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邪悪なる者

色々ありましたが、この章も終盤です!

どんどん盛り上げていくので、どうかお楽しみ下さい!

「随分と下りますね。まだ着かないんですか?」


奏慈は道すがらズルフィに話しかけた。

牢屋へと続く道は長く、着くまで時間が掛かる。

どんなに急いでも十分以上は掛かる筈だ。


「着かないよ、凶悪犯の為の牢だからね。

 簡単に出れないように、ずっと地下にあるんだ」


その為、暇潰しも兼ねて話す事にした。

ズルフィもそれは賛成で、奏慈の言葉に応える。


「そうなんですね。でも、あまり意味はないのでは?

 凶悪犯が強かったら、逃げられてしまいそうですが」

「ああ、聞いてないんだね」

「おば様、すみません……一度に話したら混乱すると思って」

「いや、気にしないでいいよ。じゃあ、アタシから話すか。

 アンタもそれでいいね?」

「あっ、はい。お願いします」


こうしてズルフィはゆっくりと話し始めた。

まず、この城は結界魔法で外の世界と隔絶されている。

これによって、外部から城に入るには限られた方法しかない。

つまり、城から抜け出すにも一筋縄ではいかないのだ。


だが、結界魔法はこれまで戦いで使われてきた。

新たな空間を作り、その空間に相手を誘い込んで戦う。

ウルトルクスやフィーはそういう使い方だった。


しかし、本来は戦いで使われる物ではない。

寧ろ逆で、何かを守る為に使う魔法なのだ。


「成程、今までがイレギュラーだったんですね」

「そういう事になりますわ」

「……あれ、ファルシオン家にも使われていたんですか?

 その魔法があったら、ウルトルクスに襲われる事はなさそうですが」

「ファルシオン家は別だ。ボクのフォチャード家もだが」


結界魔法は貴族や王族の住居に使われる。

それでも例外として、武家では使われない事が多い。

その理由はいくつかあるが、一つは国を守る為だ。


侵略者が現れた時、結界魔法の内側に居れば安全だろう。

だが対照的に外側は無防備になり、何も反撃できない。


これでは外側から結界魔法を破られるのも時間の問題だ。

そうならない為には、外側で戦う者が必要になる。

その者こそ武家であり、結界魔法を使わない理由だった。


「だから、アルマ王は重く見ていたのか。

 武家は国の要。負ければ、侵略者に好き放題される。

 つまり、襲撃を受けたという事は弱点を晒したようなもの」

「それだけじゃない。あれ以来、輸出が減ったと聞く。

 商人達が怖がり、寄らなくなったせいだ」

「自分達を守ってくれる奴らが弱くちゃ、そりゃ心配よな」

「……思ったよりも重い役割ですね」

「王の次に偉い大公家ですもの、それくらい当然ですわ。

 っと、着きましたわね」


そうこうしているうちに四人は牢へと辿り着く。

まだ昼間にも拘わらず、牢は冷たく湿った空気が流れている。

雰囲気も相まって、まるでお化け屋敷のようだ。

その雰囲気に押されていると、奥からタールが出てきた。


「お待ちしておりました、ズルフィ様。

 おや、フラン様達も来られたのですか?

