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銀の扉

「どうだった?」

「ううん、駄目でしたわ」


同時刻、フラン達は神秘探求院の昇降口に立っていた。

カムイ島から少し北の方角にあるオモイ島。

その島に目的地である神秘探求院が存在する。

船に揺られながらも、フラン達は無事に辿り着いたのだ。


「すみません、こんな風貌の男が訪れていませんか?」

「どんな些細な情報でも良いので、教えて下さい!」


フラン達は着くと、すぐに奏慈の事を聞き始めた。

潮の流れ的に、一足先に流れ着いているかもしれない。

その可能性にかけたのだ。しかし、奏慈は居なかった。

あの嵐の中、生きている可能性は限りなく低い。

やはり、あのまま海底に沈んでしまったのだろうか?


「海岸……海岸に行こう!

 今、流れ着いてるかもしれない!!」

「……そうですわね、向かいましょう」


それでも藍は諦めず、奏慈を探し続けようとする。

頭では分かっているのだ。だけど、心は認めずに探す。

そんな藍を放っておけず、フラン達はその後に続いた。


「思った以上に広いな……別れて探した方がいいか?」

「……いえ、今は一緒に行動した方がいいですわ。

 今のアイさんを一人にする訳にはいきませんもの」

「そうだな……」


今の藍を一人にするのは危険だ。

目を離せば、その瞬間に海に飛び込むだろう。

そんな藍を一人にしておけない。

心配なのはフラン達も同じ……奏慈が戻るまで、共に待つ。


「痕跡無し……ここは一度戻った方が良いでしょう」


そうして探すこと数時間、四人に疲れが見え始めた。

無理もない話だ。カムイ島に着いてから一度も休んでいない。

今その疲れが一気に出ている。今日は休むべきだろう。


「嫌だ! オレはまだ探すぞ!!」

「アイさん……」


だが、それで休む藍ではない。このままだと、日が沈んでも探し続けるだろう。

フラン達は覚悟を決める。無理矢理にでも止めなければならない。


「――やっと、見つけた!」

「えっ、誰!?」


その時、聞き慣れない女性の声が響く……藍を救う事になる声が。


「よし、終わったか」


そして、当の奏慈はというと、危なげなく倒し切っていた。

男達も弱かった訳ではない。罠を仕掛け、人も用意した。

しかし、奏慈は全て正面から叩き潰し、攻略してみせる。

その姿に男達は慄き、一人また一人と地面に倒れていく。


「お見事です……腕は衰えていませんね」

(新手か? 今まで隠れていた……という訳でもなさそうだ)


そんな奏慈の戦いぶりを見て、静かに拍手する者が居る。

それは音も無く現れ、奏慈の背後に静かに立っていた。

ただ者ではない……奏慈は警戒しながら、ゆっくりと振り返る。


「この男達の仲間か? 名を名乗れ」

「……そうでしたね。失念しておりました。

 名は言えませんが、拙者はこの者達の仲間ではありません」


そこに居たのは黒装束の男だった。

知性を感じる声と、身なりの良い服装……嘘では無さそうだ。

しかし、それならそれで疑問が残る。

ここは危険な洞窟だ。わざわざ、来るような場所じゃない。

もし、来るような用事があるとすると。


「僕か」

「そうです。恐れながら、今のお力を試させて頂きます」


男はそう言うと、独特の構えを見せながら拳を向ける。

戦う以外の選択肢は無いらしい。


「いいだろう……お前の正体は戦いの中で見極めてやる」


奏慈はそれに答え、同じように男に剣を向けた。

相手の正体が分からない以上、この判断は良くない物だ。

それは奏慈も分かっている。だが、不思議と信じられた。

この男なら大丈夫だと……その感覚を奏慈は信じる。


「先に行きます……これを受け切れますか?」

「くっ!?」


こうして始まった戦い……先に先手を取ったのは男だった。

目にも止まらぬ速さで奏慈に迫り、拳が鳩尾を狙う。

もし当たれば、その一撃だけで気絶させられるだろう。


「間一髪か」

「……これを受け止めるとは」


それを両手で受け止める。咄嗟の判断だったが、上手くいった。

そのまま掴みに移行し、動けないように拘束する。


「ですが、ここからが本番です」


それでも男の攻撃は続く。拳なら、もう一つある。

その拳を奏慈の顔に向け、解き放つ。

この態勢では避け切れない。受けざるを得ない攻撃だ。


「ふん!」

「ぐっ、この力は!?」


そんな攻撃に対し、奏慈は両手に力を入れる。

瞬間、掴まれていた男は態勢を崩し、攻撃を中断した。


「恨んでくれるなよ!」

「がはっ!?」


そして、その勢いのまま、男の顔に膝蹴りをかます。

予期せぬ攻撃に男は反撃できず、宙を飛んだ。

奏慈はその隙を見逃さず、男に向かって剣を投げた。


「ぐう……」

「ふう、これで終わりだ」


その剣は男に命中し、共に地面に落下する。

容赦ない攻撃だが、挑んできたのは相手だ。文句を言われる筋合いは無い。

これだけやれば、流石に動けないだろう。奏慈はホっと一息吐く。

結局、何者だったのか? 目覚めたら聞かないといけない。


「お見事です。お力は健在ですね」

「なっ!?」


しかし、男は再び奏慈の背後に立っていた。

あれを受けて尚、男は平気な顔をしている。

手応えはあった筈なのに、まるで効いていない。


「それでは少し本気を出します」

「っ!?」


そう言うが早いか、男は奏慈に殴りかかっていた。

さっきよりも早い。明らかに強さが変わっている。


「はあはあ……」

「今の一瞬で時空間魔法を」


それでも奏慈は咄嗟に時を止めた。

極端にマナが少ないと言っても、無い訳ではない。

かき集めたマナを使い、一瞬だけ止める。


「ですが、そう何度も躱せない……次で決めます」

(……万事休すか)


