黄金窟
色んな視点で物語を動かしていますが、どうでしょうか?
こうする事で深みが出るのでは?と思ってやっています
なので、今回も楽しく読んで抱けると嬉しいです!
「……フィー様、アウィン様、片付きました」
「ふん……所詮は下っ端か、無様なもんだ」
「そんなこと言わないの、頑張ってたじゃない」
戦い始めて数分後、男達は為す術なくチルベに倒された。
その戦いは一方的で、男達の攻撃は何一つ当たらない。
対してチルベの攻撃は当たり、男達は次から次に倒れる。
結果、最後に立っていたのはチルベただ一人になった。
「さあ、今度こそ行くわよ。帰りの馬車に乗り遅れるわ」
「了解しました……」
フィーはそう言うと、木箱から飛び降りて歩き出す。
その後をチルベが続き、二人は男達を跨ぎながら進む。
二人にとって、この程度の相手は障害にもならないのだ。
「ごめんね、アウィン。巻き込んじゃって」
「構わねえよ、寧ろ良い余興だった。
チルベ、腕を上げたな」
「……ありがとうございます、鍛えてますから」
「んじゃ、また会おうぜ!」
「ええ、また会いましょう!」
そして、別れの言葉と共に別々の方向に歩いていく。
フィーとアウィン、どちらも満面の笑みを浮かべて。
「――ちっ、使えない連中だ」
だが、二人の顔は再び暗く染まった。
その理由は上空から現れ、フィーとチルベの前に着地する。
声色からして男だが、仮面をしている為、正体は不明。
しかし、アウィンはその男の事をよく知っていた。
「お、お前はウルトルクスのツェーン!?」
「えっ、ウルトルクス!?」
「……見覚えがあると思ったが、あの時の聖女か」
そう、ツェーンこそが二人の顔を暗く染めた犯人だった。
ツェーンは前と同じように、ツルハシを肩に背負っている。
だが、そのツルハシは前よりも鋭く、血塗られて真っ赤だ。
「くくく、あの男……異世界人は居ないのか?」
「……残念だったな、ここには居ない」
「でも、近くには居るんだろう? 恐らく、この国に」
周囲を見回しながら、ツェーンは奏慈の姿を探す。
この時、奏慈達は既にズルフィの待つ城に到着していた。
勿論、その事を知っている者はこの場には一人も居ない。
「そういう貴様は何故ここに居る?」
「決まっているだろう、創造神抹殺の為だ!」
「……やはり、噂通りの集団なんですね」
フィーは各地を旅する中で、様々な噂を聞いてきた。
その中には当然、ウルトルクスに関する噂もある。
子供相手でも容赦なく武器を振るう極悪非道の集団。
その集団の一人が、今目の前に居るのだ。
「とはいっても、今回はこの国の民の為だ。
お前達も水が不足している事を知っているだろう?
なのに、創造神を崇める愚か者達は何もしていない」
「……そうか、さっきの奴らは」
「そうだ、我々が支援している革命軍だ」
ツェーンは嫌味の困った言い方でフィー達に言う。
ハルベルムの話にあったウルトルクスの目撃情報。
それは政変に加担している為、当然の事であった。
同時にこうして出会ったのも、必然の出来事と言える。
「それでどうだ、協力する気はないか?
聖女様は弱い者の味方なんだろう?」
「……本当に民の事を思うのなら、その方法は間違っています。
何故、オアシスが減少し始めているのか?
それを解明しない限り、武力解決では焼け石に水です」
「流石は聖女様、甘い事を言う……だが、民に時間はないぞ?
水不足が加速している今、弱い者に水は回らない。
ならば、水を手に入れるのが最優先……そうは思わないか?」
「うっ、それは……」
ツェーンの言葉は最もだった。今、水不足で困っていないのはビアラだけ。
それ以外の町や村は水が足りず、脱水症を起こす者が続出している。
さらにその少ない水を貴族や金持ちが買占める為、水不足は加速していた。
加えて現政権に批判が集まり、付け入る隙を与えてしまっている。
「フィー、惑わされるな! コイツはそれっぽい事を言ってるだけだ!
