因縁
今回は表現を頑張りました!
まだまだ未熟ですが、面白くなってると思います!
今回も楽しく読んで頂けると嬉しいです!
「う、動けん……なんていう力だ」
フィーに見つめられたツェーンは指すらも動かさせなかった。
その様子は正に蛇に睨まれた蛙。捕食者と被食者の関係だ。
だが、それでもツェーンは傲慢な態度を崩さず、二人に言う。
「キュバス族の恋眼……これ程の精度は初めてだ。
歴代聖女の中でも最強と言われるのも納得だな」
「見せて貰いましょうか、その態度がいつまで続くか」
――恋眼。それはキュバス族の持つ固有魔法。
正式名称は洗脳魔術であり、その名の通り対象を洗脳できる。
視界に入っただけでも効果を発揮し、対象を最高の快楽に包み込む。
さらにそこから眼に魔力を込める事で、対象を洗脳できるのだ。
例外として、強い自我を持つ者や精神魔法に耐性のある者には効かない。
ツェーンの場合は前者であり、身体の自由を失っただけで済んだ。
「ぐっ、腕が勝手に!?」
しかし、それは不幸な事かもしれない。意識はあるのに操られる。
現に今のツェーンは自らの胸にツルハシを突きつけていた。
フィーはその様子を楽しそうに見ながら、次の命令を出す。
「刺せ、自分を」
「うぐっ、があああ!!」
その命令によって、ツェーンはズブズブと自らの胸を刺し始める。
ツェーンはそれに必死に抗うも、フィーの命令には逆らえない。
ただ悲鳴を上げ、血を噴水のように流す。
かつて猛威を振るった黄金の障壁も、発動せず沈黙を貫いている。
「……フィー、もういいだろ? さっさと気絶させろ」
その後もフィーは命令し続けたが、それは余りにも見るに堪えなかった。
ツェーンは為す術なく血を流し、悲痛な叫びを上げ続ける。
いくら悪人とはいえ、アウィンは無駄に痛めつけるのを許せなかった。
「……私のチルベを傷つけた。その罪は重い」
「そうかもしれないが、これ以上やると死ぬぞ!?
見て分かるだろ、あのサモンウェポンは改造してある!
このままじゃ、出血多量で死ぬ!!」
「……では、殺しましょう。この先の未来の為に」
「よ、よせ!?」
だが、フィーは聞いてくれない。そのまま、最後の命令を出す。
その命令によって、ツェーンは胸からツルハシを勢いよく引き抜いた。
そして、そのまま振りかかる。ツルハシの向かう先は胸に開いた穴だ。
「……アウィン、どういうつもり?」
「それは、こっちの台詞だ!」
しかし、アウィンはそれを自身の掌を貫通させながら止めた。
アウィンは痛みで顔を歪めるも、決してツルハシから手を離さない。
再びツルハシが刺されば、ツェーンは確実に死ぬだろう。
だが、アウィンはどうしても、友達にそんな事をさせたくなかった。
「オレ達の仕事は……人を殺す事なんかじゃないだろ!
困っている人が居れば、その人の為に働く!
それが聖女であるオレ達の仕事だった筈だ!」
「ええ、その通りね。でも、屑を潰すのも私達の仕事じゃない?
生かしても意味なんて、一つも無いと思うけど」
「……フィー、お前」
フィーが返したその言葉は前に奏慈が言っていた事によく似ている。
悪人を生かしても百害あって一利なし。反省する気もないなら尚更だ。
それでもアウィンは裁くのは法に任せるべきだと思っている。
個人の裁量など、自分の感情でしかない。正しくても後に問題を起こす。
アウィンはそれを伝える為、フィーに目と言葉で訴えかける。
「……分かったわ、今回は殺さないであげる」
そんなアウィンの思いが届いたのか、フィーは眼を閉じた。
ツェーンはその瞬間、糸の切れた人形のように地面に倒れる。
「ありがとう、フィー!」
「別にいいわよ。ほら、手を見せて?
