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雷鳴轟く

「はあ、そこまで言うとはのう」


ルフは呆れた様子でそう言う。

敵意剥き出しの望結に対し、ルフは落ち着いていた。

『そいつは敵……私達の敵よ!』。

そう言われたら、どんな人でも多少はムッとするもの。

だが、ルフは全く意に介していなかった。

子を見守る親のように、ある程度の距離を取っている。


「うるさい! 早くそこを退いて!!」


そんなルフの態度が気に入らないのだろう。

望結の機嫌は増々悪くなり、声を荒げる。

ここまで怒ってる望結を見るのは初めてだ。


「いいわ……そっちがその気なら、こっちにも考えがある!

 ルフ、構えなさい! ここで貴方を倒す!!」

「……自分も加勢します」


望結の怒りは収まらず、遂に弓を出現させ、ルフに向ける。

イカリもそれに続き、同じように杖をルフに向けた。


「み、望結! イカリ! 二人共、ちょっと待ってくれ!!

 さっきから一体、何に怒ってるんだ!?

 僕にも分かるように、ちゃんと説明してくれ!!」


そんな二人の前に奏慈が割って入る。

まだ頭が混乱しているものの、放っておく訳にはいかない。

望結は何故、あそこまで怒っているのか?

真妃の部下だとしても、怒り方が親の仇と言わんばかりだ。

かなり異常に見える……その理由を知りたい。


「望結、奏慈の言う通りだ。一から説明してくれ。

 ただ敵だと言われても、オレ達は納得できない」

「同感だ。勝手に話を進めるな」

「右に同じくですわ」

「くっ、藍まで……分かったわ。ちゃんと説明する」


そこに藍達も割って入り、ルフを守るように立つ。

形勢不利。この状況で、言わない訳にはいかない。

望結は弓を仕舞うと、観念して喋り始める。


「――分かった。相手になってやろう」

「えっ」


しかし、それを寄りにも寄ってルフが制した。

ルフは剣を出現させると、望結に向ける。


「る、ルフさん、どうしてですか?

 何故、貴方が止めるんです?」


ルフの行動に奏慈は首を傾げた。

あのまま黙っていれば、ルフは戦わずに済んだ。

都合が悪い事を言われても、弁明すればいいだろう。

わざわざ、助け舟を出す必要は無い。


「……誰にでも事情はある物じゃ。わらわにも、ミユにも。

 それに配慮したまでの事よ」

「配慮……ですか」


人にはそれぞれ事情があり、配慮するべきだ……それはそうだろう。

だが、それだけの理由で本当に助け舟を出したのか?

奏慈には分からない……望結とルフにはどんな事情があるのだろう。


「さあ、かかって来い! わらわの強さ……見せてやろう!」


そんな中、ルフは元気よく声を上げた。

気持ちを切り替え、準備万端のようだ。


「……ルフ」


それに対し、望結はなんとも言えない顔をしている。

もう要らないのに、親が折れて欲しかった物を買ってくれた。

嬉しいような、悲しいような……その時と同じ気持ちになる。

でも、それならそれで都合が良い。望結も覚悟を決める。


「それはこっちの台詞よ!

 私とイカリの力……見せてあげるわ!!」

「うむ、来い!!」


こうして、二人の戦いは始まった。

両者同時に走り出し、武器を構える。


「本当になんなんだ? なんで、二人は戦う事に……」

「……分かりませんわ。アタクシ達は完全に蚊帳の外ですもの」

「だが、一つだけ分かる。どちらもお前を思っての行動だ。

 そうでなければ、あそこまで必死にならないだろう」

「僕を思ってか……どうして、そこまで」

「……まあ、今は見守ろうぜ」

「ああ……」


思う所はあるものの、奏慈達はその戦いを見守る事にした。

言いたい事は山ほどある。聞きたい事も星の数ほどあった。

それでも今は聞かない……聞くのは全て終わってからだ。


「私から行くわ! ライトニング・ロアー!!」


先手を取ったのは望結だった。挨拶代わりの矢をルフに放つ。

その矢は爆音を掻き鳴らし、空を切り裂いて飛んでいく。


「そんな物でわらわは止まらん! ほれ、行くぞ!!」

「……ルフさんは一体、どんな攻撃を」


ルフはそれを見て、自信満々に言う。果たして、その回答は?


