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未知の魔法

「どうやら解けたようですね」


イカリは周囲を確認しながら、凍り付いたエルフから手を離す。

奏慈達を包囲していたカーテンは、すっかり無くなっていた。

フィーの予想通り、エルフを倒した事で解除されたのだ。

これで邪魔する物は何も無い。ズルフィは声を張り上げる。


「さあ、行くよ! これ以上、奴らの好きにはさせない!」


そして、そのまま斧を振り上げて出口へ向かって走り出した。

神殿に入り、戦いを終えるまで一時間以上は経っている。

少し前にタール達を向かわせたとはいえ、状況は一刻を争う。


「ま、待って下さい! ゴビとエルフはどうするんですか!?」


そんな状況にも拘わらず、奏慈はズルフィを止めに入る。

心配なのは奏慈も変わらないが、元々ここに来た目的はゴビを捕まえる事だった。

目的はもう達成できないものの、二人を放置してもいいのか。


そもそも、ビアラ襲撃の件もエルフがそう言ってるだけだ。

何処まで信じていいものか分からず、慌てて動くのは危険に感じる。

その思いから手を伸ばしたが、その手は空を掴んで届かない。


「うっ、か、身体が!?」

「え、ええ!? ど、どうしたんですか!?」

「……止まっていますね」


しかし、奏慈が手を伸ばした瞬間、ズルフィの動きが止まった。

それもただ止まったのではなく、時が止まったかのように固まる。

上がった足は空中で止まり、振った腕はピクリとも動かない。


「い、一体、何が起こっているんだ?」


その異様な光景に奏慈は驚き、思わず伸ばしていた手を降ろす。

喉から出かかっていた言葉も、この状況では出て来ない。


「っと、あら? 身体が動くねえ!」

「えっ? う、動く!? でも、今の今まで!」

「……もしかしたら、残党か伏兵が居るのかもしれないね。

 エルフを倒して、油断してたよ」


すると、今度は突然ズルフィの身体が動き始めた。

上がっていた足は地面に着き、腕は大きく振られる。

続けざまに起こる現象に、奏慈は困惑を隠せない。

そんな中、イカリは冷静に周囲を確認しながら、静かに口にする。


「そういう事ですか……カンナギ、君の魔法ですよ。

 君が手を伸ばしたから、ズルフィさんが止まったんです」

「えっ、私のせいだったんですか!?」


まさかの言葉に奏慈は目を丸くした。

だが、イカリは構わず続けて言う。


「君が手を伸ばした瞬間、動きが止まり、降ろすと動いた。

 直前の魔力の流れを見ても、間違いないでしょう。

 ですが、その様子を見るに意図してやった訳ではないんですね?」

「は、はい! 私はただ、手を伸ばしただけというか……」

「つまり、わざとじゃないんだね?

 安心したよ……故意だったら、流石に我慢できないからね」

「あ、あはは」


そう言うズルフィの表情は柔らかいが、目は笑っていなかった。

もし故意なら殺されはしなくても、気絶くらいはさせられただろう。

奏慈はそれを無事に回避し、ほっと胸を撫で下ろした。

その様子を見て、ズルフィもまた気を取り直して言う。


「一応言っておくが、置いていくのは本意じゃないよ。

 死体を漁られたり、救出される可能性もあるしね。

 だからって、荷物を持ってたら戦えないだろ?

