告白
そろそろ中盤に入る頃でしょうか?
まだまだ続きますが、よろしくお願いします!
「はあ、はあ……約束だ、質問に答えて貰うぞ」
倒れているイカリを見下ろしながら、奏慈は剣を向けて言う。
イカリが倒れた瞬間、氷の塔は粉々に砕けて崩壊した。
もうイカリを守る物は何も無く、フラン達も勝ちを確信する。
「それは、どうですかね」
「なに?」
しかし、イカリは笑みを浮かべながら立ち上がった。
その行動に奏慈は警戒し、急いで剣を構え直す。
「えっ!? と、塔が!」
だが次の瞬間、崩壊した筈の塔が建っていた。
イカリを守るように立つ姿は、本物で間違いない。
その光景に奏慈は勿論、フラン達も驚愕する。
「……妙だ、立ち位置が戻ってる」
そんな中、さらに奏慈は違和感を覚えた。
いつのまにか二人の立ち位置が、塔を建てた時に戻っているのだ。
その奇妙な状況に奏慈は混乱するが、不意にハッとする。
「まさか!?」
「ええ、そのまさかです……こちらも使えるんですよ。
時空間魔法の一つ、時戻しを」
「時戻し!? でも、いつ発動を!」
「氷の塔です、君自らが戻したんですよ」
イカリはそう言うと、氷の塔を指差しながら話し始めた。
氷の塔とは盾であり、時と時の間に打ち込まれた楔。
楔は氷を通常よりも硬くし、溶ける速度も遅くする。
そして、崩壊すれば時も巻き込んで崩壊させるのだ。
これによって時は遡り、戦いを振り出しに戻した。
「とはいっても範囲は狭く、戻るのは無機物だけ。
現に、君も戻った事に気づいたでしょう?」
「……そういう事だったのか。でも、塔が戻ったという事は」
「そうです。君が対策できない限り、時は戻り続ける。
君に勝ちは訪れない」
「くっ」
そう言い切るイカリに、奏慈はただ睨む事しかできない。
イカリが倒れる度に崩壊するなら、実質イカリは不死身。
時止めを連打し、また不意を突いたとしても無駄なのだ。
「……それでも、引き分けですがね」
「なに?」
しかし、イカリは杖を仕舞うと、氷の塔も崩壊させた。
その行動に奏慈は警戒するが、イカリは言葉を続ける。
「戻るのは無機物だけ。君から受けた痛みは今も残っている。
だけど、痛みで倒れても氷の塔は崩壊する」
「それで引き分けですか? 戦いが永遠に終わらないから」
「ええ、納得して貰えましたか?」
「……そういう事なら」
奏慈は不満気にしながら、構えを解くと剣を仕舞った。
それを見て、安心したイカリは奏慈に向かって歩き出す。
間もなくイカリは奏慈の元に辿り着き、手を差し伸べた。
「ありがとう、君との勝負は楽しかったよ」
「いえいえ……質問には、答えて貰えませんか?」
「ふむ……答えられるのは、自分が君の敵ではないこと。
それだけだね」
「そうですか……」
「では今度こそ、これで……また会おう、カンナギ」
イカリはそう言うと頭を下げ、立ち去り始める。
その足取りは軽く、何処か嬉しそうに見えた。
「待て!」
「待ちなさい!!」
「お、おい、フラン……それに聖女様も」
フラン達はそれを見て、急いでイカリを追い始める。
だが、奏慈はそんなフラン達を手で制した。
「何故ですの!? 奴は明らかに普通じゃありませんわ!」
「分かってます! でも、フランさんも気づきましたよね?
時を戻せるんです、手加減してたのは間違いありません!
