姉弟
説明回が続きますが、皆さんどう思われてますかね?
楽しく読んで頂けていると嬉しいです!
「ふあぁ、眠い……疲れが残ってるな」
欠伸混じりにそう言いながら、奏慈は目覚める。
奏慈はあれからすぐに寝つき、いち早く目覚めた。
だがアウィンはまだ眠っており、魘されている。
「……アウィンさん、どうしたんだろう?
途中までなんともなかったのに」
そんなアウィンを気遣い、奏慈は静かに起きた。
そして、部屋も抜け出して船内探検をし始める。
「人が居ないな、こんなに大きな船なのに」
その中で奏慈はある事に気付いた。それは人の少なさ。
客が居ないのはまだ寝ているとして、問題は船員。
航海士は勿論、その指揮下にある部員の姿も少ない。
必要最低限の人数で、船を動かしているようなのだ。
「魔法でオートマチックにしているのかな?
……イカリなら、何か知っていそうだが」
そうして考えていると、イカリの事を思い出した。
奏慈に突如勝負を挑み、去って行った謎の男。
もしこの場に居れば、色々教えてくれたであろう。
「っと、ここにも誰も居ないかな?」
そんな事を考えていると、奏慈は甲板に辿り着いた。
奇しくも、昨日イカリと戦った場所である。
「……あれ、誰か居る?」
しかし、奏慈の予想と裏腹にそこには人が居た。
それは朝靄の中、激しく何かを振り回している。
奏慈は興味を惹かれ、その人物の元に歩き出す。
「えっ、フランさん!?」
ある程度近づいた所で、奏慈はその正体に気づく。
フランは斧を振り回し、微かに声を漏らしていた。
「それ以上近づくな」
「あっ、ボーアさん! フランさんは一体?」
「鍛練中だ、ボクはその付き添い」
そんなフランの傍にはボーアも居る。
ボーアは邪魔にならないように佇み、見守っていた。
奏慈はそんなボーアの横に立ち、小声で話しかける。
「鍛練か……にしても、動きが雑過ぎませんか?
あれでは実際の戦いで役に立たなそうですが」
「分かったような口を……だが、その通りだ」
フランの動きは奏慈から見ても無茶苦茶だった。
ただただ斧を振り回し、何度も手からすっぽ抜ける。
それにも拘らず、ボーアは何も言わずに見守り続けた。
「ふむ、指摘しないんですか?」
「……しても無駄だ、今のフランには」
「ううむ、そうでしょうか?」
そう言うとボーアは瞳を閉じ、口も固く結ぶ。
奏慈の言葉をこれ以上聞く気は無いようだ。
だが奏慈はそれを無視し、小声で話しかけ続けた。
「フランさんは強い方です。そして、真面目な人だ。
きっと、これからもっと強くなるでしょう。
指摘してあげないのは可哀想ですよ」
「……お前は何も知らない。フランの事を何も」
「では、教えてくれませんか? フランさんの事を」
「……ちっ、誰にも言うなよ」
奏慈の言葉が届いたのか、ボーアは渋々話し出す。
その話を奏慈は聞き漏らさぬように、静かに聞く。
――ファルシオン家はアルマ王国が誇る武家の一つ。
有事の際にはどの家よりも早く動き、国の為に働く。
だからこそ、大公という地位を与えられているのだ。
それ故に、当主になるには確かな実力が必要だった。
生半可の者では国を守る剣の役割を遂行できない。
「フランさんでも当主になるのは厳しいんですか?」
「ああ、厳しい。ウルトルクスに負ける程度ではな。
それでもフランなら、実力が伴ってくるだろう」
「それなら!」
「それでも!! ……なれないんだよ、当主には」
ファルシオン家の当主になるには条件が三つある。
一つ目はファルシオン家の血を引いている事。
二つ目は一人で千人の騎士を倒せる実力を持つ事。
最後に、臨紫と剣心という二つの呪文が使える事。
「呪文? 魔法とは違うんですか?」
「ただの言い方の違いだ……話を戻すぞ。