「おりゃ!」

「って、ええ……」


答えは……武器投げ。ルフはその矢に向かって、剣を投げた。

余りにも普通の答えに奏慈達は拍子抜けする。

だが、次の瞬間、思いもしない事が起こった。


「なっ、剣が!?」

「た、盾に!?」


それは剣の変化。矢に向かう途中で、盾に姿を変えた。

その変化は一瞬で、マジックのように突然変わる。


「……どうやら、ルフさんはただ者では無さそうですわね」

「そうみたいだな」


サモンウェポンはその人の適正にあった武器に姿を変える魔道具。

つまり、剣が出現したルフは剣が一番向いているという事だ。

なのに、ルフのサモンウェポンは剣から盾に変わった。

複数の武器適正があっても、サモンウェポンは必ず一つ選ぶ。

そして、一度選んだら、その後他の武器に変わったりしない。

そういう仕組みの筈なのに、これは一体?


「足元がお留守ですよ」

「むっ」


奏慈達の疑問は余所に、戦いは続く。

イカリもルフに攻撃を仕掛け、足元を凍らせた。

これでは迂闊に動くと滑り、隙を晒してしまう。


「さあ、これが避けられる!?」


そんな状況で望結は次々に矢を放ち、銀の扉の先に送った。

気付くと、先の矢も無くなっている。もう送ったようだ。


「食らえ、ミリオン・ロアー!!」


そうして送った矢をルフに向かって一気に飛ばす。

矢は全方位から飛んでくる。凍った地面も相まって避けられない。

確実に敵を倒す必殺戦法……望結とイカリの協力技だ。


「舐められたものよのう……よっと!」


それに対し、ルフが出した答えは跳ぶだった。

ルフは兎のように跳び、空に逃げる。


「だ、駄目だ! それだと!?」

「舐めてるのはそっちよ! トールハンマー!!」


だが、望結はそれすらも読んでいた。

空中に扉を出現させると、そこから雷を放つ。

逃げ場なんて無い……万事休すか?


