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砂塵の王

女性キャラを書き分けできていますでしょうか?

まあ男性キャラもですが、中々難しいですね。

分かり難かったら教えて下さい! 変えていきます!

「来ないのなら私から! 巻き上がれ!!」


先に先手を取ったのはフィーだった。

フィーは地面に手を触れながら、高く振り上げる。

すると風が吹き出し、周りの砂を巻き込み始めた。


「こ、これは結界魔法!? フィー、使えたのか!」


それは路地裏に戻りつつあった空間を再び歪ませる。

周囲は砂に塗れていき、視界も砂で塞がれていく。

そして、次の瞬間には二人を砂塵の空間へと誘った。

フィーの姿は完全に隠れ、砂塵の中に紛れ込む。


「どういうつもりなのでしょう? これでは恋眼は」


その行動に対し、イカリは眉をひそめた。

通常、隠れて相手の隙を窺うのは悪い策ではない。


しかし、キュバス族となると話は変わってくる。

恋眼は視界に入った者に対して効果を発揮する魔術。

つまり、自ら視界を塞ぐ行為は強みを失うに等しい。


「うっ、これは!?」


そう思った矢先、イカリは突然身体を動かせなくなった。

イカリは困惑するも、すぐに眼だけを動かして周囲を見る。

この現象が恋眼に因る物なら、近くにフィーが居る筈だ。

でも、存在するのは砂塵だけ。人の影すら見えない。


「かかりましたね、ふふふ。この方法なら効くと思いましたよ」

「くっ、一体どうやって!?」


そんな中、砂塵の向こうからフィーは嬉しそうに語りかける。

その口ぶりから恋眼なのは間違いないが、方法が分からない。


「それは……秘密です」


フィーはそう言うと、砂を蹴って走り始めた。

砂塵の向こうに人の影が見え始める。あと数歩で近くに来るだろう。

だが、イカリの身体は動かない。できる事は石像のように立つだけだ。


「まだです……まだ負けていない!」


それでもイカリは諦めず、恋眼にかかった原因から考え始める。

原因は一つしかない。心を凍らせるのを止めた事だ。

恋眼を防ぐ方法はいくつかあるが、その一つが心の凍結。

心が的なら、恋眼は矢。その的を凍らせれば、矢を弾く事ができる。


なら何故、凍らせるのを止めたのか。それは油断と自身の身の為だ。

身体が冷えれば凍死するように、心も冷えれば最終的に死んでしまう。

その為、視界が塞がったのもあって凍らせるのを止めたのだ。


「流石ね。至近距離で見つめているのに、意識を保っていられるなんて」


そうこうしている内にフィーはイカリの元に辿り着いた。

イカリは動けないものの、ツェーンのように操られてはいない。

ツェーンを超える強い自我と耐性がある御蔭だ。

しかし、フィーはそれを予想しており、イカリの目の前に立つ。


「そういう事ですか……最初から見えてなかったんですね」

「……褒めてあげるわ、その通りよ。

 でも、気づくのが遅かったわね」


イカリはそこで初めて気づいた。フィーの瞳が濁り、見えていない事に。

同時にフィーが眼ではなく、魔力で見ている事にも気づく。


この世界に居る全ての生物は魔力を持っている。

そして、それは指紋のように個体によって少しずつ違う。

フィーはそれを利用し、眼が見えなくても日常生活を送ってきた。

当然、視界を塞がれても問題ない。魔力はそれくらい貫通する。


「油断はしないわよ。しっかり、決める」


キュバス族は恋眼を持っている代わりに、どの魔族よりも身体能力が低い。

それはフィーも同じで、自ら戦わないのもそれが理由だった。

だが、何も出来ない訳ではない。フィーは尻尾を動かし、イカリに向ける。


「うっ、がは……!?」

「あ、ああ、良い顔になりましたね」


次の瞬間、フィーは尻尾をイカリの首に突き刺した。

キュバス族の尻尾の先端には針が存在し、それには毒も存在する。


その毒は麻痺毒であり、刺されたイカリは膝を突いた。

精神魔法に耐性はあっても、毒にまで耐性は無い。

そのままフィーは笑みを浮かべながら、追撃の一刺しを狙う。


「って、えっ!?」


しかし、突如としてフィーの目の前からイカリの姿が消えた。

尻尾は空を刺し、無意味に針から毒液を垂れ流す。


「これは……氷の塔か!」

「氷の塔? ああ、あれね」

「……はあはあ、なんとか戻りましたね」


先手は取られたが、イカリもまたフィーを倒す為の策を練っていた。

その策に使うのは奏慈と戦った時にも使った氷の塔。

単純に盾にもなれば、時も巻き戻してくれる防御寄りの魔法だ。

イカリはそれを建てた置き、毒にやられた瞬間に崩壊させたのだ。


「でも、それで戻るのは無機物だけだったわね?

