お互い様
今回は短めですが、色々お話する回です。
なんとか投稿間に合って良かった。
「やりましたわね、カンナギさん!!」
「え、ええ」
「近いですよ、フランさん」
戦いを終えて、一息吐く奏慈。だが、フランがそれを許さない。
奏慈の背を激しく叩き、肩を組んで喜ぶ。
そんなフランをアウィンは無理矢理引き離す。
「って、フランさん怪我してるじゃないですか!?」
「ああこれですの? これくらい軽いですわ」
その引き離した瞬間、フランの体から血が滴り落ちた。
体には無数の切り傷が出来ており、服は真っ赤に染まっている。
「とても軽く見えません……アウィンさん、お願いします」
「分かりました。フランさん、動かないで下さいね」
「もう、いいですのに」
そう言いながらもフランは大人しく治療を受ける。
先程と打って変わって辺りは静寂が支配し、治療の音だけが響く。
傷は見る見るうちに治っていき、間もなく止血も済んだ。
「それにしても、あの剣撃は凄かったですわ!!
守護者の腕を目にも止まらぬ速さで斬り落とす一撃!
カンナギさん、いつの間に強くなったのですの?」
「えっと、それは」
その治療の途中、フランは身振り手振りを交えて奏慈を褒め称えた。
奏慈はそれに対し、申し訳なさそうにしながら真相を二人に話す。
その内容に二人は驚くも、合点がいったのかフランは冷静に言葉を続けた。
「成程、そうだったんですのね。あれは時間を止めて放った一撃だった」
「そうなんです、だから……」
「いいえ、これで全て分かりましたわ!」
「えっ、どういう事ですか?」
「不思議に思いませんか? 何故、この空間に入れたのか?
そして、どうしてアタクシ達がここに入った時に守護者が出たのか?」
「確かにそういえば」
(そうか、フランが入った時には出なかったのか)
奏慈は勿論、アウィンもそれには口を噤んで考え出す。
突然の出来事が続いた為、二人とも全く考えていなかったのだ。
だが、フランはその理由を分かっているのか声を高らかに出して続ける。
「アタクシの知る限り、このような空間は今まで発見されていませんでしたわ。
なのに、どうしてアタクシ達が来た時だけ入れたのか?
その理由はズバリ、カンナギさん貴方ですわ!」
「わ、私ですか?」
「ええ、そうですわ。ここを建てさせた異世界人は同じ異世界人を求めていた。
つまり、異世界人であるカンナギさんが訪れたから入れたんですわ!!」
「なるほど」
フランは胸を張って、そう言い切った。奏慈はそれを聞き、納得した様子で頷く。
しかし、アウィンは首を傾げて考え続けていた。
そんなアウィンにフランは聞きに向かう。
「アウィン様はどう思われますか?」
「……私は、そうじゃないと思います」
「ええ!? 理由を聞かせて頂けますか?」
「わ、私も聞いてもいいですか?」
「……分かりました」
手を上げて驚くフランと、申し訳なさそうに聞く奏慈。
その二人を見て、アウィンはゆっくりと自分の考えを話し出す。
「カンナギさんが訪れたから入れたというのは同意します。
でも、異世界人なら誰でも良かった訳ではないと思います」
「どういう事ですの?」
「この神殿は建てられてから何年も経っているでしょう、それこそ百年単位で。
その間、カンナギさん以外の異世界人が訪れてないなんてありますか?」
「それは……でも、そういう事もあるかもしれませんわ」
「ええ、ある場合もあると思います」
アウィンの考えに対し、フランは自信なさげに反論した。
だが、アウィンはその反論を受け入れた上で話を続ける。
「でも、他の神殿はどうでしょう? この世界にはいくつも神殿があります。
この神殿だけならともかく、その他の神殿にも訪れていない。
そんな事あるでしょうか?」
「ううん、どういう事ですか?」
「……アタクシの考えが正しいなら、他の神殿で空間は見つかってる筈ですの。
でも、アタクシの知る限り、こんな空間は見つかっていない。
見つかっていれば、他の神殿にもないか調査されますもの」
「そうです。なので、私はカンナギさんが訪れたから入れたと思います」
「な、なるほど?」
奏慈はいまいち分かっていない様子で首を傾げるも、フランは納得して頷く。
しかし、それでもアウィンは首を傾げて考え続けていた。
そんなアウィンに今度は奏慈が聞いた。
「でも、どうして私が訪れて入れたんでしょう?
