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内なる炎

「先手必勝! 食らいなさい!!」


フランはそう言うと、ツヴァイに向かって斧を投げた。

斧は凄まじい速度で一直線に飛んでいく。

同時にツェーンとアインスにも手を向け、掌を広げた。


「ふん、俺が来たからにはやらせねえよ!」


ツェーンはそれに対し、ツルハシを振るう。

次の瞬間、二人を守るように黄金の壁が瞬時に出現した。

その壁は天井まで伸び、二人の頭上を完全に塞ぐ。

厚さも十分あり、先程までの爆発なら容易に防ぐだろう。


「愚か者め。跳べ」

「了解!」

「なっ、何故だ!?」


にも拘わらず、ツヴァイとアインスは急いでその場を離れた。

困惑するツェーンだったが、すぐにその理由を知る事になる。


「起爆」


間もなく斧は壁にぶつかり、ぶつかった瞬間に爆発した。

この斧も付与魔法で爆発の概念を込められていたようだ。

だが、それも通さず、ツェーンの目論見通りに物事が進む。


「い、一体何が!? ぐ、ぐあ……ばかな」


しかし、それだけで終わらなかった。突如、光と爆音が辺りを包み込む。

さらに眼が耳が効かない中、壁を貫く程の爆発も起こった。

ツェーンはそれに吹き飛ばされ、為す術なく柱に激突する。

その光景にツヴァイは息を飲み、隣に居たアインスに話しかけた。


「アインス、あれはなんだい!? あんな爆発、初めて見るよ!」

「……かの剣聖は三歳にして雨を斬り、七歳で空間を斬ったと聞く。

 その孫であれば、空間を爆破できても可笑しくない」

「す、末恐ろしいねえ……」


ツヴァイは驚いた。空間爆破は誰でも出来る技ではない。

雨を斬り、空間を斬り、時まで斬った者を師に持つ必要がある。


そもそも、雨を斬るという所から難題だ。

一見簡単そうに見えるが、刃に雨が付いてはいけない。

付いていなくても、その雨粒の形を変えてもいけない。

斬られた事を認識させては駄目なのだ。


それよりも大変なのが空間を斬る事になる。

雨と違い、空間は目視できない。概念の存在だ。

その概念の存在を斬るのは独学では難しい。


だが、それが出来るようになれば、応用も効くようになる。

今回のように空間を爆破する事も可能になるのだ。


「じゃあ、避けなかったら今頃は……」

「もしもの話を考えるな。次が来るぞ」

「ええ、余所見は禁物ですわ!」


ツヴァイはその事実を知り、震えるも、フランは待たない。

再び掌を広げた。すると、掌から光と爆音が鳴り始める。

それは次第に大きくなっていき、二人に向かって飛んでいった。


「跳べ。あれに当たれば、ただでは済まんぞ」

「い、言われなくても!?」

「逃がすかよ!」


二人はそれに対し、再び急いでその場を離れる。

だが、フラン達も甘くない。ボーアは二人の進行方向に回り込んでいた。


「風よ、渦巻け!」

「か、身体が勝手に!?」


そのままボーアは素早く槍を回し、槍の先から水色の風を出現させる。

その風は小さかったが、吸引力は凄まじく、周りの物を飲み込み始めた。

倒れた柱や壁の破片は勿論、気絶した兵士や魔物までも飲み込んでいく。

二人も当然その対象であり、風は二人を飲み込もうと大きく口を開いた。


「やれやれ、世話が焼ける」


そんな中、アインスは至って冷静に杖の先から火球を飛ばす。

火球は風に向かって飛び、一足先に飲み込まれた。


「火は空気を燃料にして燃える。この意味が分かるか」

「面倒な……」


アインスがそう言った次の瞬間、飲み込まれた火球が膨張する。

それも太陽を思わせる程の大きさになり、間もなく風と共に消滅した。

御蔭で二人は難を逃れ、先程まで自分達が居た場所を振り返る。


「ふう、起爆」


こうなったら待つ意味は無い。フランは指を鳴らした。

すると、二人の見つめる先で大爆発が起こった。

その爆発は間違いなくツェーンの時と同じ物だ。

それを確認し、アインスはツヴァイの方を一瞥して言う。


「ツヴァイ、この場を離れろ。今の君では奴らに勝てない。

 ここは任せておけ」

「……仕方ないねえ」

「逃げる気か!?」

「そうはさせませんわ!」


ツヴァイはそう言われると、一目散に逃げだした。

すぐにフラン達はその後を追うが、アインスがそれを許さない。

火球を連続で飛ばし、フラン達の足を止める。


「君達の相手はこっちだ」

「ちっ、邪魔はするな!!」

「ボーア、今はアインスをやるしかありませんわ!」

「分かってる!」


邪魔をされたせいで、ツヴァイの姿はすっかり見えなくなった。

今から追っても、ツヴァイを捕まえる事はできないだろう。

ボーアは悔しさで拳を握り締めるが、急いで気持ちを切り替える。

相手はアインスだ。感情が乱れていては勝てない。


「何をしようと、君達に勝ち目は無い」


アインスはそう言うと、杖の先から無数の熱線を放ち出した。

しかし、その熱線はフラン達ではなく、周囲の柱に向けられる。


「ま、まずい!? 奴はボク達を下敷きにするつもりだ!」

「なんですって! ど、どうするの!?」

「……ボクが風で天井を支える!! フランは奴を止めてくれ!」

