表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
65/107

救出作戦

「なに? どういう意味だ!!」


奏慈のその言葉を聞き、少年は思わず振り返った。

少年は今の今まで、二人が居る事に気付かなかったらしい。


「すみません、実は……」


店の雰囲気や少年の言動から、リュウはただの店員ではない。

言うなれば、家族……妹として可愛がられていたのだろう。

そんな妹が攫われた。それも誰かのせいなら決して許せない。

少年は鬼のような形相で奏慈の顔を見て、拳を振り上げる。


「あ、貴方は!? ど、どうして、ここに?」

「えっ、ぼ……いえ、私の事を知ってるんですか?」


だが、奏慈の顔を見た瞬間、少年の形相は一変した。

怒りから驚いた表情に変わり、口をパクパクさせる。

勿論、奏慈は初対面だ。少年を見た事は一度も無い。


「店長、知り合いなのか?」

「だったら、早く言ってよ!」

「そうよ、紹介して欲しいわ」

「……慌ててる店長、可愛い」

「ちっ、うるさいぞ! こっちの話だ……」


そんな少年をここぞとばかりに揶揄う四人。

対する奏慈は少年を見つめ、記憶を辿っていた。


(僕はこの人を知らない筈……そう、知らない筈だ)


一方的に知っている場合、ウルトルクスである可能性は高い。

しかし、ウルトルクスならここまで動揺する事はないだろう。

驚いても、すぐに調子を取り戻し、攻撃の機会を窺う筈だ。


(でも、何故だろう……ずっと前から知っている気がする)


つまり、無関係と思っていいが、奏慈が覚えた謎の既視感。

少年を見たのも、メタイム族を知ったのもついさっき。

なのに、少年を昔から知っているような気がする。

これは一体なんなのか? 奏慈は答えを出せずにいた。


「一応、名乗っておく……俺様の名前は『ウト=ナイト』だ。

 このワンナイトの店長をしている」

「あっ、ご丁寧にどうも……私の名前は旭凪奏慈。

 ここの皆さんに助けられた者です」


そんな奏慈に、少年ことウトは自己紹介する。

四人が言ってた通り、ウトはワンナイトの店長らしい。

少年の見た目だが、威厳がある。実際の年齢は高そうだ。


「それで僕のせいとはどういう事だ? 説明してくれ」

「わ、分かりました」


紆余曲折あったものの、やっと本題に入れる。

奏慈はウトに事の顛末を説明した。


「……成程、そういう事だったのか」

「すみません、私のせいで……」

「カンナギさん、気になさらないで……隙を狙われていたのよ。

 遅かれ早かれ、こうなってたわ」

「そ、それでどうするの!? もう時間が無いよ!

 早く行かないと、リュウが!!」


アッケの言う通り、こうしてる間にも時間は過ぎている。

早くリュウの元へ向かわなければならなかった。

だが、迂闊に向かうのは危険だ。相手は場所を指定している。

事前に罠を仕掛け、自分達が有利になるフィールドを作ってるかもしれない。

その場合、物だけ取って逃げられる。最悪の場合、殺されてしまうだろう。


「僕が行きます」

「うん? 今なんと?」

「僕が救出に行きます。渦の洞窟の場所を教えて下さい」


その事を頭に入れながら、奏慈は迷いなくそう言った。

リュウを置いて行ってしまった罪悪感で、そう言ったのではない。

心が助けに行きたいと叫んだから、言い切ってみせた。

どんな罠が待ち受けようと関係ない。リュウを救うと。


「……教えてやるよ」

「あ、ありがとうございます!」


その心意気を買ってか、ウトはそう返した。

奏慈の真摯な思いが伝わったようだ。


「て、店長、本気ですか!?

