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神聖魔法

奏慈は果たして好かれる主人公なのか。

もし、そうでないならどうするべきか。

大切な部分なので、考え始めました。

「これで、もう大丈夫……」


アウィンは治療をし続け、ハルベルムを完全に回復する。

しかし、そんなアウィンは眉の下まで黒く染まっていた。

間もなくアウィンは安堵の表情を浮かべ、仰向けに倒れる。


「アウィンさん!!」

「お、おい!」

「カンナギさん、駄目ですわ!」


奏慈は止めるフランとボーアを押し退け、アウィンに駆け寄った。

そのまま倒れたアウィンに触れ、優しく抱き起こす。


「ば、馬鹿……触れるな、お前まで黒くなるぞ」

「そんなこと知りません! アウィンさんの方が大事です!」

「……大馬鹿野郎が」


怒りながらもアウィンは嬉しそうに奏慈を見る。

だが、触れた瞬間から奏慈の体は黒く染まり始めた。

その速度はアウィンの時よりも速く、既に首まで黒くなっている。


「言わんこっちゃない! 早く放せ、馬鹿!」

「うるさい、このまま外に行きますよ!」

「くそ、オレは心配してるってのに……」


心配する皆を余所に、奏慈はアウィンを抱えて駆け始めた。

その後をフラン達を抱えたボーアも続き、外を目指す。


「ふう、流石に外は涼しいな」

「そうですわね……じゃないですわ、少しは心配したらどうですの!」


奏慈の心配をせず、ボーアは一足先に外に出ると休憩し始める。

その行動に対してフランは怒るも、ボーアは興味なさそうに返す。


「ボク達は止めて、聖女様も止めたのに触れたんだ。

 どうなっても自業自得さ」

「はあ、相変わらずですわね……」


そこに遅れて奏慈達も到着し、奏慈は優しくアウィンを降ろした。

ボーアは言われたからか、そんな奏慈達を見つめ、ある事に気づく。


「どういう事だ、何故元に」

「えっ……あれ、オレいつのまに?」


奏慈の体は完全に黒く染まり、顔の何処に鼻があるかすら分からない。

だが、対照的にアウィンは元に戻っており、体調もすっかり良くなっている。


「もしかして、お前が……お、おい、カンナギ? カンナギ!?」

「い、いつのまにか気絶してますわ!?」


アウィンはその理由が奏慈にあると思い、声を掛けた。

しかし、奏慈は応えず、触れると力無く横に倒れる。

それを見たアウィンは焦り、体を揺するも意識は戻らない。


「ちっ、世話が焼ける……すぐに救援を呼ぶ、死ぬんじゃないぞ」


さっきとは打って変わり、ボーアは心配そうな素振りを見せる。

そして、懐から一切れの紙を取り出すと、すらすらと何かを書き始めた。

ボーアは書き終わると、その紙を発生させた風に乗せて空に飛ばす。


「来たか」


少しして近くまで来ていた騎士団が訪れ、屋敷の消火と救助に動き出す。

そうしてフラン達は無事、助けられたのだった……


「くっ、ここは? 何で僕は寝て」


――それから数日後、奏慈は屋敷のある一室で目覚めた。

その部屋は前に使っていた部屋で、消火で元に戻っている。

だが、直前の記憶が無い奏慈は混乱し、周囲を見回し始めた。


「お、起きたんですのね!」


そこに扉を開けて、フランが入ってきた。

フランは持っていた花を放り投げると、真っすぐ奏慈の元に向かう。


「フランさん! 私は一体、何で寝て?」

「覚えてませんの? アウィン様を運んだ後、気絶しましたのよ!

 あれから三日間、ぐっすりでしたわ」

「み、三日間!?」

「そうですわよ。御蔭でアタクシも含め、心配してましたわ。

 それにあの時のアウィン様の慌てようといったら……あっ、呼んで来ますわね」

「は、はい、お願いします」


来て早々、嵐のような勢いでフランは部屋を飛び出し行った。

それから間もなく、爆音じみた足音が遠くから聞こえてくる。

足音は大きくなっていき、一番大きくなった時にアウィンが入って来た。


「カンナギ、心配させやがって!!」

「す、すみません!?」


その勢いから奏慈は怒られたと思い、急いで頭を下げる。

しかし、アウィンはそれから言葉を発せず、奏慈を力強く抱き締めた。


「えっ、えっと……あっ」


困惑する奏慈だったが、流れ落ちる涙を見て察し、優しく抱き返す。

二人はそうして暫く抱き合い、満足した所で奏慈は口を開いた。


「凄い元気になってますね、何処も黒くないし」

「それはこっちの台詞だ、お前も何処も黒くないぞ」

「うん? あ、あれ、本当ですね?」


アウィンに言われ、奏慈は自分の体を見る。

体は何処も黒くなく、アウィンと同じく元に戻っていた。


「はあ、ほんと意味わからねえよ。こんなこと聞いた事がない」

「……神聖魔法でしたか、その魔法は本来どういう物なんですか?」

「そうだな、一応話しておくか……ちゃんと聞けよ、カンナギ」


神聖魔法、それは創造神の力を借りて発動する魔法。

他の魔法と共に使う事で、その魔法の威力を上げる事ができる。

同じような効果を持つ魔法は存在するが、その差は歴然だ。


「でも、それで何で黒く?」

「全く、最後まで話を聞け」


しかし、創造神の力は一人の人間が使うには大きすぎる。

その力は瞬く間に術者の体を駆け巡り、その体を破壊していく。

破壊された体は時間と共に治っていきはするが、完治はしない。


「その破壊した跡が墨のような黒さなんですね。

 でも、何で触れたら黒く?」

「力がまだ残っているからだ。それに触れる事で触れた者も黒くなる。

 だから、可笑しいんだよ。お前もオレも黒くないのは」


そう言うとアウィンは自身の腕を見せ、奏慈の腕を掴んで見せる。

どちらの腕も全く黒くなく、黒かった跡も残っていない。


「どうして残っていないんでしょう、僕もアウィンさんも?