「ぐっ!?」

「悪いのう」


しかし、ルフは一味違う。

望結が雷を放つより速く、望結の顔に蹴りを入れた。

その攻撃はシンプルだが、簡単にできる事ではない。

雷は光だ。光はとても速い。

光よりも速く蹴るのは、並大抵の事ではなかった。


「うっ、がは! やってくれるわね……」


そんな速い蹴りなら、威力もとてつもない。

望結は思わず、トールハンマーを中断してしまう。

そして、そのまま後ろに倒れ込み、銀の扉に入る。


「っと、上手くいったのう」


ルフもその扉を通って、地上に戻った。

フィジカルに任せた戦法も何も無い戦い方。

恐らく、それが一番刺さるのだろう。

強力な魔法でも、使う本人は無敵じゃない。

唱え終わる前に止めればいいのだ。

ルフはそれを見事に実践してみせる。


「ですが、これで決まりました」

「むむ?」


そう思ったのも束の間、ルフは氷柱に閉じ込められていた。

望結と一緒に出たつもりが、氷柱の中に出ていたようだ。


「さ、流石、イカリね。御蔭で助かったわ」

「いえ、これも全てミユの機転があってこそです」


頭がふらつく中、望結は銀の扉の先を氷柱の中に変えていた。

その氷柱は二人が空中に居る間に、イカリが作っておいた物だ。

かなりギリギリだったが、ルフを閉じ込める事に成功する。


「これは時空間魔法……時戻しじゃな」

「そうよ。それは貴方を閉じ込める氷の檻。

 無理矢理壊しても、時が戻って元に戻る」

「成程のう……そして、閉じ込めてる間に攻撃か」

「その通りです。魔力切れの前に仕留めます」


相手が圧倒的なフィジカルを持っているなら、動きを止めればいい。

これまたシンプルだが、これ以上の答えは無いだろう。

ルフは完全に拘束された。もう二度と抜け出す事はできない。

二人はトドメを刺すべく、ルフに武器を向ける。


「――時に、わらわが投げた盾はどこに行ったのかのう?」

「はっ!? しま!」


そう言うが早いか、氷の檻に盾……いや、槍が突き刺さった。

瞬間、檻は木端微塵に砕け散り、ルフはすぐさま抜け出る。

檻は元に戻ろうとするも、全壊から元に戻るのは時間がかかるようだ。


「ふう、危ない危ない……さあ、次はどうするんじゃ?」


ルフは槍を振り回しながら、笑みを浮かべて聞く。

行き当たりばったりに見えて、全て計算していたらしい。


「……イカリ、他に策は?」

「一応ありますが、現状通用するか怪しいです。

 もう一度、ミリオン・アローを試しましょう」

「……ごめん、少し考えさせて」


ここで三人の間に沈黙が流れ始める。勝てるビジョンが見えない。

望結とイカリは作戦を練り、ルフは静かにそれを待つ。

再び戦いが始まるまで、しばしの時が必要のようだ。


「今度は槍になった……一体、どうなってるんだ」


一方、奏慈達はまたしても姿を変えたサモンウェポンに頭を抱えていた。

全く違う武器に変わるサモンウェポン……そんなの聞いた事が無い。


「これしか方法は無さそうね……イカリ、アレをやるわよ!」

「アレですか……はい、やりましょう」

「ほう、何で来るかの?」


熟考した結果、二人はとっておきの技をぶつける事にした。

まず、動いたのはイカリ。床を凍らせながら、氷のつぶてを飛ばす。

次は望結だ。電気を纏っていない普通の矢を次々に放っていく。


「ふむ、これは下準備じゃな……はてさて、何が来るか」


ルフはつぶてと矢を弾きながら、分析する。

本命はこれではない。もっと強力な攻撃の前振りだ。

今の内に逃げ、攻撃を避けるのが賢明な行動……しかし、ルフは動かない。

自分を倒す為に放つ最後の技。それを受けてみたかった。


「ミユ、準備完了です!」

「分かったわ! 描き出せ、サンダー・サークル!!」

「こ、これは!?」


望結は先程放ち、地面に突き刺さった矢に雷を落とす。

それは凍った地面を走り、瞬く間に他の矢にも伝わった。

そうして次々に伝わり、地面に巨大な魔法陣を描いていく。


「サンダー・サークル、それは電力を増幅させる魔法陣。

 その中で受ける雷の威力は何倍にもなるわ」

「……という事は?」

「これで終わりよ……轟け、サウザンド・ライトニング!!」


望結は言い終えると、容赦なくルフに向かって雷を落とした。

その威力は絶大で、前に大ダコに放った時よりも威力が増している。


「うっ、あああああ!!」


これにはルフも溜まらず、悲鳴を上げた。

サモンウェポンの御蔭で死なないとはいえ、痛みは変わらない。

通常なら即死するレベルの攻撃を受ける。


「くっ、す、凄い威力ですわね……」

「ああ、恐ろしい攻撃だ……最後まで隠していたのも頷ける」

「望結……あの時は手加減してくれたんだな」

「ああ、そうらしい」


その衝撃は奏慈達の方にも伝わってきた。

これほどの攻撃を受けたら、どんな者でもただではすまない。


「はあはあ、どう? これが私の全力よ!」


地面に膝を突き、肩で息をしながらも、望結は高らかに言う。

もう魔力はすっからかんだ……これ以上、戦う事はできない。

望結は全力を出し切り、ルフを倒した。


「……っと、思っておるんじゃろうな」

「なっ!?」


しかし、世の中そう上手くいかない……ルフは倒れていなかった。

元気そうに立っており、手に斧を持っている。


「さて、攻守交代じゃ……今度はこっちから行くぞ!」


ルフは動き出す。攻撃は受け切った……あとは勝つだけだ。

ここまで読んで頂き、ありがとうございました!

もし誤字脱字がございましたら、ぜひ教えて下さい! 修正致します!

感想・評価・リアクションも募集します! よろしくお願い致します!

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