夢幻
今回は目まぐるしい展開があります。
混乱するかもです、すみません。
良い書き方ができるように頑張ります!
「ならば、見せて貰おう」
剣を構えるカリバーに対し、アインスは火球を落とす。
その火球は大きさを増しながら、一直線に向かって来た。
「ふんっ!」
カリバーはそれを大剣の一振りで、容易く消し去る。
だが、アインスの火球はまだ二つ存在した。
一つ目よりも大きな火球がカリバーに向かって来る。
「何度やろうと!」
「それはどうかな」
「なに!? うっ」
再び消し去ろうとするカリバーに、熱線が襲いかかった。
カリバーは時を斬って避けるも、熱線の一つが肌を掠る。
「ぐっ、ふん!」
それでもカリバーは二つ目の火球を消し去った。
その様子をアインスは静かに見つめ、最後の火球を向かわせる。
「これも同じだ!」
三つ目の火球は山よりも大きく、太陽を思わせる物だった。
しかし、カリバーはそれすらも同じように容易く消し去る。
「どうだ、お前の自慢の火球は全て無くなったぞ!
大人しく降参し、お縄につくがいい!」
カリバーは自信満々にそう言うと、アインスを指差した。
熱線で受けた怪我はもう治っており、疲れた様子もまるで無い。
対してアインスは疲れてきており、動きも鈍くなってきている。
「……剣聖カリバー、君の負けは確定した」
「どういう意味だ」
にも拘らず、アインスは静かにそう応えた。
カリバーはすぐに聞き返すも、アインスは応えずに不意に手を伸ばす。
「はっ、これは……あああ!?」
瞬間、カリバーの体が炎に包まれて燃え始めた。
カリバーはすぐに地面に転がり、消しにかかる。
だが、どんなに転がっても炎が消える気配は無い。
「無駄だ、この空間の炎は消えない…空間ごと消し去らない限りは」
アインスはそう言いながら、人差し指をカリバーに向ける。
間もなく人差し指から熱線が放たれ、カリバーに迫った。
「ぐっ!?」
「さよならだ、剣聖カリバー」
その熱線は眉間を貫き、一撃でカリバーの息の根を止める。
カリバーは力無く倒れ、アインスは残念そうに見下ろした。
そして、もう動かなくなったカリバーに背を向け、歩き出す。
「剣聖を舐め過ぎだな、貴様達は」
「なに、うっ」
だが突如、アインスの背後でカリバーの声が響く。
アインスはすぐに振り向くも、振り向きざまに斬られる。
「これは一体……はっ、その髪は」
「私の夢幻魔法、臨紫……貴様は今まで夢を見ていたんだ」
振り向いた先に居たカリバーは、自身の髪を発光させ佇んでいた。
アインスは驚きながらもその光を見ないようにし、周囲を見る。
周囲の空間は元の屋敷に戻っており、炎の空間はすっかり消えていた。
「その光のせいか。考えるに、掠った時に使ったな」
――臨紫。それはファルシオン家に伝わる夢幻魔法の一つ。
夢幻魔法は対象の精神に作用し、術者に都合の良い夢を見せる魔法。
臨紫はその中でも対象に死を体験させる夢幻魔法である。
「教えてやろうと思ったが、今の一瞬で察するとはな」
「だが、何故そこで使った」
「貴様の本命が火球や熱線でない事が分かったからだ。
だから、本命が出るまでは攻撃に当たる訳にはいかなかった。
でも、私は当たってしまった」
「それで夢を見せて茶を濁した訳か」
「その通り、御蔭で貴様の本命が分かった」
カリバーは発光を止め、大剣を引き摺りながらアインスに迫る。
それを見てアインスは後退するも、すぐに壁まで追い詰められた。
「貴様のあの魔法は火種を大きくする魔法。火球や熱線がその火種だ。
火種され当たれば、避ける事ができない炎を出せる」
「そこまで分かったか、我々は君を舐め過ぎていたらしい」
「そういう事だ、覚悟はいいか」
そう言うとカリバーは容赦なく大剣を振り下ろす。
アインスは咄嗟に杖を構えるが、間に合わない。
大剣はアインスに直撃した。
「……がはっ!?」
「ふふふ、油断したねえ」
かに思えたが、当たる直前にカリバーの胸を鞭が貫く。
それによって大剣はカリバーの手から滑り落ちた。
「ツヴァイか」
「危ない所だったねえ、アインス。
さあ、アンタも手伝いな」
「ふむ……まあ、いいだろう」
アインスは考え込みながらも、ツヴァイに応えて壁から離れる。
そして、誰も居ない空間を一瞥してからツヴァイの横に立った。
アインスはそのまま杖の先に火球を出し、カリバーにぶつける。
「これで終わったねえ」
「ふむ……ツヴァイ、よく見てみろ」
「えっ、なに!?」
ツヴァイは言われた通りカリバーを見ると、驚愕した。
そこに居たのはカリバーではなく、ハルベルムだったのだ。
ハルベルムは髪を発光させ、苦悶の表情を浮かべ気絶している。
「夢幻魔法だ、君は夢を見ていたんだ」
「じゃ、じゃあ、本物のカリバーは」
「あそこだ」
アインスの指差す先に本物のカリバーが居た。
カリバーは意識を失っており、床に倒れている。
「君が攻撃する直前、ハルベルムがカリバーを殴り飛ばした。
