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日記

今回も重要な回で、次も合わせて一旦完結します。

中々暗い話ですが、楽しく読んで頂けると嬉しいです!

「さ、さっきから何を言っているんだ?

 ボクにも分かるように言え!」


全てを理解し切った様子の二人に対し、ボーアは困惑を隠せない。

それも当然だ。この世界には転生という概念は存在しない。

死んだ者は創造神の元へ送られる。それがこの世界の常識なのだ。

その為、転生という概念は異世界人に関する本にしか存在しない。


「そうですわね、簡単に言うと……死んだ後、また生を得て生きる。

 つまり、新たな人生を歩み始める事を転生というらしいですわ」

「成程、妙な考え方だな……異世界人は皆、そう思っているのか?」

「いいえ、増えてきてはいますが、全員ではありません」

「ふむ、あくまでそういう考えか」


転生を理解した所で、ボーアは改めて二人の言葉を思い出す。

アウィンは藍の転生体。別の世界の人間が、この世界の聖女らしい。

言葉は理解できる。だが、それを飲み込めない……何故なら。


「アウィン様の正体がアイさんなら、そのアイさんという人は」

「……死んでる事になりますわね」

「やはり、そうなるか……ミユさんに続き、アイさんも」


二人を救おうと奮闘した奏慈だったが、救う事はできなかったようだ。

ボーアは滅多に同情しないが、この時ばかりは奏慈に同情する。


「でも、イジメが原因なのかは分かりませんわ」

「……どういう意味だ? 二人は虐められていた。

 それなら死んだ原因もイジメじゃないのか?」


しかし、それに割って入るようにフランは口を開いた。

ここまでの流れを見れば、死んだ原因はイジメを受けての自殺。

またはイジメが悪化し、殺された事しか考えられない。


「アタシも最初はそう思いましたわ。でも、違和感があるんですの。

 カンナギはイジメ問題を表に出し、捜査が始まる土台を作った。

 悪化する可能性はあっても、良い方向になっていく筈でしょう?」

「確かにそれはそうだな……じゃあ、原因は何だ?

 虐められても死ななかったのなら、あとは事故か殺人くらいだぞ」


二人は推理し続ける。あれから奏慈は何も話さず、俯いたままだ。

フランはそんな奏慈を横目で見ながら、ボーアの言葉に応えた。


「いえ、死んだ原因は自殺ですわ」

「なっ、どういう事だ!? 死んだ原因はイジメじゃないんだろ?」

「ええ、死んだ原因はイジメとは限りませんわ。

 ……でも、自殺じゃなかったとも言ってません」

「じゃあ、イジメ以外に自殺する理由は何だ?」

「それは……話して下さいますか、この先を?」


そこまで言った所で、フランは奏慈の方は見る。

先程までと違い、奏慈は二人の方を見ていた。

口は閉じたままだが、真剣な表情で何かを訴えかけている。


「ふううう……はい、話します。でも、知ってる事は少ないですよ」

「それでも構いませんわ。

 アタシとしては、予想が外れて欲しいんですもの……」

「……分かりました」


そうして本日二度目の奏慈の話が始まった。

二人はそれを黙って聞き、齎される真実を待つ……



          ◇   ◇   ◇



「これも運命なのかな、僕が担当する事になるなんて……」


皮肉めいた笑みを浮かべながら、奏慈は警察署の中を歩く。

望結達の仇を討った後、奏慈は謹慎処分を受けていた。

しかし、それ以上の罰は受けず、今日仕事に復帰する。

通常なら罪になる所だが、仇討ちは依頼された物でもあった。


それは前に情報を流した権力者からの依頼で、報酬は罪の減刑。

奏慈は受け取りたくなかったが、口封じても兼ねて受け取らされた。


「よっと、やっていくか」


こうして復帰した初日、奏慈はダンボール箱を机に置く。

今日の仕事は遺留品の仕分け。藍の物を整理する事だった。

奏慈は思う所はあるものの、早速箱を開けて整理し始める。


「これはここで、それはここだったかな?」


本来、遺留品の仕分けは奏慈の仕事ではない。

それでもやらされているのは、署内での扱いのせいだった。

謹慎処分が解けても、奏慈の罪は許されない。

結果、窓際に追いやられ、雑用じみた仕事をやらされ始める。


「ふう、次に行くか」


それでも奏慈は文句を言わず、一箱目を終わらせた。

減刑されても罪は消えない。一生消えずに、心に刻み込まれる。

それを償っていく為に、奏慈は生きていくと決めたのだ。


「っと、うわ!? あー、落としちゃった……」


そう意気込む中、奏慈は箱を落としてしまった。

急いで拾い上げるも、中身はバラバラに散らばってしまう。


「あ、あれ? これは……日記か?」


そうして拾っていく内に、奏慈は日記を見つける。

日記は落ちた拍子に開いており、あるページを奏慈に晒す。

人の日記は読まない性質だが、奏慈はそれを見てしまった。


「……な、なんだこれ」


そこにあったのは、赤黒い何かで書かれた『愛してる』。

他には何も書かれておらず、中央にそれだけが書かれていた。

それに奏慈は恐怖を覚えるも、すぐにページを捲り出す。

この日記は読まなければならない。そう、確信したのだ。



「親父に言われたから、今日から書き始める事にする。

 はあ、面倒だぜ。どうして書かないといけないんだ?

