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想定外

思ったより書くのに時間が掛かってしまった。

フランさんの心の声は難しいな。

(そ、想定外ですわ……アタクシの想定では快く騎士団に入ってくれる予定でしたのに!

 カンナギ様は迷う素振りすら見せなかった!!

 アタクシの退屈を解消してくれる良い材料が……いえ、まだです!)


奏慈の言葉に動揺を隠せないフラン。今までの反応から渋る事は予想できていた。

しかし、ここまでハッキリ断られるのは想定していない。

フランは奏慈を引き留めるべく、必死に話を続ける。


「衣食住全て揃えますわ! 給金も望む分だけ!!」

「……長居するつもりもないのに、騎士という重要な仕事に就けません。

 それに真面に戦えない奴が入っても、士気が悪くなるだけでしょう」

(くっ、ここまで頑固だなんて……こうなったら仕方ありません。貴族の地位を利用して)


それでも奏慈が折れる事は無かった。フランは最後の手段を使おうとする。


「そこまでにしておきなさい」

「お、お父さん!?」


そこにフランの一番来て欲しくない人が来てしまった。

父と呼ばれた男は何か言いたそうな顔をしながら、二人の元に歩いて来る。

そして、そのままフランを無視して奏慈に頭を下げた。


「私はハルベルム=フォン=ファルシオン。ファルシオン家の当主です。

 娘が大変失礼な事を……心からお詫び申し上げます」

「そ、そんな! 頭を下げないで下さい!!」

「いえ、全て私の不徳の致す所です……本当に申し訳ありません」

「ハルベルムさん……」


ハルベルムはそう言うと、さらに深く頭を下げる。どうやら全て見ていたらしい。

すぐに止めに入らなかったのはフラン自身に考える時間を与える為だろう。


「そんな私が言うのも変な話ですが、今日はもうお休み下さい。

 お食事は部屋まで運ばせますので」

「……分かりました。色々とありがとうございます」


そんなハルベルムに奏慈も頭を下げる。

ハルベルムの好意を無下にする訳にはいかない。

奏慈は案内に来た使用人に導かれ、その場を後にした。


「フラン、お前は後で私の部屋に来るように……分かったね?」

「……分かりました」


同じようにハルベルムもその場を後にし、一瞥もせず、フランにそう言う。

ぞんざいな扱いだが、文句を言う権利は無い。フランは逃げるように自室に戻る。


「――失礼します」


数時間後、フランは言われた通り、ハルベルムの部屋を訪れた。

ハルベルムは資料と睨めっこしていたが、フランを見るなり溜め息を吐く。


「……来たか」

「それで何の用ですの? アタクシ、何かしましたでしょうか?」


父の言いたい事は分かっていたが、フランはすっとぼける。

別に親子仲が悪い訳ではない……寧ろ、一般的な父と娘よりは良い方だろう。

それでも邪魔された事は気に食わなかった。今日中は口を利きたくない。


「はあ、わざわざ言わないと分からないのか?」

「ふーんだ」

「……まあいい。フラン、お前が異世界人に興味を持つのは分かる。

 だが、相手はこの世界に来たばかりで右も左も分からない。

 そんな相手を悪戯に混乱させ、挙句の果てに脅すとはどういう事だ!」

「脅してなどいませんわ。あれは親切心で」

「親切心? 質が悪い詐欺師と思ったぞ」


ハルベルムはそれを許さず、フランを厳しく責め立てる。

甘やかす気は一切無い。例え嫌われたとしても、人の道を示すつもりだ。


「……カンナギ殿と話したが、しばらくここに住む事になった。

 帰る方法を探すにしても、住む所がないと困るからな……なんとか説得したぞ。

 それに私としても放り出したくなかった」

「そう」

「だから、分かるな? カンナギ殿を不快な気持ちにさせないように」

「はいはい、分かりましたわ」

「……伝える事は以上だ。行っていい」

「はーい」


フランは話が終わると、足早に部屋を出た。

言いたい事は沢山あったが、今は何を言っても無駄だろう。

取り敢えず、退屈はしなさそうだ。フランは一息吐く。


「さて、本でも読もうかしら……」


だが、機嫌が悪いのは変わらない。

フランはむしゃくしゃしながら、自室に戻る。


(あ、あれ? アタクシは何を?)


