会話とは言えない……一体、なんだったのか。


「……いずれ、また戦う事になる。その時を待っておけ」

「ふっ、分かりました。その時を待ってますよ」


そんな奏慈にハンデッドは最後にそう言う。

その言葉を聞き、奏慈は楽しそうに立ち去るのだった。


「改めて、作戦を説明します。いいですね?」

「ああ、頼む」


――次の日。奏慈は居間に皆を集めると、作戦を説明し始めた。

方針は昨日の内に決まっている……打倒ソフィアだ。

今から説明するのはその打倒ソフィアを達成する為の作戦になる。


「まず、マガミとオクリは待機だ。

 またエーデルリッターが来る可能性がある」

「分かりました」

「お心のままに」

「次にルフとハンデッドは僕達と行動を共にして貰う。

 戦力は多い方がいいからな」

「了解じゃ!」

「やれやれ……」


作戦も昨日の内に決まっていたが、状況が状況だった。

恐らく、理解し切れていない所がある。

その為、改めて説明する事になった。

作戦を成功させなければ、打倒ソフィアは夢のまた夢。

ここで決めなければ、逃げられてしまうだろう。


「そして、僕達はソフィアの居る大神殿に向かう。

 戦いをなるべく避け、ソフィアだけを叩くんだ」

「ええ、敵はソフィアだけですもの!」

「とは言っても、邪魔は入るだろうな……」

「それは仕方ないわ。上手く避けましょう」

「消耗が一番の敵ですからね……」


大神殿はその名の通り、この世界で最も大きな神殿だ。

帝国領にある聖地に建てられており、その歴史は古い。

それもその筈……その神殿こそ、望結が建てた世界で最初の神殿。

創造神である奏慈を思いながら、皆で建てた神殿だ。


「それにしても、そんな場所を聖地にするなんて。

 ソフィアも面の皮が厚いな」

「全くよ、どこまで図々しいだか」


ソフィアはその大神殿を創造神教の総本山にする事にした。

同時に周辺の地域を聖地にする事で立ち入りも厳しくする。

こうして、大神殿はソフィアの居城として使われるようになった。


「よし、あとは歩きながら説明します。

 それでは!」


奏慈は勢いよく立ち上がる。だいたい説明し終わった。

目指すはソフィアの元! 銀の扉を出現させ、出発する。


「ちょっと待った! まだ言う事がありますわ!!」

「えっ、な、なんですか?」


フランはそんな奏慈の前に立ち塞がり、その腰を折った。フランは続けて言う。


「カンナギ……いえ、ソウジ! 次がアタクシ達の最後の戦いですわ!」

「そ、そうですね」

「なのに、未だに敬語は可笑しいと思いません?

 この際、変えましょう!」

「え、ええ……」


奏慈は困惑する。何かと思えば、今更そんな事を言うとは。

そういえば、前にもこういう事があった気がする。


「アタクシ達は仲間……立場は違っても、心は一つ!

 だから!!」


フランはそう言うと、奏慈に向かって拳を突き出す。

思い出した……ダハルに向かう道中でもこういう事が。


「その喋り方、もう止めて下さいまし……」

「あっ」


そうだ。あの時は逆で、奏慈からフランにそう言った。

『別に敬語でなくても大丈夫ですよ』と。

そして、改めて今それを頼む理由は一つ。


「分かった。よろしく頼む……フラン」

「ええ……ええ!」


これからも共に居る為だ。最後の戦いでも、これで終わりではない。

これからも世界は続く……その世界を共に見る為に同じ目線でいたかった。


「それならボクも頼む。上から目線は勘弁だ」

「ボーアさん……分かった。よろしく頼むぞ」


それにボーアも乗っかる。これで二人は奏慈と同じ目線で世界を見れるだろう。


「さあ、行こう! 新しい世界を創る為に!!」

「おお!!」


奏慈は高らかにそう言うと、改めて出発した。

その出発を止める者はもう居ない……皆、同じ場所を見据えている。

ここまで読んで頂き、ありがとうございました!

もし誤字脱字がございましたら、ぜひ教えて下さい! 修正致します!

感想・評価・リアクションも募集します! よろしくお願い致します!

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