 日常の事なんて書いても、なんにもならねえだろ」


最初のページには書き始めた理由が長々と書かれていた。

藍の父親は家を空ける事が多く、藍は一人暮らしに近い。

母親はとうの昔に亡くなっており、肉親は父親だけ。

そんな父親が仕送りと共に送ったのが日記と手紙だった。


手紙は遺留品として見つかっており、一緒に箱に入っている。

その内容は娘を大切に思っている事と、日記を書く大切さが書かれていた。

奏慈はそれを確認し終えると、ページを捲り始める。


「こんな事を書いたら、親父はきっと心配する。

 でも、書いた方が気分は晴れるかな?


 ……オレは虐められている。理由は全く分からない。

 全く面倒だ。アイツらのお遊びに付き合わされるなんて。

 卒業までの辛抱だが、どんな事されるんだろうな?」


ああは言っても、藍も父親を大切に思っていた。

だから、日記を書き続けてきたが、ここで日にちが飛ぶ。

イジメが始まり、書くのも億劫になっていたのだろう。


「アイツら、遂に望結も虐め始めやがった!

 なんとか止めに入ったけど、多勢に無勢で負け。

 それでも交渉して、虐められないようにできた!


 オレが代わりに望結を虐める。

 クソだが、他に方法がねえ……非力なオレを許してくれ」


今までと違い、強い筆圧で書かれている。

怒りに震えていたのだろう。その後も強い筆圧が続いた。


「今日、変な男と会った。『かんなぎそうじ』という奴だ。

 警察官らしいけど、今になって捜査を始めたらしい。

 ふん、遅いだよ。今更やったって、変わりはしねえ。

 今はただ待ってればいいんだ。卒業すれば、全て終わる」


ここで筆圧は元に戻り、繊細な文字で書かれ始める。

強い口調だが、心では感謝しているのだろう。

その後も繊細な文字が続き、内容は明るくなっていく。

これで良い方向に変わっていく……そう、思われた。


「今日、良い事があった! アイツらに絡まれた所に、奏慈が来てくれたんだ!

 奏慈はあっと言う間にアイツらを倒して、助けてくれた!

 正直カッコ良かったぜ……まるで、ヒーローみたいだった」


ここから奏慈に関する書き込みが増えていく。

一緒に遊んだこと、ご飯を食べたこと、守られたこと。

それが何ページにも及んで書かれていた。

奏慈は気恥ずかしくなり、思わずその部分を飛ばす。


「今になってやっと気づいた。オレ、奏慈の事が好きなんだ!

 最初は気に食わなかったけど、今は片時も忘れられない。

 決めた……明日、告白しよう! 断られたって構わない!

 この思いに決着を付けて、卒業するんだ……よし、やるぞ!」


ウキウキとした感情が文字に表れている。

だが、奏慈は告白された覚えが無い。好意を持たれている事も今知った。

奏慈は嫌な予感がしながらも、次のページを捲る。


「望結、どういう意味だよ……奏慈から告白されたって!

 それも、どうして受けたんだ! 好きでもないんだろ?


 許せない……オレが虐められてる時、誰も助けてくれなかった!

 なのに、お前は助けられた上に告白までされるなんて!!

 お前はあの時、オレを無視して逃げた癖に! なんでだよ!!」


筆圧は再び強くなった。それも前より強く、紙に穴が開く程になる。

その後も望結に対する恨み言は続き、それは何ページにも渡った。


「も、もういい……もう読みたくない」


そこで奏慈は日記を閉じる。罪悪感と後悔で頭が一杯になった。

友達思いの優しかった藍を、自分が壊してしまったのだ。

もう日記を捲りたくない。このまま箱に戻してしまいたいと思った。


「……大人なんだから、責任を持たないとな。読もう」


それでも奏慈は日記を開く。自分のした事を確認する為に……

ここまで読んで頂き、ありがとうございました!

もし誤字脱字がございましたら、ぜひ教えて下さい! 修正します!

感想評価も募集致します、よろしくお願いします!

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