カリバーを守る為にな」
「……小賢しい事ねえ。でも、それなら」
ツヴァイは鞭を強く握ると、意識のないカリバーに振るった。
それは衝撃波を出しながら迫り、部屋中を揺らしていく。
しかし、それは突如として起こった爆発によって防がれる。
「ば、爆発魔法……まさか!?」
「はあ、はあ……これ以上、貴方達の好きにさせませんわ」
ツヴァイは驚きながらも振り向くと、そこに今度はフランが居た。
横になった状態で手を伸ばしており、二人を睨みつけている。
「君の仮面、もう少し目元を広げた方がいいかもしれないな」
「何度も何度も……出てくるなら、出てくる度に攻撃するまでさ!」
激昂したツヴァイは再び鞭を強く握り始めた。
その様子をアインスは呆れた様子で見つめる。
間もなく、フランに向かってツヴァイは鞭を振るった。
「フラン、無事か!!」
「フランさん!」
「……新手か」
「なんだいなんだい、次はなんだい!」
そこに今度はボーアが扉を開け放って現れる。
ツヴァイは驚き、思わず振るった鞭を止めた。
さらに奏慈とアウィンの二人も現れ、その場は騒然となる。
「ボーアさん、勝手に進むのは危険です!」
「うるさい! 貴様達もウルトルクスだな、覚悟しろ!!」
「聞く耳無しだな」
ボーアは二人の事など気にせず、アインス達に槍を向けた。
アインスはそんなボーアを見ず、後ろに居る奏慈を見つめている。
「ふむ……ツヴァイ、ここは退くぞ」
「えっ、なんでだい!? ワタシはまだやれるよ!」
「君がやれるのは関係ない、退くぞ」
「ちっ、仕方ないねえ」
アインス達は戦闘態勢を解くと、武器も戻した。
その様子を見たボーアは焦って近づき、怒号を発する。
「逃げる気か!!」
「そうだ……さよならだ、ソウジ」
「なっ!?」
「……何故、カンナギの名前を」
「くそ、逃げられたか……いや今はフランだ!」
アインスはそう言うと、ツヴァイと共に姿を消した。
直前の言葉に二人は疑問を持つも、もう聞く事はできない。
一方、ボーアはフランの元に駆け寄り、ゆっくり抱き起こす。
「フラン、大丈夫か!?」
「へ、平気ですわ……アタクシよりも、お父さんを」
「わ、分かった! 聖女様、お願いします!」
「了解しました」
全身が焼け爛れているにも拘らず、フランは自身の治療を後回しにした。
そんなフランの思いに応え、アウィンはすぐにハルベルムを見る。
ハルベルムも全身が焼け爛れており、胸に大きな穴が開いていた。
「これはマズイですね」
「ど、どうしたんですか、アウィンさん?」
「カンナギさんの時よりも傷が酷いです、火傷も相まって尚更」
「そんな、どうするんですか?」
「……神聖魔法を使います」
少し考え込んでから、アウィンはそう呟く。
それを聞いたフランとボーアは驚き、顔面蒼白になった。
「他に方法は?」
「……ありません、時は一刻を争います。
それでは、いきます」
アウィンは覚悟を決めた顔でそう言うと、ハルベルムに両手をかざす。
間もなく、その両手から黒い光が放たれ始めた。
「す、凄い! どんどん傷が治っていく!?」
「……これが神聖魔法」
「申し訳ありません、アウィン様……」
黒い光によって、ハルベルムの焼けた肌は元の肌に戻っていく。
胸に開いた穴も奏慈の時より早く治り、あっと言う間に塞がっていった。
奏慈はその治療の早さに感動するが、フランとボーアは唇を噛み締める。
「あ、ああ……」
「えっ、アウィンさん? どうかましたか?」
「カンナギ、触れるな!」
「ぼ、ボーアさん、何を?」
「……よく見てみろ」
「み、見るって、えっ」
ボーアに言われた通り、奏慈はアウィンを見つめた。
すると、すぐに気づく。アウィンの肌が黒くなり始めていたのだ。
「ま、まるで墨が広がっていくみたいな……これは一体?」
「……神聖魔法は通常の魔法よりも強力な代わりに、体に負荷が掛かる。
その負荷がこの黒だ。この黒が全身を覆った時、その者は……」
「ど、どうなるんですか?」
「死ぬ」
「なっ!?」
改めて奏慈はアウィンを見つめる。指先から腕まで既に黒く染まっていた。
それでもアウィンは治療を止めず、息切れしながらも黒くなり続ける。
対照的にハルベルムの肌は元に戻り切っており、既に開いた穴も塞がった。
「ぐぅ、はあはあ」
「聖女様、これ以上は……」
「まだです、終わっていません……毒も受けていました、それも治さないと」
首まで黒くしながら、アウィンは治療を止めない。
その様子を奏慈は見つめ、拳を握り締めていた。拳からは血が溢れている。
「……また、僕は何もできないのか」
悔しさに身を震わせるが、奏慈は見つめる事しかできない。
対してフランとボーアは目を逸らし、固く口を閉ざした。
そうして、そのまま治療が終わるのを待ち続けるのだった……
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