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決着そして

「あの人間達、中々やるわね。

 貴方が一目置くのも分かるわ」

「……どうも」


貴賓席から二人の戦いを見守る者が居た。

それは創造神教のソフィアと朱色の髪を持つ少女。

少女は見た目に反して落ち着いている。

それもその筈、少女はエーデルリッターの一人だ。

人形使いのマティ。騎士であれば、知らない者は居ない。

マティは護衛として、ソフィアの隣に座っている。


「でも、どうしてスピネルに任せたの?

 今日は貴方が戦う予定だったのに」


当初、エキシビションマッチの相手はマティだった。

スピネルはエーデルリッターになったばかりの新人。

実力はあっても、知名度は他のエーデルリッターに劣る。

その為、大会を盛り上げるという意味では不向きだ。


「スピネル、代わりに相手をして」

「えっ、お、オラがですか?」


だが、マティはスピネルに頼んで相手を交代して貰った。

ソフィアの護衛なら、スピネルでも容易に行える。

一体、どういう理由で相手を交代して貰ったのだろう?


「貴方を一人にさせない為ですよ。

 今の貴方は何をするか分からない」

「ふふ、それは今に始まった事ではないでしょう?

 今更、私が何をすると」

「とぼけないで下さい。あの人が居る事は某も知っています」


口調こそ丁寧だが、二人の間に流れる空気は重い。

また、二人の関係は護衛対象と護衛の物ではなかった。

明らかに昔から親交があり、尚且つ対等な関係に見える。

二人の立場に目を瞑れば、仲の悪い同僚のようだ。


「まあ、今は試合を見ましょう。

 教祖として、人間の実力は知っておく必要がありますから」

「……そうですか」


マティは深く息を吐くと、視線を試合の方に戻す。

二人の戦いは佳境に入り始めていた。


「――剣魔ハンデッド、噂以上の実力にオラ驚きました」

「ワガハイもだ。流石、エーデルリッターだな」


二人は一定の距離を取りながら、お互いに褒め合う。

特にハンデッドは久しぶりに戦いができて、嬉しそうだ。

勝つ事よりも、強い相手との戦闘を好む戦闘狂。

それがハンデッドだ。雑魚を倒しても、心が満たされる事はない。


「だが、負けてやるつもりはないぞ!

 もっと、お前の力を見せてみろ!!」

「はい、受けて立ちます!」


ハンデッドはその心の渇きを癒す為、再び走り始めた。

大それた作戦は無い。ただただ、突進する。

それに対し、スピネルは盾を構え、足腰に力を入れた。

圧倒的な力を持つ者の突進は必殺技に近い。

生半可な覚悟では、吹っ飛ばされるだけだ。


「これが……ワガハイの戦い方だ!」

「なっ!?」


作戦は無いが、勝算が無い訳ではない。

ハンデッドは剣を上空に放り投げ、準備を始める。

突然の事にスピネルは驚くも、油断はしない。盾を構え続ける。


「おらっ!!」

「くっ、肉弾戦に切り替えるつもりか!?」


ハンデッドはそのまま突進し、盾に身体をぶつけた。

重い一撃だが、それで態勢が崩れる程、スピネルは弱くない。


「ふははは、捕まえたぞ!」

「し、しまった!? これが狙いか!」


ハンデッドの狙い……それはスピネルから盾を取り上げる事だった。

盾さえ無くなれば、攻撃を遮る物は無い。

ハンデッドは盾を掴み、スピネルから引き離そうとする。


「賢いですね。そこまで頭が回るとは」

「私のエーデルリッターを追い詰めるだけあるわ」

「えっ、どういう事だ? ただ掴んだだけじゃないのか?」


一見すると、この行為は全くの無駄行動だ。

盾がサモンウェポンである以上、取り上げられても手元に戻せる。

寧ろ、両手が塞がる分、ハンデッドが不利になる行動だ。

藍を始め、多くの観客が首を傾げる。


「さあ、どうする? ワガハイはこのままでも良いぞ!

 観客がつまらなくても、ワガハイには関係ないからな!!」

「そ、それも狙いなのか!」


しかし、スピネルは知っていた……それをしたら負けると。

武器を手元に戻せるのはハンデッドも同じ。

この距離で盾が無くなると、先制攻撃できるのはハンデッドだ。

盾が無くなった瞬間、スピネルはやられる。

だからと言って、耐え続けるのも危険だ。剣は未だ上空にある。

それはスピネルに向かって、落ち始めていた。

このままだとスピネルに当たり、隙を晒す事になる。

絵面が変わらず、観客が退屈になるのも興行的によろしくない。


「これは究極の選択だ! 進むも地獄、退くも地獄!!

 一体、どうすればいい!?」


そんなスピネルに司会は助け舟を出す。

これで興行的な問題は無くなっただろう。


「一か八か……オラは賭ける!」


スピネルは盾から手を離し、勢いよく飛び退いた。

これなら先制攻撃を受けず、上空の剣も避けられる。

それに手を離せば、ハンデッドは勢いから尻餅をつくだろう。

そうなれば、戦況は一気にスピネルの方に傾く。


「成程、考えたな……」


予想通り、手を離された事でハンデッドは態勢を崩した。

後ろに向かって、ゆっくりと倒れ始める。


「だが、甘い!」

「なに!?」


ハンデッドはそんな状態で、手元に剣を出現させた。

そして、その剣で地面を突き、倒れるのを防ぐ。

咄嗟にできる事ではない。全て、計算の内だった。


「な、なんという身体能力! 本当に同じ人間なのか!?