臨紫と剣心はファルシオン家のみに伝わる魔法だ。
性能はともかく、次代に残す必要がある。
……だが、フランは使う事ができないんだ」
「それが厳しい理由か……」
サモンウェポンのある今、臨紫は使い所が無かった。
死を体験させても、サモンウェポンでは殺せない。
その認識が見せた幻を容易く消してしまうからだ。
しかし、家を継ぐ以上は習得しなければならない。
それがファルシオン家を継ぐ次代の当主の役目だ。
「もしかして、弟さんは使えるんですか?」
「……何故、そう思う?」
「お互いに相手の実力を下に見ていたからです。
あの険悪な雰囲気は、ただ事ではありません」
奏慈はその話を聞き、顎に手を当てながら訊ねた。
その問いに言い難そうにしながらもボーアは答える。
「……鋭いな、その通りだ。キスカは二つとも使える」
「そうなんですね。っで、実力はフランさん以下と」
「本当に鋭いな……キスカの実力はフランの半分以下。
とても当主になれる実力じゃない」
「成程、お互いに当主になるには実力不足なのか」
そこまで言うと、奏慈は再びフランの方を見た。
フランは変わらず、必死に斧を振り回している。
その雑な動きは弟との差に苛ついた結果なのだ。
「はあ、はあ……一旦休んだ方が良さそうですわね」
「終わったか。いいか、この事は絶対言うなよ?」
「はい、分かりました」
そうして丁度、フランの鍛練が終わった。
ボーアはすぐにタオルを持って駆け寄る。
「助かりますわ」
「気にしないでくれ、当然の事さ」
「はあ、そういう所は気にして欲しいのですけれど。
あら? カンナギさん、もう起きられたんですね」
小言を言いながらも、フランはボーアと共に歩き出した。
疲れから足取りは重かったが、ボーアはしっかり支える。
こうして階下に続く階段の元へ辿り着き、奏慈と出会う。
「ええ、なんか起きちゃって」
「そうなんですのね。
あっ、そうだ……少し時間を貰える?」
「えっ、どうしてだい?」
フランは奏慈に一瞥すると、ボーアにそう言った。
突然の事にボーアは首を傾げるが、フランは続ける。
「聞きたい事がありますの、異世界の文化について。
色々あって聞く暇なんて、殆ど無かったでしょう?
だからボーアも興味ありましたら、一緒に聞いても……」
「そういう事か、ならいい……じっくり話してくれ」
「えっ、ちょ、ボーアさん!?」
ボーアはフランの言葉を最後まで聞かず、去って行った。
若干苛ついた様子なボーアに、奏慈は思わず追いかける。
だが、フランは奏慈の肩に手を置いてそれを止めた。
「心配しなくてもいいですわ、ただの嫉妬。いつもの事ですもの」
「で、ですが!」
「……それよりも何を話していたか、聞かせてくださる?
話はそれからですわ」
「あっ、聞こえていたんですね……」
「ちゃんとは聞こえてませんわ、だから」
「分かりました……お話します」
フランの圧に負けて、奏慈は話し出した。
その話をフランは黙って聞き、聞き終わると溜め息を吐く。
「全く、ボーアも困ったものですわ。
……だけど、それだけ信頼してますのね」
「信頼? ボーアさんが私を?」
「ええ、男の方にここまで心を許すなんて……信じられませんわ」
「……前から思っていたのですが、なんであんなに」
「男に冷たいんだ、でしょう? ……そうですわね。
まあいいですわ、カンナギさんにはお話します。
アタシの事を勝手に話された仕返しも兼ねて」
「わ、分かりました……お願いします」
奏慈の了承も聞かずに、フランは一方的に話し出した。
話はフランとボーアが子供の頃まで遡る……
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