最初から本気だったら、攻撃する隙さえ無かった筈です!」
「その通りだな、時戻しを連発されたら攻撃も何も無い。
奴の態度を見るに、奥の手も出していないだろう」
ボーアは冷静にそう言い、去り行くイカリを見つめ始める。
フラン達もそれに続き、姿が見えなくなるまで見送った。
そうして見えなくなると、アウィンはゆっくりと口を開く。
「つまり、力試しだったのか?」
「間違いありません。氷の塔も使う予定じゃなかった筈です。
それでも使ったのは、カンナギの実力を認めたからでしょう」
「……なんにせよ、これ以上は本人に聞くしかありませんわね。
今日の所は休みましょう」
「そうですね……」
こうして思う所はあるものの、四人はその場を後にした。
そのまま決められた客室に向かい、疲れを癒す事にする。
「――って、カンナギと同室じゃねえか!!」
「あはは……」
だが、客室は奏慈とアウィンの相部屋だった。
大慌てするアウィンだったが、これはフランの策略ではない。
ハルベルム達が寝泊まりする予定だった為、元々相部屋なのだ。
「まあまあ、仕方ないじゃないですか。
突然の事だったので部屋を変えれなかったんですよ」
「だからって男女同じ部屋にするな! 考えるだろ、普通!!」
「……膝枕したのに、そういう所は純情なんですね」
「ぐっ、それは……聖女らしい行動の一つというか」
「単にアウィンさんがしたかっただけでしょ」
「うっ、ううん」
奏慈に図星を突かれ、倒れるようにアウィンは横になる。
同時にベッドの上で寝返りを打ち始め、手で顔を覆った。
そんなアウィンに奏慈は呆れながら、自身も横になる。
「まあ、手を出すつもりはないので安心して下さい」
「……それはそれで、微妙な気持ちになるんだが?」
「はあ、襲われたいんですか?」
「な、なな、何を言ってるんだ! 変な事を言うな!!」
「……まあいいです、もう寝ましょう」
「あっ、うん」
溜め息混じりに奏慈はそう言うと、返答も聞かず明かりを消した。
それに対し、何か言いたげアウィンだったが、大人しく横になる。
(……寝れねえ)
しかし、アウィンはどうしても眠れなかった。
言いたい事が山ほどあり、何度も奏慈の方を見る。
先程の戦いやフランに言われた事など色々あるのだ。
「なあ、カンナギ」
「なんですか?」
そうして遂に、アウィンは奏慈に話しかけた。
奏慈はまだ起きており、天井を見つめている。
「さっき、甲板に穴を開けただろ? アレは」
「犯罪ですよね、分かっています。それがどうかしましたか?」
「ふう……お前は目的の為なら、手を汚す事に躊躇しないんだな」
「躊躇はしますよ、実行に移すのが早いだけです」
「そうか……」
アウィンの言葉に、ぶっきらぼうに返す奏慈。
それに少し落ち込みながら、アウィンは言葉を続ける。
「だが、オレも人の事を言えないな。もっと悪い事をしている」
「えっ?」
その言葉に一転して奏慈は驚き、思わずベッドから起き上がった。
アウィンは既に起き上がっており、奏慈の方を向いている。
「あ、アウィンさん?」
そして、胸元を怪しく光らせ、その場に立ち尽くしていた。
その光景に奏慈は息を飲むが、なんとか言葉を口にする。
「そ、それは一体?」
「第三の眼だ……人の心を読む事ができる器官。
シンガン族にのみ存在する器官だ」
「人の心を? も、もしかして」
「ああ、今まで読んでいたんだ」
「そ、そうだったんですね……」
突然知らされた事実に、奏慈は何とも言えない表情になった。
それでもアウィンから放たれる光が、奏慈の口を開かせる。
「その光、見覚えがあります……最近見る夢も?」
「ああ、それもオレのせいだ」
「そうですか……道理で悪夢を見ない訳です」
「ごめん、お前の夢まで見ちまった……」
「いいんです、アウィンさんの御蔭で良い夢を見れました」
「ち、違うんだ……オレは、自分の為に」
アウィンは見た理由と、自身の見た夢について話し出した。
それを話す間、奏慈は静かにアウィンの話を聞く。
数分後、アウィンは話し終え、ようやく奏慈は口を開いた。
「そうでしたか……個人情報も何もあったものじゃないな」
「ご、ごめん」
「いいですよ、好きな人の事を知りたい気持ちは分かります。
でも言わなきゃ分からないのに、何で言ってくれたんですか?」
「フランに、見てる所を見られたんだ……それで」
「成程、それでか……フランさんらしい」
そこまで聞くと、奏慈はベッドに腰かけた。
明かりも点け、アウィンを見上げる。
「さて、聞きたいんでしょう……望結の事を?」
「……いいのか?」
「構いません。勝手に覗かれるよりマシです」
「す、すまない……じゃあ、聞かせてくれ」
「分かりました。僕が望結と出会ったのは――」
こうして奏慈はアウィンに語り始めた。
その話をアウィンは静かに聞くのだった……
ここまで読んで頂き、ありがとうございました!
もし誤字脱字がございましたら、ぜひ教えて下さい! 修正します!
感想評価も募集致します、よろしくお願いします!