それに何で守護者も出てきたのか?」
「それは分かりません。何か理由はあると思うのですが」
「う~ん、そうですわね……分かりましたわ!!」
「わ、分かったんですか?」
「入れた理由は分かりませんが、出た理由は分かりました!
ズバリ、試練ですわ!!」
「試練?」
「時間を止める魔法なんて、ただで手に入れられる訳ありませんわ!
試練を与えて、それを突破した時に手に入れられる。
だから、守護者が出たんですわ!」
フランの考えに、二人は考え込む。
だが、深く考え込む前にフランの治療が完了した。
必然的に考えは中断され、意識はフランへ向かう。
「フランさん、調子はどうですか?」
「とっても、いいですわ! 前にも増して、元気になった気がします!!」
「それは良かったです」
「まあ、これ以上は専門家に聞くしかないですわね。
アタクシは生き残りが居ないか確認して来ますわ!」
フランは元気一杯体を動かすと、そのまま走り去ってしまった。
止める暇も無く行ってしまい、その場には二人だけが残される。
「会ったのは昨日が初めてですが、激しい方ですね」
「そうですね、優しいし頼りになる方なのですが」
そうして二人はフランを待つ間、談笑に花を咲かせる事にした。
空になった宝箱の前に座り、話題を次々に変えていく。
そして、話題はアウィンが気になっていた事に繋がる。
「そういえば、異世界人は元の世界に帰る為の力を与えてくれたんですよね」
「そうですね、各地の神殿を巡れば得られると」
「……今までの異世界人は元の世界に帰りたくなかったのでしょうか」
「えっ?」
「いや、帰る為の力を与えてくれるという事は帰らないという事ですよね。
元の世界の事が嫌いだったのかなって」
アウィンの言葉に対し、奏慈は何も応えず黙り込む。
そのまま二人の間に沈黙が訪れ、数分が経った。
アウィンはその沈黙を破るべく、なんとか言葉を絞り出す。
「……カンナギさんはどうなんですか。でも、帰りたいという事は」
「嫌いですよ、あんな世界」
「えっ、じゃあ何故帰ろうと思ってるんですか?」
「……それは」
「(そうか、あの夢で言っていた)
あっ、すみません……話したくない事でしたかね」
「いえ、気にしないで下さい」
御蔭で奏慈は話し出したが、その表情は暗い。アウィンは慌てて話を切り上げる。
それでも奏慈の表情は変わらず、また沈黙が訪れようとしていた。
「――私ですね、親が居ないんです」
「えっ?」
だが、アウィンはそれを阻止した。前だけを見つめて、辛そうに呟く。
突然の告白に奏慈は驚き、その様子を見たアウィンは申し訳なさそうに言う。
「私ばっかり聞いていましたから、私からも言おうと思って」
「だからって、そんな辛い事を」
「聞いて欲しくもあるんです、カンナギさんに。
これから傍に居る貴方にだけ」
「……いいんですね、私で?」
「はい」
「分かりました、聞かせて頂きます」
「ありがとうございます」
奏慈はアウィンの気持ちを汲み取り、話を聞く事にした。
態勢を整え、アウィンの手を強く握って勇気づける。
「……私が幼い頃、家が強盗に襲われたんです」
間もなくアウィンは重い口を開け、話し出した。
奏慈は静かに、真剣にその話を聞くのだった……
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