 曲芸師も顔負けだ!!」


これだけでも衝撃的だが、その勢いでハンデッドは宙に浮く。

そのまま空に向かって跳び出し、スピネルの上を取った。


「この剣、受け止められるか!」

「くっ!?」


ハンデッドは落ちながら、剣を振り下ろす。

今までと変わらない一撃必殺の攻撃。

しかし、今回は落ちながら放っている。

当たる頃には、威力は何倍にもなっているだろう。


「受けて立つ!」


そうなったら、スピネルは持っても、盾は耐えられない。

スピネルは跳び、ハンデッドを迎え撃つ。

避ける事も可能だったが、騎士として迎え撃ちたかった。


「良い覚悟だ! これがワガハイの全力!!」


それを見たハンデッドは嬉しそうにしながら、剣に力を込める。

すると、剣に眩い光が集まり出し、その刀身を太く長くしていった。

スピネルを強敵だと認めたのだ。これはその強敵に対する礼儀。

全力には全力で返してこそ、意味がある。


「うおおおおお!!」


遂に二人の剣と盾がぶつかり合った。

激しい金属音と火花が会場全体に広がっていく。

安全の為、保護魔法は掛けられているが、その威力は凄まじい。


「ぬおおおおお! 凄い音だ!!」

「ま、眩し過ぎる……」

「見て……いられない」


多くの観客が目と耳を塞ぎ、試合から目を逸らした。


「今だ!」

「な、なんだ!?」


その瞬間だった。スピネルは盾に力を込める。

相手が奥の手を見せたなら、こちらも奥の手を出すまで。

盾は黒く染まっていき、黒い霧が溢れ始めた。

それは次第に纏まっていき、人の形になっていく。


「ま、まさか……ワガハイなのか!?」


黒い霧はハンデッドを模した姿に変わった。

黒い以外は本人そっくりで、同じように剣に光を集め始める。


「これで決める!!」

「うっ、ぐおおおおお!!」


そのまま霧は迷いなく、ハンデッドを斬った。

その一撃はハンデッドが放ったのと全く同じ威力。

ハンデッドはその一撃を食らい、落ちていく。


「がはっ!? こ、これ程とは……良い相手だったぜ」


ハンデッドは地面に激突し、間もなく気絶した。

二人の戦いはスピネルの勝ちで終わる。


「は、ハンデッドが倒れてるぞ!?」

「一体、何があったんだ?」


同時に試合から目を逸らしていた観客も目と耳を開く。

観客からすれば、ほんの一瞬の出来事。

でも、勝負を決めるには十分な時間だった。

結果、決着を見逃し、試合は終わってしまう。


「つ、遂に決着が付いたぞ!? 勝者はスピネル卿!!

 剣魔ハンデッドを打ち破り、見事勝利を収めた!

 皆さん、二人に盛大な拍手を!!」

「うおおおおお!!」


そこを丸く収めるのも司会の仕事だ。

同じく目を逸らしていたが、全くそれを感じさせない。

巧みな話術で会場に熱気を取り戻す。


「ふん、うるさいな。静かに寝かせてくれ」


ハンデッドはその熱気に叩き起こされ、目を覚ました。

スピネルは急いでハンデッドに駆け寄る。


「だ、大丈夫ですか? あの高さから落ちましたが……」

「問題ない。この程度では死にはせんよ」

「よ、良かったあ……でも、後で見て貰って下さいね」

「ふん、いいだろう。だが、一つ聞きたい。

 あの魔法はなんだ? 何故、霧がワガハイの姿に」

「あっ、それはですね」


――反影魔法。それは相手の攻撃を真似る魔法だ。

発動するには一度、相手の攻撃を受け切る必要がある。

その為、必然的に攻撃を避けながら戦う事はできない。

さらに一度発動すれば、以降は発動すら難しくなる。

相手が強力な攻撃を控え、発動してもその隙を突くからだ。

だから、一発勝負……最後の奥の手だった。


「完敗だ……お前はワガハイより強い!!

 でも、これで終わるつもりはないぞ!」

「分かっています。また機会があれば、戦いましょう!」

「ふっ、楽しみにさせて貰う」


二人は固い握手を交わす。

観客はその光景を見て、更に沸いた。

二人の間にわだかまりは存在しない。

あるのは戦いで得た友情だけだ。


「あのハンデッド……さんがあんな顔をするなんて」


それに対し、奏慈は心の底からそう思った。

大ダコ退治の時のハンデッドは傲慢その物。

話が全く通じない厄介者にしか見えなかった。


「ですわね、アタクシも初めて見ましたわ」


だが、今目の前に居るハンデッドは全くの真逆。

話が通じ、相手をリスペクトしている。

意外な一面というのは誰にでもある物だ。

しかし、あの剣魔が握手しているのは違和感しかない。


「名残惜しいが、これで全ての試合が終わった!

 もう一度、参加してくれた全ての選手に拍手を!!」


その言葉と共に、今日一番の拍手が鳴り響く。

色々あったが、これで闘技大会は終わりだ。

司会は綺麗にその場を収めた。


「さあ、帰るぞ。ボク達にはやるべき事がある」

「………そうですね、帰りましょう」


奏慈達は気を引き締める……本当の戦いはこれからだ。

ここまで読んで頂き、ありがとうございました!

もし誤字脱字がございましたら、ぜひ教えて下さい! 修正致します!

感想・評価・リアクションも募集します! よろしくお願い致します!

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