嘘
今回は短めにしようと思ったら、また4000文字超え。
上手く纏められるようになりたいです!
「よくも……よくも、やってくれたな!」
アウィンとボーアに吹っ飛ばされた筈のツェーン。
そのツェーンが奏慈の背後に立ち、胸を貫いていた。
奏慈は痛みに顔を歪めながらも、背後に立つツェーンを睨む。
「き、貴様、いつのまに!?」
「カンナギを放せ!!」
「……くくく、あれを見てみろ」
その光景にボーアは驚き、アウィンは怒りを露わにする。
対するツェーンは、二人にある一点を指差して応えた。
指差した先は、ツェーンが吹っ飛んだ方向だ。
「なっ、あれは!!?」
その先にはツェーンの姿を模した黄金の像があった。
像は壁に深々と刺さり、炎に照らされて光っている。
それを見てボーアは何かを察し、目を見開いた。
「貴様、あの一瞬で変わり身を!?」
「その通り、お前達はまんまとしてやられたのだ」
「ちっ、しっかり魔力を残してやがったか」
ツェーンは奏慈を盾にしながら、ボーアの問いに応える。
ボーアはそんなツェーンを睨みつけ、声を荒げた。
「改造サモンウェポンか…貴様、どこまで罪を重ねるつもりだ!」
「創造神に与する者に慈悲はない!
ゆっくりと、その体に痛みを刻みつけてやる」
「……外道め」
「くくく、褒め言葉だ」
ツェーンはそう言いながら、奏慈を貫いているツルハシを動かす。
それを見て、アウィンは思わず動くが、ボーアに止められる。
奏慈を盾にされている以上、二人はただ隙を窺う事しかできない。
(耳元で……五月蠅いんだよ!)
「ぐっ!?」
そんな中で奏慈は動いた。ツェーンの顔面に肘鉄を食らわし、隙を作る。
一瞬だったが、奏慈はそれを見逃さず、時を止めて二人の元へ戻った。
「カンナギ、大丈夫か!?」
(だ、大丈夫……じゃないかもです、めちゃくちゃ痛い)
「だろうな、すぐに治す!」
(すみません、ありがとうございます)
アウィンは奏慈の胸に手を当て、淡い光を出しながら治療をし始める。
その様子を顔をさすりながらツェーンは見つめ、嬉しそうに口を開いた。
「やはり、時を止めていたか! なら、あの時も止めたな!」
「……あの時? さっき初めて止めたのではなかったのか!?」
「そうか、知らないのか? さっきよりも前に、そいつは既に止めている」
「なに!?」
その言葉にボーアは驚き、すぐに奏慈の方を振り向く。
奏慈は思わず頭を振って否定するが、ボーアは睨みつけ舌打ちをする。
「仲間割れは後だ。お前も知りたいだろう、前に止めた時の話を」
「……ふん、話してみろ」
「いい判断だ。俺は自分が使う魔法の魔力消費量を把握している。
つまり、魔法をあと何回使えるのか常に分かっている訳だ。
そんな中で時を止められ、攻撃されたらどうなると思う?」
「そうか、貴様のあの魔法は時止め中でも発動するのか」
「その通り、そいつは時止め中に何度も攻撃して発動させた。
結果、時が動き出した瞬間に消費量の違和感に気づいたのだ」
ツェーンはそこまで言うと、口を噤んで三人を見つめ出した。
それから暫く口を開かず、ボーアが睨みつけて催促するも話し出さない。
奏慈はそんな中、口を開いた。
「だが、どうやって変わり身を……僕は確かに魔力を切らした筈だ」
「残念だったな、変わり身用の魔力は残るようにしていた。
しかし、予想外だった。まさか、魔力を切らされるとはな」
ツェーンは苦々し気にそう応え、視線を奏慈にだけ向ける。
一転して、場の雰囲気は重くなった。
(聖女様、カンナギの怪我は治りましたか?)
