吐露
基本的に私は3000から4000文字の間の文字数にしようと思っています。
今回は長くなってしまいましたが、皆さんはどれくらいの文字数がいいでしょうか?
教えて頂けると嬉しいです! 参考にしたいと思います!
「はあ、はあ……」
雨が降る中、男が少女の手を引いて走っている。
暗い空の下を、枝葉が広がる森を……何かから逃げるように。
そうして暫く走ると、広間のような所に辿り着いた。
「ここまで来れば、ひとまず平気か。
アウィン、大丈夫か?」
「うん、大丈夫だよ」
男は辺りを見渡し、安全を確認すると呟く。
手を引いていた少女も気遣い、雨で濡れた体を拭いた。
「お前には苦労をかけるな……これをお前に渡す」
「パパ、これは何?」
男は少女に黒い玉を手渡す。
その玉は光を一切反射せず、重さも感じさせない物だった。
「それは我が家に伝わる秘宝。闇の玉だ」
「闇の玉?」
「いいかい、誰にも見せちゃいけないよ。
それを持って遠くに逃げるんだ」
男は強くそう言って、アウィンの手を握った。
アウィンはその言葉に応えるべく声を出す。
「う、うん。パパは?」
「少し休んだら後を追う。お前は先に行きなさい」
「分かった、約束だよ」
「ああ約束だ」
アウィンは何度も振り向きながらも、男の言葉を信じてその場を後にする。
男はその様子を嚙み締めるように見つめ、反対の方向に歩いていくのだった……
「――それが私とパパの最後の会話でした」
アウィンが語る間、奏慈は静かに聞き続けた。
変わらず手を強く握り続け、震えるアウィンを勇気づける。
それでも一区切りついた為、奏慈は口を開いた。
「それから、どうなったんですか?」
「なんとか逃げる事はできました。でも、そこからが大変でした。
働けなかったので残飯を漁り、時には物を盗んで暮らす。
今思い出しても辛い日々です」
「それは辛かったですね……」
今のアウィンからは想像もつかない話に、奏慈は言葉を無くした。
しかし、話を聞くと決めた奏慈は聞き続ける。
「そこからどうやって聖女に?」
「ソフィア様に拾われたんです、創造神教の教祖様に。
彼女は私を聖女として見出し、育ててくれました。
そして、今から一年前に見聞を広めるのも兼ねて旅立ったんです」
「そうだったんですね、本当に大変でしたね」
「いえ、私は幸せな方です……世の中にはもっと辛い思いをしている人達が居る。
だから、そんな人達を救う為に創造神に会いたいんです」
(本当に凄い方だな……)
(そんな大層でもねえけどな……でも、そう思ってくれるなら)
アウィンの過去を知り、考え方を知った奏慈は増々尊敬の念を抱いた。
同時にアウィンも聞き続ける奏慈に気を良くし、懐からある物を取り出した。
「そして、これが闇の玉です」
「えっ、誰にも見せちゃいけないんじゃ?」
「……カンナギさんなら見せてもいいと思ったんです」
「そうですか……ありがとうございます、そう言って頂けて嬉しいです」
アウィンが取り出した闇の玉。奏慈は礼を言いながら、その玉を見つめる。
それは何年も経った今も真っ黒で、見る者を惹きつける魔力があった。
「あれ、これ少し光っていませんか?」
「えっ?」
だが、奏慈が見つめていると玉は少しずつ光を放ち始める。
間もなく真っ黒だった玉は、眩い光を放つ光の玉に生まれ変わった。
「こ、これは一体?」
「わ、分かりません……家に伝わる物としか聞いていないので」
混乱する二人だったが、アウィンは玉を懐に仕舞う。
間もなく玉から光は無くなり、元の闇の玉に戻った。
「脱線しましたが、これでお互い様ですね」
「お互い様?」
「ええ、お互いに言ったので」
闇の玉に後ろ髪を引かれるも、アウィンは笑ってそう言う。
これでこの話は終わり、アウィンは体を伸ばして休み始める。
しかし、奏慈は首を振ってそれを否定した。
「いえ、私はまだ言っていませんよ」
「えっ、でも」
「アウィンさんだけ言わせて、私だけが言わないなんて自分が許せません。
語らせて下さい、自分の事を」
「……分かりました」
奏慈の決意を秘めた表情を見て、アウィンは思う所はあるも了承する。
そうして座り直し、奏慈が話し出すのを待つ。
奏慈はそんなアウィンを暫く見つめ、ゆっくりと話し出した。
「私は恵まれた方で食べ物に困ったとかはありませんでした。
でも、私は生まれつき人付き合いが苦手だったんです」
「そうなんですか? だけど、そんな様子は」
「色々ありましたからね、多少は上手くなったんです。
昔は口より先に手が出てたんですよ」
「そうだったんですね…カンナギさんも、苦労してきたんですね」
「いえいえ、アウィンさんと比べたら全然ですよ」
奏慈は笑みを浮かべながらそう言う。
だが、その目は笑っていない。悲しそうに遠くを見つめている。
そして、そのまま奏慈はアウィンに唐突に聞いた。
「アウィンさんは人間が好きですか?」
「えっ、そうですね……悪い事をする人は嫌いですね。
カンナギさんは?」
「私は、大嫌いですね。この世のなによりも」
「そうなんですね……それが世界が嫌いな理由に繋がりますか?」
「……繋がります」
奏慈は溜め息を吐きながら、アウィンの言葉を肯定する。
その表情は変わらず笑顔だったが、悲しそうに遠くを見つめたままだ。
「私を慕ってくれる優しい女の子が居ました。
その子は本当に良い子で、素晴らしい才能の持ち主でした。
でも、その子は虐めにあって命を落とした」
(あの夢の子か)
「元々、私は人間が嫌いでした。だけど、それは八つ当たりだったんです。
私を理解してくれない事に対する」
「(それを変えたのがその子か)
では改めて聞きますが、それなら何故帰ろうとしているんですか?
