無敵の守り
暑くなってきましたね、皆さんは大丈夫でしょうか?
水分補給をしっかりして、無理しないようにして下さい!
「ふん、ウルトルクスか……まさか、こうして会う事になるとはな。
取り敢えず、その足を退けろ。ボクの騎士団は椅子じゃない」
「それは悪かったな、良い椅子が無かったもんでね」
ボーアに言われ、騎士団員の上から降り始めるツェーン。
ツェーンは騎士団員を山のように積み上げ、その上に座っていた。
背丈は子供ほどで小さく、その足取りは遅い。
「早くしろ!」
「すまないな、短足なもんで」
「ちっ、ムカつく野郎だ」
「よく言われるよ」
仮面を被っている為、ツェーンの表情は分からない。
だが、他人を見下したような態度からは醜い本性が分かった。
そんなツェーンを見ながら、奏慈は心話でアウィンに話しかける。
(アウィンさん、ウルトルクスってなんですか?)
(そうか、カンナギは知らないよな。
ウルトルクスは創造神抹殺を掲げた危険集団だ)
(創造神を抹殺!? どういう事ですか?)
(さあな、個人的な恨みがあるんだろう。
まあ、そのせいで国際指名手配されてるがな)
(成程……)
そうして話を聞いてる内に、ツェーンは地面に降り立った。
降り立ったツェーンは三人を一瞥し、ツルハシを出現させる。
「言う事を聞いてやった、次はそちらが聞く番だ。お帰り願おう」
「そうはいかないな、ボクはここで何が起こってるのか知りたい。
ツェーン、だったか……教えて貰おう、貴様達の目的を」
ボーアは槍を突き立て、ツェーンを脅した。
しかし、ツェーンは態度を崩さず、ツルハシを肩に背負い直す。
「目的? 我々の目的は最初から決まっている…創造神の抹殺だ」
「ふん、ここに居るとでも言うのか」
「くくく、お前は知らないんだろう。異世界人が来ている事を」
「なに!?」
(えっ)
(……どういう事だ)
ツェーンの言葉にボーアは驚き、思わず後ろに視線を投げた。
後ろに居た二人も驚いており、困惑を隠せない。
ボーアはそれを見ると、すぐに視線を戻してツェーンに聞く。
「それはどういう意味だ!」
「お前も知っているだろう、異世界人は創造神と会って訪れる。
つまり、異世界人は創造神と繋がりがあるんだ。
それを利用すれば、今は隠れている創造神を召喚できるのさ」
「召喚だと!? 貴様、本気で言っているのか!」
「本気さ。だから、邪魔はさせん……異世界人の居場所を聞くまでは」
ツェーンはそう言うとツルハシを肩から降ろし、威圧感を放ち始めた。
それは部屋全体を震わせ始め、空気も凍らせ始める。
対するアウィンはツェーンの言葉を聞き、状況を完全に理解した。
(そうか、そうだったのか……最初から狙いはカンナギか。
どうやってかは知らないが、ここに居ると知って動き始めた。
そして、警備が手薄になった所で襲撃しに来た)
(……じゃあ、今頃フランさん達は)
(尋問されてるだろうな、屋敷が燃えてるのもその一環か。
運の良い事に、お前が異世界人だって事はバレてねえみたいだが)
(……くそ、僕が居なければ)
(悪いのはウルトルクスだ、お前のせいじゃない。
どこに居ても、奴らは来ていただろう)
(そうかもしれませんが……)
奏慈はそう言われるも、拳を握り締めて苦悶の表情を浮かべる。
その様子をアウィンは何も言わずに見つめ、同じように拳を握り締めた。
「貴様達の蛮行を許す訳にはいかない!」
またボーアも二人が話す中、二人を守るように立って槍を握り締める。
そして、威圧感に怯まず、ツェーンに向かって駆け出した。
「ボーアさん、私も!」
「いえ、聖女様はお下がり下さい! ボクがなんとかします」
「わ、分かりました」
アウィンも手伝うべく動き出すが、ボーアは制して止める。
