真実
流石に寒くなってきましたね! 皆さん、体調はどうでしょうか?
無理をせず、しっかり休んでいきましょう!
それでは今回もお願いします! 楽しく読んで頂けると幸いです!
「――ここで日記は終わり、次にあったのが『愛してる』。
藍はこの後、自殺したようです……」
奏慈はそこまで話すと、深く息を吐く。
藍と望結の辿った運命は衝撃的な物だった。
人助けから始まった行為が人殺しに変わる。
奏慈は何を思いながら読んだのだろう。
それでも話は途中、聞く事はまだある。
少しの沈黙の後、ボーアは口を開いた。
「それでどうなったんだ?」
「……そりゃ落ち込みましたよ、がっつりと。
でも、すぐに動き始めました。真実を知る為に」
「真実?」
奏慈はただ日記を読み、落ち込んでいた訳ではない。
出てきた物や場所を調べ、解像度を上げていた。
結果、書いたのは本人と断定しながらも首を傾げる。
「違和感を覚えたんです……藍は優しかった。
嫉妬しても、いきなり殺しに向かうような子じゃない。
何か理由があって、仕向けられたと思ったんです。
スタンガンもよく考えたら可笑しい。
望結は普段、そんな物を持ち歩いたりしなかった」
「つまり、誰かが争わせる為に二人を?」
「ええ、私はそう思いました。
だから、見つける事にしたんです……その証拠を」
「それで見つかったのか?」
「はい、見つけました。これです」
そう言うと、奏慈は懐から何かの破片を取り出す。
破片には白ペンで『神中光』と書かれていた。
「これは……名前か? 一体、誰の物だ?」
「……イジメの首謀者の物です」
「えっ、それじゃあ……二人はその人のせいで!!」
神中光。この男こそが、イジメを始めた首謀者だった。
聖山高校におけるイジメは実行役と指示役に分かれている。
指示役はスマホで命令し、その命令を実行役が聞いて動く。
中光はそんな行為を仲間に広め、自らもそれに参加した。
正にゲーム感覚であり、鬼畜外道のどうしようもない男だ。
そんな男なら、スタンガンを持っていても可笑しくはない。
「あれから中光のスマホを調べて分かりました。
中光は藍と望結にそれぞれ自殺する直前に連絡を取っている。
恐らく、その時に藍の嫉妬を煽り、望結に渡したのでしょう」
「……なんて奴だ、本当にそいつは人間なのか?」
「正直、吐き気がしてきましたわ……」
中光の所業にフランは思わず口を押さえ、ボーアは怒りに震える。
二人は当初、奏慈はやり過ぎではないかと思っていた。
いくら大切な人を失っても、復讐で殺すのは間違いだと。
でも、今は違う。人の恋心を利用し、藍と望結の友情を引き裂いた。
そんな男を生かしてはいけない。殺して正解だと思い直した。
「……カンナギさん、貴方に謝らないといけませんわね」
「えっ、突然どうしたんですか? フランさんは何もしてませんよ」
「いいえ、一杯してきました。
最初は無理矢理、騎士団に入れようとしましたわ。
その次はカンナギさんを置いて、危険な目に遭わせた」
「それは仕方ないですよ、何も知らなかったんですから」
奏慈の過去を知り、フランは深く頭を下げる。
正直、初対面の印象は最悪だった。でも、それはもう昔の話。
その印象は払拭され、今では良い思い出だ。
「……だからこそ、あの時の言葉が引っかかるんです。
『来て早々ですが、帰らせて頂きます』。今でも覚えてますわ。
何故、あんな世界に帰ろうと思っているんですか?