どれくらい経ったのだろう? フランはいつの間にか、眠っていた。

興奮し過ぎて、思ったより疲れていたらしい。

そんなフランは今、夢を見ている……楽しい楽しい過去の記憶の夢を。


「おばあちゃん、いせかいじんのはなしして!」

「全く、またか? フランは本当に異世界人の話が好きだな」

「おねがい!!」

「分かった分かった。せっかくだから、最初から話そうか。

 最初にこの世界にやって来た異世界人の話から……」

「やったあ!」


フランは子供の頃、毎日のように祖母と話していた。

話す内容は決まって、異世界人の話……特に大好きなのは女帝の話だ。


「遥か昔、人間が村々に分かれて暮らしていた時代。

 その時代に一人の異世界人が現れた……後に女帝となる少女が」

「そのひとがていこくをつくったんだよね!」

「そうだ。国の無かった時代に人々を纏め上げ、国を興す。

 帝国ができた御蔭で、力の無い者でも安心して暮らせるようになった」

「すごいひとだね!」

「ああ、凄い人だ。世界を帝国の元に一つにし、今の世界の原型を作った。

 正に英雄と言えるだろう」

「うんうん!」


フランは目を輝かせ、祖母の話を聞く。この時間がなによりも好きだった。


「そんな女帝にも終わりが近付いていた。

 女帝は後継者を選ぶと、姿を消したという」

「し、しんじゃったの?」

「そう言われている。そして、帝国は今の世まで続いて多くの国の元になった。

 これが一番最初にこの世界にやって来た異世界人の話だ」

「おばあちゃん、ありがとう!」


だが、ここからの話は嫌いだ……ワクワクしない。

フランは眉をひそめ、口を閉ざす。


「どうした?」

「……そのじょていっていうひと、どういうひとだったのかな?」

「さあ、どんな人だったんだろうね。女帝は自分の情報を残さなかった。

 名前は勿論、活躍も……子供も居なかったそうだよ」

「はずかしがりやだったのかな?」

「そうかもしれないね。

 でも、最近の研究では存在しなかったのではないか?とも言われているんだ」

「えー、そんなのつまんない!」


フランは心躍る物語が好きだった。現実的で、夢のない話は好きじゃない。

しかし、今なら分かる……夢のない世界だからこそ、物語は存在する。

夢が溢れる世界に心躍る物語は存在しないのだ。


「そうだな。私も面白くないと思う。

 だけど、証明しようが無い……難しい問題だ」

「う~ん」

「難し過ぎたかな。でも、こういう話があるという事は似た事実はあった筈だ。

 火のない所に煙は立たないとも言うからね」

「つぎのおはなしして!」

「はいはい。じゃあ、次は……」


祖母は呆れた様子を見せるも、すぐに次の話を始めた。

同時にフランの視界も暗くなっていく。夢はここまでのようだ。


(そうでしたわ……アタクシはおばあちゃんの御蔭で)


フランは祖母の影響で、異世界人に興味を持つようになった。

この世界に変革を齎していった様々な異世界人。

自分もそんな人達と会いたい……そうすれば、きっと。


「アタクシは退屈から解放される」


そこでフランは目覚めた。机に突っ伏した状態で寝落ちしていたようだ。

そのせいか頭がぼーっとするし、全身も痛い……顔には本の跡も付いている。


「ああもう、ムカつきますわね!」


心の中でそれらを父のせいにしながら、フランは起き上がる。その時だった。


「フラン様、おはようございます。旦那様がお呼びです」

「こんな朝早くから? ううん、分かりましたわ……すぐに行きます」


少しウンザリしながらも、フランは使用人を待たせる事なく父の元に向かう。

昨日あれだけ言ったのにも拘らず、まだ言う事があるのだろうか?


「来ましたわ……って、カンナギ様?」

「フランさん、おはようございます」

「来たか」


そうして父の部屋を訪れると、既に奏慈が部屋に居た。

同じくハルベルムに呼ばれたのだろう。

だが、奏慈も呼んで何を話すのか? フランは早速、ハルベルムに聞く。


「それで今度は何の用ですの?」

「そう急くな。カンナギ殿は元の世界に戻る為、情報を集める必要がある。

 そして、情報を集めるなら図書館だ……あとは分かるな?」

「カンナギ様の護衛ですか……」

「そうだ。手が空いているのはお前しか居ない」

「……分かりましたわ。その任、謹んでお受け致します」


ハルベルムの用件は思ってもみない位、フランに都合の良い物だった。

これは何かある……そう思いつつも、拒否する理由は無い。


「カンナギ様、よろしくお願いします」

「こ、こちらこそ、よろしくお願いします……」


フランは満面の笑みを見せると、明るくそう言う。

元の世界に帰す為の手助け……内心複雑だが、退屈はしない筈だ。

自分の仕事を全うし、奏慈の心証を良くしたい。


「馬車は用意してある。それに乗って、ダハルへ向かえ」

「分かりましたわ」


二人はそのまま馬車へ乗り込み、ダハルへと旅立った。

ダハルはファルシオン領内で唯一、図書館のある町だ。

答えに辿り着けなくても、手がかりくらいは見つかるかもしれない。


「あの、フランさん」

「うん? どうかしましたの?」

「えっ、えっと……」


そんなダハルに向かう道中、奏慈はフランに話しかけた。

フランはそれに対し、間の抜けた返事で応える。一体、何の用だろう?


「そ、その喋り方です」

「喋り方?」

「は、はい。別に敬語でなくても大丈夫ですよ。

 お世話になってるのはこちらなので」

「いえ、そういう訳には……」

「それに普段の喋り方の方が喋り易いですよね? だから、大丈夫ですよ」

「……分かりましたわ」


フランは不思議に思った。何故、奏慈はこうも優しいのか。

昨日あれだけ無理を言って困らせたのに、気にしていない。

これが大人の振る舞いなのだろうか? 今のフランには分からない。


「ありがとうございます……すみません、配慮して頂いていたのに」

「……それで話は終わりですの?」

「あっ、はい。終わりです」


だが、分かっている事もある。それは過去は変えられないという事だ。

一度言った事は取り返しがつかない……相手の心に残り続ける。


「あっ、あれがダハルですか! 綺麗な町ですね!!」

「ええ、良い町ですわよ」


そうこうしている内にダハルが見えてきた。あと少しで到着するだろう。

奏慈は窓から見える景色に子供のように喜ぶ。

そして、フランは今後の展開に期待しつつ、揺られて過ごすのだった。

ここまで読んで頂き、ありがとうございました!

もし誤字脱字がございましたら、ぜひ教えて下さい! 修正します!

感想評価も募集致します、よろしくお願いします!

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