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理由

視点がコロコロ変わって分かり難いと思うので、なるべく分かり易くしていきたいです。

面白いと思って頂けたらいいな。

「お休みのところ失礼します。お食事を持ってきました」

「えっ、ハルベルムさん!? ど、どうぞ!」


時は昨日に遡る……使用人に導かれ、部屋に戻ってきた奏慈。

好意に甘えて休んでいたところ、ハルベルムが部屋を訪れる。

突然の来訪に奏慈は驚くも、すぐに扉を開けた。


「ありがとうございます。お口に合うと良いのですが……」

「い、いえ、お礼を言うのはこっちの方というか。

 とにかく、運んで頂き、ありがとうございます!」


家主が自ら食事を運ぶ……それだけ責任を感じているのだろうか?

分からないが、奏慈は頭を下げ、料理の載ったお盆を受け取った。


「娘が本当に失礼な事をしました……」

「ああ、いいえ……私は気にしてないので、大丈夫ですよ」


奏慈は本当に気にしていない。寧ろ、フランの事が心配だった。

親が良かれと思っても、伝わらないのが親と子の関係だ。

今回の事で親子間に亀裂が入ってないか? 心配で仕方ない。


「……本当にありがとうございます。

 そう言って頂けると、少し心が楽になります」

「いえ、そんな……」


それを受け、ハルベルムは再び頭を下げた。

このままではお互いに何度も頭を下げる事になってしまう。


「い、いくつか質問しても宜しいでしょうか?」

「はい、なんでしょう」


そんな流れを変える為、奏慈はハルベルムに質問した。

フランに色々教えて貰ったが、まだ頭に入っていない。

改めて教えて貰った方が良いだろう……奏慈はゆっくりと話し出す。


「まず、僕は『日本語』を使って話しています。

 日本語は僕の居た世界で使われている言語です。

 なのに、この世界でも日本語が通じています……何故ですか?」


それは当然の疑問だった。住む地域が違えば、使う言語が変わる。

自分の使う言葉が通じるのは同じ地域に住む者だけだ。

だが、世界すら違うこの世界でも日本語が通じている。

これは一体何故か? 単に日本語を使っているとは思えない。


「それは創造神様のご加護です」

「創造神の加護?」

「この世界に入った時点で、この世界の言語が変換されるんです。

 日本語を書いたり、喋っても、私達の言語に変換される」

「……という事はハルベルムさん達の言語も?」

「はい、私達の使う言語もカンナギ様が理解できる言語に変換されます」

「そ、それは凄いですね……正に神の加護だ」


神話の話ではあるが、奏慈が元々居た世界は言語が一つしかなかったそうだ。

しかし、それは神によって乱され、今の世の中になったらしい。

それを考えると、この世界の神は随分と気が利く存在のようだ。


「二つ目、お二人共どうして私に敬語なのですか?

 私はこの世界に身分を証明する物は無く、平民以下の存在です。

 流れ者の私に敬語だけでなく、頭も下げて……正直、恐縮しています」

「……あの娘の場合、カンナギ様に取り入る為でしょう」

「私に? 私に力なんてありませんよ?」

「いえ、この世界には昔から多くの異世界人が訪れるんです。

 そして、彼らはこの世界に文化や技術を齎してくれました。

 あの娘はカンナギ様もそれらを齎してくれると思ったのでしょうね

「成程……って、私以外にも異世界人が居るんですか!?」

「はい、居ますね」


異世界人が文化や技術を齎す。

それは同時に奏慈以外にも異世界人が居る事を示していた。

なら、その人達に会えば、元の世界に帰れるかもしれない。

奏慈は一縷の望みをかけ、ハルベルムに聞く。


「私以外の異世界人は今どこに?」

「……残念ながらここ数十年、この世界に異世界人は訪れていません。

 だからこそ、あの娘はカンナギ様に執着したのでしょう」

「そ、そうなんですね……」


だが、そう上手くもいかなかった。

そもそも会えたとして知ってるとは限らない。

地道に他の方法を探すしかないようだ。


「私が敬語の理由を説明します。それはカンナギ様が客人だからです」

「客人?」

「はい。我が家は身分に関係なく、客人をもてなす決まりがあります。

 説明が足りず、申し訳ありません……」

「そうだったんですね……いえいえ、ありがとうございます」


これでハルベルムの理由も分かった。引き続き、奏慈は聞いていく。


「三つ目、創造神はどういう神様なんですか?