そのままボーアは槍を複数出現させると、ツェーンに向かって投げた。
槍は真っすぐ飛び、空気を切り裂きながらツェーンの眼前まで迫る。
「何かしたか?」
「なに!?」
だが、眼前まで迫った槍は当たる寸前で黄金の障壁によって防がれた。
それは槍を弾き返すと消え、ツェーンの姿を露わにさせる。
「……その魔法は、貴様はゴブリン族か!」
「気づくのが遅かったな。まあ早く気づけても、結果は変わらない。
この無敵の守りを突破できないのだから」
「それを決めるのはボクだ!」
自信満々にそう言い放つツェーンに、ボーアは槍を片手に果敢に立ち向かう。
突いて、薙ぎ払い、投擲する。しかし、そのどれもが黄金の障壁に防がれた。
ツェーンはただ立ち尽くし、攻撃し続けるボーアに語り続ける。
「無駄だ、当たるよりも前に障壁が俺を守る。
何処から攻撃しようと、俺を傷つける事はできない」
「ちっ、面倒な」
それでもボーアは攻撃を止めず、槍を突きながら左手に風を纏い始めた。
間もなく風は巨大な渦となり、部屋中の物を掻き集め始める。
「なら、これはどうだ!」
ボーアはその塊を思いっきり、ツェーンに向かって投げた。
その渦は進むに連れて勢いを増し、衝撃波も起こしながら進む。
さらに槍の突きも止めず、障壁に防がれても攻撃し続けた。
「だから、無駄だ」
そんな攻撃も黄金の障壁に防がれ、ツェーンに傷一つ付けられない。
掻き集められた物一つ一つを防ぎ、衝撃波も止めてしまった。
「これも駄目か、時間稼ぎだけは上手い奴め」
ボーアは忌々し気にそう言いながら、再びツェーンに攻撃し始める。
その様子を遠くから見ながら、奏慈も加勢するべく動こうとしていた。
(待て、オレ達が加勢した所で出来る事はない)
(……そうかもしれないけど、このまま何もせずに見ているのは)
それをアウィンが引き留める。傍から見るボーアの攻撃は高速だった。
だが、ツェーンはそれを全て軽々と受け止めている。
迂闊に加勢した所で役に立たないのは目に見えていた。
(一つ聞いていいか、ボーアは何故あんなに焦って攻撃している?)
そうして戦いを見守る中、アウィンは奏慈に聞いた。
ボーアの攻撃は目に見えて雑になっており、焦っているのが分かる。
(ボーアさんはフランさんの許婚なんです。
だから言葉には出していませんが、心配しているんだと思います)
(成程、それが焦りに繋がっている訳か)
(……やっぱり、僕はこのまま見ているだけなんて出来ない!)
(うん? お、おい、カンナギ!)
奏慈はアウィンの制止も聞かず、ボーアに加勢する為に動き出した。
焦っているのはボーアだけではなかったのだ。
「食らえ!」
奏慈は動き出したと同時に時を止め、ツェーンの背後に回った。
止まった時の中ではツェーンは勿論、ボーアでさえ動いていない。
それを確認すると、奏慈は容赦なくツェーンに斬りかかった。
「な、なに!?」
しかし、その一撃は黄金の障壁によって防がれる。
奏慈はそれでも諦めず攻撃を続けるが、その全てを防がれた。
「止まった時の中でも届かないのか……何で僕は無力のままなんだ」
奏慈は悔しさに震えながらも剣を戻し、元居た位置まで歩いていく。
そうして辿り着くと、再び時を動かし始める。
「……どういう事だ、この魔力の消費量は」
「なんだ、様子が」
動き出すと同時にツェーンは違和感を覚え、周りの様子を窺い始めた。
その様子を見て、ボーアは警戒して手を止める。
(カンナギ、無事か!? どうやら時を止めたようだが)
(すみません、心配させてしまって……)
(無事ならいいんだ。変わらず、異世界人だってバレてねえみたいだしな。
それでどうだった、当たったのか?)
