剣聖
ゴールデンウィークに入りましたね!
皆さんはどうお過ごしでしょうか?
私は休み、英気を養おうと思います!
「カンナギ、大丈夫か!?」
「アウィンさん! はい、大丈夫です!」
埃と火の粉が舞い上がる中、アウィンは奏慈に駆け寄った。
奏慈はそんなアウィンを笑顔で迎え入れ、そこにボーアも駆け寄る。
「油断するな、まだ意識があるぞ!」
「えっ、なに!?」
ボーアの言葉を聞き、奏慈はすぐに振り返る。
そこには天井の下敷きになっているツェーンが居た。
確かに天井は直撃したが、ツェーンはやられていなかったのだ。
「驚いた、これ程とは………くくく、だが分かったぞ。
お前だな、異世界人は!」
「うっ!?」
「図星か」
ツェーンは瓦礫を押し退けながら、奏慈を指差して言う。
思わず奏慈は驚き、急いで口を手で覆った。
「しかし、今の俺では連れ帰る事は出来んか。
運の良い奴め、退かせて貰おう」
「逃げられると思っているのか!」
「くくく、思っているとも」
そう言いながら、ツェーンは立ち上がろうとする。
ボーアはそんなツェーンに槍を投げ、トドメを刺しにかかった。
その狙いは完璧で、槍は空気を切り裂きながらツェーンに迫る。
「なっ!? ちっ、転移魔法か」
「……やはり、魔力切れは嘘だったな」
しかし、当たる寸前になってツェーンの姿は掻き消えた。
槍は床に突き刺さり、瓦礫は音を立てて崩れる。
「っと、こうしてはいられない! フラン!!」
突如として消えたツェーンによって、三人は呆然としてしまう。
だが、ボーアはいち早く正気に戻り、一目散に駆け出した。
その様子を見て二人も正気に戻り、お互いに頷き合って言う。
「アウィンさん、僕達も!」
「ああ、行こう!」
二人もフランの元へ向かうべく、同時に駆けだした。
そして、共に奥へと続く扉を開け放つのだった……
「――はあ、はあ」
「流石はファルシオン家の当主、その実力は本物か」
時は、まだ三人が馬車に乗っていた頃まで遡る。
屋敷ではハルベルムがウルトルクスの構成員と戦っていた。
しかし、戦いはウルトルクスが優勢で押されている。
「き、貴様達の目的は何だ!? 何故こんな事をする!」
「ふむ……先程も言ったが、我々の目的は異世界人だ。
我々の望む世界を作る為には、異世界人の協力が必要不可欠。
さあ、答えて貰おう」
「くっ」
ハルベルムが戦っているのは、杖を持った尊大な態度の構成員。
その構成員は一分の隙も見せず、ハルベルムの問いに応えてみせる。
「アインス、居るかい?」
「ツヴァイか、どうした」
「良い物を見つけてねえ、これだよ」
そこにツヴァイが何かを小脇に抱えて入ってきた。
ツヴァイはそのまま抱えた物を床に放り投げる。
「はっ、フラン!!?」
「ファルシオン家の嫡女、フランか。
確かに良い物だ」
「そうだろう? 勇敢にもワタシに挑んできたのさ」
「ふむ……どうだろうか、ハルベルム?