(え、えっと……穴はまだ塞がっていませんが、血は完全に止まりました)
ボーアはそこでアウィンに話しかける。
心の中で呟いた言葉は、奏慈の心話によってアウィンに繋げられた。
奏慈の怪我はすっかり治っており、穴も塞がる一歩手前に来ている。
(では、時止めさせて下さい。奴は自分から魔力切れを公言しました。
今なら攻撃を防ぐ手立ては無い筈です)
(……もしかして、治療を進める為に話を?)
(ええ、そうでなければ話などさせませんよ。御蔭で動けるでしょう?)
奏慈はもう痛みで顔を歪めていない。少々呼吸が荒れている程度だ。
万全ではないものの、今なら立ち上がって攻撃もできるだろう。
(そうですね……ですが、私は反対です)
(……それは何故ですか?)
(まず、魔力切れが本当か分からないからです。
変わり身用の魔力を残した程の相手……嘘もつくでしょう)
(それは確かに)
(二つ目はカンナギさんの魔力量です。
時止めを連発した今、どれだけ魔力が残っているか分かりません。
次の時止めを発動できるかどうか、発動中に切れる危険性もあります)
(……だとしても、攻撃すべきと思いませんか?)
(なに?)
ボーアのその言葉に、アウィンは思わず素を出してしまう。
だが、すぐに猫を被って聞き返す。
(それはどういう意味ですか? まさか、犠牲になれとでも)
(そのまさかです。ファルシオン家が一大事の今、一刻を争います。
勝ちの目がある以上、危険があってもやらせるべきです)
アウィンはその言葉を聞き、拳を握り締めて怒りに震えた。
それを表に出さず、努めて平静を装いながらアウィンは応える。
(……一般論として、大公家を救う為なら犠牲は仕方ないのでしょう。
ですが、聖女として人として犠牲あっての成功は受け入れられません。
もし受け入れれば、一生後悔する事になります)
(では、どうするのですか?)
(……決まっています、殴りに行きますよ)
アウィンはそう言うと、ボーアの次の言葉も待たず駆け出した。
その行動にボーアは驚くも、無言でその後に続く。
「何が狙いか知らないが、来い!」
ツェーンはそんな二人を待ち受け、独特な態勢で構える。
間もなくツェーンはツルハシを振るい、地面に叩きつけた。
瞬間、地面が揺れて二人は態勢を崩してしまう。
「隙だらけだ!」
「ぐああっ!?」
ツェーンはそれで生まれた隙を突き、二人を吹き飛ばす。
二人は壁に叩きつけられ、そのまま燃え盛る地面に落とされた。
「魔力が切れれば勝てるとでも思ったか? だとしたら勘違いだ。
先程までの戦いは時間稼ぎ、手加減に過ぎない。
お前達が俺に勝てる訳がないだろう?」
「く、くそ、オレはまだ……がはっ!?」
「……お前は確か聖女と呼ばれていたな、先に始末してやろう」
「ひ、卑怯者……ボクから狙え!」
「知るか、死ね!」
立ち上がろうとするアウィンだったが、ツルハシを叩きつけられる。
容赦なく攻撃するツェーンに、アウィンは反撃できない。
間もなくツェーンはトドメを刺すべく、ツルハシを振り下ろした。
「……誰か忘れてないか?」
「うぐっ!? これは……また、お前か!」
「か、カンナギ……」
その瞬間、奏慈の声と共にツェーンはツルハシを落とす。
ツェーンは痛みの走った腕を押さえ、声のした方を振り向いた。
「お前の相手は僕だ、止まった時の中で倒してやる!」
「や、止めろ、カンナギ……魔力が切れたら、お前は」
「大丈夫です、必ず倒してみせます」
「……いいだろう、お前から始末してやる」