策が思いつかない。これ以上はどうしようもなかった。

奏慈は目を閉じ、歯を食いしばって、攻撃の時を待つ。

そんな奏慈の姿を見て、男は静かに拳を振り上げた。


「いきます」


そして、その拳をハンマーのように振り下ろす。

一撃で気絶する勢いだ。これで戦いは終わるだろう。


「させない!」

「させませんわ!」


そこに二つの影が割って入り、その拳を受け止める。


「フランさん! 藍!!

 どうして、ここに!?」


それはフランと藍……ここに居る筈のない二人だった。

突然の登場に、奏慈は目を白黒させる。


「話は後ですわ! 今はこの男を倒すのが先!!」

「ああ!! これ以上、奏慈を傷付けさせない!」


二人はそう言うと、受け止めていた拳を押し返す。

それを受け、男は後退る。

男の目は二人だけでなく、その背後にも向いていた。


「カンナギ、助けに来てやったぞ」

「ボーアさん! それにイカリさん、望結も!!」

「……また面倒事に巻き込まれているんですか」

「いつもの事よ、奏慈にとってはね」


二人が居るなら、ボーア達が居ても可笑しくない。

形勢逆転。五人は武器を構え、奏慈の前に立った。


「……興が醒めました。拙者は退散させて頂きます」

「逃がすか!」


形勢不利を感じてか、男は溜め息混じりにそう言う。

すぐにボーアは男に迫るも、時すでに遅し。

男の姿は霞のように消え、ボーアの槍は空を突く。


「ちっ、逃げ足の早い奴だ」


男の気配は完全に無くなった。五人は武器を仕舞う。


「あ、ありがとうございます! 御蔭で助かりました!!

 でも、どうして皆がここに?」

「まだ話すには早いわ。もうすぐ満潮の時間……先に移動しないと」

「コイツらを溺れさせる訳にもいかないしな」

「という訳で、急ぎますわよ!」

「は、はい!!」


フランの一声と共に、奏慈達は動き始めた。

気絶している男達を小脇に抱え、全速力で走り出す。

リュウを攫った罰を与えなければならない。

見殺しにする必要は無くても、生かす必要はある。


「ふう、結構重かったですね」

「そうね。でも、これで私達の仕事は終わったわ。

 後は騎士団の仕事よ」


数分後、奏慈達は無事に洞窟を脱出した。

外は既に暗くなっており、月明かりが世界を照らしている。

思った以上に時間は流れていたようだ。


「じゃあ、ボク達から聞くぞ。別れてから何が」

「奏慈!!」

「うわっ!? く、苦しい」

「……話を聞くのは、もう少し後になりそうですわね」

「はあ、そうらしいな」


奏慈に抱き着く藍を横目に見ながら、四人は息を漏らした。

本題に入れたのは、ここから更に十分後の事だった。


「成程、そういう事がありましたか」


奏慈はこれまでの出来事を話していく。

目覚めてからの数時間で大ダコ退治からの誘拐事件の発生。

そのトラブルメーカーぶりにフラン達は思わず笑みを零す。

どこに行っても変わらない奏慈は変わらないらしい。


「それにしても、おじ様が居るなんて……世間は狭いですわね」

「おじ様? ハンデッド……さんの事ですか?」

「ええ、おば様の弟に当たりますの」

「そうなんですね……」


そして、あのハンデッドはファルシオン家の人間だと言う。

剣聖カリバーの息子で、数十年前に家を出たそうだ。

何はともあれ、これで全て話した。今度は奏慈が聞く番だ。


「さあ、教えて下さい! どうやって、ここに来たんですか?」

「……それに関してはアタクシ達も聞きたいんですの。

 何故、あの魔法を使えたんですか? 銀の……扉を」

「銀の扉?」


フランは望結の方を見ながら、そう言う。

何の話だ? 疑問に思う奏慈に対し、ボーア達が口を開いていく。


「銀の扉はエーデル帝国の皇族のみが使える呪文だ。

 離れた場所同士を繋ぐ銀の扉を出現させ、人を移動させる」

「その魔法をゼフィラさん……いえ、望結さんが使いましたの。

 皇族にゼフィラという名は無い……可笑しな話でしょう?」

「成程、その魔法で移動を……確かに可笑しな話だ」

「うんうん」

「こら、頷くな」


あの洞窟内で瞬時に現れた訳、それが銀の扉だった。

これで疑問が解けたが、新たな疑問が生まれる。

そんな希少な魔法を、どうして望結は使えるのか?

皆の視線が自然と望結の方へと集まっていく。


「はあ、私が使えた理由? そんなの決まってるでしょう」

「……一体、なんなんだ?」

「女帝……この世界に現れた最初の異世界人だからよ」


その言葉で周囲の空気が凍り付いた……ただ一人、奏慈を除いて。

ここまで読んで頂き、ありがとうございました!

もし誤字脱字がございましたら、ぜひ教えて下さい! 修正します!

感想・評価・リアクションも募集致します! よろしくお願いします!

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