チルベ、貴方は気絶させなさい。そいつを騎士団に突き出すわよ」
「はっ、了解しました」
フィーはそのまま流れるように、アウィンの治療に取りかかった。
その裏でチルベはツェーンの腹に一撃を入れ、四肢を縄で縛っていく。
すると周りの黄金が溶け始め、空間が元居た路地裏に戻っていく。
こうしてツェーンとの戦いは、呆気なく終わりを告げるのだった……
「――妙な魔力を感じて来てみれば、見た顔がありますね」
「!? そ、その声は!」
そんな中、聞き覚えのある声がアウィンの耳に届いた。
アウィンは既視感を覚えるも、すぐに声を出した人物を探す。
「カンナギは居ないようですね」
「だ、誰? アウィンの知り合い?」
「ああ。とはいっても、前に一回会っただけだがな」
そうして見つけたのがイカリだった。前に船で奏慈と戦った魔法使い。
あれからアウィン達はイカリと会う事なく、サフラー大陸に辿り着いた。
そんなイカリが今、目の前に居る。アウィンは警戒し、武器を構えた。
「そう警戒しないで下さい。自分はここに来ただけですから」
「ふん、信じられないな……ツェーンと戦った後に出るなんて怪し過ぎる。
やっぱり、お前はウルトルクスの仲間なんだろ!」
「違いますよ。まあ、君に信じて貰う必要はありませんけど……おや?
久しぶりですね、リング」
「えっ? ……ま、まさか!?」
アウィンを邪険に扱うイカリだったが、フィーを見て様子が変わる。
まるで何か面白い物を見つけたかのように眼を輝かせ、口角が上がった。
「……フィーもコイツの事を知ってるのか?」
「え、ええ、昔少しね」
そして、フィーもそんなイカリを見て、驚きと焦りを露わにしている。
フィーのその様子は、アウィンが今まで見た事のない物だった。
さらにフィーは閉じていた眼も開き始め、イカリを自身の視界内に収める。
「えっ、お、おい、フィー? なんで眼を開けてるんだ?」
「大丈夫、気にしないで……確かめてるだけだから」
アウィンはそれを見て、また驚く。フィーは普段、目隠しで眼を塞いでいる。
それは自身の力のせいで、誰かが不幸にならない為だ。
現に目隠しで抑えていなければ、意図せず多くの人を洗脳してしまう。
しかし、今のフィーはイカリを見つめている。普段の行動とは、まるで逆だ。
「……チルベ、貴方は先に行きなさい。私は後から行きます」
「りょ、了解しました」
「な、何をするつもりなの?」
「決まっているでしょ……あの男と戦うのよ」
「ええっ!?」
フィーはそれだけ言うと、イカリへ向かって歩き始めた。
決して自分から戦いを挑まず、戦いになってもチルベに任せてきたフィー。
そのフィーが自ら戦いを挑み、チルベを後ろに下がらせた。明らかに異常だ。
「やはり、君か。しかし、見違えたよ……まさか、聖女になってるとは。
ここには里帰りか何かですか?」
「そういう貴方は変わらず魔法使いのようですね。貴方こそ何の用で?」
「観光ですよ。今のサフラーがどうなっているか知りたかったもので」
「……私は巡礼の旅です。その途中でサフラーに立ち寄りました」
アウィンは二人の会話を少し離れた所から聞く。
全ては聞こえないが、その内容から旧知の仲である事は間違いない。
同時にアウィンはその状況に違和感を抱く。
(どういう事だ……何故、フィーに見つめられて平気なんだ?
あのツェーンでさえ、戦いにならなかった程の強さなんだぞ。
心の声が全く聞こえなかった事といい、奴は精神魔法に耐性があるのか?)
アウィンも第三の眼を開いて、イカリに干渉しようしていた。
だが奏慈の時と違い、見る事ができない。壁のような物が邪魔をしている。
「さて、お話する為に来たんじゃありませんよね?」
「……ええ、あの時の借りを返させて貰います」
「いいでしょう、同窓会としますか」
そうして遂に二人は構え、お互いに距離を取った。
ツェーンの時とは違う緊迫した空気が流れる。
アウィンはその様子を静かに見つめ、フィーの勝ちを祈るのだった……
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