 私達の問題にお客様を任せるなんて!」

「……それに土地勘の無い者に任せるのは不安です」

「だね。この問題は私らが解決すべきだよ」

「店長、私も同じ気持ちです」


しかし、他の四人は違う。自ら助けに行きたかった。

リュウは家族だ。その家族を助けに行けるのは自分達しかいない。

奏慈を悪く言うつもりはないが、口出しして欲しくなかったのだ。


「分からねえ奴らだな……お前ら、あの顔を見てみろ。

 こっちの言う事を聞かない顔だ。断っても、付いて来る。

 なら、お望み通りにすればいい。その方が安心だ」

「で、ですが」

「それに俺様は信じてる……この男なら、やってくれるってな」

「……店長がそう言うなら」


そんな四人も店長の言葉を聞き、奏慈に任せる事にした。

店長がそう言ったからには理由がある。そう信じての行動だ。


「よく聞いておけ。忘れたら、ただじゃおかないぞ」

「分かっています! 私に任せて下さい!!」

「……奏慈」


こうして、奏慈はリュウ救出に向かう。迷いは微塵も無かった。


「――渦の洞窟は、この先か」


数十分後、奏慈は件の洞窟の前に辿り着く。

今居るカムイ島には幾つもの洞窟があった。

その中でも渦の洞窟は地元の者でも近付かない危険な場所だ。

渦とある通り、内部は渦を巻いたような構造をしている。

それも下へ下へと続いており、迷い込んだ者を地下へと導く。

地下は海と繋がっており、潮の満ち引きで構造が変化する。

その変化パターンは何個もあり、初見では対応不可能。

結果、多くの者が溺れ死に、近付く事を禁じられた。


「っで、どうして居るんだ?」

「はあ……わざわざ言わなきゃ駄目?」


その恐ろしい洞窟の前に、望結も立っている。

奏慈と違い、望結はこの洞窟の事をよく知っていた。

その為、普通なら付いて行こう等と考えたりしない。


「あんな話を聞いたら、放っておけない。

 貴方と同じで、正義感はあるつもりですから」


そこが望結の普通とは違う所だった。

何も無ければ、普段は危ない場所に近付いたりしない。

でも、何かあれば、危険を承知で突撃する。

奏慈から学んだ悪い部分は、しっかり根付いているようだ。


「そうか……なら、共に行こう! リュウを救出するんだ!!」

「ええ!!」


そう言うと、奏慈は望結を引き連れて洞窟に入る。

注意するべき所だが、奏慈はできなかった。

優しい心を持ち続けて欲しい……奏慈は常々そう思っている。

この荒んだ世では厳しい事だが、それだけが願いだった。

その願いを望結は叶えたのだ。これほど嬉しい事は無い。

奏慈は泣きそうになるのをグッと我慢する。


「さあ、今度こそ教えて! 今まで何をしてたの?」

「……はあ、感動を返してくれ。分かった、言うよ」


そんな奏慈の気持ちを露知らず、望結は直球で聞く。

奏慈は落ち込みながらも、今度こそ話す事にした。


「そういう事があって、僕はここに辿り着いた訳だ」

「成程ね……何回も女性に介抱されたと」

「いや、そこ以外にも注目ポイントはあっただろ?

 まあ、その通りだけど……気絶し捲って、お世話になりっぱなしだ。

 改めて、フランさん達にお礼を言わないとな」


それから数分後、奏慈は全て話し終える。

かいつまんで話した部分もあるが、嘘は言っていない。

正真正銘、奏慈の冒険譚を望結に語った。


「それで、今は神秘探求院に向かってるんだっけ?

 藍達はそこに居る可能性が高いと」

「そういう事だ。リュウを救出したら、すぐに向かう」

「ふうん……っと、そろそろ最下層よ。警戒して」

「分かった」


そうして、遂に二人は最下層まで辿り着く。

代わり映えしない景色から一転、最下層は広かった。

ここなら通路と違い、何人でも住めそうな雰囲気がある。

現に人の気配があり、奥から男の声が聞こえてきた。


「このガキ、うんともすんとも言わねえな。

 猿ぐつわでもしたか?」

「いや、してねえ。大方、ビビッて声出せねえんだろ」

「がはは、ちがいねえ!」


その声の持ち主達からは、知性という物を感じられない。

恐らく、今ここに居るのは雇われの賊か何かだろう。

指示役は別に居て、例の物とやらが届くのを待っている。


「見て、あそこに!」

「リュウだ! よし、これで場所は分かった!」


そして、望結の指差す先に捕まっているリュウを見つけた。

同時に声の持ち主らしき男達も見つけ、その数を把握する。

ざっと数えた限り、数は十人ほど……それほど多くない数だ。

罠や隠れている者も居そうだが、これなら簡単に勝てるだろう。

奏慈は剣を出現させ、時止めの準備をした。


「奏慈、待って! 魔法を使うなら、使い時を考えて!」

「どういう事だ?」

「ここは極端にマナが少ないの。だから、魔力回復が遅い。

 普通なら問題はないんだけど、貴方の場合は」

「マナをそのまま使ってるから、魔法を連発できない。

 そういう事か?」

「そういう事よ」


奏慈の主力である時空間魔法は強力な反面、魔力消費が多い。

今までは周囲のマナを吸収する事で、それを誤魔化していた。

しかし、ここではそうはいかない……使えても一回が限界。

使い切ったら、剣で戦うしかなくなる。見えてるだけで十人。

見えていない数も考えると、剣だけで戦うのは心もとない。


「望結、リュウを救出したら、一緒に逃げてくれ」

「……何をする気?」

「僕とリュウの位置を入れ替える……あとは任せたぞ」


それに対し、奏慈が出した案は一人で戦うという物だった。

捕まって動けないのを逆手に取り、空間魔法で入れ替える。

これならリュウを救出しつつ、安全に逃がす事が可能だ。


「ふざけないで! また、あの時みたいに除け者にする気!?

 相手は大勢居るのよ! 危険だわ!!」

「今は人質救出が最優先だ! 案が無いなら、従え!!」

「くっ、分かったわ……」


当然、その案は奏慈が取り残される危険な物だった。

だが、これ以上の案が無いのも事実……望結は大人しく従う。


「それで、ワンナイトの連中はいつ来るんだ?」

「もしかしたら、来ねえかもよ! このガキを見捨ててな!!」

「はは、そりゃ可哀想だ!」


その裏で男達は変わらず、下品な声で好き勝手言っている。


「……そうだな、お前達は可哀想だ」

「へっ? ぐあああ!!」

「な、なんだ!?」


そこに奏慈が現れ、男の首を掻っ切った。

そして、そのまま他の男達に剣を向ける。


「さあ、かかってこい。殺さないでおいてやる」


奏慈はそう言うと、手招きした……戦いの火蓋が切って落とされる。

ここまで読んで頂き、ありがとうございました!

もし誤字脱字がございましたら、ぜひ教えて下さい! 修正します!

感想・評価・リアクションも募集致します! よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