そんなに酷い人が居て、大切な人達も喪ったのに……」
「……まあ、疑問に思いますよね」
それはアウィンにも言われた言葉だった。
辛い目に遭ってきた世界に、わざわざ戻る意味は無い。
この世界で自分を慕う者達と暮らす。それが一番幸せだろう。
奏慈はそれを蹴っているのだ。疑問に思っても仕方ない。
「一つは約束したからです。あの世界で共に生きると」
「だが、もう居ないじゃないか……約束した人は」
「そうですね……だから、もう一つの理由があります。
それは罪を償う事です。私はこの手で人を殺しました。
間違った事はしたとは、今でも全く思っていません。
それでも命を奪った私は、罰を受けないといけないんです」
どんな時でも奏慈は自分の感情に正直に生きてきたつもりだ。
しかし、中光達を殺した時は違う。
罰を受けようと思えば受けれたのに、甘言に乗ってしまった。
「真面目な奴だな。罰を受ける為に、戻ろうとするとは」
「ふっ、自分でも馬鹿とは思いますよ。
だけど、それが私なんです。理解できないとは思いますが」
「いえ、悪を許せない気持ちは自分にも向くものです。
誰かが許しても、自分は許せませんよね」
「はい、許せません。まあ、帰れないと意味ないですけどね……」
奏慈は自嘲気味にそう言うと、一息吐いてから椅子に座る。
話し始めて数時間、未だにアウィンは帰って来ない。
このまま待ち続ける予定だが、奏慈の疲労はピークに近い。
二人はそんな奏慈を一瞥すると、静かに目配せする。
「カンナギさん、アタシ達はもう休みます。
寝不足の顔でアウィン様を出迎える訳にはいきませんもの」
「ボクもそうしようかな。隈を作る訳にはいかない」
「……そうですね、私も休みます。疲れを残しちゃいけませんね」
「ああ、そうだな」
「うーん、眠いですわ」
奏慈は休むように言っても、無理にでも残る男だ。
だから二人は遠回しに休むように促し、奏慈を休ませた。
勿論、奏慈も二人の行動の意味を理解している。
そこから無理を言って、残る事も可能だった。
でも、二人の好意を無下にはできない。
こうして奏慈は好意を受け取り、部屋を後にした……
「う~ん、良い朝だね!! 今日も元気かい?」
「ふわあぁ、おはようございます……」
「うっ、いった……朝っぱらから大声は止めて下さい」
「ズルフィさん、おはようございます!
まあ、元気な方ですかね?」
――次の日、三人は再びズルフィの執務室を訪れる。
三人は寝床に入った瞬間、泥のように眠った。
思ったよりも疲れが溜まっていたようだ。
それでも夢を見る物で、奏慈はいつもの夢を見た。
望結が目の前から飛び降り、自殺する夢を……
「……それでアウィンさんは?」
「ああ、その事なんだが……まだ来てないね。
タールは戻ってきたんだが、見つけられなかったそうだ」
「そうですか……すみません、ありがとうございます」
予想はしていたが、アウィンはまだ帰っていないようだ。
口では礼を言うも、奏慈は思わず肩を落とす。
「あっ、でも面白いのは見つけたよ!」
「なんですの、おば様?」
「ウルトルクスだよ、ウルトルクス!!
その構成員を捕まえたんだよ!」
「なっ、ウルトルクスだと!? それは本当ですか!」
「本当だよ! なんなら今から見に行くかい?
ここの地下に捕まえているからね」
フィーに倒されたツェーンはあの後、城へと連れて行かれたようだ。
ウルトルクスはその力の大きさから町の牢に入れる訳にはいかない。
厳重な警備の下、逃げ出さないようにしっかり見ないといけないのだ。
「どうしますか、カンナギさん?
わざわざ、嫌な奴に会いに行く必要もないですけど」
「……いえ、行きましょう。何か知っているかもしれません」
「だな。もし、余計な事を言ったら殴ればいい」
「おいおい、仮にも囚人なんだから優しくな。
ほら、付いてきな。くれぐれも暴れたりしないように」
そうして三人はズルフィの案内の下、牢屋へ向かった。
煌びやかな内装から少しずつ暗くなっていく牢屋への道。
間もなく三人は辿り着き、ツェーンを見て驚くのだった……
ここまで読んで頂き、ありがとうございました!
もし誤字脱字がございましたら、ぜひ教えて下さい! 修正します!
感想評価も募集致します、よろしくお願いします!




