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悪夢

今回は短めな話になりますが、重要な話になります。

楽しんで読んで頂けると嬉しいです!

「アウィン様、もういい時間ですわ。そろそろ横になった方が……」

「これくらい平気だ。お前こそ疲れが残ってるだろ、早く眠れ」


奏慈が目覚める前日、アウィンは奏慈の看病をしていた。

昼間は復興作業と治療、夜は付きっ切りで看病。眠る暇など全く無い。

そのせいで目に隈が出来始めており、そんなアウィンをフランは心配していた。


「分かりましたわ……でも、本当に無理なさらないで下さい」

「ああ、気をつける」


フランはそれ以上言わず、大人しく部屋を後にした。

残ったアウィンはそれを見送り、看病を続ける。

しかし、続ける内にアウィンは言葉を漏らし始めた。


「こうして見るのは三度目か。倒れてばっかだな、お前。

 ……弱いって自覚してんなら、無茶すんなよ。この馬鹿」


穏やかに眠る奏慈に、アウィンは文句を言い続ける。

その言葉とは裏腹に苦しそうに、悲しそうにしながら。


「うっ、ああ……」

「お、おい! どうした!?

 いや、これは前にも……」


そうして看病していると、奏慈は突然苦しみ始めた。

慌ててアウィンは声を掛けるも、その光景に既視感を覚える。

そう、初めて奏慈と出会った夜にもあった出来事だ。


「また、あんな夢を見ているのか……なら、すぐに変えないと」


アウィンは奏慈の頭に手を乗せ、光を放ち出した。それは悪夢を払う魔法。

幸せな夢を見せる魔法で、徐々に奏慈の顔は穏やかになっていく。

だが、不意にアウィンは光を止め、手を引っ込めた。


「……ごめん、本当は見ちゃいけないとは思ってる。

 でも、オレはお前の苦しみを本当の意味で取り除きたい。

 取り除かないと、お前はこれからも傷つき続ける。


 それにオレは知りたい。望結という娘とどういう関係なのかを。

 だから、本当にごめん……行くぞ!」


アウィンは謝りながら、再び第三の眼を開く。

それは私情が入ったものだったが、アウィンは止まれない。

間もなく夢の中に入っていき、その世界に降り立つ。


「暗いな、夜なのか?」


街灯はあるものの、降り立った夢の世界は真っ黒だった。

その街灯も僅かに照らすのみで、暗闇に全く勝てていない。

しかし、そんな世界で一か所だけ、明るい場所があった。


「お前の! お前のせいでワタシ達の人生は!!」


そこには十人の男女の集団と、対峙している奏慈が居た。

集団は奏慈を睨みつけ、奏慈は呆れた様子で見つめている。


「面白いな、それは君達の言う台詞か?

 他人の人生を奪ったんだ、自業自得じゃないかな」

「て、てめえ!」


睨みつける集団に対し、奏慈は全く相手にしていない。

それどころか煽っており、欠伸混じりに言い続ける。

集団はその様子に怒り、懐から武器を取り出し始める。


「結局、暴力に頼るのか。哀れだな」

「何とでも言えばいい。やるぞ」


リーダーと思わしき男の言葉で、集団は奏慈を囲むように動き出す。

それでも奏慈は冷静さを崩さず、拳を鳴らしながら集団を見つめる。


「おら!」


早速一人の男が金属バットを持って迫り、奏慈に振り下ろす。

奏慈はそれを紙一重で避ける。しかし、後ろに別の男が迫っていた。


「死ね!」

「ぐぅっ!? な、舐めるな!」


迫っていた男はナイフを振り下ろし、奏慈はそのまま切られる。

痛みでよろける奏慈だったが、すぐに態勢を整えて殴り返した。


「く、くそ……」


だが、戦いは劣勢。新手の敵が再び奏慈に迫る。

まだまだ敵が居る中、奏慈は孤独な戦いを続けた。


「なんなんだ、なんで攻撃されて」


その戦いをアウィンは遠くから心配そうに見つめる。

助けに行きたかったが、夢が終わるまで手を出せない。

それが第三の眼を使っての、夢世界侵入の制約だった。


「えっ、消えた!?」


そんな中、不意に明かりが全て消える。夢世界は真っ暗になった。

アウィンは驚くも、次の瞬間には明かりが灯り始める。


「ま、まさか、この人数を相手に……」

「はあ、はあ」


そうして最後に集団と奏慈の居る場所にも灯る。

だが、そこには一人の男と奏慈しか立っていなかった。

先程まで居た男女は血塗れで倒れており、意識が無い。


「何故だ、何故そんなにボロボロになっても動ける!」


同様に奏慈も血塗れで、頭や腹から血を流していた。

それでも奏慈は立ち、力強く男に言い切る。


「決まってる、ここで死ぬ訳にはいかないからだ!