今度こそ答えて貰えないだろうか」
「……おのれ」
アインスは穏やかに言いながらも、杖の先をフランへと向けた。
瞬間その杖の先から炎が出現し、フランの髪をチリチリと焼き始める。
間近にはツヴァイも居り、フランは完全に人質に取られてしまった。
「このまま、君の娘を焼くのは容易い。
早く言うのをオススメする」
「……分かった、異世界人は」
「言うな、ハルベルム!」
「むっ」
ハルベルムが答えようとした瞬間、フランの周りに無数の剣が出現する。
その剣はアインスの杖を弾き、フランを守るように回り始めた。
「剣心の魔法か」
「は、母上……」
「ハルベルム、ここから先はお母さんに任せなさい」
アインスとハルベルムの間に、大剣を持ったカリバーが降り立つ。
カリバーは車椅子に乗った状態で構え、アインスを睨みつけた。
それに対し、アインスは興味なさそうに杖の先を弄り出す。
「し、しかし、母上……」
「体の事は心配しなくていい、この程度の相手なら丁度いい位だ」
「ふふふ、舐められたもんだねえ。その状態で戦えるというのかい?」
「余裕だ。貴様こそ剣聖を舐め過ぎだな、現に……ふんっ!」
「うっ、これは……!?」
カリバーは大剣を一振りすると、ツヴァイを壁まで吹き飛ばす。
それは衝撃波ではなく、ツヴァイが必死に体を動かしても壁から動けない。
「今の一閃で空間を斬ったか」
「その通り、これで興味を持ってくれたか?」
「……いいだろう、その挑発に乗ろう」
「よしよし、それでこそ戦士だ。
ハルベルム、今の内だ……フランを連れて離れろ」
「……申し訳ありません、母上」
ハルベルムは頭を下げながら、フランを抱きかかえて後退する。
その様子をアインスは静かに見つめ、再び杖の先を弄り出した。
間もなく、その場はアインスとカリバーの二人のみとなる。
「考えてみたが、剣聖を相手にこの場で戦うのは失礼だ」
「ほう、じゃあ何処で戦う?」
「……ここだ」
静かに、そして強くアインスは杖で床を突いた。
すると突いた所から炎の円が広がっていき、部屋中を包み込む。
広がった炎の円は部屋を一変させ、全く別の空間に変化させていく。
「結界魔法か」
「これなら、お互い本気で戦えるだろう」
その空間は床も炎なら、壁も天井も炎の地獄のような空間。
今まで居た場所から隔絶された所に、カリバーは招待された。
「来い、貴様の力を見せてみろ」
「……君の息子は強かった、期待している」
戦いはカリバーが手招きし、挑発した所から始まる。
対するアインスは一瞬にして高所まで飛ぶと、火球を放ち始めた。
その一つ一つは人よりも大きく、目にも留まらぬ速さで向かって来る。
「ふんっ!」
カリバーはそれを大剣の一振りで、全て消し去った。
続けてアインスは火球を放つも、それも全て消し去られる。
「ふむ……では、これならどうだ」
考え込みながらアインスは杖を高く掲げると、熱線を放ち出した。
それは壁や天井から発射され、火球よりも速く向かって来る。
さらに熱線は先程の火球よりも多く、圧倒的な数で迫って来た。
「これはマズイな」
カリバーは迫る熱戦を見ながら、車椅子を走らせて逃げる。
同時に大剣で熱線を斬っていき、アインスに近づいていく。
「今度はこっちの番だ! はっ!!」
「むっ、転移か」
ある程度近づくとカリバーの姿が突然消える。
そして、次の瞬間にはアインスの背後に現れた。
アインスはすぐさま振り向き、杖で防御する。
「くうぅ」
「連続で行く!」
しかし、防御し切れずアインスは叩き落とされた。
カリバーはそれを確認すると、追撃を入れるべく突っ込む。
「……かかったな」
「なに!?」
隙と思われたそれは、アインスの罠だった。
アインスは杖を掲げると、今度は床からも熱線を放ち出す。
熱線は真っすぐ上空のカリバーに向かい、当たる寸前まで迫る。
「甘い!」
それに対し、カリバーは大剣を振った。
瞬間、再びアインスの背後に現れて熱線を避ける。
「また転移か。いや、これは……」
アインスも再び振り向くと、カリバーの攻撃を杖で防御した。
今度は勢いに押されながらも防御し切り、カリバーを一瞥する。
それで何か確信したのか、アインスは静かに言う。
「間違いない、時を斬ったな」
「……二回目で気づくのは早いな、その通りだ」
通常、斬られた時や空間は斬られた瞬間から元に戻る。
しかし、その戻る瞬間に隙間の時間が僅かに出来るのだ。
カリバーはその隙間に入り込む事で、疑似的に時を止めた。
「さあ、どうする?」
秘密を暴かれてもカリバーは平然とし、自信満々にアインスを指差す。
対するアインスは一瞬にして高所まで飛び、余裕を崩さず言う。
「分かれば問題ない、これで終わりだ」
「ふん、私に同じ手は通じない!」
そのままアインスは杖の先に火球を出現させ、同時に熱戦を放つ。
カリバーはそれを時を斬って回避し、三度アインスの背後に現れる。
「同じ言葉を返そう、私に同じ手は通じない」
「な、なに!?」
大きく振りかぶって攻撃したカリバーだったが、それは変わり身だった。
状況は一転してアインス有利になり、カリバーは声のした方向を振り返る。
「な、こ、これは!?」
「果たして斬れるかな」
そこで見たのは杖を掲げたアインスと、巨大な火球だった。
それは山よりも大きく、太陽のように凄まじい熱を放っている。
さらにその火球は三つも存在し、カリバーに向かって来ていた。
「斬れるかだって? 勿論、斬れる……!」
そんな絶望的な状況の中でも、カリバーは自信満々に言って構える。
太陽のような火球を見つめながら、勝ちを確信した笑みを浮かべて……
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