そんな人達の居る世界に帰る必要なんてないと思いますが」
「……そうですね、その通りだと思います。
でも、その子と約束したんです……あの世界で生きるって。
だから、嫌いでも戻らないといけないんです」
「そうだったんですね……」
アウィンの言葉を肯定しながらも、奏慈は苦い顔をして理由を吐露した。
そして、一転して奏慈は頭を抱え、塞ぎ込み出す。
アウィンは心配して、奏慈に触れようと手を伸ばすが。
「僕が告白を断った時、怖かったんです……貴方を殺しそうで」
「えっ」
奏慈は塞ぎ込んだまま、アウィンにそう言った。
アウィンは一瞬手を引っ込める。だが、すぐに手を伸ばして手を強く握った。
奏慈はそれに反応せず、塞ぎ込んだまま続ける。
「あれ以来、僕の中で殺意が生まれました。人を見ると憎しみが湧く。
歩いてる親子が車に轢かれる。子供が通り魔に刺される。
頭の中で沢山の人を殺すようになった」
「カンナギさん……」
「だから、怖かった……何かの切っ掛けで貴方を殺すんじゃないかって。
責任を持てないだけじゃなく、傷つけて汚してしまうんじゃないかって」
奏慈は震え出し、何も言わなくなってしまった。
そんな奏慈をアウィンは優しく抱き締め、そのままの状態で聞く。
「……それでも、オレを受け入れたのは何故だ?」
「それは、貴方みたいになりたかったからです」
「オレみたいに?」
「はい……貴方は優しくて強くて、尊敬の対象です。
僕も貴方みたいになりたい……例え無理でも、そう思ったんです」
「カンナギ……」
奏慈は消え入りそうな声でそう言い、抱擁を受け入れた。
アウィンはそのまま奏慈を抱き締め続け、頭を撫でる。
「お前は人の為に命を掛けれる奴だ。決して、奪う側なんかじゃない。
だから、大丈夫だ……それに、オレは死んでも死なねえよ」
「アウィンさん……」
奏慈は声を出して泣き出した。その涙はアウィンの服を濡らしていく。
アウィンはそんな奏慈を優しく抱き締め、同じように涙を流すのだった……
「すみません、大人げなかったですね」
「いえいえ、お気になさらないで下さい」
暫く泣き、奏慈は落ち着きを取り戻した。
照れながら言う奏慈に対し、アウィンは笑顔で応える。
「そうだ、口調は本来のでいいですよ。オレを使う奴で」
「え、ええっ!? し、知ってたんですか!!?」
「前から出てたので知ってましたよ。無理してるなあと思ってました」
「うっ、オレとした事が……ばれてないと思ったのに」
だが、そんなアウィンに奏慈は衝撃の事実を告げた。
笑顔から一転してアウィンは苦虫を噛み潰したような顔をする。
恥ずかしさから背も向けるが、奏慈はその背に向かって続ける。
「どうして隠してたんですか? 別に隠すような事でもないと思いますが」
「……聖女らしくねえだろ、こんな口調。
聖女はやっぱり、清楚な感じじゃねえと」
「そうですかね、清楚である必要ないと思いますが。
それにオレっ娘、可愛いと思いますよ」
「か、可愛い!? い、いやいや、それ聖女関係ねえだろ!」
「あはは。まあ、私の前だけでも気を楽にして下さい」
「くぅ」
完全に手のひらの上で踊らされるアウィン。
悔しさも相まって顔を真っ赤にし、奏慈を睨みつける。
しかし、奏慈は気にせずに笑顔でアウィンを見つめ返す。
「なら、オレからも言わせて貰う!」
「なんですか?」
「お前もオレの前では僕って言え! 私を使うな!!」
怒ったアウィンは奏慈に指を差して言い放った。
それに対する奏慈の反応は。
「えっ、いいんですか?」
「ああいいぜ、僕って言え!」
「では、遠慮なく。僕もこっちのが話し易いんですよね」
「お、おう……くそ、ぜんぜん動じてねえ」
反撃のつもりで放った一言だったが、奏慈は意に介さなかった。
寧ろ生き生きとしており、楽しそうにしている。
それにアウィンはあっけにとられ、がっくりと肩を落とした。
「……そういえば、フランまだ戻って来ないな。結構経ったのに」
「そうですね、もう戻って来てもいい筈ですね」
ふと二人は未だに戻って来ないフランの存在に気づいた。
かれこれ十分以上話しているのに、未だに帰って来る気配が無い。
二人は顔を見合わせ、お互いに頷く。
「カンナギ、何か嫌な予感がする」
「僕もです、探しに行きましょう!」
「ああ!!」
自分達の中で鳴る警鐘を掻き消すように、二人は地面を蹴って走り出した。
そうして二人は探したが、神殿内部に姿は無かった。そのまま二人は外に出る。
「フランさん、一体どこに?」
「……カンナギ、あれを」
「えっ、あれは!」
そして、二人は見つけた……遠くに見える炎の柱を。
その炎はファルシオン家の屋敷から出ている物だった……
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