「ええ、何か知ってるかもしれませんから」

「……私がアウィン様を見つけていれば、このような所に」

「タールさん、気にしないで下さい。仕方ありませんわ」

「ありがとうございます……それでは、案内致します」


タールの案内の下、四人は奥へと進んでいく。

唯一の明かりは、魔法で灯した光だけの空間。

音も無く、ここだけ別の世界のように感じる。


「着きました。この者です」

「なっ、コイツは!?」

「……まさか、ツェーンなのか?」


一番奥の牢屋にそれは居た。子供ほどの背丈で、顔には仮面。

そして、纏った雰囲気……間違いなく、ウルトルクスのツェーンだ。


「起きろ、面会の時間だ」

「……うん? くくく、これは大勢で。

 それに見た顔もあるな」


ツェーンは捕まっているのに、余裕を全く崩さない。

手足や首を鎖で繋がれ、周囲には無数の針がある空間。

さらに壁には魔力封じまで施されている。それでも崩さない。


「なんで、お前がここに……」

「決まってるだろ、お仕事だ。

 愚かな王に代わって、我らがこの国を変える」


それどころか挑発までし、ズルフィを馬鹿にする始末。

やはり、ウルトルクスは真面な集団ではないらしい。


「その言い草を聞くに、政変に関わってるようだね。

 誰に依頼されたんだい?」

「くくく、もう知っているんじゃないのか?」

「……ゴビか」

「ゴビ?」

「宰相だ。もう辞めてるがな」


かつて、このサフラー大陸には三つの国があった。

西のキジル、東のテンギト、南のカラクム。

長い間、この三国がサフラー大陸を支配してきた。


そのカラクムの宰相だったのがゴビ。

ゴビは王に代わって政を行い、国を治めていた。

王は無能で、ゴビの傀儡だったのだ。

そこにズルフィが現れ、一つの国に統一される。


その時に多くの者が職を失うが、ズルフィはすぐに職を用意した。

これによって殆どの者が職を得たが、ゴビは違う。

ゴビが求めていたのは自分の国だった。


「それが不満になって、辞めたんですか……なんていうか」

「自分勝手だろ? 今まで好き勝手やってきたからな。

 それができなくなるのは、不満に思っても仕方ない。

 まあ、いきなり攻め込んだアタシが言う事じゃないが」

「だからって、政変を起こすのは可笑しいですわ!

 おば様は民の事を思って、戦ってきたのに……」


ゴビは欲深い男だ。宰相だった時代、悪い噂しかない。

権力を濫用して財産を奪った。女性を攫い、愛人にする。

挙げればきりがない。そんな男が政変に関与している。

一刻も早く捕まえなければ、この国は滅びるだろう。


「ツェーン、ゴビの居場所を吐け。

 最期に一つくらい、良い事をしてみせろ」

「断る。ゴビは創造神抹殺の為に必要な男だ!

 あの邪悪な心が広がれば、創造神はさぞ苦しむだろう!!」

「やはり、民を思って行動してないか……いいよ、好きにしな。

 言わないなら、明日にでも処刑するだけだ」


ズルフィは深く息を吐きながら、そう言い放つ。

ウルトルクスをどうするかは、捕まえた国が自由にしていい。

最悪逃がさなければ、すぐに処刑してしまっても問題ないのだ。


「くくく、それは困るな……まあいい、教えてやろう。

 ゴビは砂蠍神殿に居る。今も居るかは知らんがな」

「砂蠍神殿か……タール、すぐに出発の準備を」

「了解しました」


流石のツェーンも処刑と聞けば、言わざるを得ないらしい。

タールもすぐに走り出し、準備に取りかかる。


――砂蠍神殿。そこは魔王リングが住んでいたとされる神殿だ。

魔王はサフラー大陸を支配していた存在で、キュバス族の祖。

美しい容姿と力を持ち、女帝に倒されるまで生き続けた。

そんな存在にあやかろうと、ゴビは身を隠しているのだろう。

だが、これで場所は分かった。四人はツェーンに背を向ける。


「待て、もう一つ教えてやろう……聖女様の居場所についてだ」

「なっ、アウィンさんの事を知ってるのか!?」


そんな中、ツェーンは奏慈に声をかけた。

反応するつもりはなかったが、内容も相まって奏慈は振り向く。


「当然だ……なにせ、俺を捕まえたのは聖女様だからな」

「あ、アウィン様が!?」

「くくく、その内戻ってくる。心配する必要は無い。

 このまま大人しく、ここで待ってるといい」


言葉は合ってるが、正しくはフィーに倒されて捕まった。

戻ってくるのも正直分からない。口からでまかせだった。

それでも奏慈はその言葉を聞き、ホッと一息吐く。

しかし、ボーアはその言葉を聞き、ツェーンに槍を向ける。


「どういう風の吹き回しだ? 何故、教える?」

「なあに、親切心だよ。お前もさっき言っただろう?

 最期に一つくらい、良い事をしないとな」

「……ふん」


今までの事を考えると、親切心でツェーンが言う訳がない。

そもそも何故、心配している事を知っているのか。

何か裏があるのは間違いないが、今はそれどころではない。

ゴビを捕まえる為にも、一刻も早く神殿に向かう必要がある。

思う所はあるが、四人は足早にその場を後にした。


「ズルフィさん、私も砂蠍神殿に行ってもいいですか?」


そうして執務室に戻る途中、奏慈は落ち着いた調子で言う。

その言葉にズルフィは勿論、フランとボーアも振り向いた。


「いいが、アウィン様の事はいいのかい?

 ずっと待ってたんだろう?」

「心配ではあります。でも、今はゴビの方が大事です。

 そんな邪悪な者を、黙って見ている訳にはいきません!」

「はあ、また始まったな……反対しても、意味はないか」

「ですわね」


いつもの調子の奏慈に、フランとボーアは呆れる。

当然、ここで待ちたい気持ちもあった。

それでも奏慈はこの国の為に動く。全ては心の赴くままに……

ここまで読んで頂き、ありがとうございました!

もし誤字脱字がございましたら、ぜひ教えて下さい! 修正します!

感想評価も募集致します、よろしくお願いします!

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