自信満々にそう言い切った奏慈を、ツェーンは冷たく見つめる。
そのまま落としたツルハシを拾い上げ、手元でクルクル回し始めた。
「死ね!」
「……遅い」
回し始めたツルハシに集まった風を、ツェーンは衝撃波として飛ばす。
鋭い衝撃波は真っすぐ奏慈に向かい、襲いかかる。
だが、奏慈はそれを時を止めて回避し、ツェーンの背後に回り込む。
「おのれ!」
「ふっ、遅い遅い」
ツェーンはすぐに背後を攻撃するが、それも奏慈は時を止めて回避した。
その後も奏慈は嘲笑うように攻撃を回避し、ツェーンを挑発し続ける。
「ちっ、何をしているんだ! さっさと時を止めて倒せばいいものを」
「……まさか、慢心しているのか?」
奏慈のその様子に二人は疑問を持つも、痛みで体が動かない。
黙って見る事しかできず、奏慈が倒すのを待ち続ける。
「よし、これで……あ、あれ、時が」
「……切れたか、この大馬鹿者め!」
「がはっ!?」
「カンナギ! 魔力が切れたのか!?」
「馬鹿め、だから言ったんだ!」
そんな中、奏慈はツェーンの攻撃に対して時を止めなかった。
当然ツェーンの攻撃は命中し、奏慈は吹っ飛ばされる。
奏慈はそのまま壁に激突し、地面に落ちた。
「さっきまでの勢いはどうした?」
「うっ、ぐう」
「……このまま殺してもいいが、最後に言い残す事はあるか?
一つ、聞いてやろう」
ツェーンはそんな奏慈の首を掴み、膝立ちさせる。
そして、徐々に力を込めながら、奏慈に聞いた。
奏慈は真っすぐツェーンを見つめながら、必死に声を出す。
「お前達は何故、こんな事をしている?
屋敷に火を放ち、人を傷つけて、何が目的なんだ」
「言っただろう、創造神の抹殺だ」
「何故、抹殺しようとする?」
「……酷い世界と思わないか?」
「なに……?」
「周りをよく見てみろ、燃え始めて暫く経つのに屋敷は健在だ。
それは何故か? 保護魔法が掛けられているからだ。
だが、平民の家は違う。燃えれば、数十分で焼け落ちる」
「な、何が言いたい?」
「区別されているんだ。それは生まれながらにして決まっている。
弱き者は弱く、強き者は強い。創造神が定めた愚かな法。
それを俺達が変えてやる、全ての秩序を破壊してな」
ツェーンは声に狂気を孕ませ、奏慈にそう語った。
対して奏慈は笑みを浮かべ、ツェーンに返しの言葉を言う。
「正直その気持ち、よく分かる。酷い世界だ」
「くくく、そうか……同志になれそうなのに、残念だよ」
「ああ残念だ、ここでアンタが死ぬのは」
「……なに?」
満面の笑みを浮かべ、妙な事を言う奏慈にツェーンは疑問を持つ。
同時に、二人の頭上から火の粉が落ち始める。
「これは……はっ、あれは!?」
「保護魔法のせいだったのか、道理で硬かった訳だ」
火の粉を追い、上を見上げたツェーンの眼に映ったのは天井だった。
その天井は二人に向かって落ちてきており、直撃一歩手前に来ている。
「俺を下敷きにする気か!?
だが、俺は死なん! お前だけ下敷きになれ!!」
「嫌だね」
「な、なに……!?」
ツェーンは咄嗟に飛び退いて、奏慈だけ直撃させようとした。
しかし、次の瞬間には自身と奏慈の位置が入れ替わる。
「ま、まさか、魔力切れは!?」
「ああ嘘だ」
そう奏慈が言い終わると、ツェーンに天井が直撃した。
辺りに埃と火の粉が舞い上がり、部屋中に駆け巡っていく。
「僕の勝ちだ」
その中で奏慈は笑みを浮かべながら、静かにそう呟くのだった……
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