 嘘にしても状況が状況だ。確かめない訳にもいかない」

「確かにその通りですね……分かりました」

「うんうん、分かってくれたらいいんだ。

 よし、今度こそ行くよ! 奴らからビアラを取り戻すんだ!」

「はいっ!」


これにて謎は残るものの、神殿での戦いは終わった。

ズルフィは再び走り出し、その後を奏慈が続く。

勿論、フィーとイカリもそれに続いて走り出した。


「随分と静かでしたね」

「……何の事?」


そうして走る中、イカリは隣で走るフィーに話しかける。

しかし、その言葉は何処か冷たく、刺々しかった。


「カンナギの魔法の事ですよ。あんな事があったのに静かでした」

「……それは貴方もでしょ? 人のこと言えないと思うけど」


前を走る二人に聞こえないように、イカリは小声で話す。

今二人に聞こえれば、話に参加してくるかもしれない。

そうなると話はややこしくなり、最悪の場合はそこで話が終わる。

フィーはそれで構わなかったが、イカリはどうしても真実が知りたかった。

その為、イカリは捲し立てるように続けて言う。


「話が違います。自分は魔法使いです、冷静なのは当たり前。

 でも、君は違う……ズルフィさん程の実力者を止めた魔法の威力。

 あれを見たら、普通は動揺する筈です……普段の君なら特に」


ズルフィも言っていたが、あの状況で止められたら普通は伏兵を警戒する。

まさか、味方が止めてくるとは夢にも思わない。

にも拘わらず、フィーは一言も会話に入らなかった。

まるで全てを知っていて、こうなる事を予想していたように感じる。


「結局、何が言いたいの?」


それでもフィーはしらを切り、正面を見据えたまま応えた。

イカリはそれを受け、大きく息を吐いてから次の言葉を口にする。


「では、言いましょう……あの魔法、君が与えましたね?」

「……もし、そうですと仮に言ったら、貴方はどうするの?」

「ふむ、質問には答えて欲しいですが……そうですね、何もしません。

 自分の目的は知る事です。それで自分の推理が正しいか証明できる」

「成程、そういう事ね……」


フィーはそう呟くと、ゆっくりとイカリの方に顔を向けた。

イカリの顔は真剣その物で、フィーの次の言葉を待っている。


「魔法使いともあろうものが、面白い事を言うわね。

 魔法を与えるなんて事、そう簡単にできる事じゃない」

「でも、返す場合は簡単にできる……そうでしたよね?」

「……お見通しって訳ね、流石だわ」

「それは、つまり」

「話は終わりよ、後はご想像にお任せするわ。

 さあ、私達もビアラを目指しましょう」

「……そうしましょうか」


さらに探りを入れたかったが、それ以降フィーは完全に口を閉ざしてしまった。

もう何を言っても応えてはくれないだろう。

そのままイカリはフィーと共に二人に続き、ビアラを目指すのだった……


「――くっ、なんて事だい」


それから数十分後、四人は無事にビアラへと辿り着く。

しかし、大方の予想通り状況は最悪だった。

あれほど綺麗だったオアシスは濁り、町はどこもかしこも壊れている。

さらに魔物がそこら中を闊歩し、土と血の臭いが周囲を支配していた。


「ズルフィ様!」

「おお、タール! 無事だったんだね!」

「チルベも大丈夫そうね」

「……はい」


そこにタールとチルベも合流し、お互いの無事を確認する。

二人は汚れているものの、大した怪我はしていないようだ。

それを確認し終えると、六人は走りながら話し始める。


「さて、戦況を聞かせて貰うよ。今、一番危ないのは何処だい?」

「西区です。狂楽鳥の群れが襲来しています」

「狂楽鳥か、それはマズイね……聖女様、頼めるかい?」

「行けます。でも、私一人では手が足りないかもしれません。

 タールさんをお借りしてもよろしいでしょうか?」

「大丈夫だよ。コキ使ってくれ」

「ありがとうございます! では、行ってきます!」


フィーはそう言うと、チルベと共に一足先に西区に向かう。

残された四人はそのまま走り、話を続けた。


「タール、他に危ない場所はあるかい?」

「他は……商業区でしょうか? 政変軍が集まっているようです」

「ふむ、それは良くないね……分かった、そっちはアタシが行こう。

 これ以上、荒らされる訳にはいかないからね」

「了解しました。そうなると、カンナギさん達はどうしましょうか?

 他にも危険な場所はありますが、土地勘が無いと」

「ふむ、そうだね……」


ズルフィは走りながら、奏慈とイカリの方を一瞥する。

二人は黙って走り続け、遠くに見える城をじっと見つめていた。

心はもう決まっているらしい。


「すまないね……先に城に向かってくれるかい?

 アタシも片付いたら、すぐに向かうよ」

「分かりました、任せて下さい!」

「うん、頼んだよ!」


こうして、ズルフィとタールも現場に向かって行った。

残された二人は互いに顔を見合わせ、同時に頷く。


「城へ急ぎましょう! 私が案内します!」

「はい、お願いしますよ!」


そして、二人も城へ向かって駆け出すのだった……

ここまで読んで頂き、ありがとうございました!

もし誤字脱字がございましたら、ぜひ教えて下さい! 修正します!

感想評価も募集致します、よろしくお願いします!

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