 確か黒かったですよね、僕は」

「……分からない、分かっているのはオレに無いのはお前の御蔭。

 お前に触れられた事で、オレから無くなったという事だけだ」


奏慈は首を傾げながら、再び自分の体を見る。何処も黒くない。

それどころか体は軽く、寧ろ元気になったように感じる。


「脱線したな、神聖魔法はそういう魔法だ。聞きたい事は終わりか」

「終わりました。まだ謎はありますが、それはまた今度」

「そうか……じゃあ、オレも聞いていいか?

 天井を落とした、その理由をな」

「……どういう意味でしょうか?」


一転してアウィンは冷たい表情を見せ、奏慈に聞き始めた。

その様子を見て、奏慈は顔を強ばらせながら聞き返す。

アウィンはそれに対し、変わらず冷たい表情で聞く。


「そのままの意味だ。あの状況、わざわざ天井を落とす理由は無かった。

 なのに、お前は落とした。それは何故だ?」

「それは……」

「答えられないなら、代わりに答えてやる……ツェーンを殺す為だ」

「……ええ、その通りです」


アウィンの言葉を肯定しながら、奏慈はベッドから起き上がった。

そのまま奏慈は壁まで歩いていき、壁に寄りかかった状態で言葉を続ける。


「それが何か問題でも?」

「問題ならある。サモンウェポンのある今、故意の殺害行為は許されない。

 もし、行った場合は怪我だけでも十年以上の罪に問われるぞ」

「……では、僕を引き渡しますか?」

「いや、お前が居たからツェーンに勝てた。引き渡すつもりは無い。

 オレが言いたいのは、何故わざわざ殺そうとしたのかだ」


アウィンはそう言うと自身もベッドから離れ、奏慈に向かって歩き出した。

その大きな歩幅ですぐに辿り着き、アウィンは真っすぐ奏慈を見つめる。

対する奏慈は眼を逸らしながらも、怒気を帯びた声でアウィンに応えた。


「奴らは村を襲わせ、屋敷に火を放ち、皆を殺そうとしたんですよ。

 そんな奴らを生かして、何の意味があるんですか」

「……それがお前の本音か、お前の言う事は分かる。

 オレも奴らを生かしておくのは危険だと思う。

 だが、それでお前が罪を犯す必要は無い! 裁くのは法に任せるんだ」

「……ではアウィンさんが酷い目に遭った時、僕はどうすればいいんですか」

「それは決まってる、殺さずに捕まえるんだ」

「じゃあ、僕が殺されそうになった時はどうするんですか?

 その時も我慢して引き渡すんですか」

「……そうだ」


奏慈の言葉に、今度はアウィンが頷く。

それを見て、奏慈は拳を握り締めて言葉を続ける。


「力を手に入れた今、僕はアウィンさんのように出来る気がしません。

 前に言いましたよね、殺意が生まれたと……僕は我慢できなかった。

 だから、倒せた時は嬉しかったです! 殺せたと思ったので」

「カンナギ……」

「……所詮、僕はこんな男です。怒りと憎しみに支配されている。

 やっぱり、僕はアウィンさんの横に居ていい男じゃない」


奏慈はそう言い捨てると、アウィンの横を通って歩き出した。

向かう先は開け放たれた扉。奏慈はそこから出ようとする。

そんな奏慈の手をアウィンは咄嗟に掴み、そのまま……


「うっ!? あ、アウィンさん?」


奏慈とキスをした。奏慈は驚き、思わず足を止める。

そうして暫く二人はキスをし、不意にアウィンは口を離して言う。


「ふう……前に言ったよな、オレも。

 お前は人の為に命を懸けれる奴だ。決して、奪う側なんかじゃない。

 そして、オレは死んでも死なねえよって」

「あっ」

「実際、お前はオレの為に命を懸けた。オレの言葉を無視してな。

 お前はオレの横に居ていい男だよ、誰よりも」

「アウィンさん……」


奏慈は声を出して泣き出した。涙は次々に落ち、床を濡らしていく。

アウィンはそんな奏慈を抱き締め、優しく頭を撫で始める。


「素晴らしいですわ!!」

「うわっ!? えっ、フランさん?」

「またかよ」


そこにどこからともなくフランが現れた。

奏慈は驚き倒れ、アウィンは呆れた様子でフランを見つめる。

当のフランは恍惚な表情で、早口で言う。


「考え方の違いでぶつかる事はあっても、最後は優しく受け止める!!

 正に理由の恋人関係ですわ!!」

「あ、あれ、前にも似たような事が……」

「はあ、雰囲気が台無しだよ」


二人が小声で話す中、フランは早口で言い続ける。

その様子に二人は困惑しながらも、すっきりとした表情で微笑み合うのだった……

ここまで読んで頂き、ありがとうございました!

もし誤字脱字がございましたら、ぜひ教えて下さい! 修正します!

感想評価も募集致します、よろしくお願いします!

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