(いえ、止まった時の中でも防がれました)
(そうか……なら利用できそうだな、急いでボーアに繋げてくれ)
(えっ? わ、分かりました)
アウィンはニヤリと笑いながら、奏慈にボーアとの心話を頼む。
奏慈はそれを疑問に思いながら、言われた通りボーアと繋げる。
(ボーアさん、今よろしいですか?)
(その声は聖女様!? カンナギの心話ですか?)
(そうです。それでは、今からツェーンに勝つ為の作戦をお話しします)
(おお、それはどのような物なのでしょうか?)
(まず、私とボーアさんがツェーンに攻撃を仕掛けます。
当然防がれてしまいますが、その隙にカンナギさんが攻撃します)
(……カンナギがですか)
(そうです。時を止めて攻撃させます、きっと当たるでしょう。
そうすれば、痛みで隙ができて防ぐ事は出来ない筈です)
(……分かりました、それでいきましょう)
(ありがとうございます)
そこまで言うとアウィンは奏慈に目配せし、心話を切らせた。
同時に心話を聞いていた奏慈に、作戦の続きを話し出す。
(そして、カンナギは障壁を出なくなるまで攻撃してくれ)
(分かりました……でも、いいんですか? 当たるとか嘘言って)
(いいんだよ。これで本当の事を言ってみろ、攻撃したのバレるだろ?
そうしたら無駄に怒りだして時間かかっちまう、嘘も方便だ)
(確かにそうですね……因みに僕が攻撃する意味はなんなんですか?
どんなに攻撃しても、障壁が出て防がれてしまいますが)
(いいか、魔力は有限なんだ。その障壁を出すのも、永遠には出来ない。
つまり、何度も攻撃して魔力を使い切らせれば障壁は出なくなる)
(成程、だから時止め中に攻撃させるんですね。一気に使わせる為に)
(そういう事だ。じゃあ、いくぞ!)
アウィンはそう言うとモーニングスターを出現させ、突撃した。
それにボーアも続き、早速ツェーンに攻撃を仕掛ける。
「二人で来ても無駄だ! 障壁は全ての攻撃を防ぐ!!」
「それはやってみないと分からない!」
そう言い放つツェーンに、アウィンとボーアは同時に攻撃した。
ツェーンは余裕の表情でその攻撃を受け止めようとする。
そこで奏慈は時を止め、ツェーンの背後に回り込む。
「はっ!」
間髪入れずに奏慈はツェーンに斬りかかった。
当然その攻撃は障壁に防がれるが、奏慈は気にせず斬り続ける。
「いい加減、斬れろ!」
そうして斬り続けて数十分、息切れしながらも奏慈は攻撃を続けた。
攻撃は変わらず、障壁に防がれ続けるが……遂に。
「あ、当たった!? よし、時は動き出す!」
「……ぐっ、こ、これは!!?」
奏慈は当たったのを確認すると、すぐに時を動かした。
ツェーンは何が起こったか分からず、痛みに耐えながら動揺する。
それが隙となった。アウィンとボーアの攻撃が間近に迫る。
「し、しま!?」
ツェーンは二人の攻撃を避ける事ができない。
そのまま攻撃を受け、壁まで吹っ飛ばされた。
「よし、やったぞ!」
それを見て、ボーアは思わずガッツポーズする。
しかし、次の瞬間。
「がはっ!?」
「えっ、か、カンナギ……?」
奏慈の背後に吹っ飛ばした筈のツェーンが立っていた。
ツェーンは奏慈の胸をツルハシで貫き、怒りで体を震わせている。
「よくも……よくも、やってくれたな!」
戦いは、まだ終わってはいなかった……
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