勝負
大変長らくお待たせしました! 新しい話です!!
久しぶりの投稿ですが、恐らく面白くなってる筈!
ぜひ楽しく読まれて下さい!!
「しょ、勝負!?」
「分かったぞ、貴様はウルトルクスだな!」
イカリから突然申し込まれた勝負に、奏慈はただ唖然とする。
だが奏慈は絞り出すように声を出すと、警戒して距離を取った。
さらにボーアはそんな奏慈の前に立ち、疑いの目を向ける。
「ウルトルクス? 一体何の事です?」
「とぼけるつもりですの、名前まで知ってますのに」
「それに勝負を挑んだ理由も何だ?」
「理由ですか……」
イカリを囲むフラン達も、イカリに疑いの目を向けていた。
奏慈はこの世界に来たばかりの異世界人で、有名人でもない。
つまり、知っているのは身内かウルトルクスという敵のみだ。
「理由は単純。カンナギ、君に勝ちたいからです」
「僕に?」
「はあ、意味不明だな。さっさと船から叩き出すぞ」
「……ボーアさん、待って下さい! その勝負、受けます!」
「なっ、本気か!? ウルトルクスかもしれないんだぞ!」
「そうですわ、初対面で名前を知ってますのよ!」
そんな中、奏慈はボーアを手で制してイカリの勝負を受けた。
二人は必死に止め続けるが、奏慈はそんな二人に冷静に返す。
「分かってます。でも、ウルトルクスじゃないと思うんです!
何故かと聞かれたら困るんですけど……」
「はあ、意味不明に意味不明を重ねるな。もう勝手にしろ」
「ありがとうございます!」
「ボーア、それは無責任すぎますわ!」
「……本人がそう言ってるんだ、ボク達が言っても無駄だろ」
「そ、そうかもしれませんけど……」
フランは心配そうに奏慈の方を見つめる。
当の奏慈は既に剣を出現させており、戦う覚悟を決めていた。
その姿を見て、フランは静かに口を噤む。
(おい、カンナギ。オレには説明しろ、どういう事だ)
(さっき言った通りです。それ以外に理由はありません)
しかし、アウィンは不満気で、心話を使って奏慈に問い質す。
対する奏慈はそんなアウィンに、至って冷静に言葉を返した。
それでもアウィンは口を噤まず、今度は諭すように話し出す。
(確かに奴からはウルトルクスの時に感じた悪意を感じない。
だが名前を知っていて、こちらの隙を窺っていた。
ウルトルクスじゃなくても、雇われた奴かもしれないだろ)
(そうですね、その可能性もあります。
でも、もう決めたんです。何を言われても揺らぎませんよ)
(……強情だな。分かった、見守ってやってやる。
だけど、何かあったらすぐに止めるからな)
(分かりました、ありがとうございます。では、行きますね)
奏慈はそう言うと、アウィンに背を向けて歩き出した。
イカリもそれに続いて歩き出し、囲むフラン達を押し退ける。
そうして囲みを出ると、イカリは奏慈に頭を下げた。
「まず、勝負を受けてくれた事に感謝します。
終わったら、お仲間さんにも礼を言わないといけませんね」
「……もし僕が勝ったら、全ての質問に答えて貰いますよ」
「ふむ、いいでしょう……さあ、始めましょうか」
こうして戦いは始まった。フラン達は離れた所から戦いを見つめる。
そして、二人はお互いに距離を取り、攻撃の隙を窺う。
「先手は貰います! 行け!!」
最初に動いたのはイカリだった。イカリは軽く杖を振る。
すると氷の柱が次々に生えていき、奏慈に向かっていく。
「止まれ!」
それに対し、奏慈は時を止める。氷の柱は一瞬にして止まった。
奏慈はそれを確認すると、イカリに向かって駆け出す。
間もなくイカリの背後に辿り着き、剣を振り下ろした。
「甘いですね」
「なっ!? い、一体何が!」
しかし、その攻撃は氷の柱によって阻まれる。
氷は表面にヒビが入るも、割れる事なく受け止めた。
同時に時も動き出し、奏慈は混乱しながらも後退する。
そんな奏慈を見て、イカリは笑みを浮かべながら言う。
「分かりませんか? なら教えましょう、時止めを解除したんです」
「解除!? そんな事が可能なのか!」
「可能です。事前に時止めを使ってくる事を知っていれば。
君は迂闊にも口にしたでしょう。だから、警戒していました」
「しまった……だが、何度解除できるかな! 止まれ!!」
だが、構わず奏慈は時を止める。イカリの動きは再び止まった。
それを確認すると、奏慈は素早く剣を振り下ろす。
「言ったでしょう、解除できると」
「うっ、また!?」
二度目の時止めもイカリは容易く解除した。
剣も再び氷の柱で受け止め、奏慈の攻撃を完全に防御する。
さらに氷の柱を向かわせ、奏慈に追撃した。
「解除自体に魔力は殆ど必要ない。何度止めても解除できる!