 ふふふ、私から受けた毒までは戻らない」

「やれやれ、覚えていましたか……」

(……氷の塔まで知ってるのか。フィー、お前は一体)


最初は驚いていたものの、フィーは冷静に状況を分析する。

対するイカリは毒でふらつき、地面に座り込んだ。


「……さて、もうこんな物は必要ないわね」


そうしてフィーは分析を終えると、手を再び高く振り上げた。

すると砂が手の内に集まり出し、視界を塞いでいた砂塵が消え始める。

間もなく砂は巨大な拳の形を取り、フィーはそれを装着した。


「さあ、何度戻せる?」

「……くっ、何度でもだ!」


フィーはそのまま拳を握り、イカリに向かって振り抜く。

それに対し、イカリは氷の塔に入って防御する。


「ぐっ、こ、これは!? ぐはああぁ!!」

「あはは、脆いわね! 弱くなったんじゃないの?」


しかし、その守りはあっさり破られた。

圧倒的な砂の質量の前には、氷の塔など薄氷と変わらない。

それでも時は巻き戻る。氷の塔が破壊される直前に。


「二回目!」

「ぐはああぁ!!」


フィーは続けて拳を氷の塔にぶつける。当然、塔は崩壊した。

そして、再び時は巻き戻るが、フィーは構わず攻撃を続ける。


「十九回目!」

(最適解とはいえ、なんていうゴリ押しだ……カンナギを思い出すな)


アウィンはその光景に既視感を覚えていた。それは奏慈とツェーンの戦い。

その戦いも障壁が出なくなるまで、奏慈は攻撃し続けた。

フィーがしている事もそれと同じだ。時が戻らなくなるまで攻撃し続ける。

魔法使いといえど魔力は有限。無限に戻す事はできない。


「二十七回目!」

「ぐっ、うぅ、もう無理です!?」


そうして遂に時を戻せなくなり、イカリは殴り飛ばされた。

だが奏慈がここに居れば、こう思うだろう。何故、反撃しないのか?

反撃すれば、ここまで一方的にやられる事も無いだろうと。


その答えはただ一つ、魔力の消費を抑える為だ。

フィーは変わらず、眼を開けたまま。つまり、恋眼が発動している。

イカリは時を戻しながら、心も凍らせているのだ。

にもかかわらず反撃すれば、とっくの昔に魔力は尽きていただろう。


「終わりね。降参するなら、ここで終わるけど?」

「……いいえ、自分は最後まで諦めませんよ」

「そう……なら、お望み通りにしてあげる!」


満面の笑みを浮かべて、フィーは最後の一撃を放つ。

しかし、イカリも馬鹿ではない。氷の塔はフィーを倒す為の策。

ただの時間稼ぎの為に使い、反撃もせずに待っていた訳ではない。


「……また、自分の勝ちですね」

「えっ、きゃあああ!!?」


拳がイカリに当たるその瞬間、フィーは上空に突き上げられた。

何が起こったか分からないフィーは、すぐに視線を下に移す。


「あ、あれは!?」


そこにあったのは巨大な木だった。幹は太く、葉は青々と茂っている。

信じられない事だが、その木がフィーを上空に突き上げたのだ。

フィーはそれを確認すると、砂を操って地面に着地する。


「これは樹海魔術ね……でも、一体いつのまに」

「氷の塔を建てた瞬間ですよ。最初からこうしようと思ってました」

「なるほど、最初から掌で転がされてた訳ね」


そこまで聞くと、フィーは溜め息を吐く。

イカリの策とは氷の塔で時間を稼ぎ、大樹で攻撃する事だった。


――樹海魔術。それはオーク族とエルフ族のみが使える魔法。

花を咲かせ、木々を伸ばし、乾いた大地を緑で覆う。

しかし、大樹を生やすとなると多くの時間と魔力が必要になる。

大樹が生えるまで時間がかかったのはこれが原因だ。


「降参よ、どうせ他にもあるんでしょ?」

「ええ、ありますよ。ありがとうございました」


フィーの言う通り、イカリは他にも種を蒔いていた。

まだ戦う気があるのなら、次々に生やすだろう。

それが分かったフィーは降参し、砂の上に座り込む。


「お疲れ。痛むだろ、治すぜ」

「ありがとう、お願いするわね」


こうして二人の戦いはイカリの勝ちで終わった。

戦いを見届けたアウィンは、すぐにフィーの元に駆け寄る。


「自分も頼みたいですね。毒がまだ残っているもので」

「……はあ、後でな」


その様子を眺めながら、イカリは一方的にそう言って治療を待ち始めた。

その図々しさにアウィンは厭きれるも、聖女として怪我人を見過ごせない。

間もなくアウィンは並行して、イカリの治療も始めるのだった……

ここまで読んで頂き、ありがとうございました!

もし誤字脱字がございましたら、ぜひ教えて下さい! 修正します!

感想評価も募集致します、よろしくお願いします!

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