「わ、分かりましたわ!」


ボーアは両手を天井に向けると、自身の身体から風を吹き出し始めた。

フランも斧を強く握ると、アインスに向かって突撃する。

残された時間は長くない。柱は次々に切断され、その度に天井は嫌な音を鳴らす。


「たった一人で向かって来るとは、舐められたものですね」

「っ!?」


突撃してくるフランに対し、アインスは熱線の一つをフランに向けた。

フランはそれを間一髪避けるも、アインスは次の熱線を放つ。

柱に向けていた分を次々に向けているのだ。


(おばあちゃんの話では、火球や熱線は本命じゃない。

 本命はそれらを当てた後の火種を大きくする魔法。

 その魔法を使われたら、今のアタシでは抗えない。

 逆に言えば、攻撃に全く当たらなければ勝機はある!)


フランは熱線を避けたり、斧で弾きながら、アインスに近づいて行く。

あの戦いの後、フランはカリバーから多くの事を教わった。

それは確実にフランの力になり、今の強さに繋がっている。

アインスはそんなフランに攻撃を当てられず、距離を詰められていく。


「貰いましたわ!!」

「まさか、これ程とは」


そうして遂にフランはアインスの前まで辿り着いた。

だが、油断はしない。フランはその勢いのまま、斧を振り下ろす。

これが当たれば、流石のアインスもただでは済まない。


「なっ!? これって……!」


しかし、その攻撃は突如出現した黄金の障壁によって防がれる。

その横には肩で息をするツェーンの姿があった。


「くくく、危なかったな」

「ツェーン、遅すぎだ」

「……ちっ、気絶してなかったか」


頭を押さえながらも、ツェーンはアインスに手を伸ばしている。

もう戦う事はできないだろうが、こちらも攻撃を当てる事はできないだろう。

こうなってしまったら勝ち目は無い。二人の血の気が引いていく。


「これで終わりだ。消えたまえ」

「うっ、ああ……」

「ふ、フラン!!」


アインスは容赦なくフランの胸を熱線で貫いた。

その一撃でフランは地面に倒れ、胸から大量の血を流す。


「そして、次は君だ」

「ぐっ、がは……」


アインスは続けて、ボーアの胸も熱戦で貫く。

どちらも頭を狙わず、わざわざ胸を貫いた。

最後の最後まで、フランとボーアを苦しめるつもりのようだ。


「ツェーン、遊ぶなら遊んでおけ。新手が来ると厄介だ」

「くくく、了解だ。さて、どう遊んでやろうかな?

 爆破された礼をしっかり返してやる!」


ツェーンはそう言うと、手の中に無数の針を作り出した。

それはどれも鋭く、刺されば凄まじい痛みを与えるだろう。


「まずは針千本だ!!」

「に、逃げろ……ふ、フラン」


そんな針をツェーンはフランに向かって投げた。

フランは痛みから気絶し、ピクリとも動かない。

残酷な現実の前に、ボーアは思わず眼を瞑った。


「おらっ!」

「ぶへ!?」


その現実を、一陣の風と共に救い主がぶっ飛ばす。

救い主は拳でツェーンを、針をモーニングスターで弾く。


「あ、アウィン様!!」

「ごめん、遅くなった! ここからはオレも加勢する!!」


やって来たのはアウィンだった。

アウィンはそのまま倒れたフランを抱え、ボーアの元まで飛ぶ。

形勢逆転……とまでは言わないが、希望は見え始めた。


「た、助かりました……アウィン様が来なければ、ボク達は」

「喋るな、傷が広がるぞ。ここから先はオレに任せろ」

「す、すみません。お願いします」


アウィンは二人の治療を開始し、傷を見る見るうちに治していく。

同時に治療をしながら、アウィンはアインスの方を見た。

邪魔はできた筈なのにそれをしなかった。余裕の表れか否か。

仮面で表情が見えない以上、全てが不気味に映る。


「く、くそ! よくも殴りやがったな!!

 不意打ちでなければ、攻撃できない弱者め!」

「魔力をケチって、黄金の障壁で守ってねえ方が悪いだろ。

 さて、久しぶりだな。オレはお前を殴りたくてウズウズしてたぜ」


アウィンは怒るツェーンを無視し、アインスだけを見て言う。

それに対し、アインスは杖の先を撫でながら応える。


「丁度良い、手伝って貰おう……攻撃しろ」

「な、何を言って? うっ、な、なんだこの熱さは!?」

「あ、アウィン様!? 大丈夫ですか!」


突然、アウィンの身体は燃えるように熱くなった。

頭に血が上り、冷静に物を考えられなくなっていく。


「ぐっ、ああ……」

「敵はあっちだ」


アインスはそんなアウィンに指示を出し、フラン達を指差す。

それにアウィンは従い、ゆっくりとフラン達の方を振り向く。


「さあ、その内なる炎を見せてくれ」

「あ、アウィン様……」


そうして見せた表情は憎しみに満ちた物に変わっていた。


「……ニ、逃ゲロ」


最後の力を振り絞り、アウィンは言うが、もう遅い。

アウィンの登場、それは希望ではなく絶望の始まりだった……

ここまで読んで頂き、ありがとうございました!

もし誤字脱字がございましたら、ぜひ教えて下さい! 修正します!

感想評価も募集致します、よろしくお願いします!

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