遠見
今回も新キャラが登場します!
どんどん増えていますが、大丈夫でしょうか?
分からない事があれば、ガンガン質問して下さい!
「はあ、はあ……確かにこっちに見えた筈だ」
馬車から飛び出し、走り出したアウィン。
置いてきた奏慈の事が頭を過るも、足は止まらない。
アウィンはどうしてもフィーに会いたかった。
「――あら、アウィン? こんな所で会うなんて奇遇ね」
そうして路地裏に入った所で、アウィンは声をかけられる。
振り向くと、そこには桃色の髪と尻尾を持った少女が居た。
少女は目元を黒い目隠しで塞ぎ、尻尾を服の下から覗かせる。
彼女こそ目的の聖女フィー。アウィンの探していた人物だ。
フィーは笑みを浮かべ、嬉しそうにアウィンに駆け寄った。
「久しぶりね! 元気にしてた?」
「うん、まあ元気かな?」
「それは良かったわ、貴女の事だから無茶してると思ってた!」
「あはは、予想通り無茶はしてるよ」
「あら、やっぱり? 変わってないわね、アウィンは」
二人は話に花を咲かせ、路地裏に笑い声を響かせる。
この場に奏慈が居たら、きっと二人の関係を聞いていただろう。
そんな二人の関係は親友。同じ学校を卒業した同級生でもある。
二人が卒業したエーデル神学校は聖男や聖女を育成する学校だ。
その為、規則は厳しく、毎年多くの生徒が自ら学校を去っていく。
さらに山肌に学校が存在する為、入学前から生徒は試験を受ける。
二人はそんな学校を卒業し、聖女として日夜活躍しているのだ。
「で、なんでサフラーに居るの?
前に手紙をくれた時はアルマに行くって言ってたじゃない?」
「まあ色々あってな、今はある男と行動を共にしている」
「男? まさか、彼氏?」
「いや、彼氏……ではあるな」
「彼氏なのね! おめでとう、私とっても嬉しいわ!!」
「……全く、お前は変わらねえな」
フィーは満面の笑みを浮かべて手を叩き、親友の幸せを祝う。
その様子にアウィンは呆れながらも、照れ臭そうに頭を掻く。
「ねえ、その噂の彼氏に会わせてくれない?
不良聖女を射止めた男がどんな人か知りたいし」
「うん、オレは別にいいんだが……アイツに聞かないと」
「そうね、相手の都合もあるわよね。じゃあ、大丈夫よ。
……そういえば、今は一人よね? その人を置いてきたの?」
「ああ、そうなんだ。飛び出して、お前の所に来た」
「……それは、どうして? なんで飛び出してまで来たの?」
アウィンの言葉を聞き、フィーは一呼吸置いてから聞いた。
目隠しをしているが、真っすぐアウィンを見つめている。
それに対し、アウィンも真っすぐ見つめてフィーに応えた。
「最近、可笑しいんだ。全然集中できなくて、頭が動かない。
御蔭で何もできないし、人の話も満足に聞けない。
……原因は分かってる。彼氏の話を聞いたからだ」
「どんな話を聞いたの?」
「過去の話だ……それを聞いてから、考えるのが止まらない」
「……かなり重症そうね」
これがアウィンがフィーに会いたかった理由。
元の自分に戻る為、フィーに相談したかったのだ。
「その人の事も、話もよく分からないけど、解決策はある」
「……それは何だ?」
「忘れる事よ。きっと、考えても仕方ない事で悩んでる。
なら悩まずに、今を一生懸命に生きた方がいい」
「そうだな、その通りだと思う……オレも何度もそう思った。
でも、何故か考えちまうんだ。無駄だと分かってるのに」
「そうなのね……もっと詳しく教えてくれる?」
「ああ、いいぜ」
アウィンは奏慈の話をゆっくりと話し始めた。
途中、フィーは何度も質問し、疑問に思った事を潰していく。
こうして最後まで話し終えると、フィーは確信した様に言う。
「間違いない、貴女はアイと関係がある。
そうでなければ、聞いた瞬間から気分が悪くなる訳ない」
「確かにアイの名前を聞いてから可笑しくなった。
だが、異世界人とオレに何の関係があるんだ?」
「それは分からない。でも、何か関係がある筈よ。