都合が良いから利用してるだけで、民を救う気なんて一切無い!」
「くくく、その通りだ……水不足や政変など、我々にはどうでもいい。
我々は創造神を抹殺する為に、利用できる物は利用するだけだ!」
「……それを聞いて安心しましたよ。御蔭で遠慮なく潰せる!」
ツェーンの本音を聞き、フィーを怒りに震えながら言い放つ。
その顔は今まで見た事ない位に歪み、拳も握り締めている。
それに応えるように、後ろに控えていたチルベも前に進み出た。
既にクナイを出現させており、真っすぐツェーンを見つめている。
「チルベ、オレも加勢する。コイツはさっきの奴らとは違うぞ」
「感謝致します、アウィン様」
そんなチルベの横にアウィンも立ち、共にフィーを守るように立つ。
フィーは二人と違い、戦う力を持っていない。
その為、三対一の構図ではあるものの、実際は守りながらの戦いになる。
「懐刀のチルベに、聖女が二人か……だが、ここでやるには狭すぎるな。
ならば、これだ!!」
「くっ、避けろ!」
そうして戦いが始まった……先手を取ったのはツェーン。
ツルハシを縦に振るい、フィー達はそれを横に跳んで躱す。
しかし、それは地面に振るわれた物だった。
間もなくツルハシは地面に直撃し、大きな穴を開ける。
だが、その穴はただの穴では無い。異界へ繋がる門だった。
「くくく、遊んでやるよ……俺の世界でな!」
「ま、マズイ!? 二人とも跳べ!」
「えっ? きゃあああ!!」
アウィンが言うが早いか、穴はフィー達を吸い込み始める。
その力は強く、いち早く気づいたアウィンでも間に合わない。
フィー達はそのまま吸い込まれ、深い穴の底に落ちていった。
「うっ、ここは?」
「……結界魔法か、貴様らしい空間だ」
そうして辿り着いたのは何処までも続く黄金の空間。
床も天井も黄金で、光源は見当たらないのに煌めている。
そんな悪趣味な空間に、これまた悪趣味な玉座があった。
玉座も黄金で、そんな玉座にツェーンが座っている。
「ようこそ、我が黄金窟へ……気に入って貰えたかな?」
「ふん、金メッキだったら気に入ったかもな。
変人でもなければ、こんな所に住まないだろう」
「……その減らず口、いつまで続くか見物だな」
ツェーンは苛つきながらも、ツルハシを肩から降ろした。
同時に有無を言わさず、ツルハシで空を切り裂く。
「さあ、お手並み拝見だ」
すると、壁から無数の針が飛び出し、フィー達に向かった。
その針もまた黄金で、先端は釣り針のように曲がっている。
「アウィン様、ここはお任せを」
「ああ、任せたぞ!」
「……気を付けなさい」
チルベはそんな針の前に立ち、クナイを持って構えた。
その瞬間、目にも止まらぬ速さでクナイを振り回し始める。
「成程、それで防ぐつもりか……だが、無駄だ」
「なに!?」
迫った針は全てクナイに当たった。だが、止まらない。
針は柔らかく、まるで液体のようにその形を変えた。
そして、雨のようにチルベに黄金の雨が降り注ぐ。
「ぐっ、これは!?」
「重いだろう? そのまま沈め!」
金は僅かな量でも薄く延ばす事ができる。
さらに重く、他の金属と比べてもその差は歴然だ。
つまり、その体には見た目以上の負荷がかかっている。
それでもチルベは振り回すを止めず、針からフィーを守り続けた。
「何本目に死ぬかな!」
「ぐっ、うぅ」
ツェーンの針は止まらず、チルベに向かい続ける、
この空間自体が巨大な黄金の塊。まだまだ針を作れる余裕がある。
対するチルベは体に金が付き捲り、動きが鈍り始めた。
「がはっ!?」
「チルベ!」
そして、遂に針が命中する。
チルベは痛みと重さから、思わず膝を突いた。
「思ったよりも早かったな。一足先に逝け!」
そこにツェーンは追撃の針を飛ばし、終わらせに来る。
今のチルベに体を動かす余裕は無い。
このまま全てチルベに命中するのみだ。
「なっ、は、針が!?」
「……チルベ、後は任せなさい」
「も、申し訳ありません……」
しかし、その針は途中で地面に落ちた。
ツェーンはそれに驚くも、再び針を出そうとする。
だが、何故か出せない。何度試しても出ないのだ。
「――ツェーン、お前は一つ間違いを犯した」
「な、なんだと!? 一体、何の事だ!」
「まだ分からないのか? その眼は節穴らしい」
「なに? こ、これは!?」
アウィンに言われ、ツェーンはようやく理解した。
今、自分の目の前に目隠しを外したフィーが居る事を。
「誇りなさい、私にこれを外させた事を。
潰れろ、そして、そのまま」
そのフィーの瞳は濁り、桃色に輝いていた。
ツェーンはそれから目を放せず、見つめ続ける。
追い詰められたのはツェーンの方だった……
ここまで読んで頂き、ありがとうございました!
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