 覚悟しろ、卑怯者!!」

「うるさい!!」


男はそんな奏慈に激昂し、金属バットを持って駆け出した。

対する奏慈もナイフを持って駆け出し、二人の距離は縮まっていく。


「なっ!?」


しかし、奏慈は突然立ち止まった。そして、そのまま一切動かなくなる。

その行動に男は驚き、思わずスピードを緩めた。


「今だ!」


奏慈はその隙を見逃さず、男の足に向かってナイフを投げる。

ナイフは真っすぐ飛び、男の足に突き刺さった。


「うっ、く、くそ!?」


痛みで顔を歪めるが、すぐに男はナイフを引き抜く。

だが、そうしている間に奏慈は眼前まで迫っていた。


「トドメだ!」

「がはっ!?」


咄嗟に金属バットで防御する男だったが、奏慈はバットごと蹴り飛ばす。

そのまま男は悲鳴を上げながら、暗闇の中に消えていった。


「……望結、終わったよ。君の仇が取れた。

 でも、もっと早くやるべきだったかな」


奏慈はそう言うと、力無く地面に倒れる。

そして、倒れると再び明かりが全て消えた。

アウィンはその暗闇の中、考え込み始める。


「これは奏慈の過去……あの夢の続きか? じゃあ、今の奴らは。

 いや、今は悪夢を何とかするのが先だな」


しかし、早々に考えるのを止めると夢から目覚めた。

同時に奏慈の頭に手を乗せ、再び光を放ち出す。

間も無く奏慈は寝息を立て始め、深い眠りに就いた。


「オレも休むか」


こうしてアウィンは安心し、起こさないように歩き出す。

そのまま部屋を抜け出すと、アウィンは自身の部屋に向かった。


「見てましたわよ、アウィン様」

「……フラン、起きていたのか」


だが、抜け出した先にフランが居た。

フランは浮かない表情をしており、言い難そうに言葉を続ける。


「ええ、心配になって戻って来ましたの。

 ……いくら心配でも、無断で人の夢を見るのは駄目ですわ。

 悪夢でも、その人の知られたくない秘密ですもの」

「そうだな、悪いとは思っている……ちゃんと謝るよ」

「なら、いいですわ。

 でも驚きました、アウィン様がシンガン族でしたなんて。

 全く分かりませんでしたもの」


――シンガン族の見た目は人族からかけ離れていた。

毛むくじゃらの体に、三つ目の目が胸元に付いている。

他の魔族もかけ離れているが、シンガン族ほど分かり易い魔族は居ない。


その為、シンガン族は自身の種族を偽る事が出来ない。

心を読める能力がある都合上、差別され易いにも拘わらず。


「オレが人族に似てるのは、母が人族だったからだ。

 いわゆる半魔族だな。御蔭でバレずに済んで過ごし易い」

「そうだったんですのね、アウィン様も苦労して……」


半魔族とはその名の通り、人族と魔族の間に生まれた魔族の事である。

本来、種族の違う同士では子供は出来ない。

しかし、人族との間では子供を作る事が出来るのだ。


だが、半魔族は人族にしても魔族にしても中途半端な存在。

かつては差別され、今でも数は多くない魔族なのである。


「あっ、一応言うが言うなよ。そっちの方が都合がいいからな」

「わ、分かりましたわ」

「さて、オレはもう寝る。お前も早く寝ろよ」

「は、はい、おやすみなさい」


アウィンはそれだけ言うと、フランを置いて歩き去った。

話を一方的に終わらせ、まるで逃げるような行動にフランは困惑する。


「この胸騒ぎはなんなのでしょう」


残されたフランはそんなアウィンを見つめ、ポツリと呟くのだった……

ここまで読んで頂き、ありがとうございました!

もし誤字脱字がございましたら、ぜひ教えて下さい! 修正します!

感想評価も募集致します、よろしくお願いします!

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