 創造神教もどういう宗教なのでしょうか?」

「創造神様はこの世界をお作りになった方です。

 そして、創造神教はその創造神様を崇める宗教になります」

「成程……ハルベルムさんもその創造神教を信じてるんですね」

「いえ、信じるもなにも、創造神様は実在します。

 実在するからこそ、カンナギ様も加護を受けられたんです」

「それは確かにそうですね……」


創造神は存在する。信じがたいが、その存在を奏慈自身が証明していた。

だが、実在するならは気になる事が一つある。


「創造神に名はないのですか? 偉大な存在ならあってもいいと思いますが」

「そうですね……それは長年研究されていますが、詳しい事は分かっていません。

 長い時間が経つ内に失われたとも、元から無かったとも言われています」

「そうなんですね……」


この世界に住む者でも分からないなら、誰にも分からないだろう。

奏慈は最後の質問に移る。


「どうやったら、私は元の世界へ帰れるでしょうか?」

「……それは私にも分かりません。

 元の世界へ戻った異世界人の話を聞いた事がありませんので」

「そ、そうですか……」

「恐らく、殆どの異世界人がこの世界に骨を埋めたのでしょう。

 可能性があるとすれば、本です」

「本ですか?」

「はい、異世界人の事が記された本は沢山あります。

 その本に情報があるかもしれません」

「成程……」


奏慈の脳裏に図書館が浮かぶ。紙の臭いとインクの臭いがしてきた。

この世界にあるか分からないが、本がある所といえばそこしかない。


「この世界に図書館はありますか?」

「ありますよ。我が領内にはダハルに大きな図書館が」

「ありがとうございます。それでは明日、その図書館に行く事にします


「決めました。僕は各地の図書館を巡り、情報を集めます。

 この世界にも図書館はありますよね?」

「あります。

「ありがとうございます。それでは明日、その図書館に行く事にします」


奏慈のやるべき事は決まった。情報を集める為、各地の図書館を巡る。

それは何年かかるか分からない厳しい旅だ。

だが、絶対に元の世界に帰らなければならない……奏慈は覚悟を決める。


(ああ、そうだ……僕は元の世界に戻るんだ。約束を守る為に)


迷いは何一つ無い。奏慈は深く息を吐いた。

その様子を見て、ハルベルムは聞く。


「質問は以上でしょうか?」

「はい。まだ気になる事はありますが、それは追々聞かせて頂きます」

「分かりました……では、私からもお願いしてもよろしいでしょうか?」

「はい、なんですか?」

「……帰る方法が見つかるまで、我が家に滞在して下さい」

「えっ」


その提案はかなり有難い物だった。奏慈はこの世界の金を一切持っていない。

金が無ければ、食うにも寝るにも困る。衣食住を得られるなら万々歳だ。


「理由を聞いても?」

「ええ、大丈夫ですよ」


しかし、ただで泊めてはくれる訳が無い。何か理由がある筈だ。


「一つはカンナギ様が客人だからです。

 客人を放り出す訳にはいきません」

「成程」

「二つ目はあの娘の為です」

「フランさんの?」

「……親馬鹿と思われるでしょうが、私はあの娘に幸福でいて欲しいのです。

 その為にも今はカンナギ様が近くに居た方が良いかと」

「親なら当然の感情だと思いますよ。でも、私が居て幸福とは……」

「……あの娘は退屈を嫌うんです」

「退屈を? そうか、そういう事ですか……」


ハルベルムの言葉を聞いて、奏慈は一つ謎が解けた。

フランは異世界人が齎す文化や技術はどうでもいいのだ。


「ああ見えても、あの娘は本を読むのが好きなんです。

 それ自体は悪い事ではありませんが……」

「いつしか本で読んだような出来事を……そういう事ですか?」

「はい。そして、それは日に日に増してきています。

 考えたくありませんが、いつか退屈のあまりに暴れ出すのではないか?

 そう思えてならないのです……」

「成程、確かに心配ですね」


非日常を求める子供……そう聞けば可愛いものだが、フランは子供ではない。

奏慈に迫ってきた勢いと断った時の表情にはある種の狂気があった。

今は自制していても、何かの切っ掛けで爆発するかもしれない。


「分かりました。ご厚意に甘えて、滞在させて頂きます」

「ありがとうございます……」


それは絶対に阻止する必要がある。奏慈は心からそう思った。

自分の行動でそれを回避できるなら安い。

ここに居る間、道を踏み外さないように見守る事にする。


「ふう……」

「お疲れですか?」

「ああ、はい。今日はもう休ませて貰ってもいいでしょうか?」

「ええ、大丈夫ですよ。すぐに準備をさせましょう」

「何から何まですみません……」


慣れない手合わせのせいか、奏慈は息を切らしていた。額には汗も見える。

奏慈は明日に備えて、もう寝る事にした。

そうして、あれよあれよと言う間に床に就く……かなり疲れていたようだ。


「カンナギ様、よろしくお願いします」

「こ、こちらこそ、よろしくお願いします……」


次の日、奏慈はハルベルムに呼ばれた。

図書館巡りの護衛という名目で、フランと行動する事になったのだ。

本当の理由を奏慈は言わない。言ったら反発する事が分かっていた。

こうして二人は馬車に乗り、あっと言う間に目的地に辿り着く。


「ここがダハルですか……馬車から見えてたより綺麗な町ですね」

「ええ、自慢の町です。アタクシもよく来る町で、ご飯も美味しいんですよ」

「それはいいですね。今から楽しみだ」


まだまだ硬い二人の会話だが、それは時間が解決してくれるだろう。

奏慈は初めて訪れた町を楽しそうに歩き始める。


「あはは、ボーア様ったら」

「冗談ばっかり言って」

「ボクが冗談を言う訳ないだろう?」


そんな風に町を歩いていると、青年が前から歩いてきた。

両脇には女性が居り、楽しそうに話している。

そして、青年はというとかなり裕福そうだ。貴族だろうか?


「色んな人が居るんだな」


奏慈は気にせず、その青年の横を通り過ぎようとする。

気にしても仕方ない……しかし、フランは違った。


「ボーア!」

「うわ!?」

「えっ?」


この時の出会いを、奏慈は忘れないだろう。

ここまで読んで頂き、ありがとうございました!

もし誤字脱字がございましたら、ぜひ教えて下さい! 修正します!

感想評価も募集致します、よろしくお願いします!

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