どちらにしろ、これ以上は推理できないけど」
「そうだな……聞いてくれて、ありがとう」
「ふふ、構わないわよ」
「……本当にありがとう」
フィーはそう言いながら、満面の笑みを浮かべる。
その姿にアウィンはただ感謝する事しかできない。
「じゃあ、オレはもう戻るよ。お前の御蔭で元気になった。
やっぱり、フィーは凄いな」
「そんな事ないよ、私はまだまだ半人前。
まあ元気になったのなら良かった! じゃあね!」
「ああ、また会おう」
そうして二人は別々の方向に向かって歩き始めた。
アウィンは晴れやかな表情で、先程までの暗さは無い。
そして、フィーも親友の悩みを解決できて嬉しそうだ。
「おっと、止まって貰おうか」
そんな二人の前に数人の男女が前を塞ぐように立ち塞がった。
男達は下卑た笑みを浮かべ、手に持った武器をちらつかせる。
「……気持ち悪い奴らだが、フィーの知り合いか?」
「知らない……と言いたい所だけど、自称革命軍の方々よ」
「ああ、成程な」
だが、そんな相手の前でも二人は落ち着いた口調で話す。
さらに伸びもし始め、まるで意に介さない。
その様子に男達は苛つくが、一人の男がそれを抑えながら前に出る。
「へへ、昨日ぶりですね」
「……何のご用でしょう、力は貸さないと断った筈ですが」
「そう言わないで下さいよ、革命には力が必要なんです。
聖女様の持つような強い力があれば、必ず成功します」
その男は手を揉みながら、フィーに媚びるように言う。
彼らは数日前からフィーに協力を頼み、何度も来ていた。
その度に断って帰らせているが、今日も懲りずに来ている。
「前にも言いましたが、力だけでは何も解決できませんよ。
それに貴方達のしようとしている事は政変でしょう?
民が苦しむだけの戦いに、私は協力など出来ません」
「……もう連れていきましょ、時間の無駄だわ」
「そうだな……聖女様、言う事を聞いて貰います」
武器で威嚇されても、フィーは毅然とした態度で断った。
それで今日も帰ってくれたら良かったが、遂に強硬手段に出る。
男達はじりじりと二人に近づき、武器を振り回し始めた。
それでもフィーは変わらず、落ち着いた口調で言う。
「残念です。チルベ、来なさい」
「はっ、参上しました」
「な、なんだ、コイツは!?」
そこに二人を守るように、クナイを持った男が降り立った。
チルベは小太りだったが、その軽やかな動きは忍者を思わせる。
「久しぶりだな、チルベ。手伝ってやろうか?」
「いえ、アウィン様の手を煩わせる訳にはいきません。
チルベが全て片付けます」
「分かった。よし、行こうぜ」
「そうね。チルベ、やりなさい」
フィーはそう言うと、アウィンと共に近くにあった木箱に腰かけた。
戦いは全てチルベに任せ、見物するようだ。
そんな二人に対し、男達は怒りを爆発させ、口々に言う。
「私達を舐めてるの!」
「そうだ、たった一人で敵う訳ねえだろ!」
「ふう……そう思うのでしたら、試してみたらどうですか?
貴方達にチルベを倒せるとは思いませんけど」
「くそ、やっちまえ!!」
分かり易い挑発だったが、男達は一斉に駆け出した。
当然、先手を取ったのは男達。一人が真っ先に斧を振り下ろす。
「遅い!」
「なっ、ぐうぅ!?」
その攻撃をチルベは小さな動きで避け、額にクナイを突き刺した。
男はその一撃で態勢を崩し、続けて腹に一撃を加えられて気絶する。
「さあ、続けよう……まだ戦意が残っているのなら」
チルベは男が気絶したのを確認すると、男達を一瞥して言う。
これらは全て数秒の内に起こり、男達は何もできなかった。
「……うっ、や、やるぞ!」
「お、おお!!」
当の本人達はというと、自棄を起こして向かって来た。
それで敵わないのは理解している。それでも向かわざるを得なかった……
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