君の魔力が尽きる方が先です!!」
「……それでも僕には、これしかないんだ!」
「無駄な事を」
奏慈はそう言い放つと、三度目となる時止めを発動する。
その行動に対し、イカリはすぐに解除行動を取った。
「……なんてね」
「なに!? ぐうぅ!!」
しかし、奏慈はイカリが解除するよりも前に自分で解除した。
その行動にイカリは驚き、その隙を突いて奏慈は剣を投げる。
剣は見事イカリに直撃し、イカリは胸を押さえて倒れ込んだ。
「ま、まさか、この短時間で気づいたのか?
「ああ。僕だって馬鹿じゃない、二回目の解除で大体察した」
――どんな魔法にも解除の方法が存在する。
時止めの場合なら、時進みの魔法をぶつける事で解除可能だ。
だが、ぶつけてもすぐには進まない。ラグが存在する。
その時間は僅か三秒だったが、奏慈はそれを見逃さなかった。
奏慈は動き出す前に解除し、剣を投げる作戦を実行する。
「……正直、とても驚きました。でも、快進撃はここまで」
「なに!」
イカリはそう言うと、胸を押さえながら乱雑に杖を振った。
奏慈はすぐに剣を投げるも、生えだした氷の柱が剣を阻む。
それはイカリを囲むように生え、塔ほどの高さに成長した。
「こ、これじゃあ!?」
「さらに自分はここから一方的に攻撃できますよ」
「くっ、止まれ!」
そう言うが早いかイカリは杖を振り、氷の柱を向かわせる。
氷の塔に圧倒される奏慈だったが、すぐに我に返って止めた。
そして、解除される僅かな時間を利用して塔に斬りかかる。
「か、硬い!?」
斬りかかった氷はヒビすら入らない程の硬さだった。
氷の塔の氷は今までと違い、海を思わせる青さで半透明。
宝石のような綺麗さを持つが、今の奏慈には絶望のスパイスでしかない。
「その様子を見るに、突破できないようですね」
「……否定はしない」
その様子をイカリは氷越しに見つめ、自信満々にそう言い切る。
事実、今の奏慈には氷の塔を突破する方法は無かった。
それでも奏慈はイカリの氷の柱を注意しながら、思案し始める。
(いつもなら時を止めて、氷が割れるまで斬り続ける状況だ。
でも、現状は解除されて斬り続ける事は不可能。
となると氷を割る事は諦め、他の方法を探した方がいい。
問題はその方法だ、今の僕にできる方法は一体?)
そこまで思った所で、奏慈はニヤリと笑った。
同時に時を止め、作戦実行の為に動き出す。
「無駄です、そこからでも止めた事は分かります! 時は動き出す!
……あ、あれ、何処に!?」
イカリはその行動に対し、すぐに解除行動を取った。
間もなく時止めは解除されるが、そこに奏慈の姿は無い。
急いで周囲を見回しても、フラン達しか存在しなかった。
「と、突然消えましたわ!?」
「まさか、逃げたのか?」
(いや、違う。奏慈は逆転の手を見つけたんだ。
だけど、それは一体何だ? 奏慈は何に気づいた?)
奏慈の突然の行動に、見守っていたフラン達も騒ぎ出す。
フラン達にも奏慈が何処に行ったのか分からなかった。
「無いと思いますが、氷が溶けるのを待っている?
そうだとしても、氷はすぐに生やせる。問題は無い筈」
そうして時は流れ、氷の塔から水が滴り始める。
奏慈の姿は変わらず見えず、氷の溶ける音だけが響く。
「……うん、この音は? 何処から聞こえる?」
だが、バキメキと何かが折れるような音も聞こえ始めた。
その音の出処を探るも、氷の音も混ざって分からない。
一転してイカリは周囲を警戒し、奏慈の出現に備えた。
「そうか、この音は!?」
「……ビンゴだ」
「はっ!?」
イカリが音の正体に気づいた瞬間、床にヒビが入り始める。
ヒビは間もなく穴に変わり、その穴から奏慈が飛び出した。
奏慈は船内に入り、甲板を打ち破って出てきたのだ。
「さて、防御できるかな?」
「ま、まずい!?」
奏慈はそう言うと時を止め、イカリに剣を振り下ろした。
すぐに解除行動を取るイカリだったが、二人の距離は近い。
たった三秒、されど三秒。その僅かな時間が勝負を分ける。
「僕の勝ちだ」
「ぐあぁぁ!!」
奏慈の剣は直撃し、そのままイカリは地面に倒れた。
こうして数十分にも及ぶ勝負は、奏慈の勝ちで終わるのだった……
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